2013年の中国外交(自己評価)

2014.01.10

*中国国務院(中国政府)傘下の中国網の国際問題の論者としてしばしば登場する暁岸(「国際時評作者」という紹介だけで所属は分かりません)が12月24日及び25日付で、習近平・李克強新指導部のもとにおける2013年の中国外交を総括した文章を載せています。また、1月6日付の中国新聞網に掲載された『瞭望週刊』所掲の陳向陽(中国の検索サイト・百度によれば、中国現代国際関係研究院戦略研究中心副主任)文章も2013年の中国外交をマクロの視点でまとめ、ごく簡単に2014年への展望にも触れています。
両文章の内容はもとより習近平・李克強外交に対する肯定的な評価なのですが、昨年(2013年)12月のバイデン訪中時における会談内容あるいは対日関係への言及部分を含め、中国の内部文献にアクセスを持つものならではの事実関係の指摘及び中国指導部の考え方を理解することに参考となる内容が豊かに含まれていますので、要旨を紹介します。
 なお、この二つの文章を理解する上では、習近平体制下で打ち出されたいくつかの外交理念についての説明が必要だと思っていたのですが、折良く1月8日の環球時報HPは、尹承徳(前駐米大使館参事官)文章「党中央の4つの外交新理念を読み解く」を載せ、必要な基礎知識を要領よくまとめています。したがってまずはこの文章から紹介し、ついで暁岸及び陳向陽の文章を紹介することにします(1月10日記)。

<尹承徳文章>

習近平総書記の党中央は、時代及び世界の大勢の新しい特徴と変化に応じて数多くの外交上の新思想・新理念を提起し、中国の外交政策思想及び国際関係理論体系を豊かにし、充実させている。
第一のポイントは中国ドリームを国際関係と結びつけたことだ。中国ドリームの核心は、「二つの百年」という壮大な目標及び中華民族の復興を実現することにある。習近平は、中国ドリームは「平和・発展・協力・共嬴のドリームであり、アメリカン・ドリームを含む世界各国人民のうるわしいドリームと相通じるものだ」と指摘した。習近平は、中国ドリームは「中国人民を幸福にするだけでなく、世界人民を幸福にするものだ」と強調している。中国ドリームの提起は、平和発展の道筋、平和外交政策、協力共嬴の対外開放戦略及び善隣友好政策を堅持するという中国外交の信念・決意・努力を確固たるものとした。中国ドリームの提起は、西側の反中勢力が言いふらしている「中国脅威論」を打ち破り、中国に対する疑惑と誤解を解くことに極めて意味があり、必ずや中国の国際的な威信及び影響力を高め、中国外交及び対外関係がいっそうの高みに向かって発展する新時代を切り開くだろう。

第二のポイントは、各国は「運命共同体」であるという画時代的意義を有する新しいテーゼを提起したことだ。習近平はロシア訪問中にモスクワ国際関係学院での講演の中で、「この世界は、相互にかかわり、依存し合う度合いが空前に深まっており、人類は同じ地球村で生活し、歴史と現実とが入り交じる同一時空の中で生活しており、私たちはますます「あなたあっての私、私あってのあなた」という運命共同体になっている」と指摘した。このまっさらな新理念の導きのもと、中国は、各国との間で相互信頼、平等互恵、包容互戒、協力共嬴の外交方針を確立しかつ大いに行い、対外関係及び国際情勢・関係の健康な発展を推進することに力を尽くしている。運命共同体という重要な考え方は、周辺諸国及び国際社会から広く賛同を得ており、協力共嬴をコアとする新型国際関係に力強いエネルギーを注入することとなった。

