朝鮮内政(張成沢問題)と中国(続)

2013.12.15

*12月14日付環球時報は「内政が尖鋭な朝鮮が最終的に安定することを望む」と題する社評を掲げました。張成沢の死刑判決及び即時執行というニュースが中国社会に及ぼした影響が大きかったことを窺わせます。前回紹介した10日付の同紙社評はまだ冷静でしたが、今回社評は、中国国内世論の動向が今後の中国の対朝鮮政策に影響を及ぼす可能性を指摘するもので、金正恩政権の行動に対する中国側の戸惑いを強くにじませる内容となっています。全文を紹介します。強調は私がつけました(12月15日記)。

 朝鮮当局は13日、朝鮮国家安全保衞部特別軍事法廷が12日に張成沢の死刑を判決し、刑を執行したことを発表した。このニュースは、数日前の張成沢解任のニュース同様外部世界を震撼させた。
 中国外交部は昨日、この件は朝鮮の内政であり、中国は朝鮮が政治的安定を維持することを希望すると述べた。韓国も朝鮮情勢に対する「憂慮」を表明するだけにとどまった。張成沢処刑の影響は当面朝鮮国内に局限されており、北東アジア情勢はまだ影響を受けていない。
 張成沢に対する処置の迅速さは、朝鮮内部においてこの闘争が尖鋭なものと見なされることを明らかにしており、思いきった措置以外には問題が解決できないということを示している。外から見ると、朝鮮政治は今なお後進的である。しかしこの事件はまた、金正恩が朝鮮においてすでに絶対的権威を確立しており、朝鮮政局及び国家の発展方向に対してツルの一声の力を有していることを裏づけている。  中国政府が朝鮮内政に干渉しないという基本戦略を選択していることは正しいし、特に朝鮮の権力にかかわる事柄に関しては、中国はますますそうでなければならない。しかしながら中国はとっくに多元化(した社会)であり、中国政府が社会全体の対朝鮮姿勢を調整することは不可能であり、中国の多くの人々は、最近朝鮮で起こった異変の起こり方に対しては間違いなく反感を覚えている
 世論が抱く平壌に対するマイナス・イメージは今後の中朝関係に対して一定の牽制力となる可能性があり、例えば、中国の対朝援助に対する疑問はさらに増えるだろうし、両国間の民間交流に対する熱意も失われるだろう。
 理解できることであるが、朝鮮からすれば、中国の民間の声に対して敏感となり、中国当局が民意をコントロールすることを望むだろうが、中国(社会)の多元化に対しては平壌がよく理解できるとは限らない。また朝鮮は、中国の無条件の支持を得ることを強く希望しているが、中国としては掛け値なしに実行するということは不可能だ。友好関係を発展させることは中朝にとって戦略的な意義があるが、両国間で摩擦が起きる可能性も少なくなく、特に朝鮮の非核化に関しては隔たりが大きい
 正恩は年が若く、しかも朝鮮の絶対的権力を掌握しているので、このことは朝鮮外交に対して青年の性格とマッチした特徴を付与する可能性がある。中朝は友好な近隣同士として、新しい慣らし運転(の時期)に直面している
 中国としては、朝鮮の新政権がそのもっとも必要とする安全感を強固にすることを支援する必要がある。この面においては、我々はできる限りのことを行うべきであり、それが中朝間の戦略的相互信頼におけるカギとなるポイントだ。この分野では、中国は朝鮮がもっとも信頼できる頼りとなるべく努力するべきである。
 しかし、両国の交流の中で、朝鮮のご機嫌を取ろうとして顔色を窺うという癖に染まるようなことがあってはならない。中国は大国であり、わが国の利益はグローバルであり、中国国内の世論状況も(政府とは)独立している。我々としては、朝鮮がもっと中国に適応するべきであり、事の大小を問わず中国が朝鮮の感情を配慮することはできない相談であることを、朝鮮に理解させる必要がある
 中朝友好という大枠のもとで、これらのルールはハッキリさせなければならない。中国の対朝友好という大戦略が安定しており、原則を堅持し、中国の核心的利益を断固として守るという態度がしっかりしており、この両者の調和的統一的実現が我々の真の希望であり、決心である限り、中国と朝鮮新政権とが新しい状況に適応することは必ず成功するだろう。
 中国が朝鮮の内政に干渉しないことは終始一貫しているが、このことは中国世論が張成沢の死に対してとやかく言ってはならないとか、中国社会のこの事件に対する反応が微に入り細にうがって平壌の意向に沿うものとなるとかを意味するものではない。仮に朝鮮がそんな要求をするのであれば、世界の大国に対する態度ではない。
 中国社会は、朝鮮が可及的速やかに全面的に安定すること、そして改革開放のための力を蓄えることを心から希望している。中朝友好に対する支持は今もなお中国の主流の民意である。朝鮮当局は未だかつて中国メディアと積極的に意思疎通を図ったことがないが、この分野でリラックスして中国民間と相まみえることを試してみるならば、正面からの変化の突破口にならないとも限らないだろう。

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