朝鮮の第3回核実験問題と中朝関係

2013.02.12

*朝鮮祖国平和統一委員会が運営するHP「我が民族同士」が2月9日に「アメリカと敵対勢力が、第3回核実験を行うと早合点し、強い制裁はおろか、先制打撃の必要まで言いだしている」、「核実験か、それ以上の何かか、少しも知らず大騒ぎするアメリカなどの醜態は盗賊の居直りのようだ」という内容の論評を出した(2月11日付朝日新聞)ことは、私も10日の民放テレビ局の報道で知って、意表を突かれた思いがしています。環球時報社説や中国メディアに掲載される専門家文章では、朝鮮の第3回核実験は既定路線とする受け止めがほとんどです。また、中国新聞HPの「国際ニュース」では、2月11日現在の時点では上記の論評についてなんの報道も載せていません。
 事態の複雑性を改めて思い知らされていますし、今後の展開ぶりについては予想しがたいですが、前回のコラムで取り上げた本件に関する中国側の取り扱いのフォローアップをしておきたいと思います。このような作業は、中朝関係を考える上で必要だと考えるからです(2月12日記)。

1. 韓米の動き

 新華社、中国新聞をはじめとする中国の通信社及び新聞各紙は、朝鮮の核問題に関する韓国(特に朴槿恵次期大統領)及びアメリカの動きに神経を研ぎ澄ませていることは、次のような報道から窺うことができます。また、中国側の報道から判断する限り、朴槿恵は頻繁にアメリカからの各種代表団と会見しており、朴槿恵の対朝鮮政策形成におけるアメリカの影響力の強まりを窺うことができるように思われます。出だしでは中国も良かったのですが、その後の展開は、中国がアメリカに水をあけられている印象です。

<朴槿恵の発言紹介>

2月1日:(アメリカ議会の代表団に対して)韓国は朝鮮の核保有を絶対に許さず、もしも朝鮮が挑発を行う場合は、韓国は国際社会とともに断固とした対応を行う。安保理決議後の朝鮮の動向は、再び挑発を行うことを憂慮させるものだ。昨年に朝鮮は、国際社会の反対を顧みず、2度のミサイル発射を行った。国際社会は、朝鮮が新たな挑発を行うことを防止するべく努力を払うべきだ。(2月2日付新華ネット 韓国連合通信社報道に基づく)
2月4日:(アメリカのスタンフォード大学代表団に対して)朝鮮には、核実験を行ってもいかなるメリットも得られないことを認識させるべきだ。国際社会は、朝鮮をして誤った行動に関して責任を負わせる必要があり、朝鮮が取るべきではない行動を敢えて取ることを防止するために共同して努力するべきだ。
 韓国新政府の対朝政策の核心は、強大な安全保障システム及び抑止力を備える基礎の上で、朝鮮との間で相互信頼関係を打ち立て、及び韓朝関係を改善し、進んで朝鮮半島の持続的平和を実現することだ。朝鮮について言えば、正しい選択を行い、より多くのエネルギーを民生改善方面に投入し、同時に国際社会の責任あるメンバーになるべく努力することが最重要だ。(2月4日付中国新聞ネット。韓国連合通信社報道に基づく)
2月4日:(大統領職務引き継ぎ委員会外交国防統一分科会による朝鮮問題に関する報告を聴取した後)朝鮮に対してただちに第3回核実験計画を中止することを促す。朝鮮が公然と核実験を発表したことは憂慮させるものだ。朝鮮は、安保理決議を遵守し、挑発行為を中止してのみ、朝鮮が国際社会の一員として平和及び発展を実現する出発点となる。
 (同日、アメリカ政策協議代表団と接見したとき)「朝鮮半島の信頼醸成プロセス」について多くの人が誤解を持っている。「半島信頼醸成プロセス」とは、朝鮮の誤った行動に対しては強硬かつ断固とした対応をするが、対話時には弾力的に問題を解決する必要がある。韓国は、朝鮮をして誤った道を選択すれば何ものも得ることはできないことを認識させる必要があるが、同時に、朝鮮が国際社会の責任ある一員になるためにチャンスを創造する必要がある。(2月4日付中国新聞ネット。韓国連合通信社報道による)
2月6日:朴槿恵のスポークスマン(趙允旋)は、記者会見において、与野党が近日中に緊急会議を招集し、朝鮮の核実験、朝鮮半島の安全保障問題などについて協議を行うことを提案して、野党の民主統合党はこれを歓迎した。趙に拠れば、4日、大統領職務引き継ぎ委員会による朝鮮核問題に関する報告を聴取して、朝鮮の核実験は半島の平和に重大な脅威をもたらすと認識、国家安全保障分野において、与党は野党と手を携えて協力する必要があり、共同会議を招集して対応準備案を協議する必要があると認識したことを説明した。(2月6日付中国新聞ネット。韓国連合通信社報道による)
(2月7日に朴槿恵は、新世界党党首黄祐吕、民主统合党非常对策委员会委员长文喜相と協議)
2月7日:アメリカの政策協議代表団と会見し、朝鮮核問題、韓米同盟関係など双方が共通に関心がある問題について意見交換。双方は、朝鮮が核実験を行う前後、韓米両国が緊密に協力して同盟関係をさらに強固にすることが極めて重要と一致して認識。(2月8日中国新聞ネット。韓国連合通信社の報道による)

