安倍首相靖国参拝(中国の公式反応)

2013.12.29

*安倍首相が12月26日に靖国神社を参拝したことに対する中国の反応は、当然のことながら激烈を極めていますが、その内容は極めて冷静です。その主なものを紹介します(12月29日記)。

 中国の公式の反応としては、中国外交部のスポークスマンが激しい言辞で批判を行ったのはもちろんですが、即日、王毅外交部長が木寺大使を召喚して、また、程栄華駐日大使も斎木次官に対して「厳正な申し入れと強烈な抗議」を行い、さらに28日には楊潔篪国務委員(中国政府の外交担当最高位者)も談話を発表しました。この対応は、尖閣問題以来外交部スポークスマンをして対応せしめることにしていた中国としては極めて異例です。
また、国防部スポークスマンも26日の定例記者会見で、記者の質問に答えて厳しい批判を行いましたし、全国人民代表大会(日本の国会に相当)及び政治協商会議の外事委員会の責任者も27日に対日非難の声明を出しました。
以下は人民日報HPに載っている翻訳ですが、国防部の耿雁生スポークスマンについては私の拙訳を紹介します。

<楊潔篪国務委員談話>

先般、日本の安倍晋三首相が天下の大悪に憚ることなく第二次世界大戦のA級戦犯が祭られている靖国神社に参拝しました。これは嘗て日本軍国主義の侵略と植民支配を受けた各国人民の感情を由々しく傷付けることであり、全世界の平和を愛する人民に対する公然たる挑発であり、歴史の正義と人類の良識を乱暴に踏みにじることであり、世界反ファシズム戦争の勝利の成果と国連憲章を基礎とする戦後の国際秩序に対する狂妄な挑戦であります。日本指導者の歴史に逆行する行動は中国政府と人民及び国際社会に強く反対され厳しく糾弾されていることは当然であります。
 靖国神社問題の本質は、日本政府が日本軍国主義の対外侵略と植民支配の歴史を正しく認識し、深く反省できるかどうかということであります。日本の首相である安倍氏が靖国神社に参拝することは、決して日本の内政ではなく、なおさら個人の問題などではなく、侵略と反侵略、正義と邪悪、光明と暗黒に関わる善悪正邪の重大問題であり、日本指導者が国連憲章の趣旨と原則を遵守するかどうか、平和発展の道を歩むかどうかということに関わる根本的方向性の問題であり、日本とアジア隣国及び国際社会との関係の政治基盤に関わる重大な原則的問題であります。安倍氏が行っていることは、日本を各国人民と日本国民の根本的利益を損なう危険な道に導こうとするものであり、 すでに国際社会と日本各界の有識者の強い警戒心を引き起こしています。
 中国人民は侮られるものではありません。アジア人民と世界人民は欺かれるものではありません。安倍氏は過ちを認めなければなりません。過ちを正さなければなりません。実際の行動を取って、その重大な過ちにより生じる劣悪な影響を取り除かなければなりません。我々は、安倍氏に対し、あらゆる幻想を捨て、覆轍を二度と踏まないよう、忠告するものであります。さもなければ、アジア隣国と国際社会の信頼を一層失い、歴史の舞台における徹底的な失敗者になるに違いありません。

