点検・中朝関係

2014.09.15.

中朝関係について観察する上での私の主要な源は朝鮮中央通信WSの日本語版と中国の主要メディアWSの二つですが、最近違和感というか、気になる記事が目につくようになりました。とりあえずランダムに挙げると、相手国における大きな出来事(例えば、朝鮮の建国記念日、中国の8月3日に起こった雲南大地震)に際しての互いの対応・反応、ミヤンマーで開催されたASEAN外相会議における中朝外相会見、朝鮮による国連安保理における特定国批判、朝鮮側報道において朝露関係に関するものが多くなっていること(それとの対比において中朝関係に関するものが目立たない)などがあります。
  そこで、年初以来の中朝関係にかかわる報道をリスト・アップして本年に入ってからの中朝関係の推移を点検してみることにします。

1.出だしは順調だった中朝関係

中国が金正恩の訪中実現を朝鮮半島情勢に転換をもたらす上でのカギとして重視し、期待していたことは、年初早々(1月2日)の暁岸署名文章「2014年の中国周辺外交のチャンスと原点」において、朝鮮に関して次のように指摘したこと(特に強調部分に注目)からも窺えます。暁岸は国務院系列の中国網の常連執筆者で、彼の多くの文章の内容から、朝鮮問題に限らず広く中国の対外関係について、彼が党・政府の意向を十分に承知した上で文章を書いていることが分かります。また、読んでいただければお分かりになるように、今回の作業を通じて、中朝関係の節目、節目に暁岸署名文章が現れることにも気がつかされました。なお、引用文の強調はすべて私(浅井)によるものです。

  「2014年は朝鮮国内情勢及び朝鮮半島情勢における極めて重要な一年となるだろう。中国は朝鮮の生存と発展にとって選択の余地のない主要な頼りとする対象であり、朝鮮国内にいかなる変化が起ころうとも、朝鮮としては中朝間の戦略的相互約束に背くことも、中国の条理にかなった利益及び主張を無視することもできない。 国際社会が朝鮮を予測不可能と一貫して考えているなかでは、朝鮮との間で双方向コミュニケーションを行う基本条件が欠けている。中朝関係さらには半島情勢の挽回を推進することは、2014年の中国の半島政策が目指すべき方向だ。
中朝関係が低迷を脱し、挽回に向かうことは、中朝双方にとって必要であるだけでなく、朝鮮が困難な情勢にあるもとで中国が朝鮮に対する影響力を及ぼす上での重要なカードでもある。金正恩の訪中を実現することは形勢挽回の重要な標識となる。両国間の溝を埋め、金正恩の重要な訪問が成功し、中朝関係の今後の方向性を示すことができるようにしなければならない。朝鮮が改革を通じて国際社会に回帰する勇気を示し、核の活動を停止して6者協議に回帰する決意を表明することは、中国の対朝確信を増加することに資するだろう。
朝鮮の核計画はすでにあまりにも進みすぎてしまい、6者協議の「核放棄と平和との交換」(という目標)は維持しがたくなっている。朝鮮は無条件での対話回復を要求し、米韓は朝鮮が核計画を停止し、放棄した場合にのみ会談再開が可能という立場を堅持している。両者の立場の間で中間点を探し、会談を再開させ、双方が受け入れ可能な半島の非核化と平和を設定するためにどのように努力するかは、中国外交の設計力及び斡旋力を測るものとなる。習近平指導部が打ち出した「トップの設計とボトムの知恵との結合」という提起は中国の対朝鮮及び対朝鮮半島政策にも適用されるべきである。」

また、朝鮮の対中関係重視姿勢は、ソチ・オリンピック開幕行事に名誉ゲストとして参加した金永南委員長が、同地で習近平主席と会見し、「金正恩元帥が習近平主席に送る挨拶」を「丁重に伝え」、習近平が「これに深い謝意を表し、金正恩元帥に心からなる挨拶を伝えてくれることを頼んだ」旨、2月7日付朝鮮中央通信が報道したことからも分かります。ちなみに、中国新聞網は「金永南が習近平主席と会見し、友好的な会話を行った」と簡単に報じるにとどまりました(2月9日付)。
その直後から、中朝間であるいは朝鮮問題について活発な外交が行われました。
まず、2月12日に定例記者会見を行った中国外交部の華春瑩報道官は、質問に答える形で、「最近、外交部アジア司の責任者(邢海明副司長)が仕事で駐朝中国大使館に赴いた際、朝鮮外務省及び関係部門の責任者と接触し、中朝関係、半島情勢について意見交換を行った。これは正常な業務活動だ」と述べました。
王毅外交部長は2月14日に、訪中したケリー国務長官と会談した際、「中国は半島に混乱や戦争が起こることを絶対に許さない」とするかつてない明確な表現で、強い意思表明を行うとともに、6者協議の早期再開に強い意欲を示しました。この発言の趣旨について、2月17日付の暁岸署名文章「朝鮮半島情勢の霧を払うためには困難な協調が必要」は、「この発言はアメリカ及びその同盟国向けであるとともに、朝鮮に向けたものでもある」と解説しました。
2月17日から20日にかけて、中国外交部の劉振民次官が朝鮮を訪問しました(劉振民は訪朝直後に訪韓し、そのシャトル外交にも注目が集まりました)。この訪問について華春瑩報道官は、「朝鮮外務省の要請に応じたものであり、…中朝関係及び地域情勢などの共通の関心がある問題について意見交換を行うもので、ルーティンな交流だ」(2月17日付外交部WS)と簡単に説明しました。しかし翌日(18日)付の新華網は、「この訪問は金正恩が張成沢を処刑した後に中国から朝鮮に赴いた最高ランクの特使だ。張成沢はかつて中朝対話においてカギとなる役割を果たしていた」と報じて、その持つ意味を強調しました。
より注目する必要があるのは、同じく2月18日付の中国網が掲載した暁岸署名文章「朝鮮半島情勢緩和の道筋を丹念に構築する」です。今読み返すと、極めて重要な内容があることが認識できます。主な内容を紹介します。

