オバマ政権と米中関係(中国側分析)

2013.01.03

*私はオバマ政権下の過去4年間の米中関係をどのように評価するべきかについて関心があり、中国新聞社HPの「国際新聞(ニュース)」がちょうど2009年からの主な記事を載せているページがあることに着目して、主だった記事を収録してきました。そして、第2期オバマ政権が発足するこの時期に、オバマ政権の下での過去4年間の米中関係を総括し、これからの米中関係について展望する作業を行うべきだと考えていました。
 しかし私の以上の問題意識は、中国側も当然のことながら持つわけで、2012年年末に多くの関連する文章が現れました。そのうち主だったものとして、時間の順序に従いますと、以下のようなものがあります。
◯12月20日付人民日報 鐘声「今日の中国の冷静さと我慢強さ」(以下「鐘声A」)
◯12月24日付人民日報 鐘声「中米関係発展のプラス・エネルギーを蓄積しよう」(以下「鐘声B」)
◯12月24日付中国新聞社HP 社会科学院『国際情勢白書:グローバル政治安全保障報告(2013)』におけるアメリカのアジア回帰戦略に関する部分の紹介(以下「社会科学院白書」)
◯12月24日付東方早報 沈丁立(復旦大学アメリカ研究センター主任)「ヒラリー時代の中米関係」(以下「沈丁立文章」)
◯12月25日付人民日報 鐘声「世界は中露戦略協力を必要としている」(以下「鐘声C」)
◯12月26日付人民日報海外版 任衞東(中国国際関係研究院研究員)「中国は圧力を持ちこたえなければならないし、完全にそうすることができる」(以下「任衞東文章」)
◯12月27日付新華社国際 王珊(中国現代国際関係研究院日本所研究員)「日本、アメリカの軍事戦略調整に合わせて中国を牽制」(以下「王珊文章」)
◯12月31日付新華社HP 徐長銀(新華社世界問題研究センター研究員、国家安全フォーラム高級研究員)「アメリカの戦略的東移ステップは止まらない」(中国新聞社HPの見出しタイトル 以下「徐長銀文章」)
以上の諸文章を内容的に分類しますと、過去4年間のオバマ政権の対アジア戦略及びそのもとでの米中関係を分析したものが社会科学院白書、沈丁立文章及び徐長銀文章、米中関係に関する政策的提言を行っているのが鐘声A及びBと任衞東文章、米中新型大国関係のあるべきあり方を示唆するものとして中露戦略協力を論じた鐘声C、米中軍事関係の大枠のもとでの日本の軍事的位置づけを扱った王珊文章、と大別することができます。私自身の分析については機会を見て試みるつもりですが、まずは年初に当たって、中国側の分析及び問題意識の所在を紹介しておきたいと思います。
なお、このコラムをいつまで続けることになるのか私自身にもなんの目安があるわけではありませんが、中国側の立場・見解を消化した上で紹介する媒体が国内で圧倒的に少ない現実に鑑み、そして、国際問題に関して私たちの誤りなき立場・見解を形成する上で中国の立場・見解を理解することは不可欠の要素であることを確信するが故に、そういう意味でも、少なくとも本年は(私の健康と気力が続くことを前提にして)引き続きこのコラムを維持していこうと考えています(1月3日記)。

<オバマ政権の対アジア・中国戦略に関する中国側の評価>

 沈丁立文章は、オバマ政権の過去4年間の対アジア戦略及びそのもとでの米中関係の位置付けに関して、次のように分析しています。ここで示されているように、米中関係は出だしこそよかったが、2009年から2010年にかけて続いた「7度の重大な困難」を受けてアメリカ・オバマ政権の対中認識が変化し、「アジア回帰」戦略(後には「リバランス」という言い方に変わりましたが、中国側では、その言いまわしの変化は、「アメリカは元々アジアを重視してきた」とする共和党側からの批判や、アジア重視に対する欧州諸国の不満を受けて表現上の見直しを行ったに過ぎず、その中身は変わらないとする見方が支配的です)によって対中対決・封じ込めに基調が移った、とする見方は、沈丁立だけに限らず、中国側専門家の間で広く共有されています。
 特にこの点に関して、私たちは二つのことに留意する必要があります。一つは、アメリカは天安号沈没事件や延坪島砲撃事件を利用してアジア太平洋地域への軍事プレゼンス強化を推進したと中国側が見ていること(この二つの事件を朝鮮半島のローカルな問題と見るのではなく、オバマ政権の「アジア回帰」戦略推進の契機となったとして、米中関係そのものにかかわる重大な事件として位置付けていること)です。もう一つは、尖閣問題などの領土問題の発生・激化の背景にはアメリカの影・動き(使嗾)があるという見方が中国側には強いということです。沈丁立文章の内容は決して彼個人の孤立したものではなく、中国の専門家の間で広く共有されている見方です。