第三のポイントは時代の潮流と合致しかつ積極的に実利的な中米新型大国関係という構想を提起したことだ。中米関係は両国の安全と発展にかかわる大局であるとともに、世界情勢及びその進路にも影響するカギとなる要素だ。したがって習近平は、オバマと農場会談を行ったとき、中米新型大国関係を正式に提起し、はじめて3点の核心的内容を明確に規定した。その3点とは、衝突・対抗しないこと、相互に尊重すること、そして協力共嬴である。これにより、中米関係が健康かつ安定的に発展するための準則が確立され、方向が示された。両国首脳はこの点について重要な共通認識を達成し、このことによって中米関係は新しい発展段階に上ることになった。

第四のポイントは周辺諸国との関係に関する理念を深めたことだ。習近平と李克強はそれぞれ中央アジア及び東南アジアを訪問し、関係地域機構首脳会議に出席している間に、地域一体化の壮大な構想を明らかにすると同時に、上海協力機構メンバー国及び中国-ASEAN諸国の相互関係をレベル・アップするための新政策理念として「新シルク・ロード精神」及び「東アジア精神」を提起した。習近平は、上海協力機構の「新シルク・ロード精神」を、団結信頼、平等互恵、包容互戒、協力共嬴、(異なる民族・文明・文化を背景とする国家間の)平和共受・共同発展と規定した。李克強は「東アジア精神」を、ASEAN主導、協商一致、相互配慮、開放包容、共同発展と規定した。習近平はさらに10月下旬に開催された周辺外交工作座談会の席上、「親・誠・恵・容」という周辺外交の新方針を提起し、対周辺諸国外交の政策及び思想を豊かに高めた。これらの新理念は、中国平和外交政策の精髄を体現するとともに、周辺諸国の願望及び利益とも合致している。

<暁岸文章>

外部世界はしばしば中国外交において起こりつつある変化を「強気」という言葉で形容するが、変化していることと変化していない表面的な現象を通じて基本的な手がかりを整理することによって分かるのは、新指導部の確固とした平和的発展の意思と先達を受け継ぐ改革精神と世界的視野こそが新しい時代の中国外交の支柱であるということである。

新しい関係の理念

アメリカのバイデン副大統領が北京を訪問した1日半の間、中国が東海に防空識別圏を設定した問題をめぐる争いと対立により、メディアの関心はほとんどもっぱら中日間の喧嘩に対するアメリカの「仲裁」に移ってしまった。
 12月4日にバイデンと習近平は総計4時間以上の会談を行い、元々45分と設定されていた両首脳だけの会談は2時間にも及んだ。バイデンはこの中で中国の防空識別圏問題についてアメリカの関心を表明し、中国がさらに事態を拡大するような行動に出ないことを要求したと伝えられた。バイデンのこの提起は突っ返された。中国が発表したニュース原稿では「習近平は、台湾問題、チベット関連問題及び東海防空識別圏設定党問題に関する原則的立場を述べた」と特筆大書した。アメリカのメディアが注目したのは、バイデンが人民大会堂から出て来たときの表情は重苦しく、疲労がにじんでいたことだ。
 (しかし)中米間で意思疎通しなければならない議題は多いのであり、中日関係の緊張という問題はその中の一部に過ぎず、両国関係を安定的に発展させることこそが双方ハイレベルのもっとも関心のあることであり、中米の共通の利益に合致する最大の事柄でもある。ワシントンがバイデン訪中を通じてもっと望んだことは、オバマ政権の国内経済回復、グローバル問題への対処に対する北京の支持取り付けであり、この2点についての成果如何は、歴史がオバマを如何に評価するかということ、また、民主党が長期政権を維持できるかどうかにかかわる問題なのだ。
 ワシントンははじめこそ日本と一緒になって中国の防空識別圏設定を非難したが、中国を過度に刺激しないようにするため、アメリカの民間航空機が中国の規則に従うことを提案もし、事実上は中国の防空識別圏の存在を黙認した。アメリカのこの態度調整は、東京の右翼勢力の足並みを乱し、大いに失望するところとなった。中日間でのバランスを確保することはアメリカのアジア太平洋戦略の重要な内容であり、ただ時間の推移に従って、アジア2強のいずれが重くいずれが軽いかがハッキリできるし、ハッキリさせなければならないのだ。