<そのほかの関連する報道>

2月4日:韓国国防省高官は4日、昨年10月に行われた第44回韓米安全保障会議(SCM)において、両国国防相は本年(2013年)中に朝鮮の脅威に対抗する「オーダーメード方式」の戦略を制定することを協議決定したことを表明。
情報に拠れば、韓米拡大抑止政策委員会(EDPC)は現在、朝鮮の核脅威に対抗する戦略を研究中であり、軍事、外交、情報、経済各方面の対抗戦略が検討中であり、…本年10月の第45回韓米安全保障会議で確定する予定。
この高官は、対抗戦略におけるカギは軍事要素だと強調した。対抗戦略中に、朝鮮が核兵器を使用する兆候がきわめて明確になったときに、先制攻撃という案が含まれているかどうかに関し、この案も考慮に含まれており、韓国はアメリカとの間ですべての実行可能な案について協議中であると述べた。即ち、朝鮮が仮に第3回核実験を実行した場合、それは取りも直さず朝鮮が核兵器を実戦配備に投入する段階に入ることを意味するので、過去とは異なる戦略を研究する必要があるということだ。(2月4日付中国新聞ネット。韓国連合通信社報道による)
2月7日:アメリカ国務省のヌーラン報道官は、同日の定例記者会見において、「韓米は朝鮮に対する先制攻撃案を検討しているか」という質問に答えて、「何度も明らかにしたように、あらゆる案が我々の検討対象にある」と回答した。しかし同報道官は、「現在のところ、我々は安保理決議2087の案を集中的に討論しており」、「決議2087は国際社会の制裁だ」と強調した。(2月9日付中国新聞ネット。同日付韓国中央日報の報道による)

2. 朝鮮側発言

 冒頭に紹介した祖国平和統一委員会の運営するHPにおける論評に先立つ朝鮮側の公式発言のうちの主なものは次のようなものがありました。すべて、朝鮮中央通信の日本語によるもので、中国側も取り上げているものです。

<外務省スポークスマン「ミサイル打ち上げ問題に関する米国の二重基準を非難」>

【平壌2月2日発朝鮮中央通信】朝鮮外務省のスポークスマンは、われわれの平和的な衛星打ち上げの権利を否定する米国の二重基準と強盗さながらの本性が余地もなくさらけ出されたことで2日、朝鮮中央通信社記者の質問に次のように答えた。
この前、われわれの「光明星3」号2号機の打ち上げを不当に問題視する国連安全保障理事会の「決議」採択を主導した米国が、その後行われた南朝鮮の「ナロ」号の打ち上げをかばう醜態を演じ…ながらも、自分らの手先である南朝鮮のかいらいの衛星打ち上げは頭からかばうことこそ、二重基準と鉄面皮さの極致である。…
米国がわれわれの衛星うち上げの権利を否定する口実として口をあけるたびに唱える国連安全保障理事会の諸「決議」というものは、当初からしてその 採択からが間違っている。米国は、各国の自主権を尊重し、公正さを保障することに関する国連憲章の根本原則に違反して国際社会の総意が反映された普遍的な 国際法まで踏みにじりながら、われわれの宇宙科学の研究と経済発展を阻もうとする敵視政策を強圧的に押し付けた。…
自分らの手先は何でもでき、自分らが敵視する国は何もできないという米国の白昼強盗さながらの論理が黙認され、弱肉強食の生存法則が通用されているのが、現世界の実状である。
アメリカ式考え方、アメリカ式基準が他国には通じるかも知れないが、われわれには絶対に通じない。
わが軍隊と人民は、民族の尊厳と国の自主権を守るための全面対決戦に進入した。
米国の破廉恥な二重基準と暴悪な敵対行為は、われわれの超強硬対応を免れないであろう。

<朝鮮中央通信社論評「われわれの選択は敵対勢力の想像を絶するだろう 」>

【平壌2月5日発朝鮮中央通信】米国の対朝鮮敵視政策と核戦争策動が重大な段階に入っている。…
われわれには、国の経済発展のための安定と平和的環境も必要である。
しかし、われわれにとって自主権は生存権であり、自決権であり、発展権である。
自主権を失った国と民族は安定と発展権はおろか、喪家の犬にも劣るという歴史の教訓を骨身にしみるほど刻み付けたわが軍隊と人民である。
生命よりも貴重な国の自主権を守るためにこんにちの全面対決戦に出たわれわれからいかなる伸縮性や譲歩を期待するなら、それより愚かな行為はないであろう。
こんにちの対朝鮮敵対行為が国際社会の普遍的な理解と規範の限界を完全に脱しただけに、それに対応するわれわれの選択も敵対勢力の想像を絶するものになるであろう。
敵対勢力の増大する核戦争挑発策動に対処して核実験以上のことも行わなければならないというのがこんにち、われわれが到達した最終結論である。これは民心の要求である。…