<王毅外交部長発言>

王部長は次のように述べた。きょう安倍首相は歴史の潮流に逆らって、第二次世界大戦のA級戦犯を祀る靖国神社を強硬に参拝した。これは国際正義に対する公然たる挑戦であり、人類の良識をほしいままに踏みにじるものである。私は中国政府を代表し、日本に強く抗議し、厳しく非難する。
王部長は次のように指摘した。靖国神社はかつて日本軍国主義の対外侵略戦争発動の精神的道具であり、象徴だった。今も各国人民の反対を顧みず、この上ない罪を犯したA級戦犯をあくまでも英霊として祀っている。靖国神社問題の実質は日本が日本軍国主義による侵略の歴史を正しく認識し、深く反省できるか否かであり、これは中日関係の政治基盤にかかわる重大な原則問題である。中国は世界の平和を愛する人々と共に、いかなる時でも、いかなる形でも日本の指導者の靖国神社参拝に一貫して明確かつ断固として反対する。
王部長は次のように指摘した。安倍首相が独断専行し、あくまでも参拝したことは中日の四つの政治文書の原則と精神に重大に反し、日本の歴代政府と指導者の歴史問題での態度表明と約束に反し、すでに厳しい局面に陥っている中日関係に新たな重大な政治的障害をもたらした。中国はこれを決して容認しない。日本は安倍首相の今回の行動によってもたらされる重大な政治的結果に対してすべて責任を負わなければならない。日本が下心をもって引き続き中日関係の最低ラインに挑戦し、両国間の緊張・対立を激化させようというなら、中国は徹底的に受けて立つ。靖国参拝の逆行は最終的に自業自得の結果になるだけで、日本は引き続き歴史の被告席に座ることになる。安倍首相の行為はまさに日本を非常に危険な方向に引っ張って行っている。歴史の教訓を汲み取らなければならない。中国を含む国際社会は警戒を高め、歴史を後戻りさせることを決して許さず、もと来た道に戻ることを決して許さない。

<秦剛スポークスマン談話-12月26日->

2013年12月26日、日本の安倍晋三首相は中国の断固とした反対を顧みず、第二次世界大戦のA級戦犯が祀られている靖国神社を横暴にも参拝した。中国政府は中国と他のアジアの戦争被害国人民の感情を乱暴に踏みにじり、歴史の正義と人類の良識に公然と挑戦する日本の指導者の行為に強い憤りを表明し、日本に強く抗議し、厳しく非難する。
日本軍国主義が発動した侵略戦争は中国などアジアの被害国人民に深く重い災難をもたらし、また日本人民もその害を深く受けた。靖国神社は第二次世界大戦中、日本軍国主義の対外侵略戦争発動の精神面の道具、象徴となり、アジアの被害国人民に対してこの上ない罪を犯した14人のA級戦犯を今も祀っている。日本の指導者が靖国神社を参拝することの実質は、日本軍国主義による対外侵略と植民地支配の歴史を美化し、日本軍国主義に対する国際社会の正義の審判を覆し、第二次大戦の結果と戦後の国際秩序に挑戦しようとするものである。日本の指導者の道理に逆らう行為は日本の今後の進む方向に対するアジアの近隣国と国際社会の高度の警戒と強い懸念を引き起こさないわけにはいかない。
釣魚島問題で日本による「島購入」の茶番劇によって中日関係は昨年から重大な困難に直面し続けている。最近も日本は軍事・安全保障面で下心をもって、いわゆる「中国の脅威」をあおり、中国の安全面の利益を損なっている。こうした状況の中で日本の指導者は、ことを収めるどころか、以前よりひどくなり、再び歴史問題で重大なもめごとを起こし、両国関係の改善・発展に新たな重大な政治的障害をもたらした。日本は今回のことによるあらゆる結果に責任を負わなければならない。
侵略の歴史を確実に直視し深く反省し、真に「歴史を鑑として」はじめて、日本はアジアの隣国と「未来志向」の関係を発展させることができるということを私は改めて強調したい。われわれは日本が侵略の歴史を反省するという約束を守り、措置を取って誤りを正し、悪影響を排除し、実際の行動でアジアの隣国と国際 社会の信頼を得るよう厳粛に促す。

