アメリカ議会中間選挙とオバマ政権(環球時報社説)

2014.11.06.

11月5日付の環球時報社説「オバマはレーム・ダック 『偉大な大統領』の再現は困難」の内容はほぼ私の感想と近いので、大要を紹介します。まだ選挙結果の全容が分かっていない時点で書かれたものですが、事実関係による修正の必要はないでしょう。

  オバマの個人的威信の落ち込みの激しさは、アメリカ大統領の様々なぶざまな結末を知悉しているものにとってもとりわけ深刻な印象を与える。ブッシュは対テロ戦争をぶちこわしにしたために少なからぬ世論のブーイングに見舞われた。オバマは登場以来毎日のように"yes, we can"と言うことでアメリカ人の衆望を集めた。しかし、選挙民に与えたのは「白紙答案」だった。アメリカ社会が辟易したのはオバマの「凡庸」である。
  間違いなく、オバマは冷戦終結後の大統領の中でもっとも難しい立場にある。金融危機とアメリカの国力の相対的な衰退に加え、何をするにつけても彼が手を焼かずには済まなかった原因は、何と言っても彼がアメリカ史上最初の黒人大統領だったということだ。アメリカの白人社会はオバマがホワイト・ハウス入りすることを「テスト的」に認めはしたが、オバマに対する寛容と忍耐には普通にも増して限界があった。したがってオバマは、他の前任者にも増して慎重でなければならず、複雑な内外の問題を解決するには先天的に力及ばずだった。
  より重要なことは、オバマが直面したのはアメリカの二党政治の「分極化」による悪しき戦いという環境だったということだ。政党の利益が国家及び人民の利益に優先するというのは西側政治体制に内在する欠陥だが、アメリカがうまく行かないときには、この問題の作用はますます激しいものになる。アメリカ社会の求心力が減少し、民主共和両党がウィン・ウィンになることは難しく、相手側をやっつけるということがアメリカ二党政治のいずれの陣営にとっても唯一の対話形式となった。
  オバマとしては、最高の表現を演説に置かざるを得なくなったが、国内の和解、医療保険及び移民政策の改革の推進、貧富の格差是正等の問題においては語るべき成果を挙げられず、経済回復の成果も一般国民には均霑するに到らず、オバマが残したものと言えば、声涙共に下り、聴衆を興奮させる名演説だけだった。
  オバマが外交面で直面した非難も同様に激しかった。オバマはイラク及びアフガニスタンから米軍を撤退させたけれども、平和を残したわけではなかった。彼はビン・ラディンを殺したけれども、中東ではさらに凶悪な「イスラム国」が現れた。ウクライナ危機は欧州を新冷戦状態にほぼ追いやったし、アジア・リバランス戦略は中米及び東アジア各国の猜疑心を増大させ、その戦略がアメリカにどのようなメリットをもたらしたかは今もって定かではない。
  「なんでもやってのける」ブッシュと「何もできない」オバマとは異なる運に巡り会ったわけだが、二人が最終的にたどり着くのは同じ帰結のようだ。これは彼等自身の問題なのだろうか。それともアメリカ自身の問題なのだろうか。
  アメリカの歴史学者であるフランシス・フクヤマは、アメリカの制度に問題があると言いだしている。しかし、多くのエリート学者を含めたアメリカ人の多くはそのようには考えていない。彼らは相変わらずアメリカのシステムを改革する必要はないと考えており、必要なことは大統領を変えることだとしか考えていない。
  中国の不断の発展に伴い、我々は徐々にアメリカを理解する能力がついてきた。アメリカは改革することに面倒くさがりであり、次第に改革する能力を失いつつあり、その自信も、競争力の下降によって生まれる焦燥感を逃れるための傲慢に変わってきている。このような社会は、さらなる致命的な危機に遭遇するか、新興市場国に追いこされるような日でも来ることによってのみ、「目を覚ます」ことができるのだろう。
  アメリカは西側システムの頂点にある国家であるが、その新たな成績ラインは大幅に下降しており、このことは世界全体のアメリカの政治システムに対する当惑感を増幅している。一つ確かなことは、アメリカ社会が現職大統領を信任しなくなっていることをもってアメリカの「先進性」の表れと見なすことはできないということだ。事実として、アメリカ社会がオバマを育てたのであり、この時代はもはや「偉大な大統領」を生み出せなくなっているのだ。