 オバマ政権の核心的政策目標は、金融危機の狂乱を極力挽回し、反テロ戦争の泥沼からアメリカをして脱却せしめることである。アメリカ外交の使命は国家目標に奉仕することであり、(具体的には)各国特に大国及び新興国家とアメリカとの経済金融協力を確保し、各国とともにイラク及びアフガニスタン情勢を安定化させ、アメリカの戦略的収拾と経済復興に資することである。したがって、オバマ外交元年においては…対外的にすこぶる謙虚であり、イラン、キューバなどに対しても柔軟な姿勢を取り、中露に対する態度も温和なときがあった。
 中米国交樹立以来、両国関係ははじめて新大統領の就任後に高いレベルを迎えた。クリントンは、アメリカ議会主催の中国全国人民代表大会委員長スピーチに際し、情熱溢れる挨拶を行い、呉邦国委員長がワシントン特別区をアメリカでの我が家とするように要請した。この1年の間、中米は戦略及び経済対話を開始し、クリントンはアメリカ側を自ら率い、毎年両国の間を奔走したが、このことは両国関係を安定させ、発展させる上で重要な役割を果たし、両国は特に金融貿易面で新たな協力を成し遂げた。
 中米関係は過去4年の間で新たな段階に上り、双方の最高指導者が国賓クラスの相互訪問を実現した。米中国交回復以後、オバマ大統領は就任第1年目に中国を国賓として訪問した最初の大統領となった。中米両国は過去2年の間にさらに国家副元首の相互訪問も実現し、ハイ・レベルがかくも頻繁に行き来した例はかつてなく、これらはクリントンの(対中)重視と密接な関係がある。…
 しかしながら、中米関係は極めて複雑だ。中米関係を重視したのもアメリカ及びクリントンならば、中米関係に絶え間なく挑戦したのもアメリカ及びクリントンだった。2009年中葉から2010年末までに、中米関係は7度の重大な困難に見舞われた。コペンハーゲンの国連気候変動会議では、アメリカは中国に無理矢理従うように迫った。台湾に対して勝手に武器を売却しようとして中国側の強烈な反対に遭遇した。アメリカの指導者はダライ・ラマとの会見に固執した。アメリカ海軍の測量船が中国に接近、偵察しようとして中国に阻止された。韓国の天安号沈没後に中米関係が緊張した。延坪島砲撃事件後にアメリカ空母が黄海に進入した。釣魚島海域での日中船舶衝突後にアメリカは日本を支持する姿勢を取った等々。これらすべての問題において、アメリカは例外なく中国と対立する側に立った。
 これらの困難を経験した後、アメリカの対中判断に重大な調整が行われた。アメリカは、中国の中にかつて自らが台頭したときの影を見出し、「アジア回帰」(後に「リバランス」と改称)戦略を制定し、グローバルでは縮小するがアジア太平洋では拡張し、中国に対決するものではないと言いながら、実際上は国際規制によって極力中国を牽制し、特に中国の周辺海域では中国に有利な海洋秩序が出現することを防止しようとしてきた。アメリカのアジア太平洋戦略の調整はオバマの国家安全保障グループによって制定されたが、クリントンはその中核だった。近年における中国周辺の南海(南シナ海)及び東海(東シナ海)地域における波風が高く荒い状況は、アメリカがすべてその背後で推進しているからであり、クリントンは正に中核的な設計者であり、操縦者である。
 クリントンの中国に対する態度においても重大な変化が現れた(彼女が国務長官就任後当初に示した情熱は、あるいは本心ではなかったかもしれない)。アフリカから南太平洋、ミャンマーからカンボジア、彼女はその行く先々で特定の国に対する用心を呼びかけたが、その指す矛先は(中国であることが)一目瞭然だった。過去2年にリビア及びシリア問題で中米間の矛盾が深刻化するに従い、感情的になったクリントンの中国に対する評価はさらに言葉を選ばないものとなり、超大国の筆頭外交官としてはあるまじきものとなった。
 当然のことながら、頭に血が上ったからといって、国務長官としては中米関係が軌道をはずれないようにコントロールしなければならなかった。過去4年の間、中米の為替レートをめぐる政治、中日釣魚島危機、中比黃岩島(スカボロー礁)危機などはクリントンが少なからず心を砕いたものだ。…
 過去4年間の中米関係が理想的でなかったことについては人的及び物的な要素があると言うべきである。人的な面では、アメリカ大統領は最初の段階で指導経験が欠けており、全局をコントロールする能力に不足していた。物的な面では、中国の急速な発展が中米の心理状態に微妙な変化を生んだ。中国としては情勢の変化に応じて変化するという切迫した要請があり、国家権益を断固として守る必要があった。アメリカはステータス・クオを守りたいと願い、既得権益を手放そうとはしなかった。歴史の流れはオバマとクリントンを過去4年のアメリカ外交の同一線上に押しやり、(この4年間が)アメリカの相対的な衰弱のカギとなる段階であったために、中米関係が安定するのを難しくすることを運命づけた。クリントンがアメリカ外交の舵取りでなかったとしても、中米関係はやはりリスクに満ちていただろう。
 過去4年において、アメリカの対中関係だけが出だしはよかったが後が悪いということではなく、アメリカの他の地域との関係においても多くの困難が出現した。米ロ関係も戦略兵器削減に関する新しい協議で好スタートを切ったが、後にはアメリカの政府及び議会がプーチン政権に向かって罵詈雑言を浴びせることになった。「アラブの春」に対してもアメリカは相当に困惑した。西アジア及び北アフリカの変化はアメリカの多くの伝統的盟友の政権をひっくり返し、アメリカとしてはその変化を受け入れるしかなかったが、新政権の登場は必ずしも地域の安定をもたらしていない。…これらの錯綜した状況は、オバマが次期国務長官を選択することに妨げとなっただけではなく、アメリカの戦略的東移というグローバルな調整にも影響を及ぼしている。

