朝鮮半島非核化問題:米中防衛相会談

2013.08.22

*8月19日に行われた米中防衛相会談で、中国の常万全国防部長が朝鮮半島非核化問題できわめて明確に中国側の考え方をヘーゲル国防長官に表明していたことが8月21日付の中国新聞網の記事で分かりました。
その中には、朝鮮の指導者つまり金正恩が中国側に対して「(金日成)主席の遺訓を継承して、3者または4者の会談を行うことを表明し、しかし付帯条件をつけてはならないと強調している」という、これまで中国の報道でも見なかった事実関係の紹介があります。特に朝鮮が、6者協議ではなく、3者(朝米中?) または4者 (朝米中韓?)の会談を提起しているというのは、私にとっては初見でした。
また、同日付の人民日報海外網は、北京大学国際関係学院教授で海外網コラムニストでもある陳峰君の「朝鮮半島非核化、アメリカが手本を示すべし」と題する文章を掲載していますが、その内容は、常万全がヘーゲルに表明した中国側認識の所在を説明するものになっています。私からすれば極めて常識的なこのような見方は、2012年12月12日の朝鮮の人工衛星打ち上げ以来、中国国内論調において一時姿を消していたものですが、朝鮮の崔龍海特使訪中以後再び現れるようになりました。しかし、今回の陳峰君文章は特に明快に朝鮮の核問題にかかわるアメリカの責任を正面から問いただすものであり、常万全の対米発言と軌を一にするもの(中国指導部の認識の所在を色濃く踏まえたもの)として注目されます。
両記事を翻訳して紹介します(8月22日記)。

<中国新聞網記事「中国軍関係者、朝鮮核問題解決に「窓口」が現れたことを指摘 アメリカがしっかり握ることを望む」>

 中国国防部高官は(8月)20日に、中国は朝鮮核問題解決の「窓口」が既に現れていると認識しており、アメリカがしっかり握ってこの得がたいチャンスを失わないことを望むと通告した。
 中国国防部の常万全国防部長に随行して訪米している中国国防部外事弁公室の関友飛主任が同日以上を述べた。関友飛によれば、8月19日に常万全と会談した際、ヘーゲル国防部長及び大統領安全保障担当のライス補佐官は朝鮮核問題をこもごも提起し、主にライスがこの問題を語った。
 関友飛によれば、会談の中で中国側は、「中国は隣国であり、自分の家の入り口で問題が起こることを望まない」が故に朝鮮核問題を非常に重視しており、中国は朝鮮が核兵器を開発することには断固反対で、朝鮮半島非核化を堅持すると同時に、対話及び交渉を通じて朝鮮核問題を解決することを堅持していると表明した。
 朝鮮半島情勢については、中国側は、現在朝鮮半島に緩和の兆しが現れており、朝鮮の指導者は(金日成)主席の遺訓を継承して、3者または4者の会談を行うことを表明し、しかし付帯条件をつけてはならないと強調していることを指摘した。
 以上に鑑み、中国は朝鮮核問題を解決するチャンスと「窓口」が既に現れていると認識しており、アメリカがしっかりとつかんで、敷居及び条件をつけず、得がたい対話の機会を失わないことを希望した。
 同時に中国側は、アメリカが朝鮮半島における軍事演習を減少するべきであると警告し、「話し合いでのみ問題解決の方向に向かって進むことができるのであり、話し合わず、圧力と制裁に頼ることでは問題解決につながらず」、軍事演習は朝鮮核問題の解決に役立たないと強調した。
 他方で関友飛は、会談においてアメリカ側が、朝鮮の核兵器及びミサイル開発はアメリカに対する現実の脅威となっており、問題は極めて切迫しているので、中国が最近朝鮮核問題で行っている積極的な努力を賞讃しており、中米が引き続きこの問題で協力していくことを希望していると述べたことを明らかにした。
 しかしアメリカ側は、今のところ朝鮮の誠意は十分ではなく、朝鮮が行動を示してのみ対話ができるという認識を堅持した。これに対して中国側は、対話は問題解決の不可欠なステップであり、ましてや米朝間の矛盾は深刻であり、互いに接触しなければ朝鮮核問題の解決は難しいと強調した。
 関友飛はまた、朝鮮はアメリカの脅威に身構えるからこそ核兵器を開発するのであり、この論理関係はアメリカが明確に理解していることであり、「虎の首に付けた鈴を取るのは、その鈴をつけた人でなければできず」、アメリカが朝鮮半島に出現した緩和の情勢に積極的に対応し、柔軟な措置をとって朝鮮と接触し、朝鮮核問題の解決を早めることを希望するとも指摘した。