<秦剛スポークスマン定例記者会見-12月26日->

問:日本の安倍晋三首相はきょう、靖国神社を参拝した後、参拝は国のために戦って犠牲となった英霊を哀悼するためで、日本の平和と繁栄はその犠牲のもとに築かれたと述べた。安倍首相はまた戦後の日本は自由で民主的な国をつくり、ひたらす平和の道を歩み、今後も世界の平和、安定、繁栄のために責任を果たすと述べた。中国はこれについてどのようにコメントするか。
答:日本軍国主義が発動したあの侵略戦争について、すでに歴史的な定論がある。わたしは次のように問いたい。戦場で倒れた日本の軍人はだれのために死んだのか。靖国神社に祀られている第二次世界大戦のA級戦犯はなぜ正義の審判を受けたのか。彼らの犠牲の上の平和と繁栄とはいったいどのような平和と繁栄なのか。日本の指導者の今回のような発言には、裏表があり、黒を白といいくるめ、是非を転倒するものである。日本の一部政治屋は民主、自由、平和を口にする一方、軍国主義の亡霊を呼び戻し、対外侵略と植民地支配の歴史を美化しており、これはまさに民主、自由、平和を冒とくするものだ。
軍国主義の亡霊がいつまでもつきまとい、歴史を直視する勇気がなく、あえて歴史に責任を負おうとせず、歴史的正義と人類の良識に公然と挑戦し、第二次世界大戦の結果と戦後の国際秩序に挑戦しているのに、自由と民主を語るいかなる資格があるというのか、世界の平和と繁栄のため責任を果たすいかなる資格があるというのかと、われわれは指摘しなければならない。
問:第一に劉延東副総理のきょう午後に予定されていた日中友好議員連盟との会見が取りやめたとなったが、これは安倍首相の靖国神社参拝に対する抗議か。第二に中国は抗議のほか、いかなる措置をとるのか。
答:あなたの二つの質問に一緒に答えたい。安倍首相の靖国参拝は中日関係の政治基盤を損ない、また両国関係の改善と発展に新たな重大な障害をもたらした。日本は今回のことによるすべての結果に対して責任を負わなければならない。
問:安倍首相は靖国神社参拝の後、靖国参拝が政治・外交問題になることを遺憾に思っているとし、中韓の人々の感情を傷つける考えはまったくなく、中韓に対して敬意を抱き、友好関係の構築を希望していると述べた。これに対して中国側のコメントは。
答:靖国神社の問題の実質は日本が日本軍国主義の侵略の歴史を正しく認識し、深く反省できるか否かであるということを指摘したい。それは日本とアジアの隣国との関係にかかわり、中日関係の政治基盤にかかわり、第二次世界大戦の結果と戦後の国際秩序にかかわり、アジアおよび世界の平和と安定にかかわるものである。日本の政府と指導者は歴史問題ですでに態度表明をし、約束をしている。安倍首相の靖国参拝は中日の四つの政治文書の原則と精神に重大に反するもので、これは当然、政治・外交上の極めて重大な是非の問題である。
安倍首相が真に隣国に敬意を抱き、アジアの隣国との関係改善を心から思っているなら、靖国神社ではなく、南京大虐殺記念館に行くべきだ。日本が真に歴史を鑑としてはじめて、アジアの隣国との関係に未来が生まれる。
問:中国は駐日大使の召還を考えるか。
答:安倍首相の靖国参拝に対し、中国は北京と東京でそれぞれ日本側に厳重な申し入れと強い抗議を行った。
問:きょうは毛沢東主席生誕120周年の記念日で、日本の指導者がこの特別な時を選んで靖国神社を参拝したことに、中国はどのように反応するのか。
答:きょうは毛沢東同志生誕120周年の記念日である。こうした時にわれわれは、1938年、中国人民の抗日戦争が正に苦難に満ちていた時に毛沢東同志が「持久戦について」と題する演説の中で、中国は大国であり、進歩し、助けが多く、最後の勝利は中国にあると述べたことを特に思い出す。

