朝鮮外交:中国側分析と対応

2014.10.26.

10月2日付のコラムで「朝鮮情勢(中国側見方)」を紹介しましたが、金正恩が9月3日に夫人・李雪主を伴って牡丹峰楽団による音楽会に出席して以来、10月14日の視察報道まで一カ月以上消息が報道されなかったこと、また、その間にも朝鮮要人の活発な外交活動が続いていたこと(もっとも注目されたのは10月4日の仁川アジア大会閉幕式への黄炳瑞・軍総政治局長、崔龍海・朝鮮労働党書記、金養建・朝鮮労働党対南担当書記の出席と韓国政府要人との会談でしたが、私は、李洙墉外相が国連総会出席後に10月1日から10日までの10日間にわたってロシアを訪問し、ラブロフ外相との間で「非常に成功した」会談を行ったという同月11日付の中国新聞網報道にも注目しました)もあって、中国でも、ネット世論を含めて様々な憶測が流されてきました。
  日本や韓国におけると同様、中国のネット世論では朝鮮政変説を含めて様々な憶測が飛びかったようですが、10月9日付環球時報社説「朝鮮が孤立を打破することは極めて困難な任務」、同日付及び11日付の中国網所掲の暁岸文章「オバマ訪中前の朝鮮関係のアドバルーン」及び「中国は朝鮮半島情勢に対する主動的影響力を強化すべし」、11日付の北京青年報所掲の馬暁霖(新華社世界問題研究中心研究員を経て、中国唯一の実名ブログ・サイト博聯社総裁)文章「朝鮮の迷局:噂は飛ぶに任せよう」、13日付の環球時報所掲の任衞東(中国現代国際関係研究院副研究員)文章「朝鮮にかこつけての中国批判に警戒しよう」、22日付の中国網所掲の高望文章「我々は本当に朝鮮を理解しているだろうか」などは、朝鮮に関して冷静な分析を行い、その分析に基づいて中国のとるべき対応について提言を行っています。
  ただし、これらの分析に共通している最大の問題は、朝鮮の核政策に対する認識不足であることは指摘しておかなければなりません。私がこれまでにも繰り返しこのコラムで指摘していることですが、朝鮮の核実験には「人工衛星打ち上げ-安保理の非難・制裁-朝鮮の核実験」というパターンがあるということに注目するものは中国にはいないのです。もちろん、朝鮮の核開発政策は既定路線ですが、個々の核実験を行うタイミングは人工衛星打ち上げ(という朝鮮の正当な国際法上の権利行使)に対して安保理が不当な非難・制裁を行うことに対する対抗措置としてなのです。逆に言えば、朝鮮の人工衛星打ち上げに対して安保理が非難・制裁を行わなければ、朝鮮は核実験強行で対抗することはないはずです(将来的にはともかく、並進路線が堅持される限りは)。中国がこのことをわきまえれば、朝鮮の人工衛星打ち上げ(これは正当な行為であることを中国自身も認めていた)に対して、アメリカ主導の安保理が非難・制裁を行うことを、拒否権を持つ中国(及びロシア)が阻止すれば良いのです。そのためには、中国(及びロシア)は2006年以来の安保理における対米協調のために朝鮮の国際法上の権利を無視するという自らの誤りを改めなければなりません。