 中国新聞社HPは、社会科学院白書の内容を次のように紹介しました。「2010年~2011年はこの戦略の…試行期であったとするならば、2011年末からは、外交、軍事及びマルチ協力の分野で、アメリカは一連のすさまじい「攻勢」と戦略的布石を行うようになった」という分析は、アメリカの対中戦略が2011年末に協調から対決へと大きく転換したと見る点で、上記沈丁立文章と軌を一にしていることは明らかでしょう。これらの対中戦略の転換を表しているのが、2011年10月のクリントン国務長官の「アジアをカナメとする」新外交戦略綱領及び2012年初の新国防戦略であるとされます。「新軍事戦略発表後、アメリカは、中国に関係がある領土主権及び海洋権益の境界画定紛争に積極的に首を突っ込み、中国と対抗する国々を直接間接に支持するようになった」という記述は、上記沈丁立文章よりアケスケに、スカボロー礁、尖閣諸島における領土紛争に対するアメリカの積極的関与があるとする中国側判断を示しています。

 アメリカは、2009年末に「アジア回帰」戦略を公式に打ち出し、一方的にアメリカ主導のアジア太平洋秩序の変化を図ろうと試みた。2010年~2011年はこの戦略の…試行期であったとするならば、2011年末からは、外交、軍事及びマルチ協力の分野でアメリカは一連のすさまじい「攻勢」と戦略的布石を行うようになった。
 外交面では、2011年10月、クリントン国務長官は、「アジアをカナメ」とする新たな外交戦略綱領を提起した。その後オバマ大統領は、アメリカがグローバルな経済、安全保障及び戦略的重心を全面的にアジア太平洋に向けることを強調した。2011年11月、オバマは東アジアサミットに出席した際、南海問題を議題に入れようと試み、ヴェトナム、フィリピンが南海問題について大げさに騒ぐようにそそのかし、中国に対して外交的な包囲攻撃を展開した。
 様々な事象に示されるように、アメリカは「スマート・パワー」などの手段を積極的に用いて中国と周辺諸国との間の矛盾及び紛争に介入しひいては挑発して、外交的に中国を牽制、孤立させる方法によってアメリカの地域での影響力を強化しようと意図している。
 軍事戦略の面から見れば、2011年末、オバマはオーストラリアを訪問して、米豪防衛協力の強化を提起した。2012年初めには、オバマ政権は新国防戦略を発表し、米軍の軍事力を調整し、グローバルな戦略的配置を再調整して新たな脅威及び防衛任務に対処し、中国を潜在的ライバル及び防衛対象に挙げた。
 新軍事戦略発表後、アメリカは、中国に関係がある領土主権及び海洋権益の境界画定紛争に積極的に首を突っ込み、中国と対抗する国々を直接間接に支持するようになった。2012年6月、パネッタ国防長官は「シャングリラ安全保障対話フォーラム」で正式にアジア太平洋「リバランス」戦略を提起した。
 マルチ協力の分野では、アメリカは一連のさらに主動的な措置を取ってきた。戦略面では、3国間及びマルチの対話及び協力メカニズムを推進してきたほか、アジア銀行主導のメコン川国際地域協力機構を回避し、自らが主導する「アメリカ・メコン協力」を組織し、TPPを積極的に推進してアジア太平洋におけるマルチ経済協力の方向をねじ曲げ、主導しようとしており、中国の地域における影響力を排除しようとする意図が極めてハッキリしている。