<朝鮮中央通信社論評「横暴な二重基準は百倍、千倍の対応を招くだろう」>

【平壌2月5日発朝鮮中央通信】
…日本が偵察衛星を打ちあげ、米国をはじめ国連安保理の常任理事国が相次いでミサイル迎撃試験の事実を公表した。
憤激せざるを得ないのは、われわれの衛星の打ち上げを問題視してそれほど騒ぎ立てていた米国が日本の偵察衛星の打ち上げと自国のミサイル試験に対してはおしの真似をしていることである。
平和的衛星の打ち上げに対してはミサイルの発射だと国際的に問題化して「制裁」を適用し、戦犯国の偵察衛星と覇権主義的なミサイル武力の現代化に対しては何の問題もないと素知らぬ顔をしていることこそ、不公正さと二重基準の極致であり、汚らわしい偏見である。
経済強国の建設に向けた人工衛星の打ち上げと、海外侵略のための地上撮影が可能な偵察衛星の打ち上げの中で、どれが平和を脅かすものであるのかは三歳の童も判断することができる。
自分らの手先は何でもしてもよく、自分らが敵視する国は何もしてはいけないという論理が黙認され、弱肉強食の生存法則が通用されているのが、現世界の実態である。…
二重基準の適用は極度の専横であり、現時期、国際関係の発展において百害あって一利なしである。
宇宙は誰それの独占物ではなく、平和的な衛星打ち上げの権利は世界のどの国も持つことのできる普遍的な権利である。
共和国に反対する「制裁決議」が採択された以降、宇宙の軍事化に向けた敵対勢力の不当な策動が公然と黙認されていることに対するわが軍隊と人民の憤激と報復の意志は恐ろしく爆発している。
好戦勢力は、われわれがすでに内外に聖戦を布告した状況であるということを一時も忘れてはいけない。
破廉恥な二重基準と暴悪な敵対行為は、われわれの超強硬対応を免れないであろう。

<労働新聞「 反共和国「制裁」策動がもたらすのは戦争だけ」>

【平壌2月9日発朝鮮中央通信】9日付の「労働新聞」は署名入りの論説で、北南関係と朝鮮半島にまたもやしゅん厳な情勢が生じているのは全的に、共和国の合法的かつ平和的な衛星の打ち上げにかこつけて国連安全保障理事会で「制裁決議」をつくり上げた米国とその追随勢力の前例のない反共和国敵視策動に起因すると主張した。…
また、反共和国「制裁」騒動は共和国の尊厳と自主権を抹殺し、害するための白昼強盗さながらの敵対行為であるとし、次のように指摘した。
「制裁」はすなわち戦争である。米国とその追随勢力の反共和国「制裁」騒動が北侵のための手段であるというのは言うまでもない。
反米・自主的な国々に対する米国の侵略策動が、「国連を通じた制裁」「独自の制裁」「軍事攻撃」の順になっているということは秘密ではない。米国は今、われわれに対しても同じ轍(てつ)を踏もうとしている。
今、米国と南朝鮮のかいらいはいわゆる「北の追加挑発」の際、「追加制裁」決議を迅速に採択し、それに国連憲章の武力「制裁」条項である第7章第 42条を明記しようと企んでいる。米国と李明博逆賊一味の反共和国「制裁」騒動は、実に危険きわまりない境地に至っている。これを黙過する場合、朝鮮半島 でしまいには北侵核戦争が起きるというのは火を見るより明らかである。…

3. 中国側論調・分析

 以下では主だったものを紹介します。なお、強調部分は興味深い指摘として、私(浅井)がつけました。

<公式筋に近い見方>

○高浩栄「韓国新政府の当面の急務」

 高浩栄は新華社配下の研究所の研究員です。朴槿恵新政権にとっての朝鮮の第3回核実験が持つ意味合いに関する中国側の見方を示しています。

(2013年2月4日の中国新聞社ネット掲載の週刊『瞭望』をソースとする文章)
 …ほとんどの分析において、朝鮮が新たな核実験を行うことは待ったなしの時間の問題と見なされている。…朝鮮が第3回核実験を行うことはもはや回避困難な現実問題だ。…
 朝鮮の強硬姿勢は、韓国の現政権に見せようというよりは、朴槿恵新政権に対する警告と見るべきだ。しかし、このような警告は、「平和を破壊する行動には代価を支払わせなければならない」、「北韓に対する抑止力を強化し、国際社会と協力して北韓核問題及びミサイル問題を解決する」べきだと一貫して主張してきた朴槿恵に対して大きな影響を与えるとは考えにくい。…
 朝鮮が核実験を行うときはまた、朴槿恵政権に対するテストの時であろう。朴槿恵新政権のこの問題に関する一挙手一投足は半島及び東北アジアの平和安定に影響するだろう。彼女は、高度な政治的智力、外交技術及び創造的方法を発揮してこのテストに臨まなければならない。

○張璉瑰「朝鮮は『核保有国』を自任するのか」

 張璉瑰は中共中央党校教授であり、朝鮮問題ではしばしば重要な見解を表明しています。以下の文章も極めて冷静に朝鮮の考え方を把握しているもので、学ぶべき指摘が数少なくありません。