アメリカと日本のメディアが意識的に無視している事実は、バイデンの訪中中、圧倒的な時間は第18期3中全会後の中国の改革及び米中関係に関する問題についての意見交換に費やされたということだ。双方は、対話、交流及び協力を強化し、新型大国関係の建設に努力することについて完全に同意した。
 新型大国関係の構築とは、習近平が国家主席に就任した後、外交分野で力を入れて打ち出した重要な理念であり、そのもっともプライオリティが高い中身は、台頭する大国と既得権益を守ろうとする大国との間には必ず対抗衝突が生まれるという「歴史的宿命」を打破し、相互尊重、互利共嬴の関係という構造を形成することだ。2013年6月に習近平はカリフォルニアに赴き、オバマとの間で伝統的な首脳会談のモデルの殻を破った「農場会談」を行い、8時間以上にわたる意見交換を通じて新型大国関係を協力して築くという戦略的な共通認識を確定し、これによってグローバルな安定的枠組みの重要な条件が正式に誕生を告げた。
 習近平のアメリカ訪問は中国内外の喝采を博し、中国外交がさらに積極的になることを象徴するものと見なされたが、これは中国新政権による全方位の立体的外交の積極的布石における一段落に過ぎない。

運命共同体

習近平とその同僚たちは、内外情勢が比較的複雑な時期に政治のトップに登場した。彼らは、中国の改革の全面的な深化に力を尽くし、「国内発展と対外開放とをさらに統一させ、中国の発展と世界の発展とを連携させる」ことを決意している。彼らは、国内矛盾が多発し、国際的に複雑に情勢が変わる中で改革を推進することが困難を極めること、中国が勢力を集中して自らの行うべきことをうまく行うためには平和的な国際環境を持続して確保しなければならないことを知悉している。
 国内改革を推進し、平和的発展を堅持する上で、外部的なかく乱要因がますます増えることは見やすいことである。潜在的な危険としては以下の3つがある。一つは、世界経済が「ポスト・クライシス時代」に入り、主要な経済単位が構造調整及び規制緩和を進めることによって競争及び波乱のリスクが増大していることだ。第二は、オバマ政権が進める「アジア・リバランス」戦略により、中国とアメリカ、日本、ASEANとの関係において同時的にいざこざが起こり、周辺の戦略的圧力が高まり、領土海洋紛争が突出していることだ。3番目は、朝鮮半島、シリア、イラン等のホット・スポットの問題が高度に緊張し、中国の戦略的利益、国境の安定そしてエネルギー上の安全保障に直接影響を与えていることだ。
 このような複雑な局面を前に習近平はトップダウン設計とボトムライン思考を強化し、大国外交を積極的に展開することを強調する。  2013年3月、習近平は最初の訪問国としてロシアを選んだが、このアレンジは、北の戦略的壁を強化し、東の海上からの圧力を軽減するという深謀遠慮の結果と広く理解された。この訪問は中ロ戦略協力パートナーシップを深め、世界の多極化を推進するという両国の共通の意思を強化し、経済貿易、エネルギー、軍事工業、航空等の分野における大量の巨大協力プロジェクトの署名という結果をもたらした。
 本当の意味での重心は周辺(諸国)への傾斜ということだ。中国新外交における布石において、大国関係と周辺外交とが最重要な2方向だが、ロシアは大国と隣国という二重の性格を備えている。
 2013年12月までに、習近平主席と李克強首相はそれぞれ4回と3回外国訪問し、訪れた22ヵ国中12ヵ国は隣国であり、国外で出席した6つのマルチのサミットのうち4つは周辺地域における協力にかかわるものだ。中国とASEAN、上海協力機構のメンバー国、及びインド、パキスタンなどの周辺諸国とのパートナーシップは高められ、経済貿易、金融、エネルギー、安全保障、交通、人文等各領域での協力は大きな進展を達成した。
 2013年10月に中共中央は周辺外交工作座談会を開催した。習近平は話の中で「親・誠・恵・容」の理念を提起し、周辺諸国が中国にとって極めて重要な戦略的意義を有し、周辺外交に対してさらに積極的になるべきことを強調した。彼は、出席した高級外交官たちに対して、「与隣為善、以隣為伴」の政策方針を堅持し、周辺において「人心を得、人心を暖めることを多く行う」、「運命共同体」を積極的に構築するように指示した。