「劉振民の訪朝は中朝が正常な両国関係回復を推進する上での重要な一歩であるとともに、朝鮮半島情勢の挽回を推進するために中国がとった積極的行動でもある。中国がケリー訪中直後に劉振民訪朝のニュースを公表したということは、中米間の朝鮮半島情勢にかかわるやりとりを朝鮮側に通報することを意味するとともに、ワシントンからのメッセージを朝鮮に伝達するという可能性も排除されない。
しかし、劉振民訪朝を朝米関係斡旋の旅とだけ理解するのは狭すぎる。劉振民の主要かつ中心的な任務は中朝関係改善の具体的問題について朝鮮側と協議することにあると信じるべき理由がある。過去において中朝関係を低迷から抜け出させる任務を担ってきたのは中国共産党対外連絡部だったのに、今回は外交部が表立って直接の役割を担っているということは、正常な国際関係の方式で対朝関係を扱いたいという中国の朝鮮に対するシグナルである。
朝鮮の第3回核実験以来、半島情勢は激動して不安定化し、中国は深刻な影響を蒙り、中朝関係は谷底に落ち込んだ。6者協議を再開し、半島情勢を挽回する上で、中国は他人任せにできない責任があり、関連する仕事を行うに当たっては何よりもまず中朝関係の挽回から始めなければならない。中朝関係が長期にわたって冷え込むことは、中国が半島で全方位の影響を及ぼすための主要な支えを深刻に弱めてしまう。
劉振民の訪朝によって半島情勢の緊張が直ちに挽回されると期待する必要はない。食事は一口ずつ、道は一歩ずつという道理は今日の朝鮮半島情勢には特に当てはまるのであり、今回の訪問の主要な意義は、中朝がさらにハイ・レベルの相互訪問・交流を行い、双方がさらに広々としたスペースにおいて相互コミュニケーションを行うためのより堅実で便宜なステップを設けることにあると言うことができる。この訪問及び王毅外交部長がケリーに対して行った立場表明は、中国がチャンスをつかんで自ら責任を担い、敢えてこのシャトル外交における中心となろうとしていることを国際社会に明確に知らしめるものだ。
アメリカは、朝鮮が核計画を停止し、放棄するという具体的ステップを取る状況下においてのみ朝鮮との会談再開に応じるとし、しかもその会談はマルチであるべきで、バイはあり得ないという立場にこだわっているが、こういう硬直した非現実的な態度は調整する必要がある。朝鮮は、事実上の核保有国という地位を各国に受け入れさせるという点でどれほどの可能性があるかについて慎重に考慮するべきであり、ましてや1年前の時点(核実験を行った時点)にまで戻ろうとするべきではない。
中国が正にやろうとしていることは、中朝関係及び朝鮮半島の将来に向けて「中国スタンダード」の確立をアレンジすることだ。この「スタンダード」は同時にまた「中国のボトムライン」でもあり、各国によって尊重されるべきものだ。」

劉振民訪朝の結果については、中朝双方が極めて肯定的な評価を行ったことが注目されます。2月20日の定例記者会見で華春瑩報道官は、記者の質問に答えて次のように異例とも言えるほど詳細にその内容を紹介しました。

「劉振民次官は、朴義春外相、金亨俊、李勇浩両次官、朝鮮党中央国際部金成男副部長、国会経済開発委員会の李鉄石副委員長と個別に会談し、中朝関係、朝鮮半島情勢等の問題について突っ込んだ意見交換を行った。
劉振民は次のように述べた。中国は、半島非核化の目標を実現し、半島の平和と安定を維持し、対話と協議を通じて問題を解決し、半島に混乱と戦争が起こることを絶対に許さない。中国は朝韓関係の改善を支持し、最近の双方の対話が進展を見ていること(浅井注:年初の金正恩の対話提起に韓国が反応していたことを指す)を積極的に評価する。関係各国の共同の努力によって半島情勢が緊張緩和に向かい、半島の平和と安定を維持し、早期に6者協議再開の条件を作ることを希望する。
朝鮮側は次のように述べた。朝中の伝統的な友好協力関係をうち固め、発展させることは朝鮮の党及び政府の確固として変わらない立場だ。朝鮮は、中国とともに両国の各分野での交流と協力を推進し、情勢を緩和するために6者協議再開に最大限の努力を行い、半島地域の平和と安定を共同で維持することを願っている。」

また、2月21日に朝鮮外務省スポークスマンは朝鮮中央通信記者の質問に答える形で次のように述べました(翌22日付朝鮮中央通信)。

「劉振民副部長を団長とする中国外交部代表団が2月17日から20日まで朝鮮を訪問して外相を表敬訪問し、外務省と当該機関の幹部たちに会って会談と談話を行った。
会談と談話では、朝中関係と地域情勢、6者会談の再開など相互の関心事となる問題に対する深みのある意見交換を行い、共同の認識を達成した。
双方は、伝統的な朝中友好をいっそう発展させ、そのために今年、両国間の高位級往来を強化し、朝中外交関係の設定65周年を意義深く記念することを論議した
朝鮮半島と地域の情勢に関連して中国側は、新年に入って朝鮮側が重大措置を通じて情勢の安定と北南関係改善のための誠意を十分に示したと肯定的に評価し、今後の情勢の発展は米国と南朝鮮の態度にかかっているという朝鮮側の立場が強調された。
朝中双方は、今後も朝鮮半島と地域の平和と安定を守り、6者会談の再開のために共同で努力することにした。」

朝鮮側の発言で特に注目されるのは、「今年、両国間の高位級往来を強化し、朝中外交関係の設定65周年を意義深く記念することを論議した」と指摘したことです。朝鮮側も劉振民訪朝を肯定的に位置づけるだけではなく、ハイ・レベルの交流、朝中外交関係65周年を特別扱いする姿勢を示したことです。

