安倍政権の軍事戦略の危険な本質(中国側分析)

2013.12.23

*12月17日に安倍政権が発表した「国家安全保障戦略」、新「防衛計画大綱」及び「中期防衛力整備計画」について、中国は最大級の注目と関心そして何よりも警戒を寄せています。12月19日付環球時報掲載の丁剛(人民日報高級記者)「さらに居丈高な日本への対処法をマスターしよう」、同日付光明日報「「安倍軍事学」 日本を戦車に引っ張り上げる」、18日付人民日報HP所掲の呉懐中(社会科学院日本研究所政治室主任)文章、22日付新華社HPに掲載された、第4回「天下放談」2013年国際問題研討会(18日開催)における兪源(中国国家安全論壇秘書長、少将)、彭光謙(中国国家安全論壇副秘書長、少将)、楊毅(国防大学戦略研究所元所長、海軍少将)、張煥利(新華社世界問題研究中心研究員、日本問題専門家)、陳鳳英(中国現代国際関係研究所所長)の発言が特に注目されますので、それぞれの要旨を紹介します(12月23日記)。

<丁剛文章>

 日本は軍事大国に向けての重要な第一歩を踏みだした。安倍政権が「安保に関する3本の矢」を出すことはアジアでの主導権を争うための軍事的基礎を据えることが目的だ。戦後体制を突破し、日米同盟においてアメリカと対等に振る舞い、同等の義務を担う相棒になることによってのみ、日本がアジアの国々から認められる「正常な国家」となることができると安倍は明確に認識している。
 日本のこの突破には非常に具体的で、その軍事能力向上と対になる政治目標があり、それは集団的自衛権の解禁だ。日本の同盟国が攻撃に遭ったとき、日本はそれを自国に対する攻撃と見なして反撃を加えるというもので、NATO諸国の集団防衛と同じく、いかなる締約国が他国と戦争するときにも、同盟国は武力行使を含めた協力を行わなければならないとするものだ。
 この結果、今後の日本とアメリカとの関係には根本的な変化が起こることになる。米日関係はもはやアメリカが指導し、日本が指導される「主従関係」ではなく、共同作戦・共同防衛の関係になり、日本はより平等な立場でアメリカのAPRでの新しい安全保障の配置構築に参与することになり、正々堂々と軍事的干与を行うことになるのだ。
 安倍が軍事力強化の「路線図」を熱心に推進する背景には、母方の祖父である、A級戦犯だった岸信介の影がある。戦後、岸信介は一貫してアメリカが起草した平和憲法を改正することによって日本を再び「誇りある軍事強国」にしようとした。岸信介は米ソの鋭い対立を利用し、アメリカの対ソ戦略及び「二つの中国」戦略の露払いとなることを甘んじて受け入れ、それによってアメリカが軍事的に日本を支持することを見返りとして受け取った。安倍とは母方の祖父とは同じ穴の狢であり、その共通点は、日本が経済力で強大な国家となるとともに、それ以上に軍事強国として政治的に独立した大国になるということにある。
 岸信介が成し遂げられなかったことを安倍は実現することができるのか。少なくとも現在の地縁政治の変化は昔とは比べものにならないチャンスを安倍に与えている。特にアメリカのアジア戦略は日本が軍事強国の夢を実現する空間を提供している。  アジアの安全保障の配置は大変動のさなかにあり、アメリカはその主動的地位を維持できる新しい配置を構築して、中国の発展を牽制することを急いでいる。アメリカは日本の右翼及びナショナリズムに対しては心穏やかではないが、中国の台頭というチャレンジに直面して、日本の軍事力増強を頼んで中国を牽制し、アメリカのアジアにおける軍事的負担を軽減したいとも望んでいる。こうしたアメリカの考えを安倍は知り尽くしている。安倍は、「アメリカがAPRにおける戦略的配置を調整するに当たり、アメリカ日本を必要とする度合いは、日本がアメリカを必要とする度合いに劣らない」と明確に述べている。
 日本がこの道をどこまで進むことができるかは、アメリカの日本に対する信頼度、中韓の態度、そしてこれら当事者の駆け引きの中で進展する東アジア情勢によって決まることになる。しかしながら、アメリカを除く他の国々は、日本が平和憲法を突破し、軍事的に台頭することを徹底的に阻止するための手元のカードは多くない。日本が軍事的台頭を実現し、アメリカが戦後体制の中で担ってきた対日牽制の役割を調整することになれば、中米日三角関係には変化が生まれるだろう。中国としては、今後のこの地域におけるパワー・バランスを如何に維持するかについて準備しなければならない。中国としては、居丈高な、さらに軍事力を備えた、そしてさらに積極的にAPRの安全保障プロセスに参与する日本に対する対処法をマスターしないわけにはいかなくなる可能性がある。

