プーチン訪中と中露戦略連携パートナーシップの新段階

2014.05.27.

プーチンの訪中(5月20-21日)に関しては、中露関係、アジア信頼醸成措置会議及び中露天然ガス取引という3つの大きな柱があります。後2者については改めて取り上げる予定ですが、今回は中露関係についてポイントを紹介します。

1.中露が共同して実現を目指そうとする国際政治経済秩序

中国の習近平主席は、5月20-21日に訪中したプーチン大統領との間で「中露全面戦略連携パートナーシップ新段階に関する共同声明」を発表しました(5月20日)。その内容は、以下に紹介するとおり、アメリカ・オバマ政権の対外政策さらにはアメリカ主導の国際政治経済秩序に対して真っ向から異議申し立てを行い、中露両国が実現を目指す国際政治経済秩序の方向・内容を整理して提起するものです。
 これまでにも中国とロシアはそれぞれの立場からアメリカの対外政策に対して異論を提起してきましたが、今回の共同声明の重要性は、中露共同の立場として押し出したことであり、米ソ冷戦終結後のアメリカの一極支配の現実を根本的に変えようとする初の試みとして、私は極めて重要だと思います。個々の内容を取れば異論がないわけではありませんが、総体としては国際政治関係の民主化を志向するものとして高く評価することができると思います。短期的にはともかく、中長期的に見れば、アメリカに対してボディ・ブローの如く効いていくことになるでしょうし、また、そう願いたいものです。

 「一国の内政に干渉するいかなる企て及び行動にも反対し、国連憲章が確立した国際法の基本原則を断固として擁護し、発展の道路を自主的に選択し、自国の歴史、文化及び道徳・価値観を擁護するそれぞれの権利を十分に尊重する。」
 「各国の歴史伝承、文化伝統及び自主的に選択した社会政治制度、価値観、発展の道路を尊重するべきであり、他国の内政に干渉することに反対し、一方的な制裁を放棄するべきであり、他国の憲法体制の改変を画策し、支持し、援助しまたは激励する行為あるいは他国が多国間の集団または同盟に加入することを受け入れる行為に反対する。」
 「国際経済金融システムを改革し、実体経済の必要に適応させ、新興市場国家及び途上国のグローバルな経済管理システムにおける代表性及び発言権を増大させることにより、グローバルな経済管理システムに対する確信を回復させなければならない。」
 「国連のすべての加盟国が国連憲章及び公認された国際法の原則を遵守することを呼びかけ、これらを歪曲しあるいは勝手に解釈することを認めない。」
 「国連安保理改革政府間交渉の枠組みにおいては、改革に関してバスケット解決案を作り、もっとも広汎な合意が得られるようにするべきである。双方は、人為的な期限を設定し、十分に熟成されていない改革案を強行しようとするやり方に反対する。」
 「中露は宇宙空間に兵器を配備することに重ねて反対し、すべての宇宙大国がこの政策を遵守することを呼びかける。」
「国際社会が市民的政治的権利、経済的社会的文化的権利及び発展する権利を等しく重視し、文化及び文明の多様性を尊重し、伝統的価値観を尊重し、及び人権促進における異なるモデルを尊重するように推進し、…人文人権における国際協力を政治化することに反対し、一部の国家または国家集団の標準を普遍的価値基準として他国に押しつけることに反対する。」
「一方的にグローバル規模でミサイル防衛システムを展開させることは国際情勢の安定にとって不利であり、グローバルな戦略的安定及び国際的安全を損なうだけである。すべての関係国が共同で政治的外交的努力を行い、弾道ミサイル及びミサイル技術の拡散を防止するべきであり他国の安全を犠牲にすることによって自国及び特定国家集団の安全を保障しようとすることがあってはならない。」
「外部がシリアに武力干渉する企みに断固反対する。」
「6者協議が朝鮮の核問題を解決する唯一の現実的かつ有効な方途であり、関係国が向かい合って行動し、地域の平和に有利なことを多く行い、6者協議再開を推進し、半島地域の長期的安定を実現するために共同で努力することを希望する。」