2.米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」開始後の中朝関係

朝韓の対話に向けた動きは、2月24日に米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」及び「フォール・イーグル」が開始されることによって暗転し、朝鮮は同27日に4発の短距離ミサイルを発射したのを皮切りに、米韓に対抗する姿勢を強めていきました。しかし、このことは中朝関係に直ちに影響を与えるものではありませんでした。
3月1日に中国の昆明で起こったテロ事件に対し、朝鮮の朴奉珠首相は同4日に李克強首相に丁重な慰問電を送りました(3月5日付中国新聞網及び朝鮮中央通信)。また、国連人権理事会が朝鮮の人権状況を討論することに関するコメントを問われた洪磊報道官は、「人権問題を政治化し、あるいは人権問題に名を借りて他国の内政に干渉することには反対だ」と答えました(3月18日付中国外交部WS)。洪磊報道官はまた、やはり記者の質問に答えて、3月17日に6者協議を主管する武大偉特別代表が同17日に朝鮮を訪問し、朝鮮半島情勢と6者協議再開について朝鮮側と協議したことを明らかにしています。
また定例記者会見で、韓国政府が朝鮮の短距離ミサイル発射は安保理決議違反だとしていることに関するコメントを求められた中国外交部の秦剛報道官は、「中国は関係国が情勢緩和に有利になることを行うようにして、半島の平和と安定を維持することを呼びかける。これが大局であり、各国の利益に合致する。この流れが維持されることを希望する」と述べ、間接的表現であるにせよ、むしろ韓国の動きを批判しました(3月7日。3月26日の定例記者会見における洪磊報道官発言も同旨。ちなみに、ロシア外務省WSも同日、中国外交部報道官発言内容と同様のコメントを発表したことが3月27日付人民網によって紹介されています)。
全国人民代表大会開催中に記者会見を行った王毅外交部長も、緊張を深める半島情勢に対する見方と対処方針を問うた韓国記者に対して、「非核化という坂を上る、相互信頼が欠けているという窪みを跨ぐ、対話による解決という正道を歩む」ことで半島問題に対処するべきだと、韓国政府の行動を戒める発言を行いました(3月8日付中国外交部WS)。
  中国(及びロシア)政府の以上のような慎重姿勢にもかかわらず、アメリカの緊急要求で3月28日に開催された安保理の非公式協議の結果、朝鮮のミサイル発射を非難する簡潔な議長声明が発表されました。この問題について3月28日の定例記者会見でコメントを求められた洪磊報道官は、「現在の情勢の下では、各国はなるべく朝鮮半島の平和と安定にとって有利になることを行うべきだ」というそれまでの立場を繰り返し述べました。
  しかし、このような中国政府の対応には明らかに矛盾があります。もし、常任理事国の中国が強硬に反対したならば安保理議長声明の発表はあり得ないはずです。これまでの朝鮮の対応ぶりからすれば、如何に内容、スタイルが抑制されたものであるにせよ、議長声明を発出すること自体が朝鮮の強烈な反発を招くことは明らかです。議長声明発出を黙認してしまった後で、中国外交部報道官が従来どおりの立場を繰り返すというのは、朝鮮からすれば納得がいかないことでしょう。
果たせるかな、3月30日に朝鮮外務省は声明を発表して、「国連安全保障理事会が米国のヒステリックな核戦争演習は知らないふりをし、それに対応したわが軍隊の自衛的なロケット発射訓練は いわゆる「決議違反」「国際平和と安全に対する脅威」に仕立てて「糾弾」し、「適切な措置」をまたもや取ろうとするのは絶対に許せない行為である」と激しく非難し、アメリカの朝鮮の孤立、圧殺を図る行動に対して、朝鮮としては「より多種化した核抑止力を相異なる中・長距離の目標に対して相異なる打撃力で活用するための各種の形態の訓練」「核抑止力をさらに強化するための新たな形態の核実験」で対抗することを明らかにしました(3月31日付の朝鮮中央通信は、「より活発になる朝鮮の宇宙開発」と題する記事で、「平等と互恵、相互補完の原則で国際機構、他国との協力を実現し、宇宙開発および利用に関する国際法と秩序を尊重し、宇宙活動分野で選択性と二重基準の適用、宇宙の軍事化に反対するということに関する共和国の原則的な立場」を再確認する形で、人工衛星(長距離ミサイル)開発を続ける姿勢も示しました)。
この朝鮮外務省声明について、3月31日の定例記者会見で洪磊報道官は、「現在の朝鮮半島情勢はかなり脆弱であり、半島の平和と安定を維持することは各国にとっての利益である。関係国が冷静と抑制を保ち、半島の平和と安定のためにならないことをしないことを促す」と述べ、情勢悪化に対する危機感を示しました(ロシア外務省WSも同日同様の立場を表明したことを4月1日付新華網が報道しました)。
しかし、核実験を排除しないとした朝鮮外務省声明に対して、中国メディア及び専門家は厳しい反応を示しました。
即ち、4月3日付の環球時報社説「「核兵器を持つことがすべて」とする朝鮮の考えは幻想である」は、朝鮮の核開発がさらに進むとしても対米核抑止力を構築するようになることはあり得ないと断言しました。さらに社説は、「朝鮮の核問題が中米間に一定の意見の違いを招いたとしても、朝鮮の操作によって中米対決に変化させ、朝鮮が核兵器を持ったままで「売り抜ける」戦略的チャンスが生まれるなどという期待を持っているならば、それは速やかに捨てるべきだ」と指摘して、朝鮮が核を放棄することのみが国際的に生き残る道だと決めつけたのです。 環球時報社説ほどに激越な調子ではありませんが、4月4日付の中国網が掲載した暁岸署名文章「鴨緑江新大橋竣工が啓示すること」も、これまでに紹介した暁岸の文章とは異なり、中朝間の立場の違いを強く反映する次のような内容でした。

