朝鮮の人工衛星打ち上げ発表と中国

2012.12.06

*朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の宇宙空間技術委員会スポークスマンは12月1日、朝鮮が「金正日総書記の遺訓を体して」12月10日から22日までの間に人工衛星(「光明星3」号2号機衛星)を打ち上げることを発表しました。この発表に対して日米韓が激しい反応を示していることは当然ですが、ロシア外務省も3日、朝鮮の発表に遺憾の意を表し、朝鮮がこの計画を考え直すことを「強烈に促す」立場を表明したことが伝えられました。ロシア外務省はまた、朝鮮が国連の加盟国として国連安保理の関連決議を遵守する義務があり、人工衛星打ち上げ計画は関連決議に違反するという立場をも明らかにしました。
 このことに関して国際的に注目されているのが中国の立場です。2009年及び本年4月の朝鮮の人工衛星打ち上げに際しての中国の立場については、このコラム(2012年)で紹介しました(「中国の対朝鮮半島政策 -2009年当時の事件の推移と中国側対応-」及び「朝鮮の人工衛星打ち上げと中国のスタンス」)。朝鮮の打ち上げ後の事態の展開については改めて取り上げるつもりですが、それまでの途中経過として、中朝間のやりとり及び中国外交部筋の発言並びに中国メディアに掲載された三つの見解・分析を紹介しておこうと思います(12月6日記)。

<中朝間のやりとり及び中国外交部の立場表明>

 朝鮮が公式に発表する前から、朝鮮が人工衛星を打ち上げる徴候があることに関して、アメリカなどから衛星写真の分析を基にして様々な観測が流されていました。それらを受けて中国外交部は11月27日、朝鮮が4月に続いて再度人工衛星を打ち上げる可能性に関して、「朝鮮半島の平和と安定を維持することは関係国共通の責任であり、その共通の利益に合致する」という意思表示をしていました。
 注目されるのは、12月1日の朝鮮の発表に先立って中国共産党代表団が訪朝し、11月29日に朝鮮労働党代表団と会談を行い、翌30日には金正恩第1書記が中国共産党代表団と会見したことです(中国共産党代表団は習近平総書記の金正恩第1書記宛の親書を伝えました)。両党会談及び金正恩の会見は、習近平体制の成立を受けた中朝両国間の最初の公式の交流・接触という意味を持つものであり、習近平指導部が朝鮮との関係を重視していることを表したものとして、それ自体が重要な意味をもつものです。
人工衛星打ち上げ問題に即して言いますと、両党の交流を伝えた朝鮮中央通信の報道では、人工衛星打ち上げ問題については触れていません。しかし、その後の中国外交部スポークスマンの発言から、この問題が中朝間で話し合われたこと、朝鮮の上記発表はこの中朝間のやりとりを経た上でのものであることが明らかになりました。