<環球時報社説>

 金正恩が10月7日に行われた金正日の朝鮮労働党総書記就任17周年記念大会に欠席したことは、彼の健康及び朝鮮政局に関する様々な推測を引き起こしたが、それらには特別の新味はない。朝鮮に関する外部のスペキュレーションの混乱は朝鮮の国家戦略上の特殊な難しさを反映している。朝鮮が長きにわたる外交的孤立を打破することは、客観的に言って相当に困難な仕事である。朝鮮が周辺諸国との間に存在する発展上の差を埋めて軟着陸を実現することはさらに容易ではない。韓米日では、朝鮮にひっくり返るような政治的変化が起きることによってのみ、半島情勢が劇的な変化が起きると考えるものが少なくない。こういう見方が不断に様々な噂を引き起こし、朝鮮政治に対する根強い混乱を形作ってきた。
  朝鮮が「身動き」できるように手助けすることは、東北アジアひいてはアジア太平洋全体の集団的課題である。なぜならば、朝鮮問題が「爆発」しないことは各国にとっての利益だからだ。だが遺憾なことに、各国の間にあるのは駆け引きの関係であり、みんなで協力して真剣に朝鮮問題を解決しようとする理想的な状況がない。朝鮮は自らの利益に基づいて周辺諸国の対立を利用しようとしており、このことは問題をますます複雑にしている。もちろん、とどのつまりとしては、半島の混迷の最大の被害者は朝鮮自身である。
  外部者は朝鮮の行動を政治道徳の視点から評価しがちだが、我々としては現実主義の視点から朝鮮の置かれた状況を観察し、その選択の可能性を分析したい。
  まず、朝鮮は自ら変化しなければならず、これがこの国にとっての現実の圧力であり、したがって年若き指導者がすでに行っている判断でもあろう。周辺諸国と比較した朝鮮の遅れはすでに正常な範囲を超えており、そのことがある程度において国家にとっての政治的な圧力と化しており、しかも問題を後延ばしすればするほどこの圧力はますます大きくなっていく。
  国家の経済的社会的発展を促進することは朝鮮が必ず経なければならない道であるが、世界の経験が証明するとおり、この発展はリスクを伴うものであり、時にはリスクの方が早く来ることがある。したがって、大規模な変化の発生を進める前に、朝鮮の政権にとっては変化のプロセスをコントロールできるという十分な確信を持つ必要がある。
  「対外開放」については、朝鮮はおそらく大きな懸念を持っているだろう。門戸を開放しないで現代化社会を建設できれば、朝鮮にとってはそれに優ることはない。しかし、鎖国という道はうまく行かないことがすでに証明済みであり、発展するためには開放するしかなく、グローバリゼーションの激流に身を投じて洗礼を経なければならず、この道理が朝鮮の選択の難しさを増しているのだ。
  金正日は核保有によって朝鮮のリスクに対する総合的な抵抗力を強化しようとしたが、20年の時を経てアジア太平洋の構図には重大な変化が生まれたにもかかわらず、朝鮮はますますこの路線を突っ走ってきた。核問題がもたらした孤立は、国家の発展の立ち遅れと複雑に絡み合って問題を複雑にしている。   最大限の政治的な勇気と知恵をもってしてのみ、朝鮮は当面する難局に対して大なたを振るうことができる。外部から見る時、朝鮮はためらい、変化が多いように見えるが、そのことは政治的ロジックとして不正常と見るべきことではない。
  朝鮮が歩む道筋は平坦ではないだろうが、最終的に対外開放に向かう可能性はやはり低くはない。ヴェトナム及びキューバはともに大国ではなく、それぞれが政治的リスクを持っているが、それでもなお段階的な変化を選択したし、総じてプラスの成果を収めている。
  以上から判断するとき、朝鮮の将来ははっきりしておらず、様々な動機が朝鮮の内外政策を時として左右するだろうし、外部に対して身構える心理は極めて強く、外部としては理解に苦しむ「怪しい動き」も多いことだろう。
  最後に、朝鮮を語るときには中国のことを語らないことは難しい。朝鮮の変化が多ければ多いほど、中国としてはますます冷静で動揺しない力を持たなければならない。中国はもっぱら朝鮮の利益に尽くす友人であるということはあり得ないが、いかなる時においても朝鮮の敵となるべきではない。中国は、朝鮮に対して原則ある、正常な友好的隣国であるべきだ。中国は、朝鮮がいかなる国家とも関係を改善することを支持するし、自らの実力及び地縁性から、朝鮮半島全体に対する影響力に関して大いに自信を持っている。朝鮮が富み栄えることは、いかなる方法によるものであれ、中国として歓迎するところである。

