朝鮮外務省声明を受けた中国の対朝鮮政策

2014.04.08.

「新しいタイプの核実験の可能性を排除しない」とした3月30日付の朝鮮外務省の声明は、中国においてもかなりの衝撃を以て受けとめられた可能性があります。今回紹介する最初の文章・環球時報社説は、朝鮮の核政策がこれまではそれなりの成功を収めてきたとしつつも、将来的にはまったく展望・出口のないものとして退け、朝鮮の強硬な対米対決政策に中国が理解し、支持する余地はないことを明らかにしています。二つ目の文章も同じ立場を明らかにしていますが、この文章の面白さは、朝鮮半島の核危機について中国政府が行ってきた政策的努力について具体的に述べている点、及び、今後の事態打開のためには「朝鮮が核計画を一時停止することについてどんな象徴的なステップでも良いから歩調を合わせてくれない限り、中国としては何もできない」と泣き言めいた訴えを朝鮮に対して行っている点にあります。
 しかし、二つ目の文章でもう一点見逃せないことがあります。それは、「戸惑わざるを得ないのは、朝鮮が最近の数週間において対外的に非常に混乱したシグナルを発し、本来ならば情勢緩和を図ることができるはずのチャンスを逃していることだ」として、「米韓が中国の要求に応じて軍事演習から刺激的要素を抑えようとしている」のに、朝鮮外務省声明に至る朝鮮の行動が台無しにしているという認識を示していることです。4月3日及び4月5日のコラムで紹介しましたように、朝鮮は、米韓合同軍事演習に目をつぶって2.14合意を実現するという誠意を示したのに、米間は合同軍事演習をエスカレートさせたと認識しているからこそ怒っているわけです。そういう点についての目配りが欠落している点に、私としては中国側の問題を感じるのです。
 そういう私の印象が決して的外れではないことを間接的に証拠立てるのが三つ目に紹介する文章です。この文章は、朝鮮半島の核危機に関する責任はアメリカにこそあるということを指摘しています。この文章では朝鮮外務省声明に対する直接の言及はありませんが、文章全体の脈絡からすれば、朝鮮外務省声明もまたアメリカ(及び韓国)のごり押し政策に対する反発であるという位置づけであると推定するのは決して強引ではないと思います。
 なお、最後に4月3日付の朝鮮中央通信の並進路線の正当性を主張する「解説」も載せておきます。その趣旨は、最初の二つの文章に示される中国の認識・立場と朝鮮のそれとの間の懸隔の大きさを確認しておきたいという趣旨です。
 紹介する文章中の強調は私(浅井)がつけました。

1.環球時報社説「『核兵器を持てばすべてがかなう』という朝鮮の幻想」(4月3日付)

このコラムでは度々環球時報社説を取り上げていますので、改めて解説するまでもないと思いますが、環球時報は人民日報系列であり、その社説は中国の公式的立場を色濃く反映していると見ることができます。また、人民日報があまり論争的に踏み込まないのに対して、環球時報は進んで火中の栗を拾う傾向が見受けられます。今回の社説もその典型と言えるでしょう。