「立春以来、中国政府は対朝関係改善のために一連のイニシアティヴをとってきた。朝鮮は中国の苦心を理解し、中国側と足並みを揃えるべきであり、そうすることで根本的に困難から抜け出すことに有利になる。しかし困惑することに、朝鮮は最近数週間にわたって極めて曖昧なシグナルを外部に向かって発出し、「新型の核実験を行うことを排除しない」に至っては、緊張緩和の軌道に向かい始めた半島情勢を「寒の戻り」に遭遇させている。朝鮮としては米韓の合同軍事演習と対抗しているつもりかもしれないが、米韓が中国の要求に応じて軍事演習の刺激性を押さえている状況においては、朝鮮のやり方はいささか正当性に欠けている。
ひょっとすると、朝鮮は中国が継続して朝鮮の核放棄を促していることに対する不満を発散させているのかもしれない。その可能性が込められている可能性は排除しない。そうであるとしたら、中国が半島問題に対処する上での2つの互いに矛盾しないボトムライン、即ち、中国の門口で絶対に乱を生じさせない、そして半島の南北いずれが核兵器を保有することにも断固反対するということを明確に理解するべきだ。朝鮮がこの2つのラインを踏みつける場合には、朝鮮の顔色如何はもはや過去のように中国の戦略的決断に影響を与えることはあり得ない。朝鮮は世界の大勢をしっかり見て、その基本的趨勢を見極めるべきであり、自己中心の一方的思考をするべきではない。
  欧州では米露がウクライナ問題でやり合い、アジアでは中米が新型大国関係を構築しようとしている。ということは、アメリカが短期的には半島で大きな事件を引き起こすはずがないということであり、また、だからといって、朝鮮の核恫喝のエスカレーションに対して態度を軟化させることもあり得ない。ロシアは中国との戦略的協力をさらに強化し、半島問題を含めてよりハイ・レベルの共通政策を採用するだろうから、中国に先がけて朝鮮の要求を引き受けるということもあり得ない。
  中国が対米関係を発展させるために朝鮮の利益を売り渡すことはあり得ない。なぜならば、そんなことをすれば、結局は中国自身の利益を売り渡してしまうことになるからだ。しかし、半島が戦乱に陥ることと朝鮮の核問題がコントロールできなくなることを防止することは中米共通の利益であり、このことについては朝鮮が自らの置かれた位置を判断する上で必ず踏まえなければならない。
  朝鮮が大国関係を自らに役立てるべく利用しようと考えるのであれば、自らが放り投げた非核化というテコを拾い上げなければならず、そうすることが中朝関係の正常化を回復する上での前提なのだ。竣工間際の鴨緑江大橋と同じく、中国は常に朝鮮が根本的な戦略的利益を実現することを新しい情勢に適合させるようにする準備ができており、密接な相互依存関係にある朝鮮と正常な関係を確立させようとする中国の誠意には疑いをはさむ余地はない。」

4月9日に金正恩は国防委員会第一委員長に再選されました。そして4月13日付の朝鮮中央通信は、同11日に習近平総書記から金正恩宛に祝電が寄せられたことを報道しました(5月9日付朝鮮中央通信は、金正恩第一国防委員長に対する各国首脳の祝電に対して答電を送ったことを報道し、真っ先に習近平の名を挙げました)。しかし、私がチェックした限りでは、中国メディアではこのことは紹介されませんでした。
  朝鮮に好意的だった姿勢から中立的姿勢への中国側のスタンスの変化は、4月15日に行われた中国外交部の定例記者会見におけるか春瑩報道官の発言に反映されています。同報道官は朝鮮半島情勢の新たな緊張に対するコメントを問われ、「中国は情勢の緊張エスカレーションをもたらすいかなる行為にも反対であり、合同軍事演習にも賛成しないし、核実験の威嚇にも賛成しない」と述べました。

3.オバマ訪韓問題と中朝関係

中朝関係にさらに感情的かつ深刻な要素を持ち込んだのはオバマ大統領の訪韓問題だったのではないかと思われます。
  4月25日のオバマ訪韓を前にして、4月22日に韓国国防部は朝鮮が核実験を近く行う可能性があると発表しました。翌23日に朴槿恵大統領は習近平主席に電話し、オバマ訪韓中に朝鮮が核実験を行わないことを望むと述べました。これを受けて、4月24日の中国外交部の定例記者会見で、中国は朝鮮に核実験を思いとどまるように働きかけたかという質問が出されたのに対して、秦剛報道官は直接答えませんでしたが、働きかけをしなかったとは言いませんでした。
  4月24日付の中国網は、暁岸署名文章「朝鮮は第4回核実験を行うのか」を掲載しました。習近平の対応については触れていませんが、文章最後の次のくだりは、習近平指導部が朝鮮に対して何らかの働きかけを行う可能性を示唆するものでした。

  「中朝関係は新たな核実験による激動には耐えられない。中国は朝鮮の核に関する動きに対して明確な警告を発するべきだ。中国は、指導層から党政部門さらには民衆レベルに至るまで、朝鮮に対する信頼が崩壊する。これは朝鮮にとって耐えられないことであり、朝鮮としてはこのことに対してしっかりと認識するべきだ。中朝関係が失われれば、朝鮮は米朝関係正常化の門を開ける術もなくなる。」