 日本とフィリピンは中国が取り組んでいる善隣関係のネットワークにおける例外をなしている。この両国は、領土及び海洋紛争で中国と深刻に対立しており、二国間関係はにらみ合いに陥っている。この一年を通じて安倍晋三とアキノ3世は、中国との対決の力比べにおいて得点を稼げなかったのみならず、紛争地域における実効支配においても彼らにとって不利な形で既成事実が生まれることを受け入れざるを得なかった。
 領土主権などの国家の核心的利益がかかわる重大問題においては、中国は明確な戦略を形成しつつある。つまり、紛争に関する対話交渉及び平和的解決を堅持すると同時に、相手に対してはレッド・ラインを引いて武力で抑止し、内部的には最悪の事態に対する備えを行い、個々の国家が外部勢力と結託して中国の主権的利益を蚕食することを絶対に許さないということだ。
 中日間の摩擦は、本質的には地縁戦略競争の趣がある。現在の面倒な局面は2012年に日本政府が「島購入」を完成させ、釣魚島及び付属島嶼を国有化し、一方的に主権帰属に関する現状を変更したことに起因する。安倍政権は就任以後故意に中日間の紛争をエスカレートさせたが、これは国内で改憲を推進し、一気に戦後の束縛から脱却するための口実、条件をつくり出すためである。中日間の問題を如何に処理するかは、習近平が就任後に直面したもっとも険悪な外交的挑戦となっており、駆け引きは今後も続くだろう。しかし、「中日間には一戦があるか」というあるいはニセ命題かもしれない問いかけについては、ネットやメディアの耳をそばだてさせるスペキュレーションや宣伝に従うよりは、中国指導部の戦略的沈着及び外交的知恵を信じよう。
 中国とフィリピンとの間の問題は相対的に簡単で、北京はすでに、ASEANを引っ張り込んで中国に対抗しようとしたアキノの企てを精緻な準備で進めた外交によって瓦解させた。中国及び大多数のASEAN諸国からすれば、地域的経済一体化を共同で推進することこそが中国-ASEAN関係の主軸であり、南海問題は中国と少数の国々との間の紛争であるに過ぎない。とは言え中国としては、「南海行動宣言」の精神及びASEAN10ヵ国が開始した「南海行動準則」に基づいて協議を行う。私欲に基づいて中国-ASEAN関係を簒奪して中国を孤立させようとしたフィリピンは最終的に自らを孤立に追い込んだ。

外交的ホット・イッシュー

2013年の外交的なホット・イッシューの流れを検証することは、中国新指導部の平和に対する意欲を理解する上で格好のモノサシである。中国は確固として平和の側に立ち、武力解決に反対し、積極的に和解を勧め、交渉を促し、大国間協調を展開し、進んで「中国のプラン」を提起し、朝鮮半島情勢、イラン核問題、シリア問題の政治的解決の方向を守るために重要な役割を発揮した。
 朝鮮の第3回核実験が引き起こした危機のプロセスにおいて、中国は安保理決議を明確に支持して、真剣に履行し、自らが持つチャンネルを通じて朝鮮、韓国、アメリカなどの当事国に対してアドバイスを行い、「安保理は、朝鮮の核問題にかかわることについて、自分勝手のために世界をかき乱してはならない」、「中国の入り口で事を起こすことは絶対に許さない」というボトムラインを引いた。朝鮮国内の実情について外部世界が知らない状況のもとで、中国の公平な立場と明確なシグナルとが関係国の誤断の可能性と冒険的衝動とを最大限度押さえ込み、情勢がさらに悪化することを阻止した。
 2013年末には張成沢が突然に職を解かれかつ処刑されるという事件が世界を驚かせた。中国の反応は冷静かつ淡々としたもので、結論を急がなかった。新指導部の「トップダウン設計」と「ボトムライン思考」は対朝鮮政策にも適用されており、そのことによって情勢の変化の中でチャンスをつかみ、半島情勢の転換と6者協議再開を推進し、しかも中国の戦略的利益が試練に晒されないことを確保していると信じるに足る理由がある。