 12月2日、中国外交部の秦剛スポークスマンは、「中国側は、朝鮮側が人工衛星を打ち上げると発表したことに関心を表明するとともに、関係国の反応にも留意している。朝鮮は宇宙を平和利用する権利を有するが、この権利は安保理の関連決議等の制約を受ける。関係国が半島の平和と安定に有利なことを行い、冷静に対処し、情勢が段階的にエスカレートすることを避けるように希望する」と述べました。この発言内容は、人工衛星打ち上げが安保理決議に違反すると断定したロシア外務省の見解と比較しても、明らかに朝鮮の立場に配慮したものとなっています。ただし、「この権利は安保理の関連決議等の制約を受ける」と指摘したことはこれまでにないものでした。
 例えば、朝鮮の打ち上げを前にした本年4月10日の外交部スポークスマンの発言は、「関係する国際法を確実に遵守…することを希望する」という抽象的な表現に留めており、安保理決議の朝鮮に対する法的拘束力という点には踏み込んでいませんでした。もちろん、「この権利は安保理の関連決議等の制約を受ける」という表現も実に曖昧ですが、関連する安保理決議に加わった中国としては一歩踏み込んだものであることも否めない事実です。
 12月4日には洪磊スポークスマンがさらに詳細に、「中国側は、朝鮮側が半島の平和と安定という大局から出発して慎重に事を行うことを希望する」、「朝鮮が衛星を打ち上げる予定であることに関して、中国側は朝鮮側と何度も意見を交換してきた。朝鮮は、主権国家として宇宙を平和利用する権利を有している。しかし、朝鮮半島の情勢及び安保理の関連決議の制約などの要素を考慮して、中国側としては、朝鮮側が半島の平和と安定という大局から出発して、慎重に事を行うことを希望する。それと同時に、中国側は6者協議の他の国々とも密接に意思疎通し、関係国が長期的立場から冷静に対処し、情勢が段階的にエスカレートする行動を取ることを避けるように希望する」、「中国側は、引き続き関係国と密接に意思疎通し、当面の事態を適切に処理し、半島及び地域の平和と安定を維持するために積極的に努力するつもりである」と述べました。
「朝鮮が衛星を打ち上げる予定であることに関して、中国側は朝鮮側と何度も意見を交換してきた」という発言からは、上記中国共産党代表団の訪朝においても、中朝間でこの問題に関する意見交換が行われたことが容易に読み取れます。それだけではなく、「何度も意見を交換してきた」という発言からは、朝鮮の今回の打ち上げ計画に関して中朝間で密度の濃い意見交換が行われてきたことを窺わせます。その上でなお朝鮮が打ち上げ発表したのですから、中国としては、打ち上げには賛成できないとしても、打ち上げを所与の前提として事後処理に万全を期することに主眼を置くしかないという立場に立たされていることも明らかです。中国としては、2009年の事態(朝鮮の打ち上げに対して安保理が議長声明を出し、それに反発した朝鮮が核実験を行った)の再演をなんとしてでも回避するということでしょう。

