朝鮮半島情勢と中国

2012.12.29

*韓国の大統領選の結果を受けて、中国のメディアも朝鮮問題の専門家の分析、発言を数多く紹介し、関心の高さをうかがわせました。中国側の一連の分析、発言から浮かび上がってきたのは、李明博政権下の中韓関係が良好からはほど遠かったとする失望感と朝鮮に対して強硬一点ばりだった親米・李明博政権に対する厳しい評価ということであり、中国語を能くする朴槿恵・新大統領の新しい対中及び対朝鮮政策に対する大きな期待ということです。そこには、過去4年間のオバマ・李明博のコンビによる対朝鮮対決政策がなんの成果も生みださなかったのみならず、「アジア回帰」戦略を掲げるオバマ・アメリカの軍事プレゼンス強化に利用されて米中関係そのものにも深刻な影響を与え、また、朝鮮のいっそう強硬な対決政策を産みだし、その核・ミサイル開発を加速させただけではないか、という中国側の総括が根底に横たわっています。中国としては、朝鮮半島情勢にかかわる関係国すべてで指導者が更新されたことを機に、6者協議再開によって朝鮮半島の非核化及びこの地域における持続的な平和と安定の実現につなげたいと明確な意思表明を行っています。
 もちろん、中国は朝鮮の核・ミサイル開発政策に対しては深刻な問題意識をもっていることをうかがわせる専門家の発言もあります。特に、日本の右傾化・軍事大国化が「北朝鮮脅威論」を隠れ蓑にして進められており、日本の核武装への引き金になりかねないことを中国が警戒していることは明らかです。むしろ、そういう問題意識・警戒感があるからこそ、中国としてはなんとしてでも朝鮮が核・ミサイルに固執しなくても安心できるような国際環境を作り出さなければならない、と考えているということなのです。
 以下においては、朝鮮の核開発にかかわる中国側言論をまず紹介し、その上で李明博政権に対する評価及び朴槿恵政権に対する期待・態度表明にかかわるいくつかの文章を紹介しようと思います(12月29日記)

<朝鮮の核・ミサイル開発問題>

 朝鮮の核問題に多少とも言及している文章として私の目にとまったのは、李国安「世界の核戦略の争いは相変わらず激烈」(12月20日付環球時報)でした。そこでは、世界的な核拡散傾向は引き続いて拡大しているという認識を示し、その具体例として、2012年6月に日本の国会が原子力基本法を改正したことと並んで、「朝鮮は既に基本的に第3回核実験を行うための関連する技術的準備を完成している」とごく淡々と述べています。筆者である李国安の紹介されている肩書は核戦略理論シニア研究家です。
つまり中国は、朝鮮は自らが対外政策上適当と判断する時点において第3回核実験をすると判断しているということでしょう。核弾頭の小型化を進める(そのことは弾道ミサイルに搭載可能とするという軍事的要請からは不可欠)ためには「早ければ早いほどいい」のでしょうが、対外政策上のカードが限られている朝鮮としては、核実験を何時のタイミングで行うかということを考えざるを得ないということだと思います。
 また12月21日付の新華社HPをソースとする復旦大学国際問題研究院常務副院長・沈丁立の文章は、朝鮮に関して次のような見解を示しています。私はこれまで、中国の対朝鮮政策におけるもっとも重要な眼目は朝鮮半島の非核化実現であり、その一環としての朝鮮の核放棄(韓国に対するアメリカの「核の傘」放棄との見合い)であると判断してきました。しかし、沈丁立の「現実主義に立てば、朝鮮の安定を維持することが他のあらゆることに優り、核の放棄も安定に従わなければならない」とする発言を見ると、朝鮮が危機に直面するときに真っ先に深刻な影響を受けるのは中国だという判断から、朝鮮の金正恩政権の安定確保が最優先事項であり、朝鮮の核放棄という問題も同政権の安定という要請に服従するという考え方が、少なくとも中国の一部の専門家の中にあることをうかがうことができます。
さらに沈丁立は、「中国も朝鮮もアメリカに対して安心できないが故に、中朝は、アメリカとの勝負において互いに戦略的に支え合っている」という発言までしています。このような発言は、私がこれまで見てきた中国専門家の発言の中でも際立っており、ここまで来ると、私もついていけない気がします。沈丁立の見解が中国の公式見解を反映しているとは思いませんが、このような考え方をも内包する中国の立場はますます米日韓とは折り合いがつけにくいものであることは確かでしょう。
 なお、沈丁立が最後に言及している領土問題に関する「朝鮮半島全体としても、我が方に対する領土的要求が増え、双方間の国家利益をめぐる競争は増える」という発言の趣旨は正直ハッキリしません。白頭山に関して中朝間に争いがあるとは聞き及んでいますし、東シナ海においても中韓間で主張の対立がある岩礁があるそうですが、全体像は承知していません。