 外交的な「スマート・パワー」を広範囲で応用し、軍事「リバランス」戦略を実践的に配置することに伴い、オバマ就任後に極力進めてきた「アジア回帰」戦略は次第に形をなして来ている。現在の情勢はアメリカに有利であるように見えるし、中国周辺において…地域的な優位にあるようであり、中国の周辺における影響力はある程度「制限」され、「押し戻され」ているように見える。  しかし、アメリカが着手している「アジア回帰」戦略の様々な新たな動きは中米間の摩擦と対立を激化し、周辺諸国に対して誤った「シグナル」を送っている。アジア太平洋のカギとなる一員であるアメリカの過度の「ゼロ・サム」的思考傾向、中国の国家利益を無視し、傷つけるやり方は、中米関係の正常な発展にとって役立たないだけではなく、この地域の安全保障情勢の緊張と動揺とを加速している。

 徐長銀文章は、2010年11月のオバマ大統領によるアジア回帰戦略発表以後、今日までにおけるにおけるアメリカのこの地域における具体的な軍事ステップを丹念に猟涉、整理し、その事実関係に基づいて以下のように論じています。ここでも、日本をはじめとする中国との領土問題の発生がアメリカのアジア回帰戦略に結びつけられ、アメリカの使嗾によるものだとする見方が示されています。特に、「とりわけ日本などによる中国主権に対する公然とした挑戦を促した」とする指摘は、アメリカの「アジア回帰」戦略が打ち出されたことが日本の中国に対する挑戦的姿勢を生んだ(アメリカは決して受け身のプレーヤーではなく、尖閣問題の陰の主役だ)とする中国側で広く共有されるに至っている認識の端的な表明です。

 アメリカの2012年におけるアジア太平洋での行動は主に5つの内容がある。第一、軍事力の調整及び増強、第二、軍事技術装備の向上、第三、機動性向上、第四、同盟国及びパートナー国との軍事協力関係強化、第五、対中軍事スパイ活動増強。
 以上のアメリカのこの地域における行動から見ると、アメリカの戦略重心の東移(東への移動)は決して口先だけのものではないし、便宜的な策ということでもなく、重大な戦略的調整であり、中国に対して防衛し、抑止するという意図がきわめて明確である。
 アメリカが戦略的東移を発表して以来、この地域の情勢に動揺と不安を巻き起こし、地域諸国の軍備競争を惹起し、軍事費は大幅に増大し、各国間の不信感を深め、とりわけ日本などによる中国主権に対する公然とした挑戦を促したのであり、こういう状況は正にアメリカの戦略的東移が作り出そうと希望した結果の一つであった。
 本年においてアメリカの当局者は度々、アメリカの戦略的東移は「中国を抑止するためではない」と表明し、その目的はアメリカと同盟国及び協力国とのこの地域における防衛関係を強化するためのものであるとしてきたが、こういう言い方そのものが「問うに落ちず、語るに落ちる」の感が深い。…
 アメリカには、中国の政治体制及び社会の発展には不確定要素があると考え、中国内部で騒ぎが起こり、ひょっとすると西側的な体制に向けての変化が起こるかもしれないという幻想があるようだ。アメリカが中国を「敵でもなく友でもない」とみなし、中国に対する政策が協力もすれば抑えようともするという状況は今後も長期間にわたって続くであろう。