<光明日報文章>

 歴史的な3文書の公表から明らかになることは、「アベノミックス」はすでに終わり、政治舞台に登場した「安倍軍事学」が平和の衣を脱ぎすて、そのどう猛な真骨頂が姿を現したということだ。
 第一に、「安倍軍事学」は平和憲法に挑戦している。3文書は今後5~10年の日本の安全保障政策及び軍事力整備の大方向を決定するものであり、日本の安全保障の政策及び理念を根本から転換させるものと言える。第二次大戦の敗戦国である日本は、平和憲法の拘束の下で専守防衛であるべきだが、安倍政権の最近の一連の動きからは、同政権が平和憲法に対してあからさまな挑戦を発動したことを見て取ることは難しいことではない。安倍は、憲法改正には多くの障碍があり、短期間で自らの「軍事学」の方針を実現することは不可能であることを知悉している。3文書を発表することは、平和憲法を迂回して戦後体制のくびきを脱し、一歩一歩集団的自衛権解禁という目的を実現するということであることには疑いがない。「安倍軍事学」を世に問うことによって、平和憲法はもはや基本的に有名無実になったと評するものもいる。平和憲法は今後日本の歴史の長河の中で氷に閉じこめられることになるだろう。
 第二に、「安倍軍事学」は軍事大国になることを狙っている。世界は、東アジアに軍事大国が静かに台頭していることを3文書から見届けようとしている。安倍政権は、国内、APR及び世界という3つの地域空間において積極性及び能動性を発揮し、日本の軍事的外交的プレゼンスを突出させ、強化させることを主張している。同時に3文書は、自衛隊の統合機動防衛力を構築し、日本の軍事力の海上や航空の優勢を確保することを提起している。APRにおいては、日米軍事同盟がAPRの秩序を維持する公共的財産であるとし、「海洋秩序」、「航行の安全」などに借りて日本の防衛力をしてAPRの安全保障上の配置により深く、より広範に介入させようとしている。また、武器輸出3原則を改定して、新しい武器輸出管理政策を作ることを提起している。中期防衛力整備計画においては、島嶼防衛能力を高めるために、水陸両用車52両、機動戦闘車99両、ティルトローター機(オスプレイ)17機、滞空型無人機(グローバルホーク)3機、戦闘機(F-35A)28機などを導入するとしている。今後5年間の日本の防衛予算総額は24兆6700億円(約2395億米ドル)に達し、軍事大国となる物的基盤を整えることになっている。
 第三に、「安倍軍事学」は地域の最大の脅威となる。3文書登場の背景は近隣大国の脅威及び積極平和主義である。第一次大戦以来、中日間における戦争はすべて日本が強きを頼んで弱きを侮り、中国に対して略奪と殺戮を行うものだった。第二次大戦後に中日間の兵力差が大きかったとき、中国政府は一度として日本に対して往時の侵略に対する報復を行うことを考えたこともなかった。特に最近になって、「中国の脅威」を盛んに宣伝する安倍は、自衛隊艦船を中国の太平洋の演習区域に乱入させ、中国の無人機が釣魚島上空を飛行するときには撃墜すると公言した。戦争を発動する権利がない日本が大量の武器を購入し、軍備を整えて戦争を準備し、積極平和主義を進めて中国を包囲封鎖しようというのだから、誰がこの地域における最大の脅威であるかは言わずとも明らかだ。
 「安倍軍事学」はアメリカにとってもジレンマとなる。一方でアメリカはAPRリバランス戦略から日本が軍事力を強め、アメリカがこの地域で手を突っ込むことを手助けする能力を強化することを必要としている。他方で、日本が軍事力を際限なく高めることは、アメリカの庇護を抜け出し、アメリカの軍事覇権に挑戦する動機となるだけでなく、周辺国家の軍備競争を刺激し、さらに多くの不安定要因を持ち込むことになる。「安倍軍事学」がアメリカにとってのホット・ポテトになり、アメリカにとって「敵に情けをかけて将来に災いを残す」戦略的敗着となる可能性が極めて高い。