<暁岸文章>

 (朝鮮の活発な外交展開の含意として、切り口を探して全局を活性化しようとしている可能性が高いという判断を示した上で)過去数カ月において、朝鮮は中国の門をノックしたがうまく行かなかった状況のもと、日本、ロシア及び韓国を重点としてブレークスルーを図ってきたが、いずれも顕著な成果を収めていない(注)。
  朝鮮が直面している情勢とは、国際社会の対朝鮮協調政策がかつてなく強まっている現実を直視しなければならず、核問題が朝鮮の苦境の根源であるということ、対中関係を改善することが苦境を脱する上での正道であり、したがって核放棄という実質的ステップに踏みだすか孤立して守勢の難局を維持するかの間で決断を行わなくてはならないということだ。しかも、朝鮮の核保有政策は、朝鮮自身の長期的利益に合致しないのみならず、朝鮮半島に関係する各国の根本的利益にも合致しない誤った決定である。
  2013年の朝鮮の第3回核実験以後、中朝関係は谷底に陥り、中国は国連安保理の対朝鮮制裁を支持しかつこれに参与し、バイのチャンネルを通じて措置を講じた(浅井注:10月11日付の中国網所掲の馮創志文章「6者協議再開のみが朝鮮半島の明るい道だ」では、「中国共産党の第18回当大会以後、中国指導部は中朝関係を「ノーマルな国家関係」と位置づけ、国連安保理の朝鮮制裁の決議を厳格に実行して朝鮮に不都合を与えたが、このことが朝鮮をして外交的突破を図る選択肢をとるように仕向けたようだ」という興味深い指摘をしています)。また非常に注目するべきは、朝鮮半島で、金正恩が1ヶ月以上姿を現さず、朝鮮のハイレベルによる韓国への突然の訪問を含め、変化の流れが強まっていることに対して中米両国がことのほか冷静かつ冷淡だったことだ。このことは、中米両国がひそかに意思疎通と協調を進めていることを示すものであり、朝鮮の最近の異常さもこのことと関係がある可能性がある。
  朝鮮問題に如何に対処するかに関しては、中米間で長きにわたって根本的な利益の違いが存在し、相手側の朝鮮半島政策に対して高度に身構える心理が働いてきた。双方の協調を維持することは、中米関係の安定的発展と半島の基本的安定という最低限の共通の希望によるものであり、実質的な協力は極めて限られてきた。中国側からすれば、アメリカは朝鮮の政権を転覆させる政策目標を放棄しようとせず、半島に米軍を駐留させる長期的考慮が何であるかについても疑うべきであるし、アメリカ側からすれば、中国は戦略的考慮に基づいてアメリカを手助けしようとせず、朝鮮を「取り締まる」大国としての責任を果たしてこなかったと考えている。
  中米が新型大国関係を構築するプロセスの中で、また、両国がアジア太平洋のバランスが取れた新しい構図を互いに模索する趨勢のもとで、朝鮮半島問題は重要な重りとして秤のちょうど中間に位置し、中米関係における正の資産にも負の資産にもなりうる状況にある。
半島問題に関する中米協調は新しい段階に入っていく可能性がある。即ち、アメリカは朝鮮の政権を転覆させるというイデオロギー的な衝動を抑え、中国は無条件で朝鮮を支えるという地縁政治的思考を調整することにより、現実的利益という考慮を働かせる余地をつくり出すということだ。このような変化により、中米は一方的に相手に意思を押しつける考え方から抜け出し、共通の利益を最大化する道を探ることができるようになり、半島内部の政策決定があるべき発展の規律に合致した方向に向かって調整されるようにすることもできる。