開放による改革促進

中国新指導部が真剣に取り組んでいるのは国内の改革を順調に推進することであり、対外工作でもっとも力を注いでいるのは対外的に開放を拡大し、協力を促進することであり、新しい時期の中国外交のすべては畢竟するにこの目標に従い、これに尽くすことにある。習近平と李克強が政権に就いた後、対外開放の新しいコースを模索する動きは精力的かつ周到なものであり、新しい改革の方針を正式に打ち出すに当たって対外的「説明会」と事前配置を行った。即ち、2013年前半にはスイス及びアイスランドと二国間の自由貿易協定を締結し、ASEANとの間では中国-ASEAN自由貿易区の高度化を取り決め、上海に自由貿易試験区を設立した。同年後半には、投資許可以前の段階における内国民待遇とネガティヴ・リストを基礎とした二国間投資協定交渉をアメリカとの間で再開し、ユーラシア大陸を貫通する「シルク・ロード経済ベルト」及び「21世紀海上シルク・ロード」という戦略構想を提起し、周辺諸国との間のインフラ施設の相互接続建設を加速することを目的とする「アジア・インフラ投資銀行」設立を提起した。
 中国は現在までに18の自由貿易区を建設し、対象は31の国家・地域に及び、すでに12の自由貿易協定を結び、さらに6協定が交渉中である。WTO加入のメリットが不断に失われているのに伴い、中国としては新たな国際貿易の枠組みを急ぎ、グローバルなかつ高レベルの自由貿易ネットワークを形成しなければならない。
 中国は、アメリカが主導するTPPに対する姿勢にも微調整を行い、ASEANと「地域的全面的経済パートナーシップ」交渉を推進すると同時に、TPP等の地域協力メカニズムとの双方向の交流も模索し、地域的及びグローバルな貿易アレンジメントという「両輪を同時にまわす」ことにしている。
 2013年9月11日にダボス・フォーラムが大連で開催され、李克強は国務院総理となってからではもっとも重要な演説を行った。即ち、中国の発展は改革に依拠しており、開放を抜きにすることもできないこと、中国経済の構造転換と高度化は世界経済の繁栄及び発展にいっそう貢献すること、中国は世界とともにこの一大商機を分かち合うことを希望するとともに、各国も中国の発展に対してよりよい協力環境を提供してほしいことを李克強は述べたのだ。
 習近平は10月7日、インドネシアのバリ島で行われたAPEC首脳非公式会合の期間中に演説を行い、世界経済の新たな成長の原動力は改革、調整及び革新だけであり、中国の改革は「常に進行中であり、完成するときはあり得ない」と強調した。
 それから約1ヶ月後に中共中央の第18回三中全会が北京で開催された。会議は全面的に改革を深化する決定を行い、中国の発展における新段階を開始した。経済体制改革が全面的改革深化の重点であることを強調した決定においては、開放型経済新体制の構築が重要な分量を占め、経済のグローバル化という新しい情勢に適応し、開放で改革を促進し、全方位開放の新局面をつくり出すと指摘している。
 2013年の中国外交は、政権党における権力交代及び改革再始動によって非常に精彩を放つものであった。王毅外交部長の発言を借りれば、この一年は「中国外交の歩みにおいても非凡な一年」であり、「新しい情勢の下における中国外交は、より広い視野と、さらなる進取の姿勢とによってグローバル規模で展開された」のである。