<呉懐中文章>

 3文書は、戦略、政策及び戦術の3つのレベルで戦後日本の国家安全保障戦略及び防衛政策を根本的に転換し、戦後の平和主義に基づく発展の路線を軌道転換した。

◯「国家安全保障戦略」というよりは「国際安全保障戦略」
 戦後初めて制定された「国家安全保障戦略」の内容の80%以上が国際安全保障と関係がある。日米及び日中にかかわる言及部分を除けば、圧倒的な分量で強調しているのは、①国際構造は変化しつつあり、日本としては国際的なプレイヤーとして国際安全保障に対して貢献する必要がある、②日本は外交及び軍事手段を総合的に運用して、ありとあらゆる国際安全保障にかかわる課題に積極的に参与し、役割を果たすべきだ、③広範なマルチの安全保障の協力を通じて普遍的価値を擁護し、世界の平和と安定を守り、積極的平和主義を実行するということだ。
 安倍政権は何故にこれほど国際安全保障に積極的に関与し、その中で役割を発揮することを強調するのか。見過ごすことができないのは、安倍がかつて「日本は絶対に二流国にならない」と誓い、主要なプレイヤーになると強調したことだ。安倍のこの大国戦略においては、国際的な安全保障及び軍事において役割を発揮するということは彼にとって一番の選択であり、それこそが彼の提起する積極平和主義の真髄なのだ。安倍の大国戦略においては、安全保障及び軍事が占める位置は昔日とは比べようがない意義を持ち、軍事力に対する依存及びその比重は急速に高まっている。積極平和主義はしばしば日本の国際的安全保障環境を改善し保全することと解釈されがちだが、それよりはむしろ、国連の集団安全保障及び国際安全保障協力という名目のもとで日本の地位と影響力を向上し、国際的力を拡大するための選択と言うべきである。この目標を実現するため、日本は日米同盟、マルチ協力、更には武器輸出原則解禁などの多種多様な手段を選択したのだ。このことは国際及び地域の安全保障環境を複雑化させ、大国関係の駆け引きを激化させることはまちがいない。

◯「防衛計画大綱」の本質は「防中計画大綱」
 安倍政権の国家安全保障戦略及び軍事防衛方針が全面的に中国を念頭において設計されたものではないことは当然だ。最低ラインは戦後体制を脱却し、軍事大国になることにある。しかしハッキリしていることは、安全保障及び防衛の領域において、これほどまでに大部分の関心とエネルギーとを「中国対処」に振り向けるものは日本の安倍政権をおいてほかにはない。
 まず、安倍は最大限に「中国脅威」を宣伝して、安全保障・防衛政策を整え、軍事力建設強化を図ろうとしている。日本は予定を早めて防衛計画の大綱を改定したが、それは「中国脅威」が以前に比して深刻になっていると認識されたからだ。安倍が全力で作り上げようとしているのは、戦争できる国家、攻撃能力を持ち、攻撃作戦を発動できる軍事力である。安倍がこのプロセスを推進するための口実としているのは、自分が勝手に作り上げ、宣伝している「中国脅威」であり、中国は「力で現状を変更しようとしており」、「その危険な行動は不測の事件を引き起こす可能性がある」という批判なのだ。
 次に安倍は、自衛隊のシステム、編制、配置、装備、戦術など各方面で中国との対抗を進めようとしている。防衛計画大綱が打ち出した核心的な防衛方針は統合機動防衛力構想であり、陸海空3軍の連合作戦能力を強調することだが、目的は島嶼奪回防衛だ。誰から奪い、誰と戦うのか。目標は言わずとも明らかだ。
 中期防における自衛隊建設の具体計画においては、一つとして中国と関係がないものはない。今の安倍政権は、平和的に発展しようとする中国に対して、対中友好協力をさらに発展させ、深化させるのではなく、多面的に警戒、牽制、包囲し、不断に軍事力の備えを強化し、戦略的配置を行って、「中国からの脅威」に対処するということなのだ。中国はすでに事実上最大の仮想敵とされている。このような日本は、中国の台頭にとっての周辺の安全保障環境更には国際的条件に対してどれほどの影響を及ぼすだろうか。これは我々が真剣に考えなければならない課題である。