しかし、中国の朝鮮に対する働きかけはまったく効果がなかったように思われます。そのことを強く示唆したと思われるのが、5月5日付朝鮮中央通信の「朝鮮の「政治力学」」と題する文章でした。この文章は、「米国が圧力を加えるほど朝鮮人民はさらに強くなる、米国が核兵器で脅かせば脅かすほど朝鮮人民の打撃力もいっそう強くなる、というのが朝鮮の「政治力学」である」とした上で、「平和的衛星の打ち上げを弾道ミサイルの発射と言い張り、制裁と圧迫の度合いを高め続けた米国の白昼強盗さながらの行為に立ち向かって朝鮮が3回にわたる核実験を成功裏に断行しながら核抑止力を絶え間なく強化してきたのがそれに対するはっきりとした証明である」と述べています。
  私はこのくだりが極めて意味深長だと思います。私がこの「コラム」でかねがね指摘しているように、朝鮮の行動には「朝鮮の人工衛星打ち上げ-安保理の対朝非難(決議・議長声明)-朝鮮の対抗的核実験」というパターン・サイクルが明確にあります。上記のくだりは、朝鮮の「政治力学」として、私が観察してきた限りでは始めて、朝鮮自身がそのパターン・サイクルを確認したものではないでしょうか。
  このパターン・サイクルを踏まえるならば、オバマ訪韓に対して朝鮮がぶつける可能性があるとすれば人工衛星打ち上げであって核実験ではありません。私に言わせれば、韓国側の言い分(朝鮮が第4回核実験をするかもしれない)を真に受け、朴槿恵大統領の習近平宛の電話(懸念表明)を受けて、中国が朝鮮に対して慎重な対応を申し入れたとするならば、それは朝鮮の「政治力学」を正確に理解していないという点で初歩的な誤りであるだけでなく、韓国側の意向に沿って朝鮮に対して外交的圧力をかけたという点で、朝鮮の感情的な反発は必至だったということです。
  正直言って、私は朝鮮中央通信のこの「政治力学」にかかわる文章を読んだ時は、あまり見慣れない内容だなといぶかしく思うぐらいで、それ以上深くは考えが及びませんでした。しかし、オバマ訪韓に先だった韓国国防部と朴槿恵の言動及びこれらに対する中国側の反応を改めて読み返すことにより、その意味するところが理解できたように思います。
  ただし、まだこの時点では中朝関係はなんと開示されていたように思われます。
  例えば、5月に中国・新疆で起こった爆弾テロ事件に関し、朝鮮の朴奉珠首相は5月23日に立国強首相宛に慰問電を送りました(5月24日付朝鮮中央通信)。
  また、6月4日付朝鮮中央通信は、「つまらない虚勢」と題する論評を発表し、中露関係の親密化に対してアメリカがことさらに何気ないフリを示していることを「不安感を隠すためのつまらない虚勢」と決めつけました。しかしこの論評はむしろ、「(中露)両国は、地域紛争問題を通じて漁夫の利を得ようとする米国の策動にも共同で立ち向かっている。シリア問題に関連して国連安保理で共同で拒否権を行使して米国の反シリア策動に打撃を加えた。両国間の密接な関係は、大勢の推移と各国の政治的利害関係から発した相互関係発展の肯定的結果である。それは、米国の覇権主義的対外政策に対する甚大な打撃である」として、中露関係の緊密化を肯定的に評価している点に、私としては興味深いものを感じました。私の承知する限り、朝鮮が国際情勢の動向についてコメントを加えること自体が少ないですし、そういう中で中露関係の動向を好意的に論評しているのは、私には珍しく思われるのです。それはともかく、朝鮮が完全に中国を見限っていたわけではないことが窺えるでしょう。
  6月27日、朝鮮政府と中国政府間の元汀―圏河の新しい国境橋の共同建設と管理・保護に関する協定が平壌で締結されました(同日付朝鮮中央通信)。

4.国連安保理の「一部の定見のない国々」に対する批判

事態の決定的悪化をもたらしたのはまたもや安保理の行動でした。7月17日に国連安保理は非公式会合で朝鮮の短距離ミサイル発射を安保理決議違反として朝鮮を批判しました。これに対して朝鮮外務省は、同19日に声明を発表して安保理の行動を非難し、「朝鮮半島で不測の事態が招かれる場合、その全責任はわれわれに不可避な選択を強要した米国と米国を庇護した国連安保理が負うことになるであろう」と警告しました。
この声明では安保理非難にとどまっていましたが、7月21日付の朝鮮国防委員会政策局スポークスマンの談話は、安保理非難にとどまらず、次のように「一部の定見のない国々」に対する非難に踏み込むものでした。

「(米韓が)公正さを失って久しい国連安全保障理事会を推し立てて騒ぎ立てながら、世論をまどわして拡散させる境地に至った。このような奇怪な茶番劇に一部の定見のない国々も盲従して米国の鼻持ちならない行動に追従しながらわれ先に哀れな境遇に至った朴槿恵を抱いてみようとたわいなく気を使っている。」

7月24日付の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』も署名入り論説で、安保理の行動を「徹頭徹尾、米国の対朝鮮敵視政策の所産として不法さの極致をなす」と糾弾した上で、次のように述べています。

「悲劇は、世界の公正な秩序樹立の先頭に立たなければならない国々まで誤っているということをはっきり知っていながらも、自国の利害だけを優先視して黙認する態度を取ったので米国が日を追って横暴になっていることである。」

「一部の定見のない国々」「世界の公正な秩序樹立の先頭に立たなければならない国々」というように複数形になっていますので、可能性としては中国及びロシアが朝鮮の非難の対象になっているとみることが一応可能です。しかし、後で紹介しますように、朝鮮メディアにおける朝露関係の扱いは7月以後も増加しており、しかも積極的な内容のものです。そのことを勘案すると、この2つの文章における批判対象が中国であることは明らかです(ちなみに、中国のメディアは、朝鮮政府当局の声明や談話の類についてはなんらかの形で報道するのが常ですが、私がチェックした限りでは、以上の二つについてはなんらの紹介もありません)。
また、「一部の定見のない国々」が「朴槿恵を抱いてみようとたわいなく気を使っている」というくだりが、オバマ訪韓を前にした前述の中韓間のやりとり及び中国の朝鮮に対する外交的働きかけを踏まえた、痛烈かつ皮肉たっぷりな当てこすりであることも見えてくるというものです。

5.8月以後の中朝関係

8月3日に中国・雲南省で発生した大地震に対して、各国は中国に対して慰問電を送ってきたことが中国外交部WSで3日間(8月5,6,8日)にわたって紹介されました。その中には、ヴェトナム(共産党総書記、国家主席、首相及び国会議長の連名)、ウクライナ(大統領及び首相)、日本の安倍首相、フィリピン、シリア(大統領)などが含まれています。しかし、朝鮮については言及がありませんでした(アメリカ及びロシアについても言及なし)。
  8月10日付の中国外交部WSは、ASEAN外相会議に出席した王毅外交部長が同日、朝鮮の李洙墉外相と会見し、「二国間関係及び共通の関心をもつ問題について突っ込んだ意見交換を行った」と紹介しました(もっとも、その紹介の仕方はごく簡単で、8月8日に王毅が韓国の尹炳世外相と行った会見に関する同WSの紹介がかなり詳しいのと比較すると、その落差は否応なしに目につくものです)。ところが、8月11日付の朝鮮中央通信は、次のように李洙墉外相の動静を報じましたが、10日に日本の岸田外相と会見したことについては触れているのに、王毅との会見には言及していません。