(2月8日付環球時報掲載)
 …関係者及びメディアの主流の判断では、朝鮮の新たな核実験は既に準備が整い、その時間は多分近日中ということだ。そういう判断の根拠は、1月25日の朝鮮国防委員会発表の声明が「高レベルの核実験」を行うことを明確に表明したこと、米日韓などの偵察及び公開した朝鮮の核実験試験場の最近の動きである。
 朝鮮はなぜ新しい核実験を行うことに執着するのか。一説では、安保理が対朝制裁決議2087を成立させ、朝鮮は対抗して強さを示すために核実験で対抗するとする。ほかの説では、米日韓が朝鮮を「刺激した」ために、朝鮮は「刺激のお返し」をしようとしているのだとする。しかし、これらの見方は物事の根本を捉えていない。朝鮮が核実験を行うのは核計画推進の必要によるものであり、外的な「刺激」とは基本的に無関係だ。朝鮮は、核武装の道を進もうとしており、「核大国となる」ことを国策と定め、憲法にも書き込んでいるのであるから、2回の核実験だけで足りるはずがないではないか。朝鮮は核兵器を小型化してミサイルに搭載できるようにする必要があるし、ウラン型原爆の製造技術を研究開発する必要もある。技術進歩は核実験で検証する必要がある。朝鮮が新たにまた複数回の核実験を行うことは必然なのだ。
 朝鮮は何時新たな核実験を行うだろうか。朴槿恵就任式典、オバマの一般教書発表などの節目を提起するものもいる。このような説はさらに的外れだ。朝鮮が何時核実験を行うかは、もっぱらその核計画の必要性及び技術的準備状況によって決まるのであり、これらの「節目」とは無関係だ。仮に時間的に重なるとしても、それは偶然の一致だ。朝鮮が適当な時間を選ぶとすれば、もっとも可能性があるのは重要な首脳外交活動の後だと思われる。なぜならば、朝鮮にとって魚と熊の掌を同時に得られる(一挙両得だ)からだ。
 朝鮮の第3回核実験が直接追求することは何か。軍事技術上の核爆弾の小型化プロセスを推進することに加え、極めて重要な政治外交上の目的があり、それはアメリカ及び関係国に対して朝鮮核問題で勝負を迫ることだ。つまり、朝鮮の核保有について、「容認せず」なのか「容認する」なのか、二者択一であり、回避はなしだ、ということだ。これらの国々に対して手のうちを見せることを迫るため、朝鮮は「高レベルの核実験」を行うことを公表すると同時に、今後は6者協議はあり得ず、919共同文書は失効で、核放棄のコミットも撤回と宣言し、交渉の窓口を閉じた。朝鮮の基本的判断は、朝鮮が核実験を行い、米中などが安保理に新しい対朝鮮制裁決議を成立させても、傷が致命傷になることはないということだ。朝鮮は、中国は「安定維持」を主張するだろうし、援助を断絶することはないだろうと見ている。アメリカは当面はまだ朝鮮に対して手を下す決意は下しておらず、仮にその意志があるにしても、必ずや中国の反対に遭い、朝鮮の核実験は中米対決に変ずるだろう。その結果、米中としては、やむを得ず「容認する」を選択するだろう。第3回核実験が前2回のようにつつがなくやり過ごせば、今後は朝鮮が他の国々と核問題でやり合うこともなくなるだろう。したがって、朝鮮は、第3回核実験は朝鮮核問題の紛争を最終的に収束させる「最後の戦い」と見なしている。
 朝鮮の公式の代弁者と見なされている在日朝鮮人の新聞である『朝鮮新報』は昨年12月25日に発表した文章で、朝鮮半島の「現状維持」は長続きせず、2013年には情勢の変化が加速し、「朝鮮がその目標を実現する時間は短縮される可能性がある」として、朝鮮が朝鮮核問題の「最後の戦い」を勝つことに十分な自信を持っていることを明らかにした。
 しかし、韓米は既に秘訣を見つけている。韓国統一相は、朝鮮の第3回核実験は「これが最終段階であることを意味している」と述べ、韓国大統領は「絶対に朝鮮の核保有を許さない」と強硬に述べた。アメリカ国務省スポークスマンも、もし朝鮮があくまで核実験に固執するのであれば、「アメリカは重大な行動を取る」と述べた。(米韓軍事演習について述べて)物事を「勝負」に引っ張っていくということは、危険なばくちにほかならない。

○2月4日付環球時報社説「中国は半島情勢の悪化の巻き添えを食う可能性がある」

 この文章は、環球時報社説にしては珍しく、朝鮮核問題に関し、アメリカのプレゼンスの前に主導権を握り得ていない中国の弱い立場を正直に白状していること、しかし、これからは6者協議を主催するだけではなく、妥協策を作り出すために中国としての立場を押し出していく必要性を指摘していること(つまり、6者協議のあり方を今後変えていくという方向性を主張していること)の2点で興味深いものです。

 …朝鮮の核保有は既に既定路線のようで、交渉に対する腰の定まらない態度も全体的な時間稼ぎだ。こうして、朝鮮が実戦用の原爆の開発に近づけば近づくほど、朝鮮と大国との複雑な駆け引きはますます勝負の局面に近づいている。それは即ち、大国が最終的に朝鮮の核保有の現実を受け入れるか、それともアメリカが東北アジア諸国の地域安定に対する格別の関心を顧みず、朝鮮に対して極端な行動に走るかということだ。
 アメリカは朝鮮の核施設に対して「外科手術」的な打撃を採用するだろうか。アメリカは歴史的に多くの核の敷居にある国家に対してこういう計画を立てたことがあるが、それを実行したことはない。…
 朝鮮半島が永久にこのような極端な試練に直面することがないことを希望するし、そのような事態は地域の災難だ。そのようになったら朝鮮半島がどのように乱れるか、東北アジア全体ひいては東アジアが支払う代価が一体どのようなものになるかについては現在想像も及ばない。…
 アジアには欧州におけるような集団的安全保障のメカニズムはなく、各国はおおむね単独で戦うということであるので、このような混乱は必ずや一定の時間続かざるを得ないだろう。  中国はアジアに位置し、かつ、いくつかの紛争の関係国であり、しかもアメリカの干渉・束縛があるので、アジアの集団的安全保障システムを作ろうにも指導的役割を担うすべが当面はない。我々は、現実の波乱の局面において流れに身を任せており、環境構築の主動性は極めて限られている。
 しかし中国は、アジアの平和構築の努力を放棄することはできない。なぜならば、すべてのアジアの国々のなかで、中国の力はいちばん強く、中国の利益の範囲も最大だからだ。アジアが乱れれば、世界の大国のなかで中国が受ける影響ももっとも多い。