なお、「連携」という言葉の含意については、3.(2)で紹介する王海運の文章に詳しい解説がありますので参照してください。

2.日本の右傾化に対する中露の警戒

今回の共同声明は、日本の右傾化に対する中露の共通した認識を表明するものとしても極めて注目すべき、次の内容が含まれています。特に明年(2015年)に中露が共同で大々的に戦勝70周年を記念する行事を行うとしていることは、今後の日中及び日露関係にとって重要な意味合いを持つものだと思います。

 「第二次大戦における欧州及びアジアの戦場でのドイツ・ファシズム及び日本軍国主義に対する勝利70周年を慶祝する活動を共同で行い、歴史を歪曲し、戦後国際秩序を破壊する企みに引き続き断固反対していく。」

この点に関しては、首脳会談で習近平が、また、訪中に先立つ中国メディアとの共同インタビューでプーチンが表明した認識にも留意するべきでしょう。
 習近平は中露首脳会談で次のように述べました。

 「複雑多変な国際及び地域情勢に対し、中露はバイ及び上海協力機構の枠組みにおける安全保障協力を強化し、両国及び地域の平和と安全を擁護するべきだ。中露両軍は、合同訓練合同演習、軍事技術、反テロリズムなど各方面での協力を深め、中露海上合同軍事演習及び上海協力機構加盟国の合同反テロ軍事演習を共同で行うべきだ。
 明年(2015年)は世界反ファシズム戦争及び中国人民の抗日戦争勝利70周年だ。私とプーチン大統領は、慶祝及び記念活動を挙行し、世界各国人民とともに、第二次大戦の勝利の成果及び線の国際秩序を擁護し、ファシズム及び軍国主義の野蛮な侵略という悲劇の再来を絶対に許さないことについて合意に達した。」

 プーチンは、中国メディアとの共同インタビューで次のように発言しました。

 「我々は現在、ますます日常的に歴史を書き換え、歪曲しようとする企みに直面するようになっている。4年前の第二次大戦終結65周年に際し、ロシアと中国は共同声明を発表した。我々は、第二次大戦の結論を修正することは受け入れられず、そうすることの結果は極めて危険であるという認識で一致した。現在ウクライナで起こっている悲劇的な事件は、ネオナチ勢力の猖獗及び一般民衆に対して加えているテロ活動を含め、その証左である。
 我が国の数千人の同胞が中国東北地方を侵略者の手から解放するために生命を捧げたことに対して中国の友人が一貫して彼らに対する記憶を大切にしていることについて、私は中国の友人に感謝している。
 明年、両国は、バイ及び上海協力機構の枠組みのもとで、70周年を慶祝する一連の合同活動を行う。我々は特に青年たちの工作に力を入れる。
 もちろん、両国は、歴史を改ざんし、ファシスト及びその仲間を美化し、解放者の功績及び名誉を抹殺する企みを制止していく。」

