朝鮮外交に関する中国側分析

2013.06.14

*6月5日付の国際情報週刊誌『青年参考』は、対決から対話へと舵を切った観のある朝鮮外交に関する分析記事を掲載しています。同誌は、中国共産主義青年団の機関紙『中国青年報』の傘下にあり、この分析はかなりの程度まで公式見解を反映していると思われます。
 私自身は、5月からの朝鮮の外交攻勢は朝鮮にとっては決して'突然'の政策転換ではなく、「超強硬」政策の成功(ケリー訪韓・訪中における朝鮮に対する対話呼びかけを引き出した)という判断に立った次のステップへの展開であり、『青年参考』が指摘する「朝鮮政府の180度の急転」という理解は正確とは言えないと判断しています。しかし、その点を除けば、この分析内容はおおむね同意できるものなので、要旨を紹介します。
 また、飯島参与訪朝に関する分析(「米日関係及び米韓関係は必ずしも鉄壁ではないという重要な情報を敏感に捉え、…日本との協議再起動を通じて、朝鮮は、孤立状態を打破して朝鮮半島問題での発言権を高めたいという日本の願望に応えるとともに、米日韓トライアングル戦線をある程度は離間させ、苦境から脱する突破口を探し当てた。」)は、私たち日本人が見落としがちなポイントを指摘するものだと思います(6月14日記)。

「朝鮮政府の態度急変は国際社会の様々な推測を呼んでいるが、朝鮮が直面している内外の圧力から判断すれば、情理にかなっているし、聡明な行動であり、長期にわたる孤立局面から抜け出し、国際的イメージを改善するためには、対話は疑いなく最善かつ唯一の選択だ。
 崔龍海訪中と同時に、朝鮮6.15共同宣言実行委員会は韓国側カウンターパートに対して、6月に6.15共同宣言13周年慶祝活動を共同で行うことを提案した。その前にも、日本と国交樹立会談を行った。3月以来一貫して強硬だった朝鮮がわずか1週間のうちに合わせ技をやり、対話の意思を打ち出したのには、一体いかなる要因が朝鮮政府の180度の急転を導いたのか。
 朝鮮政府が直面している内外の圧力を総合すると、安保理決議の高圧的制裁に基づく経済圧力を緩和し、対米交渉を切り拓き、安全保障を探る、これが対話姿勢をしきりに明らかにする大きな要因だ。
 国内経済圧力から見れば、金正恩が政権に就いてから一貫して民生改善を第一任務としているが、2013年に第3回核実験を行って以来、朝鮮は国際社会の督促を無視してますます交渉から遠ざかったため、国際社会は強力な制裁措置を取り、朝鮮の孤立状況はさらに悪化し、国内民生問題は日増しに突出している。最近、朝鮮は軍用食糧を民衆に配ったが、このことは国内食糧問題の深刻さを物語っている。したがって、多角的対話を通じて外の世界に対して対話姿勢を打ち出し、国際的な政治圧力を緩和し、人道主義的援助を獲得し、焦眉の急に対処することは、国内政治及び民生上の要求であり、歴史的に見た場合、朝鮮はしばしばこの手段に訴えてきた。
 国内政治の要求という点からすると第3回核実験及びその後の一連の超強硬措置を通じて、対内的に人々に対して「朝鮮は圧力には屈伏せず、米韓の軍事的脅威に対して歯には歯で立ち向かう能力を持っている」立場を示し、年若い金正恩の指導者としてのイメージを人々の間で高め、政権基盤を強固にした。こういう状況の下において適度に対話に転換することは朝鮮の利益に合致する。
 国際関係から言うと、朝鮮は南に韓国、東に日本、西に中国と面し、中国との伝統的な関係を強固にするとともに、アメリカが同盟国と結託して対朝圧力を行使することを弱めることによってアメリカとの対話の機会を勝ち取るということで、その目的は全面的な安全保障を獲得することにほかならない。最近の国際社会の反応から見れば、朝鮮は基本的に目標を達成したと言える。
 鳴り物入りでの特使訪中により、朝鮮は第3回核実験以来の朝中間の気まずさを巧みに解消し、両国の伝統的友好関係を再確認した。朝鮮の態度表明は一石二鳥と言える。一つは、中国の意図に合わせることは両国関係を強固にする上で有利だ。今一つは、中国に向けて対話の意図を公に明らかにすることで、関係国との立場を改善し、たとえ相手側からの反応が得られなくても、あるいは対話再開後に実質的進展が得られないとしても、もはや責任は朝鮮にはなく、中国との友好関係にも影響しない。
 同時に朝鮮は、米日関係及び米韓関係は必ずしも鉄壁ではないという重要な情報を敏感に捉え、2つのチャンスを十分に利用した。一つは、日本が歴史問題で外交的に孤立している苦境を捉え、日本との国交樹立交渉を再起動させた。もう一つは、朴槿恵訪米期間中の報道官の不祥事事件で大騒ぎになったときに、民族の自主性を切り口にして6.15共同宣言実行を呼びかけた。
 日本との協議再起動を通じて、朝鮮は、孤立状態を打破して朝鮮半島問題での発言権を高めたいという日本の願望に応えるとともに、米日韓トライアングル戦線をある程度は離間させ、苦境から脱する突破口を探し当てた。
 6.15共同宣言は金大中の太陽政策の結晶だ。偶然の一致とは言え、6.15共同宣言慶祝の招待は、朴槿恵訪米直後の、報道官醜聞事件で同政権が世論の批判を浴びている時に行われた。朝鮮の韓国宛の電報では民族の自主性を明確に強調しており、朝鮮の意図を推測しないわけにはいかない。朝鮮の行動は卓越しており、韓米同盟をぐらつかせると同時に、朴槿恵が始めようとしている「朝鮮半島信頼プロセス」に対する国内保守勢力の阻止力を軽減させている。」

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