<中国メディアに掲載された見解・分析>

 実は朝鮮の今回の人工衛星打ち上げ発表に先立って、韓国が同国初の人工衛星打ち上げ計画を進めていました。韓国の場合、2009年8月及び2010年6月にも打ち上げを試みて失敗しており、今回(2012年10月~11月)は3度目の正直というところでした。しかし、今回の打ち上げ計画もトラブル続きで何度も延期された揚げ句、11月29日の打ち上げが取り消され、早くても2013年まで延期という、政権末期の李明博大統領にとってはなんともしまらない結果になっていたのです。
 この事態を受けて11月3日付の環球時報に掲載された王林昌(アジア太平洋学会朝鮮半島研究会委員)「韓国のロケット打ち上げは朝鮮を刺激するか」は、次のように述べました。

 「(韓国の無期延期と朝鮮の近い将来での打ち上げ予測を紹介した上で)この二つの事柄を関連づけるならば、朝鮮と韓国が宇宙空間において新たな競争を行っていることは、炯眼の人には明らかだろう。この競争は差し当たり平和的なものではなく、ゼロサム的性格を帯びたものである。
 現在、朝鮮半島における南北対峙において、朝韓双方は、「敵を化して友と為す」状態から「敵と我を明確に分ける」状況に進んでおり、ロケットの運搬技術と運搬能力の競争は朝韓の対決及び心理戦における重要な分野になっている。韓国は、アメリカによる制約によって射程距離が800キロ以上の弾道ミサイルを研究開発することは困難だ。しかしながら、(打ち上げ用のロケットである)「ナロ」号の研究開発を通じてロケット技術を進展させ、弾道ミサイル技術の向上を推進するという意図が排除されるということではない。このように見れば、朝韓間の宇宙空間における競争は半島及び地域の安全と安定にとって憂慮するべき原因となる可能性がある。このことは東北アジア地域の国家及び人民が見届けたくないことだ。
一説によれば、朝鮮は既に核兵器を保有しており、韓国国防相は、朝鮮が本年4月に打ち上げることになっているロケットが成功すれば、「万里を飛んでアメリカ本土をカバーできる」と言っていた。こうなるとアメリカに対する抑止になり、韓国に対してはさらに言うまでもないことになる。このことは間違いなく朝鮮のロケット打ち上げに対する韓国の焦りを増すことになっている。
朝鮮と韓国の第3回打ち上げの時間の間隔を見ればすぐ明らかなように、ロケット打ち上げ成功に対する韓国の期待は朝鮮と比較してさらに切なるものがある。というのは、朝鮮はほぼ3年ごとに打ち上げているのに対して、韓国の「ナロ」号は何度も打ち上げ取り消しを経ているのみならず、2009年及び2010年の2度打ち上げ失敗の挫折を経ているからだ。「ナロ」号の今回の打ち上げ取り消しは、前回の打ち上げ失敗から時を隔てることわずか2年半である。
 宇宙空間の争いはいかなる国家にとっても巨大な誘惑である。しかし、すべての国家が宇宙空間のもたらす「配当」に等しく与ることができるわけではない。技術能力と経済的実力を備えた国家のみが宇宙で「他に先んじる」ことができるのだ。そこで重視されるのは宇宙空間がもたらす経済的利益だけではなく、政治的影響力及び軍事的意義ということがある。後者の重要性は時として経済的価値をはるかに上廻る。いずれの国家も平和的に宇宙開発を行う権利を持っているが、朝鮮は核兵器を持っているために、朝鮮の(宇宙開発の権利の)主張は、その軍事的な潜在的意図が米日韓によって見透かされ、「国際社会」の受け入れるところとなることが難しい。しかし、韓国が運搬ロケットを打ち上げることは、「国際社会」がその経済的及び政治的影響を重視するために、その潜在的な軍事戦略上の目的は意識的無意識的に「看過」される。
 我々は韓国が運搬ロケット打ち上げに失敗したからといって「他人の不幸を喜ぶ」必要もなければ、朝鮮の「衛星」打ち上げを過度に譴責するという不公平なことをする必要もない。能力さえあれば、そして平和及び経済的発展という目的に用いられさえするのであれば、誰が打ち上げるにしても許されるべきだし、激励すら受けるべきだ。朝韓関係が格別に特殊であるために、「敵と我を明確に分ける」という結果が双方をして少なからぬ苦しみを味わわさせる結果になっている。友好的で敵対的ではない朝韓双方、安定して動乱しない朝鮮半島、平和にして戦乱に見舞われない東北アジアは、アジア及び世界にとって非常に重要である。…新しい一年に、朝韓双方が協力共栄の新時代をともに担うことを希望したいものだ。」(強調は浅井)

 強調部分を見ていただきたいのですが、私は王林昌の指摘は至極常識的でまっとうだと思います。また、韓国だけでなく朝鮮も宇宙を平和的に利用する正当な権利を有しているという認識は、中国国内ではほぼ常識的に共有されているのだと思います。さらにいくつかの文章を紹介しておきたいと思います。

○張璉瑰(朝鮮問題専門家、中央党校国際戦略研究所教授)インタビュー発言(12月4日付の人民日報HPをソースとする記事)