 …中国の対外開放は既に後戻りの可能性はなく、我々の力量の増大は取りも直さずアジア政治の変動加速の原因の一つであり、我々がアジアの争点の解決に向けて積極的に影響力を及ぼさないとしたら、最終的にその巻き添えを食うことはほぼ不可避である。
 中国は朝鮮核問題で6者協議を招集したが、協議が中断した後の半島における対決がエスカレートする過程において、中国のなすすべは極めて限られ、「観客」ではないが、関係国の衝突に対して「物理的に温度を下げる」ことが出来る程度で、処方箋もなければ、様になる薬も持っていない。
 朝鮮半島情勢の抑えが効かなくなれば、中国が「巻き添えを食う」可能性は高く、このことと相対的に主動的に対応することとでは、戦略的な結果は違ってくるだろう。
 もちろん、アメリカがいるので、中国が主導権を発揮する余地は限られてくる。しかし、我々はアメリカの要因を考慮しすぎていることはないだろうか。我々があれこれと考慮することとアメリカの対中抑止政策とは本当に対応関係があるのだろうか。
 朝鮮半島などのさまざまな難題における複雑なインタラクションにおいて、中国が徐々に自らの主動性を積み上げるとするならば、さらに断固とするべきだ。たとえ妥協を図るとしても権威を持ってそうするべきだ。例えば、半島における関係国の最終的な勝負を回避させるというとき、関係国をして相互に妥協させ、適応させて最終的に誰も突破できないような強大なプレートを凝結させるうえで、そういう妥協工作は中国が一定の強さを持っていることを必要とする。要するに、半島情勢がかくも悪化しているとき、中国が関係国を北京に招くだけで、他の国がそれに応じて動くという時期はもう過去のものとなっている。

○2月6日付環球時報社説「中国は中朝友好を大事にしている、朝鮮も大事にする必要がある」

 上記社説が朝鮮核問題の国際的側面について扱ったものとすれば、この社説はどう問題の中朝関係における意味合いを扱ったものであるということができます。中国の対朝政策をより是々非々の方向に持っていくことを主張しています。

 朝鮮の核実験が近く行われるだろうと広く観測されており、中朝関係は新たな試練に直面している。
 中国は恐らく米日韓のように朝鮮を「罰する」ことはせず、中朝の情誼はいかなる時も「恩は断たれ義が絶える」ことはあり得ないのであって、米日韓はこの点をハッキリ認識すべきである‥。
 それと同時に、朝鮮が勧告を聞かずに第3回の核実験を行うのであれば、朝鮮は必ず深刻な代価を支払う必要があり、中国から得ている様々な援助も当然減少するのであって、この点については、我々は中国政府があらかじめ朝鮮に警告し、朝鮮が異なる幻想を抱かないようにすることを希望する。
 中国の半島情勢研究者のなかには、朝鮮の核実験が中国の外交的ハードルとなり、中国が朝鮮に対する国際的な部分制裁に参与することにより、朝鮮が中国に反目し、ひいては両国がかつての中ソ的な関係断裂に至るのではないかと心配するものがいる。
 このような心配の背後にあるのは中国の国家としての力量に対する自信のなさであり、朝鮮外交の非理性を誇張するものでもある。朝鮮の核問題は間違いなく中朝関係を極めて複雑にし、中国の東北アジアにおける戦略的困難を増やしている。中国が中朝関係を処理する上で考慮する必要がある要素はますます増えているが、ここにおいては一つの大原則がなければならない。それはつまり、これらの考慮のなかには中国が朝鮮を「恐れる」ということは含まれないということだ。
 強硬は朝鮮外交の一貫したスタイルだが、この強硬は中国に対するものであってはならない。中国の人々は絶対にこれを受け入れない。仮に朝鮮が中国に対して横柄に来るときは、我々としては中国政府が強硬でお返しすることを希望するものであり、なだめたり、譲歩したりしてその行動を大目に見てはならない。そのことが中朝関係の深刻な挫折を導くとしても、それは朝鮮にお任せするべきだ。
 米日韓はひたすら中朝関係を挑発しているので、中国は決して欺されてはいけないという見方もある。こういう挑発は恐らく事実だろう。しかし、中国としては、この事態を避けるために別の苦境に陥るということはできない。その苦境とは、朝鮮の核政策に縛り付けられるということだ。
 朝鮮が中国にとって非常に重要であることは疑いの余地がない。しかし、同じく疑いの余地のないことは、朝鮮が重要であるからといって、中国の基本的な外交原則及び重大な国家利益に打撃を与えるとか、更には自国の地縁的安全保障を顧みないというようなことがあってはならないということだ。中国は半島の非核化を主張し、関係国が交渉を通じて問題を解決することをも主張しているが、中国のこの大原則に楯突くものがあれば、中国は実際行動によって自らの反対を表明するべきである。もしも中国にこのような確固たる意思が欠けているならば、我々は永遠に大国としての威信を打ち立てることは考えないことだ。
 中国は疑いなく中朝友好を維持することを願っているし、このカギとなる問題において朝鮮の利益と環状を配慮する。しかし朝鮮もお返しとしてそうしなければならない。片っ方の掌だけではパチンと音がしないのであり、中朝友好は中朝両国が同時にかつ真面目に守る必要がある。
 中朝関係が「破裂する可能性」については、中朝両国の心配の程度は同等であるべきだ。もしも中国の心配の方が朝鮮のそれよりも大きいとするならば、それは正常ではない。仮に心配の度に高低関係があるとしたら、朝鮮の心配の方が中国の心配の度よりも高くあるべきだ。
 中朝が仮に「破裂」したとしたら、両国にとっていいところはない。もちろん我々は、朝鮮の独立自主の能力を確信しているし、朝鮮が中国を離れても多分「生きられる」だろうが、これによってもっとよく生きられるということはあり得ないだろう。中国もこのことによって東北アジア地縁政治上の損失を被るだろうが、中国がそれを補う方法は朝鮮より少ないとは言えないだろう。
 中朝関係がいったん「破裂」すると、朝鮮は徹底的にアメリカに身を投じるかもしれないと心配する向きもある。第一、これはほぼあり得ない。朝鮮の米日韓との間の政治的距離は超えることのできない溝を作っている。第二、朝鮮半島全体をより親米的にさせるとしても中国の台頭を阻止することはできない。中国が大きくなればなるほど、中国周辺国家の「親米」の含意は変化し、親米と「反中」とはますますイコールではなくなっていく。
 我々が以上のように述べるからといって、中国はもはや中朝の友誼を大切にしないと主張しているのではない。まったく反対に、我々は対朝友好の戦略的意義は確かに特殊なものだと認識している。しかし、そうであればあるほど、平壌をして中国の立場について、我々は中朝友好のためには一切の原則を顧みず、中朝友好を中国のその他の戦略的利益の上においているというような誤った判断をさせることはますますあってはならないのだ。中国社会は、政府がそのようにすることには同意しない。
 中国が原則を堅持してのみ、中朝関係は長期の戦略的安定を獲得することができ、両国関係は腫れ物に触るような脆弱なものではなくなり、危機によるショックを耐えることができる。言葉を換えるならば、朝鮮とやり合うことを恐れないことによってのみ、両国の伝統的な友好を保つことができるのだ。