 3月30日に朝鮮外務省は「新しいタイプの核実験を行うことを排除しない」と公式に述べて外部の注目と推測を招いた。韓国のメディアの中には、朝鮮の第4回核実験が1ヶ月以内に行われる可能性があると予測するものがあるが、この報道の信憑性は高くない。しかし、朝鮮の新たな核実験は「遅かれ早かれ行われる」わけで、このことは戦略分析をするものが広く憂慮することだ。
 朝鮮の今回の新型核実験については、米韓の注意を惹くことに直接の目的があるとの見方が一般的だ。それはまた、米韓合同軍事演習に対するリアクションということでもある。核実験及びミサイル発射は朝鮮外交の数少ないカードとなっており、このことは朝鮮及び北東アジアにとって悲しむべきことでもある。
 朝鮮の核技術の進展状況は極秘状態なので、外部は大体のことしか分からない。しかし、朝鮮の核能力は朝鮮が主張するほどには成熟しておらず、核兵器の小型化及びミサイルとの連結という問題はまだ解決しておらず、さらに朝鮮のミサイルはまだアメリカ本土までには届かない、したがって、アメリカはまだ朝鮮の核に対して恐怖を感じるレベルには至っていないというのが一般的見方だ。
 朝鮮が核疑惑を持たれている他の国々と違うのは、他の国々は極力(核疑惑を)否定するのに対して、朝鮮は声高に宣伝し、外部がその核能力を低く評価することを恐れていることだ。その根本原因は、朝鮮の抑止力があまりに貧弱で、核兵器以外には何も語るにたるものがないことにある。
 このために、朝鮮及び北東アジアはますます悪循環にはまってしまう。即ち、朝鮮が虚勢を張ると、この地域では誤った判断の連鎖反応が起き、一連の予測できない結果を招いてしまうのだ。朝鮮が対外的に核攻撃を仕掛ける能力の掌握に近づくときには、米韓日の反応もまた極点に達するだろう。人によっては、アメリカは朝鮮の核ミサイルがアメリカ本土に到達する能力を持つに至ることを許さないだろうと見るものもいる。つまり、そうなる前に朝鮮に対して手を下すだろうというわけだ。
 朝鮮が核兵器を開発するのは「核抑止力」を獲得して、国家の戦略的安全保障を確かなものとすることにある。経済的及び政治的代価は大きかったとは言え、これまでのところ、平壌は「成功してきた」と言えるだろう。しかし、そのことは平壌が本当にアメリカを怖がらすことができたということを意味するものではなく、朝鮮にとってのより厳しい試練はまだこれからである。
 朝鮮のような規模の小国が国際圧力のもとで核分野のブレークスルーを完成させた先例はこれまでない。このチェス・ゲームにおける恐怖及び困難さは底なしであり、平壌は明らかにこれを過小評価している。
 朝鮮の核保有はさらに数歩は前進することができるかもしれないが、核兵器をして有効な戦略的手段として実現する見込みははるか彼方であり、永遠にその日が来ない可能性が極めて大きい。この世界において存在しうるのは核抑止だけであって、核脅迫はない。朝鮮が脅迫しようとしている相手は世界No.1の大国であり、朝鮮の思いどおりになる確率はほぼゼロだ。
 中国は米韓日のように冷たく朝鮮に接することはあり得ないが、朝鮮の核保有に反対するという中国の態度はきわめて明確だ。朝鮮の核問題は周辺及び中米間の不一致を招いたが、米日韓の朝鮮に対する圧力が平壌の動きによって米中間の対決へと変化し、そのことによって朝鮮が核兵器を持つことによって「売り抜ける」ための戦略的チャンスをつくり出すということはあり得ない。平壌がそのような期待を持っているとしたら、一日も早く放棄することだ。
 朝鮮のそのほかの分野における力は核抑止政策を支えきれず、朝鮮の核能力は孤立無援であり、国家の安全保障その他の戦略的利益として具現化することは極めて難しい。したがって、朝鮮は核開発にやみくもに突っ走るべきではなく、落ちついて考え、国家利益を最大化する現実的方途を改めて設計する必要がある。
 仮に朝鮮が現在のまま進み、第4回、第5回さらにはもっと多くの核実験を行うのであれば、朝鮮の今後数十年の戦略的境遇がどうなるかは大体の予想がつく。即ち、長期にわたって国際的に孤立し、国家的貧困は解消しがたいだろう。これらのことは平壌政権に対するリスクとなり、核兵器保有によってはまったく帳消しできないだろう。
 中国は朝鮮の友人であり、朝鮮の安全、安定及び繁栄は中国の長期的国家利益に合致する。大多数の中国人も、朝鮮が苦境を抜け出し、東アジアの発展という戦略的チャンスを享受することを望んでいる。朝鮮は核兵器開発のためにすでに国際社会と20年間対立してきた。考え方を変え、あるいはそういう試みを行うことにより、平壌は面目一新の戦略を手にすることができるかもしれないのだ。

2.暁岸「間近な鴨緑江大橋竣工の啓示」(4月4日付中国網所掲)

中国網は国務院傘下ですから政府系です。暁岸は、私が見てきた限りでは、もっぱら中国網で文章を発表してきており、かつまた多方面に健筆をふるっています。朝鮮問題の専門家というわけではありませんが、この文章からも窺われるように、中国の内部の事情にも通じていることは間違いないと思われます。
 ちなみに、この文章のタイトルである鴨緑江大橋とは、中国・丹東と朝鮮・龍川をつなぐ全長6000メートルの橋で、中国が全額出資の総工費22.2億元、2011年5月着工で2013年に橋脚が接合したという解説が暁岸によって行われています。