   (注)朝鮮とロシアの関係がうまくいっていないとする暁岸の指摘には首をかしげます。例えば、10月22日付の中国新聞網は、韓国連合通信社の同日付報道として、朝ロ経済関係の進展を次のように報道しています。下記報道のほかにも、ロシアは朝鮮の対露債務90億ドルを棒引きにしています。
また、梓洞駅-江東駅-南浦駅を結ぶ鉄道起工式に関する22日付の朝鮮中央通信の報道においては、ロシアのガルシカ極東発展相と朝鮮の李龍男・対外経済相が祝辞を述べた中で、「金正恩元帥が朝露友好関係の発展に深い関心を払っている」と強調し、「朝鮮とロシア間の経済協力関係は日を追ってさらに強化発展しているとし、今後も双務協力関係を発展させる活動においてさらなる成果が収められることを願う」と述べたことが紹介されました。

  最近、朝鮮がロシアの資金を得て鉄道現代化建設に乗り出していることが多くの注目を呼んでいる。即ち、朝鮮中央通信の報道によれば、朝鮮の梓洞駅-江東駅-南浦駅を結ぶ鉄道起工式が21日に平壌駅で行われた。朝露協力による羅津-ハッサン鉄道修復工事(2008年に朝鮮が30%、ロシアが70%出資して開始した鉄道現代化、総合物流施設建設などを内容とするプロジェクトで、2013年9月に開通)に続くもので、朝鮮内陸地域の重要な鉄道現代化を推進するものである。朝鮮の物流は90%を鉄道輸送に依存しているが、鉄道の深刻な老朽化のため、大部分の列車は時速30キロ以下を強いられている。今回の計画により朝鮮の全鉄道の60%ないし70%が現代化されることになり、ロシアは朝鮮の物流事業の発展に重要な役割を担うこととなる。   韓国交通研究院によれば、ロシアは長期プロジェクトとして朝鮮の鉄道現代化実現を援助しており、羅津-ハッサン鉄道と朝鮮内陸の鉄道を連結し、さらには長期的には西シベリア鉄道に連結する戦略的意図も排除できない。   最近の朝露「蜜月関係」は全面的に発展している。例えば、10月からは朝露貿易はルーブルで決裁することになった。また、10月初には、ロシアは朝鮮に対して5万トンの食糧無償援助を提供したほか、8月には国連の世界食糧計画(WFP)の朝鮮に対する食糧援助事業に300万ドルを拠出した。朝鮮社会科学院とロシア人文科学基金は共同の研究機構の設立を進めている。また、朝鮮側はロシア極東地域に労働者を派遣して外貨を稼いでいる。

 (金正恩が姿を現さないことに関して)朝鮮が最低限の内部通報すら中国に対して行っていないということは想像しがたいことだ。そうでなければ、中国がこのように落ち着き払っているということはあり得ない。しかし、この隣国には量りがたい一面があることも否定できないところであり、そのことが正に中国が朝鮮半島問題を反省するに当たってのもっとも重要な着眼点、切り口であるべきだ。なぜならば、安全で安定したかつ予測可能な周辺環境をつくり出すに当たって、隣国の予測可能性ということは欠かすことのできない重要な条件の一つだからだ。20以上の中国の周辺諸国の中で、朝鮮は予測可能性がもっとも低い国だ。この予測不可能性ということは長期にわたり、朝鮮の核ミサイル政策、対外政策、国内政策、政情の安定性など多くの面で現れている。
  朝鮮の予測不可能性を減らし、半島がどのようなかたちで変化しても、中国が不意打ちを食らって対処できないという事態に到らないことを確保するためには、以下の4つの手段を総合的に運用するに帰着する。第一に朝鮮に対する直接の影響力を強めること、第二に、半島と直接関係する各国との意思疎通と協調を強化すること、第三に、半島の様々な可能性に対して十全のプランをつくり、予行演習を行っておくこと、第四に、半島の将来、なかんずく非核化への道筋について中国の根本的利益に合致する計画設計を行うことだ。
  朝鮮は選ぶ余地がない隣国であり、捨てることもできなければ、無理強いを強いることもできない。朝鮮内部の出来事と対外的姿勢が如何に不合理であれ、そこには自らの歴史的な発展の規則がある。朝鮮の身近な大国である中国としては、この規則を尊重しなければならず、無理やり介入してこの規則を打ち壊し、ねじ曲げるようなことをすれば、朝鮮がいずれの方向に向かうにせよ、予測不可能で、戦略的に最悪の結果をもたらすだろう。
  同様に、朝鮮にとっても中国は選ぶことのできない隣国だ。朝鮮内部の体制にいかなる変化が起きようとも、対外政策においていかなる調整が行われようとも、朝鮮が中国の身の回りから離れ、いずれかの国による中国抑止のコマとなることはあり得ないことだ。中国はこの自信を持つべきであり、さもないと、対朝鮮政策が硬直化し、受け身になることが避けられなくなる。
  朝鮮は、西側で考えられているような「わがままな子ども」ではなく、物事を行うに当たって考慮なしに動くことはかつてなく、その一切の行動は自らが置かれた国際環境に対する極度の不安全感に基づいている。朝鮮は、米韓日軍事集団の直接的脅威に直面していると考えており、しかも中露からは十分な安全保障が得られず、これこそが核開発にこだわり、経済開放に乗り出さない根本原因だ。