 朝鮮が核兵器を発展させる目的は、根本的な軍事力を獲得することにより、如何なる敵対勢力による朝鮮に対する武装転覆を行おうとする試みをも徹底的に放棄させるということにある。
 制裁によって朝鮮政権が深刻な危機に直面するとすれば、その影響を真っ先に受けるのは中国だ。
 現実主義に立てば、朝鮮の安定を維持することが他のあらゆることに優り、核の放棄も安定に従わなければならない。中米は互いの行動を警戒し合っており、中国は、アメリカと経済協力するとともに、戦略上はアメリカを高度に警戒している。朝鮮は、小をもって大を獲得するやり方で朝鮮の特色を持った「大国」の地位を追求している。朝鮮は、戦略的核抑止を求め、人工衛星、ミサイル運搬手段を求めているが、これまたアメリカに対する警戒からである。中国も朝鮮もアメリカに対して安心できないが故に、中朝は、アメリカとの勝負において互いに戦略的に支え合っている。
 以上の背景のもとで、朝鮮は自らのはかりごと及び入念な計算に依拠して、国家的勝負において成功裏に一本の道を編み出してきた。さらに10年も発展すれば、朝鮮は次第に「普通」の国家に変わっていくだろう。それは、朝鮮の制度が変わるということではなく、朝鮮が自らを堅持することによって外部世界から受け入れられるということだ。朝鮮が受け入れられることにより、世界との接触はさらに容易になり、政策の選択肢も広がり、経済的苦境から抜け出すことができ、何らかの開放を実現する可能性もある。
 しかし、このような先行きは、中国には深刻な挑戦をもたらす可能性がある。開放後のヴェトナムやミヤンマーを見ると、両国は開放後中国とだけ協力するのではなく、外交的な選択も必然的に多元化する。それと同時に、朝鮮半島全体としても、我が方に対する領土的要求が増え、双方間の国家利益をめぐる競争は増えるだろう。となれば、10年後は、中朝関係は大きな問題に直面する可能性がある。

 12月25日付の雑誌『瞭望』(瞭望週刊)をソースとする中国新聞社HPは、「朝鮮、年末に再び人工衛星発射 半島内外情勢を動かす」と題する外交学院外交学系教授(氏名不明)の署名文章を掲載しました。この文章の中身は、上記の沈丁立文章ほど過激(?)ではなく、私がこれまで接してきた他の中国の専門家の見解ひいては中国の党・政府の立場に近いものです。即ち、中国としては朝鮮の今回の人工衛星打ち上げに納得しているわけではないが、この打ち上げが軍事目的よりも政治的目的に基づくものだという判断を基礎に、米日韓が過剰反応をしないことを促しています(さらに朝鮮にも外交的努力を呼びかけていることが目新しいといえば言えるでしょう)。