 国際関係の角度から見ても、朝鮮の改革発展の必要性という角度から見ても、朝鮮半島の膠着状態はあまりにも長引いている。その原因は主に4点ある。第一点は朝鮮の国内情勢がまだ落ちついていないことだ。第二点は朝鮮の強硬姿勢がまだアメリカを動かすには至っておらず、腰を下ろして朝鮮の言い分を聞こうとするまでにはなっていないことだ。第三点は、朝鮮が改革の道を進むのか否か、核計画を一時的に停止するか否かという問題に関して、中朝間の意見の違いがまだ解決を見ていないことだ。第四点は、半島情勢問題に関して米中間で行われてきた利益の協調がまだ極めて初歩的で、中国としてはアメリカを説得して6者協議に戻るハードルを低くすることができていないし、アメリカもまた中国をして朝鮮にもっと大きな圧力をかけさせることはできない。
 どれほど難しいにせよ、中朝関係が正常に戻れば、半島情勢を転換させ、直接事態を牽引する力を作り出せるし、そのことは、朝韓関係のこれまでの極めて限られた改善よりもはるかに顕著な連鎖反応を生みだすことができる。春先から中国政府は対朝関係改善のために一連の主動的措置を講じ、事務レベルでの交流強化の基礎の上で、前後して劉振民・外交部副部長及び武大偉・6者協議特別代表を訪朝させた。朝鮮は、中国の苦心を理解するべきであり、中国に対して歩調を合わせる必要があり、そうすることで困難を脱却することにつながるだろう。
 戸惑わざるを得ないのは、朝鮮が最近の数週間において対外的に非常に混乱したシグナルを発し、本来ならば情勢緩和を図ることができるはずのチャンスを逃していることだ。即ち、日本海に向けて中短距離ミサイルを続けさまに発射し、半島西部海域で海上射撃訓練を行い、「新型核実験を排除しない」と声明し、緩和に向かっていた半島情勢に「寒の戻り」をもたらしてしまった。朝鮮がこのようなことをするのは米韓合同軍事演習に抗議し、バランスを取るためかもしれないが、米韓が中国の要求に応じて軍事演習から刺激的要素を抑えようとしているもとで、朝鮮のやり方はいささか根拠を欠き、外部がその意思を正確に理解する助けとはなっていない。
 朝鮮としては新しい核実験の脅迫を通じて対米韓交渉上のカードを増やしたいのではないかと見るものもいる。もしも朝鮮が本当にそう考えているとすれば、朝鮮が自ら確かめるまでもなく、外部としては、朝鮮がそうすることはアメリカをさらに遠ざけるだけで、自らの動きうるスペースを広げることには決してならないとハッキリ告げることができる。
 あるいはまた、朝鮮は、中国が相変わらず朝鮮に核を放棄することを促すことに対して不満をぶつけているのだろうか。そういう可能性は排除しない。そうだとすれば、朝鮮は自らの立場をハッキリ正し、半島問題を処理する上での、中国の戸口で絶対に生乱生戦を許さない、半島の南北いずれによる核保有にも断固反対するという二つの相互に矛盾しないボトム・ラインを認識する必要がある。朝鮮が仮にこの2線に足をかけたら最後、朝鮮がどう振る舞おうと、過去のように中国の戦略的決断に影響を及ぼすことはもはやできないのだ。
 朝鮮は現在国際社会の忍耐を食いつぶしすぎており、朝鮮が望むような即時的効果を得ることができないだけではなく、半島問題における長期的な利益をも得がたくなっている。朝鮮は世界の大勢をもっと見るべきであり、朝鮮と関係する事態の基本的趨勢を認識すべきであって、自己中心の一方的発想に終始するべきではない。
 欧州では米露がウクライナ危機の解決を交渉しており、「新冷戦」を回避しようとしている。アジアでは中米が新型大国関係を構築し、協力してホット・イッシューを処理しようとしている。ということは、アメリカは短期的には半島で大きな問題を引き起こせないし、朝鮮の核脅迫のエスカレーションに対しても軟化する余地がないということだ。ロシアについて言えば、中国との戦略的協力をさらに強化しようとしており、半島問題ではよりハイ・レベルの共同政策を採用するだろうから、中国を出し抜いて朝鮮の要求に応じることはあり得ない。
 中国は、アメリカとの関係を発展させるために朝鮮の利益を売り渡すことはあり得ない。なぜならば、そうすることは最終的に中国自身の利益を売り渡すことになるからだ。しかし、半島が戦乱に陥り、朝鮮の核問題がコントロール不能になることを防止することは中米共通の利益であり、そのことは朝鮮が自らの置かれた状況として必ず理解しなければならない。
 朝鮮が大国関係を利用し、錯綜複雑を極める地域の環境のもとで自らにとっての出口をひねり出そうとするのであれば、これまで放り出していた非核化というテコを拾い上げ、どんなに小さな一歩でも良いから前に進むべきであり、そしてこれこそが中朝関係の正常化回復の前提でもあるのだ。そうした後は、関係国が対話交渉を通じて半島の納得ずくの未来設計を行うことができるし、朝鮮としては、このプロセスの中で、未だかつてなかったような発展のスペースを獲得するチャンスが出てくるだろう。
 竣工間近な鴨緑江大橋と同じく、中国は常に朝鮮の根本的利益とマッチする新しい情勢との接合を準備しており、密接な相互依存関係にある朝鮮と未来に向けた正常な関係を確立しようとする中国の誠意には疑いをはさむ余地はない。
 3月に習近平主席がハーグでオバマ大統領及び朴槿恵大統領と個別に会談した際、朝鮮半島問題に関する中国の考え方と主張を詳しく表明した。習近平は本年に入ってからの半島情勢が全体として緩和傾向にあることを肯定し、特に南北関係の改善を積極的に評価するとともに、朝鮮の核問題は錯綜し、複雑であり、総合的な施策を必要としており、当面の急務は6者協議再開であると指摘した。
 どのようにして6者協議を再開させるか。朝鮮が核計画を一時停止することについてどんな象徴的なステップでも良いから歩調を合わせてくれない限り、中国としては何もできない。複雑に変化する国際情勢及び必ずしも落ちついていない国内政局を前にして、朝鮮が以上の判断の行い、方向転換することの難しさは理解できるところであり、世界としては朝鮮が考える時間を与え続けるべきである。