<陳向陽文章>

2013年を回顧し、2014年を展望するとき、次の5つの新しい動きが注目される。
 第一に、主要大国の間のパワー・バランスに新たな変化が生まれ、それぞれの消長に新しいトレンドが明らかになってきていることだ。
 冷戦後に形成された「1超多強」の国際構造は22年を経て変化し、今日では「新・1超多強」に取って代わられつつある。つまり、「1超」たるアメリカの優位は顕著に下がり、内外に困難を抱える窮状が突出しつつある。「オバマ主義」が強調するのは、対外的干渉で利益を追求し、能力に応じて事を進め、同盟国や友邦の力を頼るというもので、時には「第二線」に退くこともいとわないというものだ。「多強」に関しては6ヵ国をさらに二つに分類できるのであり、中国、EU及びロシアがアメリカに次ぐレベルにあり、日本、インド及びブラジルが第3のレベルにいる。中国は国際的に総合力で「世界No.2」と広く見られてはいるが、多くの限界と制限を抱えており、「世界No.2」として背負い込むチャレンジはチャンスに劣らない。
 「新昇老降」という大勢は動かないが、その流れが緩やかになることはある。新興大国の経済社会発展は様々な困難にぶち当たっており、成長はおしなべて緩やかになり、改革の圧力は増大し、ブラジル、トルコ、インドなどでは大規模な社会的騒動が起こっている。旧大国に関しては、深刻な後遺症について顧みることなく量的緩和政策を次々と実行し、金融債務危機にも次々と新しい手を打つことによって、状況には改善が見られている。アメリカは、数年にわたる量的緩和、オイル・シェールの大々的開発、3D印刷などの新しい工業及びエネルギー革命での成功によって経済は回復し、企業も安定しており、連邦準備局は2014年1月から量的緩和縮小を開始することを決定した。日本は量的緩和と国債発行によってデフレ脱却を図り、ユーロ圏は経済的衰退からの脱却に懸命だ。

第二に、大国関係に新たな組み合わせが起こり、大国間の駆け引きにおいて新しい様相が現れていることだ。
 経済のグローバル化と地球規模の挑戦とは各国の相互依存を深め、敵と味方という境界があいまいになり、「パートナーシップ」が大手を振ってまかり通るようになり、地域的、地縁的駆け引きが全面的に展開されている。
 新旧の集団が競合の駆け引きを展開している。即ち、西側の老舗大国は新しい連合を展開しているのであり、日米はTPPを交渉し、米欧間ではTTIPを話し合い、米欧は協調してシリア危機及びイラン核問題に対処している。新興大国は大々的に協調を進めており、中ロの戦略的協力を主軸としてBRICSは開発銀行を作ろうとしている。
 3組の大国関係が関心を集めている。一つは米ロの力比べで、ロシアが主導権を握っている。ロシアは「化学兵器で平和を交換」してシリア危機を改善することを唱え、スノーデンを断固として庇護し、ウクライナ政府を支え、米ロ及びロシア及び西側の矛盾を高め、ロシアの戦略的エネルギーとシェアは向上した。プーチンは西側の覇権を巧妙に牽制あるいはこれに挑戦し、西側にとって頭が痛い材料ばかりとなっている。二つ目は中米の力比べで、何度も渡り合った後、台頭する大国と覇権大国が平和共存、相互包容、共同進化の「新型大国関係」について共通の認識を達成した。三つ目は中日の力比べで、中国が全面的に日本を凌駕する大勢は期して待つべきものがある。