 …朝鮮が国家的な安全保障のために行った2度にわたる核実験により、朝鮮は非常に重要な戦略的抑止手段を獲得した。しかし朝鮮は、相手側と交渉を行うに際しての心理的な優勢の地位を獲得するためには、まだ十分な圧力を勝ち取るには至っていないと感じている。金正日は生前、宇宙技術を発展させ、宇宙を平和利用するプロセスを追求する中で、さらに大きな交渉上のカードを獲得することを決定した。…
 金正日死去後、朝鮮の新指導者は「遺訓」を堅持し、2012年に弾道ミサイル技術を内包する人工衛星を打ち上げた。朝鮮が再び人工衛星を打ち上げるという行動は朝鮮半島の内外情勢を動かし、半島の緊張は再び高まり、国際社会の大きな関心を集めた。朝鮮は独立主権国家として自らの意思に基づいて宇宙平和利用の目的を追求することができる。しかし、朝鮮は過去において弾道ミサイル発射及び核実験によって東北アジア地域の安全に緊張をもたらしたことにより、国連は前後併せて3つの決議を行い、朝鮮が弾道ミサイル技術を備える実験を停止することを要求している。明らかに、朝鮮の打ち上げ行為は安保理決議に違反するものであり、そのため中国は、国際社会が広く関心表明している下で衛星打ち上げを実施することに対して「遺憾を表明」した。…
 人工衛星打ち上げの技術と弾道ミサイル発射の技術は完全に共通するので、朝鮮が人工衛星を打ち上げることができるということは、朝鮮がその気になりさえすれば、ミサイル弾頭をロケットに装備して発射することもできるということを意味する。今回の衛星打ち上げのロケットの技術からすると、朝鮮は既に中距離弾道ミサイル発射能力を備えており、アメリカの海外軍事基地更には本土の一部も朝鮮の戦略兵器の到達範囲に入った可能性がある。…日本は、朝鮮の衛星打ち上げの機会を利用して、国内の改憲及び軍事力強化の動きを強めている。韓国は、「ナロ号ミサイル」の技術に問題があって発射実験が行えないでいるが、朝鮮の打ち上げという刺激の下、韓国は弾道ミサイル技術開発のスピードを速めるであろうから、半島の南北間の軍備競争が刺激されることになるだろう。
 朝鮮が衛星を打ち上げたことには強烈な政治目的があった。第一、2012年は朝鮮が公表した「強勢大国」の門を開ける第1年であり、朝鮮としては巨大な成果獲得をもって「強勢大国」に向かう道へのシンボルにする必要があった。第二、朝鮮の年若き指導者は金正日の「遺訓」を完成させる必要があったのであり、これは継承するべき政治遺産であった。第三、衛星打ち上げの成功は、現指導者(金正恩)が国家を統治する能力を持っていることを力強く証明するものである。これに加え、朝鮮は、今後米韓とやり合う上でのカードを増やすことにもなった。したがって、朝鮮の人工衛星打ち上げの政治的な意義は、安全保障面で相手側を抑止するという軍事的意味合いよりもはるかに大きいものがある。
 朝鮮が人工衛星を打ち上げた行動が政治目的に着眼したものである以上、関係国としては安全保障上過度に反応するべきではない。また朝鮮に対しては、一定の政治的カードを獲得したのであるから、さらに理性的に南北関係に対応し、アメリカとの対話を行うための条件を作り出し、6者協議再開のためにも積極的な努力を行ってほしい。このようになれば、東北アジア情勢には次第に緊張緩和を望むことができるようになるだろう。

<韓国大統領選挙結果:環球時報社評及び鐘声文章>

12月20日付の環球時報は、「東北アジアに悪い空気が充満しているとき 韓国に女性大統領登場」と題する社評を掲げました。李明博が政権にあったときにはおくびにも出さなかったのですが、いよいよ退陣が明らかになった(しかも朴槿恵自身が李明博を厳しく批判してきている)中で、これまで鬱積してきた李明博政権及び彼個人に対する批判が爆発した感すらあります。天安号沈没事件にしても延坪島砲撃事件にしても、中国は米日韓と一線を画す姿勢で臨んできたのですが、李明博はこの二つの事件によって「大損をした」とか、「(李明博の硬は)地縁政治環境及び韓国の戦略的能力についての理解不足に基づく軽率な選択だった」という歯に衣を着せぬ評価には、私も「ああ、中国はそこまで考えていたのか」という気持ちです。また、李明博政権下の中韓関係が極めてぎくしゃくしたものであったことも、私としては「ああ、ここまで悪かったのか」とこの社評で認識を新たにしました。そうであるからこそ、中国側の朴槿恵新政権に対する期待感はますます大きいものがあるということになるのでしょう。
さらにこの社評について注目されるのは、朝鮮は弱者であり、韓国の安全を脅かし得ないと断定し、そういう認識を韓国の対朝鮮政策の出発点におくべきだと、朴槿恵新大統領に対して明確に要求していることです。その明白な含意は、オバマ・李明博の対朝鮮敵視・対決政策からの決別を求めるということでしょう。