(人工衛星打ち上げの意味)
 まず明らかなことは、衛星にせよミサイルにせよ、これは朝鮮の既定の政策であるということだ。これまでにも朝鮮は多くの機会に、如何なる状況の下であれ、核兵器を放棄しないとする声明を発表してきた。金正日が死去して以後、朝鮮高官の談話においても権威ある機関が発表した文章においても、必ず金正日の遺志を継承するということが繰り返し強調されてきた。昨年(2011年)12月28日の労働新聞は社説を発表し、核兵器の開発は金正日の三大革命遺産の一つであることを提起した。したがってこの角度から言えば、朝鮮が引き続き「核抑止力」を推進することは既定の政策であり、如何なる状況の下でも変わることはあり得ない。
 とすれば、衛星打ち上げは朝鮮の核計画全体における有機的な構成要素であり、継続して進めていくべきものなのだ。朝鮮はこれまでに3度衛星の打ち上げを試みたが、すべて理想的ではなかった。…朝鮮は、2度の核実験を経て核兵器の分野では長足の進歩を獲得しており、アメリカの専門家の間では核兵器の小型化も既に成し遂げたと見るものもいる。では、核兵器を作り上げた後はどのようにして発射するのか。これが運搬手段の問題だ。朝鮮にとってこれがネックだ。朝鮮は何度も長距離ミサイルを試射しているが、すべて失敗している。3回の衛星打ち上げもすべて失敗している。
全体的な核戦略の一部分として、一方で核実験を推進し、他方面では衛星打ち上げの方式で長距離ミサイルの技術を高めるということは朝鮮の既定方針だ。この点を確認した後は、朝鮮は適当な時期を選んで必ず衛星打ち上げを行うという結論が得られる。
(今回の打ち上げ時期の選択の含意)
 では如何なる時に打ち上げを行うのか。それは二つの要素で決定されるのであり、一つは技術的な準備状況ということだ。朝鮮は一回の打ち上げの失敗ごとに経験を総括し、技術問題を解決してきた。本年4月の打ち上げ失敗後に、朝鮮は不断に経験を総括し、技術方面で一定の成果を収めた可能性がある。技術的に成熟したと言うべきだろう。
 もう一つの要素は、適当な国際環境があるということだ。というのは、打ち上げということは極めて大きな行動であるからだ。非常によい時期を選ばないとすれば、アメリカなどの国際社会その他の主要国の激怒を招く可能性があり、そうなればアメリカ及び国連の強烈な反応を引き起こし、朝鮮に対して制裁を行うということになりうる。
 現在は技術的な準備状況が基本的に成熟し、時間的にもふさわしい国際環境を備えていると朝鮮は認識している。つまり現在は、オバマは再選を果たしたが、アメリカ政府は新旧交代に面しており、国防長官及び国務長官の交代が含まれる。この時期は、オバマ政権として重大問題で政策決定をもっとも行いにくい時期だ。日本も韓国も選挙に忙しく、つまり周辺諸国は内政に忙しくて重大問題では政策決定が行いにくいのであり、朝鮮にとっては非常によい時期ということになる。朝鮮がこの時期を選んだのは韓国の選挙に「干渉」するためだと見るものもいるが、私はそれが主要な要因だとは思わない。