<馬暁霖文章>

 朝鮮の政体及び伝統的な特殊性と厳正な序列についてはよく知られているが、三代を経て育成された元首崇拝システムの内因性に関してはよく認識されていない。外部が朝鮮内政をどのように評価するかとかかわりなく、金日成時代に始まった指導者の威信と魅力は朝鮮においてしっかりした大衆的基礎を備えているのみならず、確固とした政治的及び信仰的な文化ともなっている。このような国情により、朝鮮はピラミッド型の超安定的な権力構造状態にあり、絶え間なく人事の再編が行われるとしても、それは巨大な信仰及び利益共同体内部における上部における個々の煉瓦のすげ替えに過ぎず、基礎部分の安定性とピラミッド全体の完全性には影響が及ばないのだ。
  朝鮮半島の現代史を回顧すると分かるのは、半世紀以上の試練によっても朝鮮が動揺したことがないということであり、この事実が示すのは、朝鮮は確かに「孤島」ではあるがいかなる荒波にも耐えうるということである。金正恩が政権に就いてから3年近くになり、権力基盤を再構築してうち固めており、人々に自分の足の状態が悪いことを公にするということは、絶大な自信の表れであるとともに、その後彼がしばらく姿を現さないことに対する理にかなった布石でもあったということだ。
  金正恩が政権を担ってから、東北アジアの地縁政治構造及び世界情勢には明らかな変化が生じているが、朝鮮は核保有政策を堅持しているために核交渉を行きづまりに追い込んでいるだけでなく、外交的にも窮地に置かれており、朝鮮の核問題は大国によって脇に追いやられ、ウクライナ危機やオバマの中東における反テロ戦争などのテーマによって陽の目が当たっていない。また、世界的な発言力が低下しているだけではなく、東北アジアにおける比重も昔ほどではなくなっている。如何にして世界の注目を引きつけ、硬直状態を打破し、東北アジアひいては世界の政治舞台の中心に立ち戻るかは、金正恩が頭を悩ましているところであるし、(活発な外交と彼自身が姿を現さなかったということの)問題意識の所在でもなかっただろうか。