3.時永明「アメリカは対朝鮮政策に失敗について言い逃れするべきではない」(4月4日付海外網所掲)

時永明は中国外交部系列の国際問題研究所の副研究員と紹介されています。海外網とは人民日報海外版のHPです。したがって、この文章が異端に属するという見方は成り立たないと思います。それだけ、朝鮮問題に関する中国における見方は様々であるということが分かります。
ちなみに、私の印象に過ぎないのですが、昨年まで朝鮮問題に関して発言する常連だった専門家、研究者の発言(その多くは朝鮮に対して批判的なものでした)が、崔龍海特使の訪中以後ほとんど見かけられなくなり、それに代わって私にはニュー・フェースの若手の発言が多くなっているように思います。

 (アメリカ国務省のラッセル国務次官補が4月1日に、朝鮮の核政策に関する中国の責任を問う発言を行ったことに関して)ラッセルは基本的事実関係を無視してアメリカの対朝鮮政策の失敗に関する責任を言い逃れようとしている。
 まず、朝鮮核問題の根源は朝米間の政治的対立にある。朝鮮半島で停戦協定が署名された後、戦争を終結させ、平和を確立するための和平メカニズムを作る問題が一貫して解決されてこなかった。こういう状況のもと、アメリカは過去において韓国に核兵器を配備し、朝鮮を核攻撃のターゲットにしたというやり方が朝鮮をして核兵器開発に向かわせた根本的な原因だ。アメリカが韓国から核兵器を撤去したのは、朝韓が「朝鮮半島非核化宣言」を行った後である。
 次に、朝鮮の核問題を解決する問題において、アメリカは不当にも核問題をますます厳しくする措置を取ってきた。1994年に米朝枠組み合意が署名された後、アメリカは協定を真剣に履行せず、このことが朝鮮をして先軍政治に向かわせ、戦略ミサイルの開発に力を入れることになった。21世紀に入ってからは、アメリカは一方において国際法に違反して公然とイラクに出兵し、他方においては朝鮮に対して圧力をかけ、その結果、朝鮮は自衛を名目として核兵器不保持の政策から核自衛政策に転じた。2005年、朝鮮の核問題に関する6者協議は難航の末やっとのことで9.19共同声明にこぎ着けたが、アメリカは直後に朝鮮に対して金融制裁を行い、これに反発した朝鮮は核実験を行い、核保有の道に進むことになった。その後は米朝間の相互不信は日増しに強まり、半島情勢は悪循環に陥ってしまった。
 長期にわたって中国は努力を惜しまないで朝鮮核問題の解決を推進してきた。しかし、朝鮮の第3回核実験の後、米朝間の対決はさらに白熱化した。中国の努力によって局面打開のチャンスが現れたが、アメリカが対話による解決という方法を放棄したことにより、半島情勢は完全に膠着状態に陥ってしまっている。
 そうであるとは言え、中国は今後も和解を勧め、対話を促すことで、半島の非核化プロセスを促進する努力を続ける。中国は、安定と非核化とのどちらか一方を選択することはしない。なぜならば、両者は弁証法的に一体のものだからだ。半島で対決が続く限り出口はない。南北間及び米朝間で和解を実現するためには非核化実現が不可欠であり、非核化を実現するためには和解を実現しなければならず、こうして両者を分けることはできない。
 さらに、半島の核問題の解決を推進するに当たり、中国は一度としてアメリカが東アジアにおける軍事プレゼンスを縮小するだろうと期待したことはない。アメリカのアジア・リバランス戦略の目的は誰もが知っている。最近の南シナ海における中国とフィリピンとの紛争に際してのアメリカ政府の無責任な発言は、アメリカがあらゆる機会を求めて東アジアでの軍事プレゼンスを増大させようとしていることを再び証明した。中米が新型大国関係を樹立するためには、アメリカが覇権主義を放棄することが必要だ。