第三に、世界の地縁政治においては2箇所で新しい変化が起こっている。
 一つは中東・北アフリカの乱れに乱れた情勢だ。(シリア、エジプト、リビア、イエメン、イラク、イランについて述べた上で)この地域では多くの矛盾が複雑に入り組んでおり、様々な勢力が激しく闘い合い、今日の世界の地縁政治におけるブラック・ホールと呼ぶにふさわしく、その安全保障上のリスクと不確定性は高止まりの状況を呈している。
 もう一つはアジア太平洋地域の駆け引きが複雑で危険な新局面を呈していることだ。アメリカは居丈高であり、「リバランス戦略」を推進してアジア太平洋での主導権を狙っている。またアメリカは、中国の「海洋的台頭」がアメリカのこの海域での主導権に挑戦することを警戒し、中国と近隣諸国との海洋領土紛争を利用し、日本、フィリピン、ヴェトナムなどを支援して中国に対抗するように仕向けている。
 日本は寂しさに甘んじず、地縁的影響力を獲得するために正義に悖る行為をとることをいとわない。安倍政権は、「中国脅威」を煽ることで「集団的自衛権」を手に入れ、更には対外的武力行使ひいては先制攻撃に向かおうとしている。安倍政権は、「積極平和主義」の化けの皮のもと、対外侵略に失敗した歴史の教訓を無視し、その右傾化の逆流及び軍事大国になろうとする野心はすでに東アジアの平和と安定に対する重大な脅威となっている。

第四に、国際安全保障に対する新旧の挑戦が交じり合い、同時的にエスカレートしている。
 伝統的な安全保障上の問題は勢いを増している。領土特に海洋領土紛争はエスカレートし、アジア太平洋における軍備競争を引き起こしており、日本、インド、ヴェトナム、フィリピンなどは軍事費を増大させ、アメリカはアジア太平洋の軍事力を増強し、この地域の海空で戦争が起こるリスクが高まっている。米ロは最先端兵器体系の開発を競いあっており、海洋、宇宙及び核などの戦略分野での管制高地の攻防に余念がない。
 非伝統的分野の安全保障の情勢も厳しい。(インターネット、テロリズム、気候変動を例示)

第五に、中国外交が自信を持って主動的な新しい局面を切り開いていることだ。
 2013年を回顧すると、中国外交は新しい物言いをし、新しい路線を歩み、新しい局面を切り開き、世界の平和及び発展に対して不断にプラス・エネルギーを加えている。中国は平和・発展・協力・共嬴の旗印を堅持しつつ、「ボトムライン思考」及び核心的利益を断固として守ることにも意を注ぎ、中国外交における「4つの布石」を全体としてレベル・アップさせている。その4つとは、大国外交の均衡的発展(中ロ、中米、中欧という諸関係を同時的に発展させている)、周辺外交の安定的発展(周辺外交工作座談会で戦略計画を強化し、日本が釣魚島で蠢動することに有効な反撃を加えた)、途上国外交の強化発展(習近平が提起した「政治的には正義、道義を堅持し、経済的にはWin-Winの原則を厳守するという観点」が大いに行われた)、マルチ外交における主導権発揮(世界の流れを導き、国際的発言権を強化した)である。
2014年を展望するとき、中国の平和発展は4つの外部的挑戦に直面している。一つは周辺の安全保障環境が厳しいことだ。朝鮮の政局が紆余曲折に富んでいることは朝鮮の核問題に新しい変数を加えており、アメリカがアフガニスタンから撤兵した後の同国にはテロリストの組織が溢れる危険性があり、日本の右傾化とアメリカの対日「放任」はリスクを醸成している。第二は、国際的なホット・スポットの多変性だ。シリア危機の政治的解決はたやすくなく、イランの核問題には変数が充ち満ちており、中国の「大国としての責任」は増すことはあっても減ることはない。第三は、海外進出に伴う利益とリスクが日増しに増大していることだ。第四は、西側が国際的な経済貿易上の新ルールを定めようとする中で、中国の経済外交上の難度が増大していることだ。