60歳の韓国セヌリ党女性候補朴槿恵が昨日勝利し、最初の韓国女性大統領になった。彼女は現代東北アジア地域で最初の女性国家指導者である。この地域においてますます悪い空気と相手を敵と見る視線とが満ちあふれているときだけに、我々は、女性大統領の登場がこの地域の雰囲気全体に特別なトーンの変化をもたらすことを希望する。
李明博が政権にあった過去5年において、韓国が演じたこの地域での役割は、太極文化を広げるということが少なくなり、「硬」の変化が多くなった。そして東北アジアにおいてもっとも不足していないのが硬なのだ。硬の結果はといえば、力ずくで張り合うということであり、韓国はそこから何も得られず、逆に「天安」号及び延坪島事件で「大損をした」のであって、事実が証明するように、李明博の硬と韓国の国家目標との間には内在的関係はなく、(李明博の硬は)地縁政治環境及び韓国の戦略的能力についての理解不足に基づく軽率な選択だった。 韓国はそもそもどれほどの「朝鮮からの脅威」に直面しているか。中国の台頭は韓国の利害関係にとって一体どういうことなのか。さらに、中米間及び東北アジアにおいて韓国は一体どのように自らの役割を確定するのか。こうした根本的な問題に関して、韓国の指導者は十分な冷静さを持つべきであり、印象とか受け売りの価値観の暗示だけに頼っているのではだめであり、ましてや偏狭なナショナリズムに迎合してはならない。
李明博大統領の期間、中韓の民間感情は数多くの挫折を味わったが、これはまことに遺憾なことである。韓国世論は中国の難しさを理解することを拒否し、半島での南北衝突においては中国が韓国の立場に立つことを強硬に要求した。このようなことは中国のような大国に対する理性的な態度ではない。
李明博がやり過ぎだったので、朴槿恵が普遍的期待に応えてある程度変更する可能性があり、もしそうであるとすれば歓迎に値することはもちろんである。しかし、こうしてもたらされる短期的な緩和は必ずしも最重要なことではなく、我々としては、朝鮮半島情勢の予期可能性並びに中韓関係が戦略面及び民間の雰囲気において二重に長期安定することをさらに期待している。
韓国は、朝鮮がカードを出すのが出し抜けだといつも不平に思っているが、平壌には韓米日からの脅威に対する根深い恐怖感があることを理解するべきだ。東北アジアの今は昔ではなく、朝鮮はとっくの昔に、かつての他をたじろがせる力量を持った国ではなくなっている。核実験をし、衛星を打ち上げたとは言え、朝鮮は今日の東北アジアにおいては紛れもない弱者なのだ。この判断こそが韓国が朝鮮のすべての行動を分析する際の出発点になるべきである。
中米は韓国の利益に影響を与える戦略的な力を持っている二つ(の国家である)が、米韓間に軍事同盟があることは、韓国が対中米関係において本当のバランスを取ることを極めて難しくしている。韓国は、中国人がこのことに対して抱いている気持ちを理解するべきであり、韓国が本当に韓中米パートナーシップを特別に重視するのであれば、口先だけで言うのではなく、実際の行動によって中国にもっと多くの善意を示すべきである。
しかし過去数年における韓国の姿勢は、中国の民衆の目には、中国が韓国に友好を求めているという印象を与えた。…韓国側の反応及び対処の仕方は常に中国側のそれよりも激しいものだった。中韓間には本来何も重大な利害の衝突はないのに、民間の摩擦が常に大仰に扱われてしまうことになった責任は、中国よりも韓国側の方にあることは確かだ。
中韓関係においては、あるいは中国が度量を大きくし更には一定の謙譲さを示すべきかもしれないし、実際においても中国は確かに韓国との間で双方の感情を害する可能性があることを避けてきている。しかし明らかに、こういうことを中韓関係における決まり切った潜在的ルールにするわけにはいかない。
韓国は、韓民族の総合力における最盛期にあるが、こういう時には冷静さを保つことも必要だ。大国が林立する東北アジアにおいて、韓国が発揮しうる役割には一定の境界があり、韓国社会としてはその担うべき役割に対して過激な期待を持つべきではない。
東北アジア地域における各国の社会が互いに不服を持ち、強さを争い勝利を好むという雰囲気は、少なくとも社会的な主流の流れとしては、相互尊重へと転化させて行くべきである。そういう相互尊重の基礎はみんなが国際政治のルールを理解することであり、大国は力を頼んで他者に圧力をかけてはいけないし、小国も実力及び原則を盾に逆らうだけであってはいけない。
朝鮮に関して言えば、韓国は安全である。中国に関して言えば、韓国は尊敬されているし、中国の台頭における「利益関係者」である。以上のことは、韓国の地縁環境に対する確乎不抜な認識となるべきである。朴槿恵新大統領がこの認識の変化及び確立のプロセス開始を推進することを希望する。そうすることにより、韓国は必ずや利益を受けるであろうし、地域情勢全体の情勢における思いがけない注目の的となることを促さないとも限らないだろう。

 12月21日付の人民日報は、鐘声「東北アジアの安定には新しい考え方が必要だ」を掲載しました。朴槿恵に対する極めて直接的かつ率直な提言を意図していることが、中国の党・政府の意思を代表する鐘声の文章だけに極めて注目されると思います。