○12月3日付環球時報社評「朝鮮の衛星打ち上げに対する反応は周辺の刀を研ぐ音」

 韓国が運搬ロケット「ナロ」号打ち上げを故障のために取り消しを余儀なくされたわずか2日後に、朝鮮当局は…今月10日から22日までの間に「実用衛星」を打ち上げると発表し、米日韓はすばやく反応し、特に日本の反応がもっとも激しく、朝鮮の衛星を撃墜するための配置を公然と行っている。
 中国は関係国の激烈な態度に直面して、半島の安定を維持するために難しいバランスを図っている。中国は一方では朝鮮が「宇宙を平和利用する権利がある」と公然と表明するとともに、安保理の関連決議による朝鮮に対する「制約」をも強調して、情勢が段階的にエスカレートすることを避けるように呼びかけている。しかしながら、中国の勧告に耳を傾けるものはいない。
 東北アジア情勢では朝鮮の「衛星打ち上げ」の失敗に次第に慣れてきており、また、日本は朝鮮の衛星を打ち落とすと公言しているが、一度として打ってもいないし打ち落とすということもなく、韓国の戦略ロケット技術も何と言うこともない。仮に今回朝鮮の衛星が本当に指導者をたたえる歌を載せて宇宙に送りあげられるならば、あるいは日本のミサイル防衛システムが朝鮮の衛星を打ち落とすとでもなれば、半島には新たな激動が出現するだろう。
 中国が朝韓日の三者の火遊びに干渉するカードは限られており、東北アジアの地政学が相変わらず冷戦で凝り固まっているときに、一所懸命に刀を研いでいるものがいる。朝鮮は常に「挑発者」と定義されているが、朝鮮がこの地域でいちばん弱いことは火を見るより明らかであり、日韓は常に朝鮮の進攻を受けるとしてびくびくしているようであり、彼らとしては本気なのかもしれないが、その本気というのも実はそのフリをしているだけではないのかという疑いを抱かざるを得ない。
 朝鮮が日韓に対して進攻を発動すれば、壊滅的な報復を受けることを意味しており、このようなことをしでかすということは常識に反しているし、ヒステリーである。日韓は何時でも朝鮮の政権は「何をしでかすか分からない」とか「理性的ではなくて狂気である」と言いふらしているが、現実はといえば、半島の平和は60年近く維持されており、現実主義的戦略の平壌に対する影響力は次第に増しており、その逆ではない。
 外から見ると、日本及び韓国は朝鮮の脅威を誇大視することによって自らの軍事力を伸ばそうとし、あるいはより激しい政策を選択するために世論のカモフラージュを行おうとしているのではないかという強烈な疑問がある。特に日本に関しては、日増しに動きを強めている右傾勢力に関して言えば、真の敵は唯一つであり、それは自国の平和憲法なのだ。…日本は、朝鮮半島情勢をして自らを縛る縄を一気に断ち切る刀としたいと考えている。
 朝韓日が「演技」をしているだけならば何をか言わんやだ。しかし問題は、ここにあるのは脚本も監督もない舞台であるということであり、すべての出演者が勝手に振るまい、したがって簡単に火花を散らすということであり、ニセの劇が本物になるということなのだ。…
 各国の間で和を勧めるというのが、既に朝鮮半島外交で中国が別格の存在であることを保つスタイルとなっている。あまり役には立たないとは言え、中国としては勧めるべき時には勧めなければならないし、重要なことは、各方面の間の橋渡しにおいて実質的に滞りがないことを中国が保つということであり、一方によって誇張された「ニセの動き」及びこれによって生まれる誤った判断によって情勢が動かされないようにすることである。
 このほか、半島情勢が方向性なく変化が多いということは中米間の戦略的な相互疑惑を激化してきたが、その大きな原因はアメリカのアジア回帰の圧力と半島の緊張とが重なり合わさることにあった。仮に中米双方が今後努力をすることができれば、半島情勢をして両大国の戦略的な交流及び協力を促進せしめ、東北アジア全体に新たな曙光をもたらす可能性もある。
アメリカは、東北アジア及びアジアのその他の地域におけるその行動が、中米の長期的な戦略情勢からすると、ほとんどは役に立たないことを理解するべきだ。中米関係における決定的な要素は何と言っても両国の実力である。東北アジアの国々がアメリカとより多く会合を開き、文件を作るのか、それとも中国との間でそうなのか、ということは関係がなく、歴史はこのような細かいことで作られるのではないのだ。