<非公式的見解>

 明らかに公式見解を代表していないもののなかにも面白い文章がありますので、紹介します。この二つの文章で興味深いのは、2010年の天安号事件及び延坪島砲撃事件が米中及び中韓関係に大きな後遺症を生んでいたことを明らかにしている点です。
私自身も前のコラムでこの点について言及した覚えがありますが、そのときの印象は、アメリカが「図に乗って」アジア回帰戦略につなげていくことに対する中国の反感が急速にオバマ政権に対する警戒的姿勢を強めたということでした。オバマ政権下の中米関係に関する中国側の基本認識はやはりこの警戒感にあるという私の判断は変わっていません。むしろ、中国としては、国務長官及び国防長官が交代した第2期オバマ政権が第1期とは異なる対中政策を打ち出してくるかどうかを見定めようとしているのではないかと思います。
 そういう私の見方からすると、天安号事件及び延坪島砲撃事件で中国がアメリカに対して受け身を余儀なくされたとするこれら2つの文章の指摘には同意しかねるものがあります。

○劉和平署名文章

 この文章の末尾部分が示している分析・判断内容はとても奇抜なもの(と私には思える)で、到底主流的な見解とは考えられませんが、こういう極端な「うがち過ぎな」見方をするものもいる(それだけ中国国内の言論は「活発」である)ことを知っていただく上ではいい材料だと思うので紹介します。

(2月6日付深圳特区報所掲)
 朝鮮が新たな核実験を行うことを表明し、米韓連合軍が臨戦態勢に入ってから、全世界の平和愛好者の心配は募り、多くの人々は半島情勢が制御困難となり、ひいては新しい戦争が勃発するのではないかと心配している。
 しかし、このような心配は杞憂である。歴史的経験が証明するように、朝鮮半島は格別に試練に強い。過去10年間、朝鮮は前後2回の核実験を行い、何度も衛星を打ち上げ、長距離ミサイルを実験し、甚だしきは天安号爆発事件及び延坪島砲撃事件のような極端な事件も発生したが、半島情勢は最終的には肝を冷やしながらもやり過ごしてきた。その背後にある原因は、これらの動きが半島情勢の「恐怖の均衡」状態を変えることはできないということだ。「恐怖の均衡」状態とは即ち、韓国は大戦争を起こすことができないということだ。なぜならば、朝鮮の陸軍部隊は韓国ののど元を扼しており、いったん戦争が起これば、韓国経済は50年前に逆戻りする可能性がある。朝鮮も同様に韓国と大戦争をする気持ちはないのであって、それは政権の存亡問題とかかわっているからだ。正にこの原因により、世界最強の軍事力を擁し、小国を打つこと「小魚を煮る」が如きアメリカとしても、朝鮮に対して手出しができないのであり、「包囲して変化を促す」消極的戦略しか行えないのだ。
 しかし興味深いのは、核実験、衛星打ち上げを含む朝鮮の行動は半島情勢に対して根本的な変化をもたらし得ないのに、これらの行動は柔よく剛を制すという形により、東北アジア情勢ひいてはアジア太平洋情勢全局に対して力を及ぼし、その地縁政治構造の根本的変化を導いているということだ。数年前の天安号爆発及び延坪島砲撃事件において、アメリカは、中国が朝鮮に加担しており、アメリカ支配の国際秩序を遵守していないと誤認したことにより、両事件は、アメリカがアジアに回帰して中国を包囲し、ひいては中国と近隣諸国の領土紛争に介入する口実の一つとなった。これと同時に、中韓関係も微妙になり、韓国がさらに米日陣営に傾斜することとなった。
 今回、朝鮮が第3回核実験を準備していることもこの地域の情勢に対して深遠な影響を生みだすに違いない。しかし、朝鮮の衛星打ち上げに対する制裁に中国が安保理で賛成票を投じたこと及び中国が国際社会と一緒に朝鮮の第3回核実験阻止に積極的に動いていることを含め、中国の「変化」の影響は積極的かつプラスのものとなると考えられる。その一つは、アメリカはこのことにより、進んで日本を縛り、釣魚島問題で軽挙妄動しないように要求し、エネルギーを釣魚島から朝鮮半島に移すだろう。その二つ目は、中韓関係がこのことでより緊密になり、中国はある程度韓国を引きつけ、さらに日本を孤立化させることができる。その三は、中米関係が朝鮮核問題でうまく回転し、それによってかなり改善されるだろう。つまり、中国としては、新たな朝鮮核危機をうまく扱うことができれば、アメリカのアジア回帰及び領土紛争によって悪化した外部環境が一定程度改善するであろう。
(注)劉和平:南方週末、北京青年報、深圳特区報、深圳法制報、等で執筆