 近年における東北アジア特に朝鮮半島情勢の発展変化のプロセスを客観的かつ冷静に見るとき、聡明なものであれば大勢を把握する点で共通の認識を達成できるであろう。
 対外関係に対処する面において、韓国の朴槿恵新大統領は挑戦に直面すると同時にチャンスに遭遇してもいる。大きなことをしようとするのであれば、そのカギは東北アジア情勢を安定させる新しい考え方を探し出す必要があるということだ。
 現在の韓国の外部環境は必ずしも安穏はない。朝韓関係は膠着状態に陥っており、韓日関係は領土問題と歴史問題の衝撃を受けており、東北アジア情勢は極めて敏感な時期におかれている。相対的に言えば、対中関係の発展状況は朴槿恵が受け継ぐ外交上のプラスの資産である。…韓国の新政府が「経済を振興」させ、新しい成長の動力を発掘しようとするとき、さらに中国との関係を緊密にすることは唯一無二の選択である。
 …しかし国家間の関係というのは単方向のものではあり得ず、関係が緊密になればなるほど、生まれてくる問題の確率も増えてくるものだ。…この数年、中韓両国民の幾つかの問題に対する見方は割れており、互いの好感度にも起伏がある。その中には具体的かつ偶発的な事件をきっかけとするものもあれば、東北アジア情勢と関係があるものもある。
 中韓両国の大衆の認知度が朝鮮半島情勢の変化の影響を極めて受けやすいということは目をそむけるに及ばない。換位思考(他者感覚)が極めて重要だ。中国は、韓国の大きな外交構想と独特な関心に対して理解することを望んでいる。韓国もまた、中国の周辺外交政策及び責任ある大国としての影響力を正確に把握する必要がある。朝鮮半島情勢に大きな波風が現れるたびに、中国の注いだプラスのエネルギーがカギとなる役割を果たしてきた。中国外交の建設性は平和的発展という理念の自然な露出であって、恩に感じたり徳としてもらったりする必要はないが、相応の理解と評価は必要だ。良いことをしながら恨まれてしまうというような「仕打ち」に対しては、心情として気持ちが良いはずがない。
 中韓関係について検討する場合、アメリカがアジア太平洋地域に力を入れているという背景においては、特にアメリカという要素を無視することはできない。中国には十分な戦略的なスペースと自信があるので、特定の周辺国家との関係をさらに密接なものとするために、他の大国と競争するということはあり得ない。しかし、必要なボトム・ラインというのはあるのであって、それは、周辺国家がある大国のご機嫌を取るために中国の利益を損なうことがあってはならないということだ。現在、韓国の新指導者が対中関係及び対米関係は同等に重要だと考えていると言われている。韓国が対中関係を重視するということは当然歓迎に値する。我々としても対応していきたいし、中韓関係が前向きに発展する流れを維持していくことを望んでいる。
 中国と韓国は東北アジア地域において影響力がある国家であり、両国関係の安定的発展は…この地域の平和、安定及び繁栄にとって有利である。中韓両国の協力スペースは大きく、共同で対処するべき現実的な課題をもっている。ここでは一例だけ挙げよう。日本は、軍国主義の侵略の歴史を反省することを拒否し、政治の右傾化が加速している。戦後の国際秩序を維持し、日本がなるべく速やかに「正常な国家」になれるようにするという問題で、中韓両国はやれることは少なくないし、またやるべきである。必要な宿題が完成していない間は、東北アジア地域の協力ひいては東アジアの協力プロセスをスピードをもって推進することは難しい。
 東北アジアの安全保障情勢を安定させる面では、中韓両国の考え方は時として同じではないが、共同の利益がもっとも重要である。置かれた状況が違えば感じることは違うものだし、視点が違えば見方も違ってくるものだ。…近年における東北アジア特に朝鮮半島情勢の発展変化のプロセスを客観的かつ冷静に見るとき、聡明なものであれば大勢を把握する点で共通の認識を達成できるであろう。中国は、政治的協議を通じて問題を解決することを支持し、情勢を緊張に導く可能性がある如何なる行動にも反対であり、武力衝突が起きることには断固反対する。この原則的な立場は高度に責任を負うものであり、理性に溢れたものだ。道理は至極簡単であり、朝鮮半島は悪循環には堪えられないのだ…。
朴槿恵は、選挙期間中に、実質的な対話を通じて朝鮮半島の軍事対峙を緩和することを望んでおり、6者協議を再起動することを希望すると述べたことが留意される。このような態度表明は歓迎するべきである。東北アジア特に朝鮮半島の安全保障情勢を安定させるためには、確かに新しい考え方が必要だ。

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