◯12月5日付新華社HPをソースとする高浩栄(新華社世界問題研究センター研究員)文章

 …朝鮮からすれば、金正日死去一周年を記念する最善の方法は生前の「遺訓」を貫徹すること以外にない。…金正日の「遺訓」は各方面にわたっているが、その中でももっとも重要なのは「強盛国家を建設すること」である。早くも1998年に朝鮮は2012年に「強盛大国の門を開く」という目標を提起し、その後「強盛大国」を「強盛国家」に改めたが、その基本には変化がない。これが金正日死去前に彼が不断に強調した任務である。そのために、金正日は年老い体が衰えたのを顧みず、不断に全国各地を視察し、民心を鼓舞し、闘志を励まし、ついに外地で視察中に心臓病で逝去したのであり、速やかに強盛国家を建設したいという彼の心情の切なることを見ることができる。
 2012年は間もなく過ぎようとしている。この一年間、朝鮮には少なからぬ新しい事象が現れ、特に平壌の様相には大きな変化が生まれた…。そうであるとは言っても、これだと言える、世界を驚かせることができる成果によって‥「主体的な新百年」の意義を備える局面を切り拓く年にする必要がある。…
 金正恩が昨年末に権力を継承して以来、「将軍(金正日)の遺訓を断固貫徹する」ことは朝鮮のすべての仕事の綱領及び指針となった。これこそは、朝鮮の第三代指導者となった金正恩の立脚点なのだ。そのため、朝鮮は国際社会の反対を顧みず4月に衛星を打ち上げたのであり、失敗した後再び…同じ年に第2回目の打ち上げを行うことを堅持しているのだ。これは朝鮮の国内政治体制によって決められていることだ。朝鮮宇宙空間技術委員会スポークスマンが1日に衛星打ち上げを宣告したとき、最初の言葉が金正日の「遺訓」に従うためだとしたことの原因はここにある。
 朝鮮は国際社会の反対を考慮しなかったとするのも的を射ていない。このような重大な政策決定を行う前には、朝鮮は周到な計算をしたことは明らかで、次のようにプロとコンを立ち入って計算したのだ。
 米韓日は反対するに決まっている。しかし、仮に衛星を打ち上げないとしても、彼らはとにかく朝鮮の「挑発」を言いつのっているわけで、もう一つ「挑発」の材料を増やしたとしてもどうってことはなく、天が崩落してくるはずはない。朝鮮は既に3回衛星を打ち上げ、国連安保理は毎回非難と制裁を行ったが、朝鮮の決心と信念を動揺させることはできなかったし、朝鮮の根本を傷つけることもできなかった。朝鮮からすれば、アメリカの封鎖と制裁の下で半世紀以上暮らしてきたわけで、これらの制裁と封鎖がさらに長い時間続くとしても意に介さない。
 日本という国家が「迎撃」するといった類の言葉を弄しても空威張りに過ぎないし、自分の軍拡のための口実を探しているに過ぎないのであり、衛星打ち上げという口実がないにしても、日本は同じようにほかの口実を探して軍国主義復活の活動を進めるだろう。…
 韓国の強烈な反応も朝鮮にとってはとっくの昔に想定内のことだ。金正日逝去後、韓国が相変わらず対決政策を堅持してきたことに対して、朝鮮は「李明博逆賊集団とは二度と付き合わない」と宣言している。朝鮮からすれば、衛星打ち上げが韓国での大統領選挙に影響するかどうかということはあまり考慮の対象ではない。韓国の朝野の大統領候補は既にこもごも自らの対朝鮮政策を発表しているし、誰が大統領になるにしても、対朝鮮政策は調整されることになる。また、韓国の新大統領が登板するのは来年の2月である。そのときには衛星打ち上げは過去の問題となっており、朝鮮としては「その言を聞き、その行いを観」た上で対策を決定するということでも遅すぎることはない。
 中ロの反応に関しても、朝鮮の決定を変更させることは難しい。朝鮮から見れば、中ロは衛星打ち上げに賛成ではないが、半島の平和と安定を維持するという大局の方が重要だ。朝鮮からすればそれで十分だ。朝鮮は中ロと友好関係を維持しているが、国内政治にかかわる問題では軽々に譲歩することはあり得ない。このことは過去の事実が証明していることだ。ましてや、衛星打ち上げは主権国家の権利であり、安保理決議や安保理議長声明の類は、朝鮮の目からすれば一枚のくず紙にしか過ぎない。
 国外の反応がさらに強烈なものであっても、国内政治上の必要にはかなわない。朝鮮の現在の国内的な政治的要求は、目を奪う「偉大な成果」を必要としており、「新たな主体百年」のために光を添えることを必要としているのであり、人心を凝集させ、新指導者に対する尊敬と忠誠を固めることを必要としているのであり、民衆を鼓舞し、経済建設推進のためにはっぱをかけることを必要としているのであり、国際社会において独自の道を切り開き、「独立自主」「事大主義反対」の態度を表すことを必要としているのだ。
 以上が、朝鮮が何故に衛星打ち上げを堅持しているのかの理由である。国際社会の反対、非難、勧告はすべて、朝鮮のひるまない立場を改めさせることは難しいのだ。

RSS