<米中関係のあり方に関する中国側の立場・見解>

 鐘声A、B及びCの3つの文章は内容的には一つの主題を3つの角度から論じたものと位置づけることができます。つまり、中国がアメリカに対して中米間で構築することを呼びかけている新型大国関係(パワー・ポリティックス的発想を清算した新しい大国関係)について、中国自身のスタンスを明らかにしたのが鐘声A、アメリカに対して発想の転換を迫る意味合いを強く込めたのが鐘声B、そして新型大国関係が既に起動している見本として中露新型大国関係の実例を挙げたのが鐘声Cということになります。
 中国の提唱している「新型大国」の考え方は、私が暖めてきた平和憲法に基づく大国・日本という考え方と共通する内容がありますし、パワー・ポリティックスは21世紀においてはもはや時代遅れであり、主権の対等平等性に立脚した国家関係が大国間でも基調になるべきだとする「新型大国関係」という中国提起の概念も、私が21世紀の国際関係のあり方として考えていることと共通する内容を多々含んでいます。そういうことを念頭において、3つの文章の内容を紹介しておきます。

◯鐘声A

 …「明確な戦略方針なくしては、多くの事柄をうまくなすことはできない」。戦略の決定的な役割については言うまでもなく明らかである。この役割をうまく発揮させるためには、大局を把握する戦略的な冷静さが必要であるが、複雑な局面に対処する戦略的な辛抱強さも必要だ。
 2012年には、それぞれの大国が発展戦略、対外戦略及び国家安全戦略の調整をがっしりと掴み、ステータス・クオ大国(アメリカ)と新興大国(中国)との間の国際ルール及び秩序をめぐる戦略的勝負が展開した。起伏に溢れた国際情勢に直面して、我々はどのような戦略的冷静さと戦略的我慢強さを備えるべきだろうか。
 平和的発展は、中国の特色を持つ社会主義の必然的選択であり、時代の潮流に対する順応であり、その推進である。道義にかなえば多くの支持が得られる。穏やかで、対外開放した、包容的な大国(である中国)、不断に世界にプラス・エネルギーを注入している大国(である中国)が四面楚歌になることはあり得ない。様々な偏見及び誤解は時間によって解くことができるのみならず、様々な矛盾及び摩擦も時間が解消するし、時間は更に(諸外国の)認識の一致及び親近感をも勝ち取ることが可能だ。2012年に獲得した外交上の成果により、我々の(進む)道路、理論及び制度に関する自信はさらに確固としたものとなっている。(中国の戦略方針である)平和的発展は便宜的な策略でもなければ、現実的裏付けを欠いた夢と幻の迷宮でもない。
 大国の台頭は必然的に国際構造の調整をもたらす。平和的発展の途上で高らかに歌いながら勇ましく行進する中国は、花束と拍手だけを勝ち取るということはあり得ない。樹静かならんと欲するも風止まず。2012年に踵を接して押し寄せてきた波風に直面して、我々はますます冷静になっているし、複雑な問題に対処する過程でたくましく成長することとなった。
 中国の台頭は、ある人々(つまりアメリカ)の「至極当然の」覇者としての地位を動揺させたのみならず、より重要なこととして、その久しく滲み込んでいる優越感をも動揺させている。中国の発展を抑えようとするこれらの人々の戦略的狙いが変わることはあり得ない。時代の潮流に逆らおうとする、前途のまったくないこの戦略的狙いに対して、我々は高度の警戒感を保ち、如何なる幻想も抱かない。
 中国は、格別の忍耐心及び強靱性に依拠して新型大国関係を構築する。それと同時に、世界政治経済構造は最終的には大国の力比べによって決定されるのであり、最終的にはやはり実力で話をつける必要があることを冷静に認識している。発展途上国である我々にとってもっとも重要なことは、精力を集中して自分自身のことをうまくやることであり、奮闘進取の中で全面的に綜合国力を高めることである。そうしてのみ、我々は国家主権と国家の安全保障を防衛し、発展の利益を擁護することができるのであり、そうしてのみ主動性、優勢及び未来を勝ち取ることができるのだ。
 戦略が重んじるのは沈着冷静である。圧力に対して急がず焦らず、情勢の発展を正確に把握し、最悪に対して備える。挑戦に対しておびえず慌てず、手を出すべき時は手を出し、最善の結果を追求する。
 波風の起こるに身を任せ、魚釣り台に穏やかに座る。早くも1980年代初に中国の指導者・鄧小平は、中国には「図体が大きい」という良さがあり、間違ったものを信じない(という良さもある)と語ったことがある。中国人は昔から自分の見解に基づいて事を行ってきた。現代の我々は、歴史上の如何なる時代にも増して中華民族の偉大な復興という目標に近づいており、歴史上の如何なる時代にも増してこの目標を実現する自信及び能力を有している。今日の中国は我慢強さも十分だ。
 2013年が正に我々に向かってきている。我々は重厚な実力と十分な自信を持って、平和発展の道を安定的に、巧みに歩んでいく。