  「ミャンマーのネピドーで開催されている東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議に参 加中の朝鮮代表団団長の李洙墉外相は9日、マレーシア、インドネシア、スリランカ、カナダ、ブルネイの外相、カンボジア副首相兼外相、モンゴル外相、ロシ ア外務次官、タイ外務省の常任書記に各々会って双務関係を討議した。10日、李洙墉外相は日本の外相に会って談話を交わした。」

また、9月9日は朝鮮の建国66周年記念日でしたが、興味深かったのは、ロシアと中国の祝電でした。ロシアは、プーチン大統領が金正恩国防第一委員長宛に祝電を送ったのに対して、中国の場合は、「朝鮮労働党の金正恩第1書記と最高人民会議常任委員会の金永南委員長、朴奉珠内閣総理に中国共産党中央委員会の習近平総書記と李克強国務院総理、全国人民代表大会常務委員会の張徳江委員長から8日、祝電が寄せられた」(9月9日付朝鮮中央通信)と紹介されたことです。しかも朝鮮中央通信の見出しは、前者が「金正恩国防第一委員長にロシア大統領から祝電」であって内容どおりでしたが、後者の場合は「金正恩第一書記に中国の党・国家の指導者たちから祝電」とされており、宛先が金正恩一人となっていて祝電内容を正確に反映するものにはなっていません。朝鮮の支配体制について熟知している中国が敢えて以上の内容の祝電を送ったという事実にも微妙な中朝関係の現状を窺わせます。