<華春瑩スポークスマン定例記者会見-12月27日->

中国外交部の華春瑩報道官は27日の定例記者会見で、日本の安倍晋三首相の靖国神社参拝に関する質問に答え、参拝後の詭弁もこの1年間のさまざまな言動も、そこから見えるのは「虚偽、狂妄、自己矛盾」で、「日本の指導者の弁明はまったく無力で、根本的に反論に値しない」とし、次のように述べた。
▽国際社会の反応に留意している。きのう、王毅・外相が日本の中国駐在大使を呼び、厳重な申し入れを行い、日本の誤った行為を厳しく非難し、また外務省報道官が談話を発表し、中国の厳正な立場を表明した。
▽安倍首相は口先では道義や平和、対話を言い、実際にはなにをしているだろうか。侵略未定議論を吹聴し、日本軍国主義の侵略と植民地支配の歴史を美化し、軍備を拡充し、第二次世界大戦の成果を否定しようと企み、戦後の国際秩序に挑戦している。こうした一連のパフォーマンスは安倍首相が日本をどこに引っ張っていくのか、人々を高度に警戒させ、懸念させるのに十分なものだ。こうした自らの歴史を直視しようとしない、あえてしない者がどうして国際社会から信頼を得られるのか、地域と世界の平和と安定のために役割を果たすと人に信じさせることができるのか、問わずにはいられない。
▽道義にかなえば助けが多く、道義を失えば助けは少ない。日本の指導者は歴史を直視し、徹底的に反省し、歴史を鑑とすることを踏まえてアジア諸国と未来志向の関係を発展させるのか、それとも独断専行し、孤立して、間違った危険な道をますます進むのか。選択権はその手にある。
▽われわれは日本の指導者が国と人民の根本的、長期的利益を重んじ、地域の平和と発展を重んじ、責任を果たす人となり、責任ある話をし、責任あることを行うことを希望する。固執して悟らず、国際正義に引き続き挑戦し、人類の良識を踏みにじり、隣国との関係の最低ラインに挑戦しようというなら、われわれは必ず受けて立つ。

<国防部・耿雁生スポークスマン発言>

(質問)本日午前、安倍首相が第二次大戦のA級戦犯を合祀している靖国神社を参拝した。釣魚島紛争から東海防空識別圏、更には安倍参拝と、中日関係はさらに悪化するという分析もあるが、中国軍部は中日関係の悪化した国面に対して対応措置を講じるのか否か。また、日本政府がとった安全保障3文書は日本の安全保障政策における根本的転換と見なされているが、防衛予算が2年連続で増加していることと合わせ、日本の一連の軍備増強に対する中国軍部の反応如何。
(答え)日本の指導者が中国その他のアジアの戦争被害国人民の感情を乱暴に踏みにじり、歴史的正義と人類の良知に公然と挑戦する行為に対して強烈な憤慨を表明し、日本に対して強烈な抗議と厳重な譴責を提起する。日本はこのことによって生じる一切の結果に対して責任を負わなければならない。歴史的な原因により、日本が軍事安全保障政策を調整し、軍備を拡張するいかなる行動も、アジア近隣国と国際社会の関心と警戒を呼びおこす。中国軍は、国家の安全を損なう可能性のあるいかなる動きに対しても高度な警戒を保持し、断固とした措置によって国家の主権と安全を守るだろう。

<全国人民代表大会外事委員会責任者談話(一部)>

われわれは日本の安倍晋三首相が強硬に靖国神社を参拝したことに断固反対し、この世界平和と人類の良識に対する重大な挑発行為を強く非難する。
靖国神社は世界的に悪名高く、いまも第二次世界大戦中に中国などアジア諸国人民に対しこの上ない罪を犯した14人のA級戦犯を祀っている。日本の政治屋は中国などの人民の強い反対を顧みず、日本軍国主義の亡霊を呼び戻す靖国神社を拝礼しており、その実質は日本軍国主義の戦争犯罪を否定し、美化し、戦後の世界の平和秩序に挑戦しようと企んでいる。1931年から45年までの日本が起こした侵略戦争の中で、何千何万もの中国の家庭が家族を失い、想像し難い苦難に遭った。歴史が忘れ去られることはなく、中国人民は戦争犯罪を抹殺するいかなる言動も決して容認しない。

<中国人民政治協商会議全国委員会外事委員会責任者談話(一部)>

12月26日、日本の安倍晋三首相は中国とアジアの隣国の人民の強い反対を顧みず、強硬に靖国神社を参拝し、日本軍国主義の対外侵略と植民地支配の歴史を美化し、国際社会の日本軍国主義に対する正義の審判を覆し、第二次世界大戦の結果と戦後の国際秩序に挑戦しようとしており、これは中国と他のアジアの戦争被害国人民に対する公然とした挑発である。政協に参加している各党派、各団体、各民族、各界の人々はこれに対して強い憤りと厳しい非難を行い、中国政府が日本に示した厳正な立場を断固支持すると表明している。

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