◯鐘声B

 新型大国関係を構築するという新しい局面を切り拓くことは、中米両国にとって確かに簡単なことではない。困難を恐れず、勇んで新しいものを作り出し、プラスのエネルギーを蓄積する。この3つのことは至極素朴なことのように見えるが、それらの中に含まれる道理は深いものがある。
 中米関係をうまく処理することの重要性は明らかである。困難に退き、旧習に耽溺し、様々なマイナス・エネルギーによって中米関係の大局を揺るがせることは、中米両国及び両国人民の根本的利益に合致しないのみならず、世界各国が見届けたくないことでもある。中米関係は広範な世界的影響があり、新興大国とステータス・クオ大国との対立・衝突の歴史というロジックを打破する責任は中米両国に重くのしかかっている。
 新型大国関係を構築するという点において、北京とワシントンとの間には「大きい共通認識」は存在していると言うべきである。相互尊重、互利共嬴の協力パートナーシップを建設するという位置づけについては早くから確立している。ホワイト・ハウスは、中国の台頭は必ずしもアメリカにとっての終わりを意味せず、アメリカは強大、繁栄、成功の、世界でより大きな役割を発揮する中国を歓迎すると何度も表明している。現在の問題は、共通の認識を現実のものとする過程において、アメリカには十分な我慢強さが不足しているということだ。アメリカ議会が最近採択した2013財政年度国防授権法案は正にその一例だ。釣魚島及び対台湾武器輸出に関する条項は「政策的意志」を持つに過ぎないとは言え、中国の主権及び内政に粗暴に干渉するという性格は明らかである。中米両国はそれぞれが重要な政治的議事日程を完成し、中米関係は先人の後を継いで新しく発展する端緒を開く重要な時期に入っている。マイナス・エネルギーを持つこのような法案は、中米関係に障碍を添えるだけだ。
 (アメリカに)我慢強さが欠けているところに中米関係の複雑さが反映している。中国がどれほど平和発展の理念について詳説し、実践においてどれほど善意を示しても、アメリカの内心の深いところで中国に対する不信感はまったく取り除かれていない。アメリカにはかねてから仮想敵を設定するというやり方が備わっている。今でいえば、「勢い」、「図体」、「水源」(文化、歴史、社会制度)のいずれにおいても、中国は「(仮想敵の)標準に達している」ようだが、仮想敵というのは畢竟するに事実ではない。このような戦略面での不信感が戦略的対決の衝動に変化し、こざかしい知恵を働かせ、小細工を弄するということは賢明なことではない。  核心的利益にかかわる問題においては、中国が融通を利かせる余地はないし、いささかも曖昧にすることもできない。しかし、我々は、最大限に努力し、より多くのプラス・エネルギーを傾けてアメリカ人の疑い及び不信を解くことを願っている。(とは言え)問題を引き起こした人がその問題を解決するべきである。本当に問題を解決するのは、最終的にはアメリカ人自身でなければならない。中米関係にとってはこれからの10年が正にカギとなる。「信任の赤字」が拡大するのに任せるならば、戦略的な相互不信が戦略的対決に変わっていく危険性を侮ることはできない。中米双方が互いに向きあって歩み、最大限の忍耐心と誠意をもって「信任の赤字」をコントロールし、圧縮していけば、中国にはアメリカと対決する意思はなく、中国の台頭はアメリカの終わりを意味するということではない、ということをアメリカが認識する日が必ず到来すると信じる。
 我慢強さが欠けているということは、アメリカの制度の「内臓疾患」をも映し出している。仮想敵を設定するというのは伝統的思惟による束縛であるだけではなく、アメリカの内政上の必要、特に軍事工業の発展上の必要でもある、という指摘は早くからある。社会が新しい共通認識を形成するのを促し、利益集団の制約を脱却し、政治生活における「演出色」を薄め、中国という話題を党派、政府、議会の共通の「話の薬味」にすることをやめるためには、アメリカは政治的な変革が必要であり、強力な政府が引っ張る必要がある。この分野での仕事はアメリカ人自身が完成する必要がある。中国人は自らの道路、理論及び制度には自信を持っているが、現在も将来も、他国の内政に干渉する気持ちはなく、「輸出」することはなおさらあり得ない。
 新型大国関係を構築する上で如何なる挑戦に出会うとしても、中米が協力を強化することが終始大きな流れであり、相互を尊重し、分岐を巧みに処理し、発展を包容し、共同利益を開拓し、友好的紐帯をさらに緊密にすれば、中米のウィン・ウィンを実現することは完璧に可能である。