6.緊密さを増す朝露関係

この文章は中朝関係を点検することが主眼なのですが、中朝関係の微妙さを窺うための比較材料として、中朝関係及び朝露関係の動きを時系列的にまとめておきます。

  1月22日 朝鮮対外文化連絡委員会、朝中友好協会中央委員会及び中国文化部、駐朝中国大使館共催の中朝友好2014年春節合同公演(同日付国際在線及び朝鮮中央通信)
  1月23日 「2014年朝中友好旧正月交歓会が、共和国対外文化連絡委員会、朝中友好宅庵協同農場と中国文化部、駐朝中国大使館の共同名義により23日、順安区域の朝中友好宅庵協同農場で行われた。」(1月24日付朝鮮中央通信)
  1月27日 「チュチェ103(2014)年の新年に際して、朴宜春外相が27日、駐朝ロシア大使館員との交歓会を催した。」(1月28日付朝鮮中央通信)
  同日 「チュチェ103(2014)年の新年に際して、劉洪才・駐朝中国大使が27日、外務省幹部との交歓会を催した。」(1月28日付朝鮮中央通信)
  1月29日 駐中朝鮮大使、外国人記者会見を行い(韓国メディアは前例がないことと報道)、6者協議再開支持、「朝鮮半島非核化は朝鮮の確固とした目標、しかし一方的核放棄はあり得ない」と発言(同日付中国新聞網)
  2月5日 「最高人民会議常任委員会の金永南委員長が、ロシアのソチで催される第22回冬季オリンピック競技大会の開幕行事に名誉ゲストとして参加するために5日、平壌を出発した。」(同日付朝鮮中央通信)
  2月7日 駐朝ロシア大使、朝鮮に対する5万トンの食糧支援を表明(同日付中国新聞網)
  同日 「金正恩元帥がプーチン大統領に送るあいさつを金永南委員長が丁重に伝えた。プーチン大統領はこれに深い謝意を表し、金正恩元帥に心からなるあいさつを伝えてくれることを頼んだ。金永南委員長は、プーチン大統領と友好的な雰囲気の中で伝統的な朝露協力関係を発展させることに関する談話を交わした。」(同日付朝鮮中央通信)
  同日 「金永南委員長は、中国の習近平国家主席に会って友好的な雰囲気の中で談話を交わした。金正恩元帥が習近平主席に送るあいさつを金永南委員長が丁重に伝えた。習近平主席はこれに深い謝意を表し、金正恩元帥に心からなるあいさつを伝えてくれることを頼んだ。」(同日付朝鮮中央通信)
  2月11日 「チュチェ103(2014)年の新年に際して、朝鮮外務省は11日、駐朝中国大使館員との交歓会を催した。」(同日付朝鮮中央通信)
  2月12日 中国外交部の華春瑩報道官、外交部アジア局副司長の朝鮮訪問と中朝外交接触を認める発言(同日付中国外交部WS)
  2月13日 駐露朝鮮大使、「朝鮮は本年にロシアとの間でハイ・レベルの代表団相互訪問を計画している」と発言(2月14日付中国新聞網)
  2月17日 華春瑩報道官、2月17-20日に外交部の劉振民次官が訪朝すると発言(同日付外交部WS。 22日付朝鮮中央通信も言及)
  3月5日 朝鮮の朴奉珠首相、中国・雲南の地震について李克強首相に慰問電(同日付中国新聞網及び朝鮮中央通信)
  3月17日 「武大偉・中国政府朝鮮半島問題特別代表と一行が17日、平壌入りした。」(同日付朝鮮中央通信。3月19日に中国外交部洪磊報道官も確認)
  3月19日 「朝鮮とロシア間の経済文化協力協定の締結65周年に際して、アレクサンドル・ティモニン駐朝ロシア大使が19日、平壌の大同江外交団会館で宴会を催した。」(3月20日付朝鮮中央通信)
  3月21日 「朝鮮の李龍男貿易相とロシア・タタルスタン共和国のルスタム・ミンニハノフ大統領間の会談が21日、平壌の万寿台議事堂で行われた。」(3月22日付朝鮮中央通信)
  3月22日 「朝鮮最高人民会議常任委員会の金永南委員長は22日、平壌の万寿台議事堂で表敬訪問したロシア・タタルスタン共和国のルスタム・ミンニハノフ大統領と一行に会って談話を交わした。」(同日付朝鮮中央通信)
  3月24日 「朝鮮労働党とロシア共産党間の協力に関する議定書が24日、平壌で調印された。」(同日付朝鮮中央通信)
  3月26日 「朝鮮政府とロシア政府間の貿易、経済・科学技術協力に関する会談録が26日、平壌で調印された。」「朝鮮の朴奉珠内閣総理が26日、平壌の万寿台議事堂で、表敬訪問した朝露政府間の貿易、経済・科学技術協力委員会ロシア側委員長のアレクサンドル・ガルシュカ極東発展相と一行に会って友好的な雰囲気の中で談話を交わした。」(同日付朝鮮中央通信)
  4月1日 「朝鮮とロシア間の経済的・文化的協力協定締結65周年に際して、アレクサンドル・ティモニン駐朝ロシア大使と大使館員が1日、南浦市内の各所を参観した。」(同日付朝鮮中央通信)
  4月11日 「共和国国防委員会第1委員長、朝鮮人民軍最高司令官の金正恩・朝鮮労働党第1書記に、中国国家主席、中国中央軍事委員会主席の習近平・中国共産党中央委員会総書記から11日、祝電が寄せられた。」「金正恩元帥が共和国国防委員会第1委員長に推挙されたことを祝って、元帥に中国政府から花かごが寄せられた。」(同日付朝鮮中央通信)
  4月24日 「朝鮮国際貿易促進委員会とロシア・サハリン州政府間の貿易経済協力共同実務グループ第7回会議の議定書が24日、平壌で調印された。」(同日付朝鮮中央通信)
  4月28日 「朝鮮の盧斗哲・内閣副総理とユーリー・トルトネフ・ロシア政府副首相兼極東連邦管区大統領全権代表との会談が28日、平壌の万寿台議事堂で行われた。」「朝鮮貿易省とロシア・アムール州政府間の貿易経済協力に関する合意書が28日、平壌の万寿台議事堂で調印された。」「ロシア政府が朝鮮に50両の消防車を寄贈した。寄贈式が28日、平壌で行われた。」(同日付朝鮮中央通信)
  4月29日 駐韓中国大使、韓国主要メディアとの懇談会で、金正恩の訪中の可能性に関して、双方指導者の相互訪問実現に関しては、政治的条件のみならず国際的雰囲気をも考慮する必要があると発言(同日付人民網)
  同日 「朝鮮の朴奉珠内閣総理は29日、平壌の万寿台議事堂で表敬訪問したユーリー・トルトネフ・ロシア政府副首相兼極東連邦管区大統領全権代表と一行に会って談話を交わした。」(同日付朝鮮中央通信)
  4月30日 「共和国最高人民会議常任委員会の金永南委員長は30日、平壌の万寿台議事堂で表敬訪問したユーリー・トルトネフ・ロシア政府副首相兼極東連邦管区大統領全権代表と一行に会って談話を交わした。」(同日付朝鮮中央通信)
  5月5日 プーチン大統領、朝鮮の対ソ連債務100億米ドルの取り消し協定の批准に署名。残りの10.9億ドルについては20年で償還(5月6日付環球網)
  5月23日 「朴奉珠内閣総理は最近、中国の新疆ウイグル自治区のウルムチで発生した爆弾テロ事件によって多くの人命被害が出たことで李克強・中国国務院総理に23日、慰問電を送った。」(5月24日付朝鮮中央通信)
  6月5日 ロシアの極東発展部長、朝鮮の対ソ連債務100億ドルの帳消しを受け、朝露間貿易額が現在1.12億米ドルとし、将来的に10億ドルまで伸びると表明(同日付中国新聞網及び6日付羊城晩報)
  6月19日 「朝鮮労働党の金正恩第1書記にロシア自由民主党のV・V・ジリノフスキー委員長が19日、祝電を寄せてきた。」(6月24日付朝鮮中央通信)
  6月26日 「訪朝中のロシア国防省中央軍楽団の初の公演が26日、東平壌大劇場で行われた。」(同日付朝鮮中央通信)
  6月27日 「朝鮮政府と中国政府間の元汀―圏河の新しい国境橋の共同建設と管理・保護に関する協定が27日、平壌で締結された。」(同日付朝鮮中央通信)
  6月28日 「朝鮮人民軍軍楽団、ロシア国防省中央軍楽団、朝鮮人民内務軍女性吹奏楽団の合同市街行進・軍楽礼式が28日に平壌で行われた。」(同日付朝鮮中央通信)
  6月29日 「朝鮮人民軍軍楽団とロシア国防省中央軍楽団の合同公演が29日、東平壌大劇場で行われた。」(6月30日付朝鮮中央通信)
  7月2日 「朝鮮人民軍の黄炳瑞総政治局長(朝鮮人民軍次帥)が2日、訪朝中のロシア連邦武力軍楽局長兼軍楽総指揮者のワレリー・ハリロフ氏が率いるロシア国防省中央軍楽団の主要指揮メンバーと俳優に会った。」「朝鮮国防委員会がロシア国防省中央軍楽団のために2日、宴会を催した。」(7月3日付朝鮮中央通信)
  7月8日 「金正恩・朝鮮労働党第1書記にロシア共産党中央委員会のゲンナジー.ジュガーノフ委員長から8日、(金日成同志の逝去20周忌に際して)電文が寄せられた。」(7月10日付朝鮮中央通信)
  同日 「金正恩・朝鮮労働党第1書記に公正ロシアのS・M・ミロノフ委員長から8日、(金日成同志の逝去20周忌に際して)電文が寄せられた。」(7月16日付朝鮮中央通信)
  7月18日 朝露協力計画に基づく羅津港3号埠頭完工式(7月19日付中国新聞網)。「朝鮮とロシア間の協力計画によって羅津港に新しい埠頭が建設されたので朝露両国間の友好・協力関係はもちろん、欧州と北東アジア諸国の経済貿易関係の発展に積極的に寄与できるもう一つの土台が築かれることになった。竣(しゅん)工式が18日、羅先市で行われた。」(7月19日付朝鮮中央通信)
  7月19日 「19日付の朝鮮の各紙は署名入りの記事で、チュチェ89(2000)年7月に平壌で行われた朝露首脳対面と朝露共同宣言の採択によって両国間の友好・協力関係を全面的に発展させることのできる強固な土台が築かれたと強調した。」(同日付朝鮮中央通信)
  8月10日 王毅外交部長、朝鮮の李洙墉と会見(ミヤンマー)(8月10日付中国外交部WS)
  8月12日 「金正恩・共和国国防委員会第1委員長にロシアのV・プーチン大統領から12日、(朝鮮人民の民族的祝日である解放の日に際して)祝電が寄せられた。」(8月13日付朝鮮中央通信)
  8月13日 「金正恩・共和国国防委員会第1委員長は13日、ロシアのウラジーミル・V・プーチン大統領に祝電を送った。」(同日付朝鮮中央通信)
  8月15日 「朝鮮政府とロシア政府間の一方国家領土内で他方国家公民の臨時労働活動に関する協定履行に関連した問題を解決するための共同実務グループ第5回会議議定書が15日、平壌で調印された。」(8月16日付朝鮮中央通信)
  8月26日 「ロシアを訪問する朴明哲所長を団長とする最高裁判所代表団が26日、平壌を発った。」(同日付朝鮮中央通信)
  8月27日 「金正日総書記の歴史的なロシアのシベリア・極東地域訪問3周年に際する交歓会が27日、平壌の大同江外交団会館で行われた。」(8月28日付朝鮮中央通信)
  8月28日 「共和国最高人民会議常任委員会の政令によると、ロシア駐在朝鮮大使に金衡俊氏が任命された。」(同日付朝鮮中央通信)
  9月2日 「朝鮮労働党の金正恩第1書記に公正ロシアのセルゲイ・ミロノフ委員長から2日、(朝鮮民主主義人民共和国創建66周年に際して)祝電が寄せられた。」(9月12日付朝鮮中央通信)
  9月5日 「共和国国防委員会第1委員長の金正恩・朝鮮労働党第1書記に5日、ロシア共産党中央委員会のゲンナジー・ジュガーノフ委員長から(朝鮮民主主義人民共和国創建66周年に際して)祝電が寄せられた。」(同日付朝鮮中央通信)
  9月8日 「朝鮮労働党の金正恩第1書記と最高人民会議常任委員会の金永南委員長、朴奉珠内閣総理に中国共産党中央委員会の習近平総書記と李克強国務院総理、全国人民代表大会常務委員会の張徳江委員長から8日、祝電が寄せられた。」(9月9日付朝鮮中央通信)
  9月9日 「金正恩・共和国国防委員会第1委員長に9日、ロシアのプーチン大統領から(朝鮮民主主義人民共和国創建66周年に際して)祝電が寄せられた。」「共和国創建66周年に際して、朝鮮切手愛好家同盟とロシア民族切手収集アカデミーの共催によって催される朝露切手収集展示会が開幕した。」(同日付朝鮮中央通信)