○劉鳴、葉成城「中国は朝鮮のために身を挺する危険は避けるべし」

劉和平文章と比較すると、この文章に示された大鵬戦政策の部分はかなり公式的見解の立場を踏まえたものなのではないかと思うのですが、この文章については、末尾に附しましたとおり、「環球時報ネットの立場を反映するものではない」という断りがつけられています(劉和平文章にはこの断りがない!?)。

(2月7日付環球時報ネット 同日付観察者ネット所掲文章)
 今回中国が安保理決議2087を支持したのはやむを得ない行動だった。昨年のクリスマス前に中米の国連駐在の外交官は裏で協議し、中国としては最大限の力を尽くしてアメリカが提出した朝鮮に対する厳しい制裁決議草案に抵抗した。中国は、朝鮮が衛星を打ち上げる前に何度も、このような行動は国連決議に違反すると朝鮮に対して忠告したが、朝鮮は聞く耳を持たなかった。したがって安保理常任理事国である中国としては、国際社会とともに朝鮮の誤った行動に対して必要かつ合理的な対応を行う責任があった。
 実際にも、中国の新指導者は今のところ、対朝鮮政策を変更する必要はなく、第18回党大会の後、李建国政治局委員を団長とする代表団を平壌に派遣し、新中央指導部の明確な立場を明らかにした。それは即ち、さらに中朝の伝統的友好を強化し、発展させ、戦略的及び長期的視点で中朝関係を位置付けることを堅持するということだ。しかし、このような態度表明は、2010年11月の延坪島砲撃事件を処理したときのように慎重、ということを必ずしも表すものではない。物事の是非及び国際ルールの要求に基づいて適切な反応を行うということは、新指導者の新しい態度である。
 実際上、中国がアメリカと決議案を協議したときには、朝鮮半島における南北対峙及び危機の状況について十分考慮し、朝鮮に対する制裁内容を制限した。…しかし、中国の最大限の努力は朝鮮が評価するところとならなかったのは明らかなことだ。…
 朝鮮の国内体制の特殊性により、朝鮮当局は国内において強国というイメージを打ち立てる必要があり、朝鮮当局は往々にして強硬姿勢を打ち出す。予想できることは、朝鮮のこのような強硬に対するには超強硬で対処する態度は、必ずや深刻な政治的経済的代価を支払わなければならず、国際社会においてさらに孤立するだけで、国民生活はさらに低下するだろうということだ。事態が引き続き悪化していけば、アメリカ及びその同盟国は国連の枠組みの外で、金融制裁及び朝鮮に出入りする外国船舶の韓国、アメリカ、日本、EU諸国の港湾への「入港制限」などを含む制裁を実施し、この手段が実施に移されれば、国際社会が朝鮮に対して事実上の海上封鎖を行うに等しいことになるだろう。米韓は、2010年の天安号事件後と類似した頻繁な軍事行動及び配置を行って朝鮮に圧力をかけるだろう。朝鮮半島は再び新たな緊張対抗の危機に陥ることになる。
 朝鮮が第3回核実験を行うならば、中朝関係に暗い影をもたらすことは間違いなく、中国としては外交上国際社会と共同歩調を取らざるを得なくなる。中国は、戦略的利益の点から、朝鮮に対して引き続き一定の支持を与えるだろうが、このことを無原則的庇護と間違って解釈することは許されない。天安号事件以来の一連の衝突は、既に中国を居心地の悪い両難の苦境に置き、中国の対米韓関係を傷つけたし、中国の国家的利益をも破壊した。朝鮮が核兵器を開発することは、中国の辺境地域の生態及び人民の感情にマイナスの影響を及ぼすのみならず、中国の安全保障にもプレッシャーとなる。
 もちろん、中国は朝鮮半島が平和と安定を維持すること及び朝鮮が国内の安定を維持することを希望する。これは中国の利益に合致する。したがって、中国がアメリカの対朝鮮全面経済制裁及び軍事行動に全面的に賛成することはあり得ない。中国は、朝鮮問題については政策を十分に吟味する必要があり、ひたすら朝鮮に圧力を行使することは中国に対する信頼を低下させ、逆に朝鮮をして瀬戸際政策に走らせ、火に油を注ぐだけだ。平和的手段によって朝鮮の核問題を解決することこそが関係国の利益に合致する。したがって、中国は引き続き朝鮮と接触を保ち、関係国に冷静さを呼びかけ、一方では制裁及び非難を通じて、他方では対話、勧告ひいては援助を通じて朝鮮が再びテーブルに戻ってくるようにする必要がある。
(環球ネット:この文章は環球時報の観点を代表するものではない。)

4.ロシア側の見解

 中国側報道においては、ロシアの専門家の朝鮮核問題に関する見解を紹介する文章もありました。そこで示されている見解はおおむね中国の専門家と似ているものです。私はロシア語文献は読めませんので、ロシア側の見解も中国側報道に頼るほかないのですが、ご参考までに紹介します。