4.朝鮮中央通信解説「並進路線―万能の霊剣」(4月3日付)

今日の国際政治秩序は、核兵器を保有した国連安全保障理事会常任理事国の特権によって操られている。核兵器の出現以降ほぼ70年間、世界的規模の冷戦が持続し、諸地域で大小の戦争も多くあったが、核兵器保有国だけは軍事的侵略を受けなかった。かえって、不公正な国際政治の構図を盗用して非核国に加えられる核列強の専横は想像を絶している。白昼に主権国家に巡航ミサイルを発射して無辜の人民の生存権を踏みにじる米国の横暴が、「世界の平和と人権を守護」する「正義の行動」に合理化されている。
自主権を重んじる国々が経済発展と人民の生活向上に有利な平和的環境と条件を整える道は、もっぱら自前の強力な戦争抑止力を備えるところにある。
最近、多くの国と地域で起きた悲劇的事態は、朝鮮労働党が打ち出した経済建設と核武力建設を並進させるという路線の正当性と生命力を改めて実証している。にもかかわらず、敵対勢力はわが国の並進路線の「非科学性」「好戦性」を言い散らしながら、その真髄を歪曲し、謀略にかけて害している。一方、 我々が核兵器を放棄しなければ、経済の発展を遂げられないと威嚇、恐喝すると同時に、他の道を選択すれば豊かに暮らせるように援助すると懐柔もしている。敵の策動は、歴史の挑戦を退けて日を追って上昇一路をたどっている朝鮮の前進を阻もうとする必死のあがきに過ぎない。
堂々たる核保有国になった今日、我々には強力かつ威力ある戦争抑止力に基づいて経済建設と人民の生活向上に向けた戦いに力量を総集中することのできる有利な条件が整った。敵は、わが国を軍備競争に引き入れて窒息させようとしているが、我々は国防費をもっと増やさず、少ない費用をもっても戦争抑止力を引き続き強化する一方、経済建設と人民の生活向上に大きな力を入れている。核抑止力を磐石のごとく打ち固めること自体が、最高の経済建設である。
最先端科学技術の精髄をなす核および宇宙ロケット技術の絶え間ない発展は、国の全般的科学技術を世界的水準に引き上げる事業も積極的に促している。主体的な原子力工業の発展は、核武力の強化と同時に不足する電力問題も解決できるようにしている。実に、並進路線は諸大国の間に挟まれて民族の災難を生む禍根となっていた朝鮮の地政学的位置を世界政治の構図を左右するうってつけの所として光を放つようにした。
「朝鮮は核実験を通じて失うものより、得るものがもっと多い。朝鮮は通常兵器に対する投資を大幅に減らしてより多くの資源を経済発展に回すであろう」「北朝鮮は核保有国である、この一言に込められている無限の意味は魔術のように北朝鮮に限りない繁栄と幸福を与えるであろう」朝鮮の並進路線に対する全民族と進歩的な人類の視角はこうである。朝鮮労働党の新たな並進路線は科学であり、真理である。歴史のあらゆる挑戦を切り抜け、血潮を流して探した真理の道で朝鮮人民はたった一歩も退かないであろう。時間もわが方のものであり、正義もわが方のものである。最後の勝利は、並進路線を堅持している我々にある。