3.中国専門家の評価

今回の中露首脳会談及び共同声明に対して、数多くの中国専門家による評価が行われていますが、私にとって読み応えがあったものを二つ紹介します。

(1) 張敬偉「中露の相互協力が国際政治の局面を変える」(5月21日付人民日報海外網)
*張敬偉はNGO・察哈爾学会リサーチャー。

 5月20日にプーチンが訪中し、アジア信頼醸成会議に出席したことについては、様々な解釈が行われているが、争いがない事実は、中露が歩み寄り、相互協力を行おうとしていることだ。注目を集める中露合同海上軍事演習を含め、経済貿易から安全保障に至るまで、中露全面的戦略協力パートナーシップはさらに深まり、20日に発表された中露共同声明は全世界に向けて中露両国の緊密ぶりを見せつけた。  中米露による三国演義は「孫権・劉備対曹操」の趣となっているかのようだが、その中身は如何。
 まずロシアは未だかつてない困難に遭遇している。クリミアのロシア編入及びウクライナ東部情勢によって、ロシアは西側世界の公敵とされた。西側の対露制裁が強められ、ロシアの外交的孤立が続いている。
 他方、オバマが行った中国を迂回したアジア4ヵ国訪問によって西太平洋における地縁政治情勢が変わった。アメリカは、尖閣の主権問題で立場を取らないとしつつも、釣魚島が日米安保条約の範疇に入ることを公に支持した。日本は東海で中国を牽制する最大の切り札を獲得し、集団的自衛権を解禁する意欲満々だ。南海においては、アメリカはフィリピンの側に立ち、中国の「挑発」と名指しした。中米国防相及び両国総参謀長の直接対決において、アメリカのリバランス戦略に対する中国の失望と激怒が露わに表明された。
 このことはまた、東海から南海にいたる、アメリカが構築した対中牽制ラインがもはや中国を牽制抑止する効力を失ったことをも意味している。しかし、アメリカが警戒する中国の海上軍事力の増強は、アメリカが繰り返し取ってきた対中刺激策に対する中国の反発によるものである。アメリカの学者は、アメリカの対外政策は同時に中露両国を敵に回すという重大な失敗の崖っぷちにあると批判している。
 中露が政治・軍事・イデオロギーの同盟となることはあり得ない。しかし、アメリカが太平洋及び大西洋においてユーラシア大陸の2大国に対して取っている姿勢は確実に中露両国を接近するように仕向けている。
 中国の海洋権益の伸張が阻止されているのは一見日比などが挑発していることによるもののようだが、実際はアメリカが陰で操作していることだ。かつて中国と平和共存していた国々が今は代わる代わる中国との島嶼の争いの神経戦を演じている。黒幕のアメリカは、これらの国々を中国の海洋戦略を阻止抑止するためのコマとし、中国が太平洋に進出する動きを縛り付けようとしているのだ。このようなことでは、中米が太平洋においてどうして共存共栄できるだろうか。
 米欧は大西洋において、また米日は太平洋において間違いなく露中に対する地縁的圧力を形成しており、米欧日がユーラシア大陸に対する鉄のカーテンの包囲網を作ろうとしているに対決することは、中露両国が極めて重視するべき戦略的使命だ。この情勢の下では、中露は対立を横に置いて協力を強化することが核心的利益となる。しかし、中米露大三角関係はなお戦略的調整段階にあり、三者が理性的客観的にウィンウィン精神を維持するならば、中米新型大国関係及び中央大国関係はグローバルに調和的に共存する可能性を持っている。

(2) 王海運「中米露 中国は蜀が呉と連合して魏と対抗した経験に学ぶべし」(5月21日付環球網)
*王海運は前駐露大使館武官で、現在は中国中露関係史研究会副会長。少将。