<陳峰君「朝鮮半島非核化、アメリカが手本を示すべし」>

 朝鮮半島問題のカギは朝鮮にあり、朝鮮問題のカギは朝鮮が核を放棄するか否かにあるということは国際世論の一致した見方である。この説には一理があるが、明らかに一方的である。なぜならば、この見方はアメリカというより重要な要素を無視しているからだ。実際は、朝鮮半島核兵器問題の仕掛け人は正しくアメリカである。
 ペンタゴンが1994年に公開した秘密文書の記載によれば、1950年、朝鮮戦争が勃発すると、朝鮮人民軍はわずか3日でソウルを攻略し、敵軍を完膚なきまでに打ちのめした。朝鮮軍がさらに南進しようとしたとき、主力部隊は米軍によって韓国大田一帯に包囲された。この時、米国極東軍司令部の軍事専門家たちは、核攻撃計画を立て、大田に核爆弾を投下し、「大田一帯で包囲されている敵軍主力部隊を徹底的に殲滅する」ことを提案した。その後朝鮮軍が「戦略的大撤退」を行い、マッカーサーが率いるいわゆる「国連軍」が38度線を越えて平壌に進撃したことによってようやく、この核攻撃計画は実行に移されないで終わった。
 しかし、その後も米軍は引き続き核兵器で朝鮮を威嚇しようとした。他の秘密文書の記載によれば、1954年、即ち停戦協定から2年目に、韓国に駐在していた国連軍参謀は、ペンタゴンに提出した報告の中で、相手が停戦協定に違反した場合は、大規模な空軍兵力を動員して「中国本土に核爆弾を投下する」ことを提案している。
 朝鮮戦争が終結して以後、アメリカは一貫して韓国及び日本に対して核の傘を提供してきている。米韓が1978年に締結した米韓相互防衛条約の規定に基づき、アメリカは韓国の安全及び防衛にコミットすることを「遵守」するとしたが、その中には引き続き韓国に対して「核の傘」を提供することが含まれている。朝鮮戦争停戦から1990年代初までの約40年間、在韓米軍は数百単位の核兵器を韓国に配置し、ひっきりなしに軍事演習を行った。
 さらに他の解禁されたアメリカの国防及び外交文書によれば、在韓米軍は1991年に朝鮮に対して空中から核攻撃を行う飛行演習を行った。この演習は、空対空及び空対地の攻撃が含まれ、ソウル南方270キロの群山基地に駐留する第8戦術戦闘機大隊が任務を執行した。1991年までの間、アメリカは韓国領域内の16施設に数百の核兵器を配置し、朝鮮を威嚇した。記録によれば、1977年にアメリカが韓国に配備した核兵器は453であり、1983年には151まで減ったが、それには11種類の核兵器が含まれていた。
 1992年11月にアメリカはようやく核兵器を朝鮮半島から撤去したが、日韓に対する「核の傘」のコミットメントは相変わらず堅持した。今日においても、核の傘は相変わらずアメリカが同盟国と同盟関係を維持する上での重要なカナメであり、さらに強化される勢いである。20世紀後半から、米韓両国は朝鮮半島で多くの軍事演習を行ってきたが、広く知られた「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル」がその中に含まれる。
 本年の「フォール・イーグル」軍事演習においては、米軍の3大核戦力の中のB-2ステルス爆撃機、B-52戦略爆撃機及び攻撃型原潜があいつで朝鮮半島に出向き、演習に参加した。5月の米韓海上合同演習では、アメリカは原子力空母ニミッツまで釜山に入港させた。  以上から、我々が以下のいくつかの結論を引き出すことは難しいことではない。
第一、アメリカは半島核化の積極的な推進者であり、朝鮮半島核武装の張本人である。朝鮮の核兵器開発は、始めから終わりまでアメリカの動きに対するものである。アメリカは朝鮮を60年以上にわたって核で威嚇してきたが、それは取りも直さず朝鮮が1954年以来研究開発してきた「核化」への60年でもあった。
第二、世界最大の核大国であるアメリカは、米朝の力関係において圧倒的な優勢にあり、その責任を免れることはできない。アメリカは、「見下す」傲慢な態度を放棄し、朝鮮と核問題について対等に語り合い、核威嚇戦略を改めることにおいて手本を示すべきである。もっぱら軍事力で朝鮮が核を放棄することを居丈高に迫り、自らは知らぬ顔というのでは、ことは志に違うだけで、まったく反対の結果になるだけだ。
またアメリカは、朝鮮が核を放棄するための安全な出口を与えるべきだ。朝鮮が核放棄を肯んじない最大の理由は政権の安定に対する危機感であり、アメリカは朝鮮の関心を十分に考慮し、また、中露などのAPR諸国とも核放棄のための実行可能な道筋と安全保障とを協議するべきだ。同時に、南アフリカやウクライナの核放棄のモデルに学び、朝鮮に対して核放棄によるメリットと包容とを与え、朝鮮が主動的に核を放棄する新しいタイプのメカニズムと雰囲気とをつくり出すことを考慮することもできるだろう。

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