〇2月2位置付け環球時報(ロシアのメディア報道によるもの)
ロシア科学院経済研究所朝韓問題研究室主任ゲオルギイ・トロラヤ
朝鮮の安保理決議に対する反応は完全に予想範囲内のことだ。もしも朝鮮の衛星打ち上げに対する安保理の反応が制裁強化の声明に限られていたならば、情勢の展開はまったく違ったものだった可能性がある。「遺憾なことに、現在は既に後戻りの余地はなく、朝鮮半島情勢は引き続き悪化するだろう。」
 トロラヤは、平壌が核実験を行い、ミサイルを発射した際の声明を評価して、これは軍の保守派がその政治的影響力を強めたことを示すものではないと述べた。「強硬路線が現段階では主動的地位を占めるのは必然である。これはある特定の利益集団の立場とか政治的影響力の結果とかいうものではない。」年若い指導者である金正恩は、国内の引き締めをある程度弛め、可能性があれば一定の限られた改革を行いたいと思っているが、今のところ手綱を弛めることはできない。「彼をしてそう強いているのは、朝鮮軍部だけではなく、韓国、アメリカ及び日本の軍部及び保守派がいる。」
ロシア科学院極東研究所朝韓センター主任アレクサンダー・チェービン
朝鮮は、安保理がミサイル及び核実験の分野で二重基準を採用していると考えている。「例えば、昨年4月、朝鮮がミサイル打ち上げに失敗した同じ時に、NPT未加盟のインド及びパキスタンも核弾頭搭載可能の弾道ミサイル発射実験を行ったが、安保理を開催して両国を非難することを要求する国家はなかった。アメリカは、インドのミサイル発射はこの地域の平和に対する脅威とはならないと称した。日本は2012年4月に4個の衛星を打ち上げ、そのうちの1つは韓国の衛星だったし、さらに6つの衛星を打ち上げると公表した。韓国もまた、本年(しかもロシアの援助のもと)朝鮮の打上場からわずか200キロの場所で自らの衛星を打ち上げることを計画している。しかしこのことに憂慮を示すものはない。」
 チェービンは次のように認識する。朝鮮に対する戦争はただ一つの状況のもとにおいてのみ発生する。即ち、アメリカがイランに対するように、朝鮮の武装を解除することを試みる場合だ。彼は次のように強調した。「朝鮮自体はいかなるものをも攻撃することを考えていない。朝鮮の指導層のなかにいる多くの実務派は、中国及びソ連が朝鮮戦争期間中に朝鮮に対して援助を提供したけれども、中露両国は現在朝鮮が軍事的冒険を行うことを支持しないことを認識している。朝鮮の軍隊の装備は前世紀の水準に留まっており、様になる攻撃を発動することは不可能だ。専門家は朝鮮脅威論に対して疑問を表明している。朝鮮情勢がイラク及びリビアのように発展することを防止することこそが、朝鮮指導者にとって目下もっとも関心があることだ。」
 チェービンはさらに次のように指摘した。朝鮮の指導層はかなり団結している。「軍人のハイレベルに対する人事異動ですら深刻な分裂を起こしていない。国内上層部における分裂は一般的には内部的に解決されており、公然とした対立はない。朝鮮の民衆はつとにアメリカ及び同盟国による半世紀以上にわたる経済封鎖と制裁のもとで生活することに慣れている。これらの制裁が平壌の衛星製造及び打ち上げを阻止することもできなかった。したがって、制裁は住民の生活水準に影響を与えているが、朝鮮の政策決定に顕著な影響を与えることにはなっていない。ロシアはこれまでに何度もこのことについて警告を提起してきた。」

〇2月7日付今日早報
ソウル国民大学教授(ロシア専門家)アンドレイ・ランコフ(音読み)
朝鮮当局が日増しに強硬になる原因は国連の制裁であり、しかもこの種の制裁は朝鮮の核計画放棄を迫ることはできない。…「制裁は朝鮮に対して大きな影響を与えることはないが、少数の専門家を除いて、このことを認識しているものは少ない。しかし、新しい制裁を講じることにより、西側の外交関係者及び議員たちは選挙民に対して自分たちが朝鮮からの脅威に対して如何に反応しているかということを表明することを可能にしている。」
 2006年に朝鮮が最初の核実験を行った後、国連は朝鮮に対して最初の制裁を行った。しかし、7年経った朝鮮は相変わらず3回の衛星打ち上げを行い、しかも最後の1回は打ち上げに成功したし、この間に核実験も行っている。したがって、国際制裁は朝鮮に対してハッキリした効果を上げていないことが分かる。制裁は朝鮮の核問題を解決する道筋ではあり得ないのだが、このことを承認する用意があるものは極めて限られている。したがって、朝鮮が第3回目の核実験を行おうとしているが、その後に来るものは「理性を欠いた制裁」となる可能性がある。

〇2月8日付新華ネット
ロシア外務省スポークスマン・ルカシェヴィキー(音読み)
2月7日の定例記者会見において、ロシアは、朝鮮問題にかかわる関係国が自制を保ち、情勢がさらにエスカレートすることを避けることを呼びかけると述べた。
 同スポークスマンは、朝鮮が核実験を行う準備をしていることを明らかにしたことについて評論し、朝鮮は国連加盟国として、安保理の関連決議を厳守するべきであるとし、ロシアは、朝鮮及び朝鮮半島核問題に関係する諸国が自制を保ち、情勢がさらにエスカレートして新たな軍備競争が引き起こされることを回避することを呼びかける、と述べた。また、ロシアは引き続き関係国が共同して政治外交手段によって朝鮮核問題を解決することを探ることに賛成であると述べ、6者協議が朝鮮核問題を解決する最善の方法であると強調した。

RSS