◯危険水域に疾走する安倍「日本丸」
 日本の国家安全保障戦略の調整及び軍事的発展の動向については、過去においても程度の差はあれ注視されたが、今回ほど高い関心を集めたことはない。特に世人の関心及び不安が集中するのは、安倍政権が戦後日本の一貫した平和主義に基づく発展の路線を意識的に退け、以前はチョコチョコ行っていた政策調整をスライド疾走する方式に変え、日本の軍事的大躍進を強力に推進し、軍事的台頭を図り、「戦争できる国」にするべく力を注いでいることだ。
 安全保障戦略の制定及び防衛計画の改定は日本の内政問題と見なされているが、特定の歴史的な経緯を持ち、しかも右翼保守政府と狭隘な民族主義の指導の下でこれらの制定調整が行われているので、世人の関心と不安を招かざるを得ないのだ。3文書は、日本国家の政治という領域においては、改憲を推進し、戦後体制を脱却して、軍事力発展及び対外武力行使を行う「普通の国家」路線を代表し、対外関係領域においては、保守親米及び日米軍事同盟強化、中国脅威を喧伝することによって、「防中」及び「紛争」対処を主要な目的とする「武闘」路線を代表している。この路線が内包するますます増大する軍事的成分は中国を包囲牽制することを基軸として展開しており、中日安全保障関係ひいては地域情勢を困難と不安定に陥れる主動的要因となっている。