◯鐘声C

 中露の戦略的協力の意義は、具体的な国際問題の処理に当たって協力し合うことだけにあるのではなく、より重要なことは、ある国家(即ちアメリカ)が勝手気ままにプレーするルールを変えようとする衝動を阻止することにこそある。
 …1年来の入り組んで複雑な国際的な出来事を詳しく見るとき、大国関係の調整が国際的構造の変化に大きく影響するという大勢を改めて明確に見届けることになる。総じて言うならば、協力に力を得ることと牽制し競争することとが並行するというのが大国関係の主調である。  国際関係の理論における「永久不変の利益」というキーワードに挑戦しようとしないものがいるだろうか。しかし、何ごとにつけても敵か味方かの選択の判断におぼれているならば、大国間の明確な戦略的な位置づけは絵空事になるだろう。
 習近平総書記は、12月19日にロシアの訪問者と会見したときに、中国はロシアをもっとも重要な戦略的協力のパートナーと見ており、両国の全面的戦略協力パートナーシップをロシアとともに維持し、発展させることを希望していると明確に述べた…。(12月)20日にプーチンは、大統領就任後の最初の大型記者会見の席上、現在の中露関係は極めて高いレベルにあり、国際問題で協力し合っており、今後の各領域で協力を強化するべきだと強調した。
 中露関係の安定性の原因はどこから来るか。中露戦略協力は今日の世界にどのようなエネルギーを注入するだろうか。  安定性の基礎は戦略的な相互信頼であり、信頼感は現実の協力の支えが必要であり、発展戦略の相互の理解と包容とが必要でもある。中露両国が解決すべき任務は、不断に国力を発展させ、強国富民の目標を実現することだ。強国富民とは、強がり、覇を唱えるためではなく、より公正で合理的な国際秩序の中で生存し、発展していくためである。相手の発展戦略に対する正確な把握と高度の信任が欠けているならば、中露両国が相手の発展を自らのチャンスと見なすことはあり得ず、不断に実務的な協力レベルを高めることは不可能であり、複雑な国際環境の中で戦略協力を行うことはさらに不可能である。
 中露の戦略的協力の意義は、具体的な国際問題を処理する中で協調しあうことにあるだけでなく、もっと重要なことは、ある国家(即ちアメリカ)が勝手にプレーのルールを変えようとする衝動を阻止することにある。
 リビアの戦火が消えたと思ったら、シリアで戦争の硝煙が再び起こっており、人々の高い警戒を呼びおこすに十分なものがある。踵を接して起こる戦争は、国際構造の不安定性が既に相当深刻なレベルにまで落ち込んでいることを十分に示している。中露が提携して役割を発揮しなければ、外部の干渉によって主権国家の政権交代を実現することが新たなプレー・ルールになってしまう可能性がある。このような世界は危険であり、「ルール制定者」以外の大国もまた安全感が得られない。多くの年月が経った後、人々は2012年の中露の戦略協力の意義の所在をより明確に認識することになるだろう。
 中露戦略協力は国際関係の道義準則を擁護するものであり、平和的発展のための運行を守るプラス・エネルギーである。

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