<任衞東文章>

 中国にとって、朝鮮問題は重大な政治的戦略的問題である。朝鮮は社会転換の時期にあり、内部の問題が少なくないことは明らかだ。現在、外部勢力は中国の周辺(浅井注:香港の混乱もその一つと見なされています)でカラー革命を意識的に引き起こしており、朝鮮が免れることができるかどうかは注目に値する。中国としては朝鮮の現在の政治体制を断固守るという必要はないが、中国は一貫して各国人民が自らの発展の道筋を選ぶ権力を尊重しており、外部勢力が朝鮮内政に干渉することは許さないし、自らの発展モデルを強制することもない。
  中朝両国は政治交流を強化し、それぞれの国家経営管理の経験と教訓を分け合うべきだ。「朝鮮は言うことを聞かない」とか「恩知らず」とかの類の議論には批判を加えるべきだ。朝鮮を「恩知らず」と決めつけることは、客観的に言って、中国と周辺諸国とを分け隔て、中国を孤立させることになる。中朝両国が戦略的協調を進めるべきことは間違いなく、それは同志的な協議と平等な協力であって、覇権国とその従属国との関係ではない。
  事実において、中国社会全体としていえば、朝鮮問題に関する正論は雑音よりはるかに大きい。我々は、有害な議論が意識的に流され、拡大されることを防ぐべきだ。ネットの自由とネットの無政府主義とは同義ではない。同時に、朝鮮のありのままの状況を十分に報道し、デマや間違った認識に基づく世論の土壌を少なくする必要がある。
  グローバルな冷戦は終結して30年近くになるが、朝鮮半島の冷戦は終わっていないことを正確に認識するべきだ。いくつかの国々は、朝鮮に対して封鎖と制裁を行う一方で、朝鮮が対外開放しないと非難しているし、朝鮮に対して軍事的な脅威を及ぼしながら、朝鮮に対して武装解除を迫っている。また、半島の緊張をつくり出しておきながら、中国に対して朝鮮の自衛的な反応を抑え込むように要求してもいる。
  外部勢力が朝鮮半島の冷戦状態を維持する目的は朝鮮だけを狙っているのではない。したがって、本末転倒と因果関係をひっくり返すことを防ぐ必要がある。外部勢力が欲しているのは、半島問題の解決が朝鮮の核兵器をめぐって前進できないようにすることだ。朝鮮半島の安定を根本的に守るためには、半島の戦争状態を決定的に終結させて南北双方の自主平和統一を促進することが先決であり、それによって多の問題の解決のための道筋をつけることが不可欠である。

<高望文章>

 近年、朝鮮に関心を払う中国人はますます多くなっているが、その原因としては次の諸点が挙げられる。まず、朝鮮が隣国であることだ。第二に、朝鮮と中国とはかつて非常に似通っていたが、その後差異が際立ってきたことだ。第三に、朝鮮ひいては朝鮮半島を含む東北アジアの将来は中国の発展と切っても切り離せないからだ。ところが、朝鮮に関する分析はますます豊富になってきているが、本当に価値のあるものは驚くほど少なく、多くが一方的願望に過ぎない。朝鮮情勢が重大な転機にさしかかる度に、的外れな観測が次々と飛び出してくる。なぜこのような的外れな予測が出てくるのか。それは、彼らが朝鮮のロジックが分かっていないか、それを見ようともしないからだ。
  多くの中国人は、アメリカ人も欧州人も中国を理解していないために誤った判断、読み、誤解をすると常にいう。しかし話ははね返ってくるのであって、いったいどれだけの中国人が朝鮮のことを本当に分かっているだろうか。
大昔の情報がふさがれていた時代、多くの外国人は人民日報などを年月かけて読み込み、中国のロジックを読み解こうとしたものだ。今日でもそういう「良い」習慣を維持している人々もいる。一体中国人の中のどれだけの人々が、朝鮮中央通信や労働新聞の報道などを通じてもっとも基礎的に朝鮮のロジックを研究したことがあると言えるだろうか。中国人のほとんどは、朝鮮の報道及び分析において韓国や日本の中古品を引用するのが常であるが、この手のものはしばしば似て非なるものであり、ひどいときにはウソが混ざっている。この手の情報に頼り切って朝鮮を認識し、理解しようとする場合、見当外れを免れるとしたら非常に運が良いということだ。