<第4回「天下放談」2013年国際問題研討会での発言>

 彭光謙は、現在の日本と第二次世界大戦前の日本とは驚くほど似通っており、中国としては警戒感を高めなければならない、戦略的相手がアメリカであるとしても現実における相手は日本であり、日本軍国主義は現在当面するもっとも緊迫した、現実的かつ主要な危険であると述べた。彭光謙はさらに、「かつては日本の右翼は一握りだと考えられていたが、それは誤解であり、日本の右翼分子は大きな勢力であって、定量分析する必要がある。日本の右翼勢力は往々にして他者を過小評価し、自らを過大評価するのであって、冒険性を備えている。第二次大戦時には、日本はアメリカにかなわないのに真珠湾を攻撃してのけた。したがって彼らは、他の面では中国にかなわないとしても、海上での力は中国より強いと考えており、中国としてはこれを侮るわけにはいかない」と述べた。
 日本がしきりに挑発的言辞を弄し、他の国々を糾合して中国と対抗しようとしていることに対して中国は如何に対処するべきかに関し、楊毅は、中国が日本に対処しようとするとき、手段は大いにあるのであって、日本をやっつけるかどうかについては焦る必要なく、現在必要なことは中国にとっての当面の急務は何かを見極めることだと述べた。楊毅は、「日本が中国をやっつけようとするよこしまな気持ちはあるが、そのような力はない。現在の中国にとっての大目標は何か。日本をやっつけて憂さ晴らしをすることでもなければ、フィリピンを懲らしめて恨みを晴らすことでもなく、戦略的チャンスの今を大切にし、2020年までに所得倍増を実現すれば、多くの問題は自然と解決する。これは必然の理だ。もちろん、日本及びアメリカというリスクに対して確固としてかつ力強く国家の利益を守るべきであり、準備を怠らず、適度に節度を守るということだ」と述べた。
 彭光謙は楊毅の考え方に同意するとともに、補足として、中国は戦略的チャンスの時期をしっかり確保するとともに、戦いを恐れてはならないとして、「我々は我慢強くあるべきだが、戦いを恐れてはならない。仮に彼らが挑発するのであれば、我々は断固として打ちのめすべきだ。日本という民族は昔から弱きをくじき強気を恐れる。かつては、「中国が強いと日本は女、中国が弱いと日本は盗賊」という言い方もされたことがあるぐらいだ。中国が弱みを見せれば、日本は居丈高にかかってくる。中国は実力の備えを持つべきだ。もちろん戦略的チャンスの時期を大事にするべきで、軽率に手出しはするべきではないが、手を出す以上は徹底的にたたきのめす必要がある」と述べた。
 中国の発展に対して、日本は何が何でも中国が戦略的チャンスをつかむことを妨害しようとしているのは今や争いのない事実である。兪源は、中国は3方面で準備をするべきだと指摘し、①第二次世界大戦後の国際秩序を守るという旗を高く掲げること、②ロシアと連合すること、③日本に対する経済、政治面での研究を強化し、特に日本の戦前の動員体制に対する研究を行うことで後顧の憂いをなくすことを挙げた。
 中国政府は11月23日に東海防空識別圏を設定する声明を発表し、いくつかの国々が強烈に反発した。海外メディアの中にもこれをチャンスとして「中国脅威論」をあおり立てるものがあった。これらの雑音に関して張煥利は、中国は構う必要はないとし、「中国は、他人が我々は脅威だというのを恐れる必要はないのであって、脅威性を持つというのは自然で正常な現象である。中国のような大国であるのに、仮に誰も脅威と感じないとしたら、中国には力がないということにほかならない。仮に我々が軟弱で、目の前に力がある存在が現れ、動きを示したとすれば、我々は当然脅威を感じるだろう。これは自然なことで、脅威というのは何も悪いことではなく、特に我々に対して図りがたい心根を持っている国家が「中国脅威論」などと言うことに構う必要はないのだ。日本は中国が東海や南海の現状を変更したと言っているが、事実は彼らが先に現状を変えたのであり、彼らの言いぐさに構う必要はない」と述べた。張煥利はさらに、外国が「中国脅威論」を言いふらすことに構う必要がないのみならず、釣魚島及び防空識別圏の問題で段階的な勝利を収めたのだから、自分たちのやり方に自信を持つべきだと述べた。
 日本が不断に「中国の軍事的脅威」を言いふらす目的は自らの軍拡の口実にすることにあるが、これに対してはどう対処するべきかに関し、楊毅は6分野で日本軍国主義に対応するべきだとし、①物理的な力の準備及びプランの準備を含めて周到な準備を行うこと、②先に手を出さないという後発制人、③対等なエスカレーション、④できる限り衝突を回避すること、⑤危機管理、⑥強には強で相まみえる覚悟を挙げた。楊毅はさらに、「中国は平和の旗を高く掲げ、防空識別圏及び定期巡航を含めて確実に実施していけば、バトン式にうまくいくだろう。中国は一年ごとに強くなっており、勝利の趨勢は中国の側にあり、日本を軽く見るということではなく、中国は自信を持つべきだということだ。中国には焦る理由はなく、焦るとすれば日本とアメリカだ」と述べた。
 安倍政権は何ごとにつけても言い掛かりをつけてくるのであって、仮に釣魚島問題がなかったとしても、日本はやはり何かにかこつけて中国と対抗しようとするという説もある。安倍政権がかくも積極的に中国と対抗しようとする深層の原因は何か。中日間には構造的な矛盾が存在するのか。これについて陳鳳英は、日本が釣魚島国有化などの問題をやってのけるのは、畢竟すれば、アジアの地縁経済が引き起こしている地縁政治上の配置変化における安全保障上の脅威にあるとし、「釣魚島にしても、かつての春暁ガス田開発にしても、日本は先に動いたのだが、それは日本が辺境化したために、日本はアメリカの支持を取り付けようとしたのだ。こういう動きはあと5年もすればもう何もできなくなるだろう。したがって、釣魚島にしてもほかの問題にしても、アジアの地縁経済が引き越した地縁政治配置の変化による安全保障上の脅威ということだ」と述べた。
 張煥利は「地縁政治論」という説明を肯定し、「釣魚島問題がなくても、日本はやはり何か問題を探す」という見方にも同意しつつ、中日間には「構造的な矛盾」が存在するという説には同意できないとした。張煥利は、「日本という国家はこの100年間というもの、一貫して我々を脅かし、侮ってきた。戦後70年近くになるが、今日に至るまでずっと彼らは中華人民共和国を認めないし、大陸上の人民を軽蔑しており、この見方は日本の支配階級と財界において牢固としたものがある。中国の地位が向上することは日本人にとって気持ちがよくないことなのだ。しかし私は、「構造的な矛盾」という言い方には賛成しない。これは「構造的な矛盾」とは言わず、せいぜいが地縁政治上の問題だ。この問題をどのように解決するかだが、我々が不断に自らを強くする以外の解決はない」と述べた。

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