(とりあえずのまとめ)

以上のように整理してみると、2014年の中朝関係は、中朝関係の節目(もっとも考えられるのは10月6日の中朝国交樹立65周年 )での金正恩訪中の可能性をも視野に入れて動き出したように思われます。しかし、米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」は南北の対話への動きを急停止させました。ただし、その段階では中国はむしろ、米韓に批判的で、朝鮮のミサイル発射による対抗に対して表立った批判を行いませんでした。むしろ、暁岸署名文章が指摘しているように、中国は米韓に働きかけて軍事演習が朝鮮に対して刺激的すぎないように努力した形跡も窺われます。
  しかし、中国が国連安保理でとった行動は、過去の教訓に学んだとは到底言えないものでした。安保理が米韓の行動を不問にして、朝鮮の対抗措置(ミサイル発射)のみを取り上げて安保理決議違反と決めつけることは、朝鮮の激しい反発を招くことはこれまでの経緯から分かりきったことでした。それにもかかわらず中国は、安保理が朝鮮のミサイル発射を非難することを2度にわたって黙認してしまったのです。
  しかも、オバマ訪韓を前にして、韓国国防部が朝鮮の核実験の可能性を提起し、朴槿恵が習近平に電話して朝鮮に対する働きかけを申し入れ、中国がそれに応じてしまったことは朝鮮にとっては到底納得できるものではなかったでしょう。すでに指摘したように、朝鮮の核実験を行うに至るパターン・サイクルを踏まえるならば、オバマ訪韓にぶつける形で朝鮮が核実験を行うことはありえないことは中国として織り込めるはずでした。
  敢えて補足するならば、朝鮮が核実験を行った過去3回のケースでは、人工衛星打ち上げが先ずあり、これに対して安保理が非難・制裁を行い、それに対して朝鮮が核実験で「お返し」するというパターンがあるわけです。今回の安保理の朝鮮非難は中短距離ミサイル発射に対するものであり、朝鮮がそれに対抗して核実験を行うとなれば、朝鮮としては核実験の敷居を自ら下げなければならないということになります。しかしそうなると、今後は逆に、朝鮮としては中短距離ミサイルの発射実験も迂闊にはできないことになりかねないわけです。やはり、人工衛星(長距離ミサイル)と核実験をリンクさせる方針を維持することは朝鮮にとっても必要なことだと思われます。
  他者感覚(換位思考)を働かせることに長けている中国が、こと朝鮮となると他者感覚を十分に働かせることができていないというのは本当に困ったことです。
  もっとも、公開情報に基づいて以上に点検した中朝関係の動向が当たっているかどうかは分かりません。私としては、むしろ中朝関係において良い意味で私の観察を裏切る結果、たとえば、中朝国交樹立65周年に際しての金正恩訪中が実現することを期待する気持ちは切なるものがあります。やはり、中朝関係が良好な基盤の上に維持されない限り、朝鮮半島の平和と安定は期しがたいのですから。