◯中露合同海上軍事演習の意味
 国際戦略レベルで見れば、今回演習は確かに日米軍事同盟に対する対応という意味がある。なぜならば、中露が軍事協力を強めることは、ハッキリ言わないとしても相手がハッキリ定まっているからだ。これは言うまでもないことだ。他方、一部の学者が言うようなオバマのアジア4ヵ国歴訪に対する警告的対応とまで言うのは牽強付会だ。なぜならば、軍事演習というのは簡単なことではなく、少なくとも半年以前に決まっていたことであり、当時の時点ではオバマがアジア旅行でいかなる発言をするかについては予想するべくもなく、釣魚島に直接結びつける必要もなかったし、今回の演習区域は釣魚島からはるかに離れてもいるからだ。中露軍事演習の主要な目的は相互理解、相互学習、相互参考にあり、同時に訓練中に遭遇する一連の問題に対してどのように協力して対処するかを学びとるということだ。
◯尖閣問題に関する中日紛争に対するロシアの立場
 ロシアの対日政策は全体として、情勢を安定させ、協力を強化し、そのことを通じてアメリカの影響力に対してブランスを取るということだろう。中国の利益に対する考慮があるかないかといえば、まったく考慮に入っていないとは言えないだろう。というのは、日本は極力ロシアの支持を取り付けようとしているが、ロシアは日本を支持していないからだ。 しかし、ロシアがなぜ公然と中国の側に立たないのかといえば、ロシアにはロシアの立場で考慮することがあるからだ。第一、日本は先進国であり、ロシアとしては日本に対露投資して欲しい。第二、日本はエネルギー市場であって、比較的高い価格でも支払う用意があり、ロシアとしては日本に売ることで儲けたいし、中国市場に対する依存度が高くなりすぎることは避けたいだろう。これは、ロシアが利己的だというよりは、国家利益優先の考慮によるものと言うべきだ。
◯プーチンの「中露は同盟しない」とした発言(訪中前の対中記者インタビュー)
 「三不」即ち「同盟しない、対決しない、第三国に向けない」は中国の一貫した外交方針であり、平和的台頭に対する妨害及び反発を少なくするためにはそうする必要がある。
 確かにロシアには中国と同盟を結ぶという考え方はあるが、中国が以上の立場を堅持してきたことに対してロシアも折れてきたという感じだ。ロシア在勤の時、ロシア高官と接触して、彼らが中国と同盟関係を結ぶことを非常に期待していることを感じた。彼らによれば、中露が世界で手を結べば、何も恐いものはないということだった。それは彼等の重要な戦略的判断である。したがって、プーチンの「同盟しない」という発言は中国の一貫した戦略方針に直接かかわってなされたものだ。
 次に、現在のところ、中露間には同盟を結ぶ条件が備わっていないし、同盟結成は深刻な結果をもたらす可能性がある。というのは、今ロシアと同盟することは「弱者同盟」ということになるから、西側が主導する国際政治構造のもとでは中露の平和的発展にとってさらに不利に働くだろう。
 したがって、盲目的に同盟結成を提起することはできず、仮に結ぶとしても段階を経て育成していくプロセスが必要だ。中国には友人がいることはいるが、ここぞというときに本気で助け合える友人はあまりにも少ない。中国には友人が必要であり、孤独な大国となるわけにはいかない。
 そこで第三の問題となるわけだが、同盟を結ぶか結ばないかという問題は戦術上の問題であって、戦略上の問題ではない。「同盟を結ばない」ということを戦略と見なし、触ってはいけないし、議論もしてはいけないとするのは誤りだ。中国は歴史上何度も同盟を結んだことがあり、中露間でも3回同盟を結んだ(孫文、蒋介石、そして毛沢東)。
 今日のアメリカはかくも強大であるのに相変わらず仲間を作ろうとしており、アメリカの非常に貴重な経験とは同盟システムだ。アメリカが単独では戦おうとしないのに、なぜ中国は単独で戦う必要があるのか。角度を変えて言えば、「統一戦線」は中国共産党の貴重な歴史的経験であり、この経験は今日の世界で通用しないというのだろうか。どうしてこの貴重な切り札を再度堅持しないというのか。「国際統一戦線」は完全に必要であり、準同盟関係は完全に必要だ。私は準同盟関係を主張するものであって、中露が現在同盟を結ぶことには反対だが、準同盟関係というのは将来に同盟関係を結ぶための条件をつくり出すということだ。
 「同盟を結ばない」ことに関してもう一つある問題は「戦略的連携関係」の問題だ(「連携」の中国語は「協作」)。1996年にエリツィンが訪中して江沢民主席との間で「戦略的連携関係」という言葉を定めた。元々中国側が提起したのは「戦略的協力パートナーシップ」(「協力」の中国語は「合作」)だった。エリツィンは、訪中途次の飛行機の中で「連携」に変えて中国側の意見を求めた。そして中国は数時間後に同意した。「連携」というロシア語の意味は「協同して行動する」ということであり、軍事用語だ。つまり、時間、場所、方向、任務に従って協調一致して行動を取るということだ。同じ問題において歩調を合わせるだけではなく、協調した行動を維持することが必要だ。中国語の「互動」により近い意味で、あなたが動けば私も動かなければならない。したがって、「中露全面的戦略的連携パートナーシップ」とは、実質上、準同盟関係のことだ。お互いに厳格な条約上の義務を負わないし、軍事同盟はやらないが、一連の戦略問題において手を結ぶことがある。ただし、両国はその含意を完全に実現しているわけではない。現在の課題は、まだ実現していない中露戦略的連携パートナーシップに筋を入れることだ。
 中国が現在直面している問題は、アメリカの戦略包囲に直面する中で、平和で安定した発展のための環境を必要としているということだ。ロシアは、国家の復興、台頭、発展を実現しようとしている。したがって、平和で安定した発展のための環境を必要としている点で、中露は一致しており、国際関係、周辺戦略などの重要問題で手を結んで協力し、協同して周辺を安定化し、発生するホット・イッシューに共同で対処するべきだ。
◯ロシアの対APR政策
 ロシアはAPRに方向転換するという課題に直面している。APR大国になろうというロシアの積極性は非常に大きい。APRではまだ集団安全保障体制ができていないが、世界各地域の中で、ひとり北東アジアのみが集団安全保障体制がない。しかもこの地域には安全保障上の危険性が依然として存在している。ロシアとしては必然的に軍事力をAPRに振り向ける必要があり、太平洋艦隊を強化するというのもそのためだ。中国との軍事技術協力、合同軍事演習は、ロシアとしての目的があってのことだ。ロシアのAPR戦略は、アジアが世界の経済発展の中心になるこのチャンスを捉えて自らの発展を成し遂げるとともに、ロシア東部の開発にはAPR特に中国の力が必要だということだ。
 ロシアがAPRに方向転換することは中国にとっても総じて良いことだ。ロシアの力はアメリカのリバランスに対する一種のバランスとして働き、中国に対する圧力を和らげることができるし、アメリカのアジア回帰に対する対抗とも言える。実力があって行動力がある大国・ロシアが、戦略理念及び戦略的利益の一致に基づいてAPRに方向転換することは、米日同盟が持ち込む挑戦に対処する上で間違いなく良いことだ。ロシアも米日同盟の脅威に直面している。米日同盟は現在中国に向けられているが、矛先が30度ないし50度向きを変えれば、ロシアに対するものとなる。
◯中米露三角関係
 中国にとってアメリカとの関係は極めて重要で、アメリカは中国にとって主要な戦略的ライバルであるとともに、経済貿易上のパートナーでもあり、中国の平和的台頭における国際環境としては、影響力がもっとも大きく、もっとも直接的で、もっとも長期的である。しかし、対米関係と対露関係を対比的に扱うことはできない。中国は長らく対米関係を重点中の最重点としてきたが、私は対露関係もまた重点中の最重点だと言いたい。長期的に対露関係は対米関係に従属すると位置づけるのは誤りだ。仮にそうすれば、中露関係に影響が出るだけでなく、アメリカは中国に対してさらに厚かましく出てくるだろう。
 中国はアメリカと闘争するとともに平和をも追求しており、新型大国関係を提起している。新型大国関係に求められるいくつかの中心的要素を実現することは本当に難しい。「対決せず、衝突しない」ということをアメリカは受け入れてはいるが、事実上は実行せず、アメリカは中国周辺の面倒の仕掛け人だ。「相互尊重」に至っては、アメリカは中国が対等平等であることを承認するはずがないし、中国の核心的利益、社会体制、イデオロギーを尊重するということはさらに肯んじない。わずかに「互利共嬴」だけが辛うじて今のところは行われているに過ぎない。ゆえに、中米露関係を取り扱う上では醒めた認識を備えている必要がある。
 中米露関係をどのように扱うかということは一つの試練だ。この大三角関係において、中米及び中露の距離がもっとも近く、米露の距離がもっとも遠い。これを二等辺三角形とすれば、中国はその頂点に位置しているわけだ。中国は大いに対米関係を利用して関係の安定を図ると同時に、対露関係をも精魂込めて臨む必要がある。春秋戦国時代の合従連衡や三国時代の蜀呉の対魏連合を大いに参考にするべきだ。蜀と呉の間の矛盾は極めて深刻だったにもかかわらず、連合して曹操と対決した。中露間の矛盾は蜀呉間の矛盾ほど深刻だろうか。国内には、ウクライナ問題でロシアを罵倒し、アメリカ支持に走るものがいるが、それはまったく愚かで、国家利益の所在を理解していない。