防衛白書 -中国側の受けとめ-

2012.08.02

*7月31日に発表された今年の防衛白書について、当然のことですが、中国側は高い関心を示しています。その日のうちに環球時報(新華社HPが載せたタイトルは「日本の防衛白書 中国を念入りに描く 引き続き中国の軍事費増大を大げさに表現」 以下「文章①」)とチャイナネット(タイトル「東アジアで「安全感」がない国は日本だけでない」 このコラムの最後で紹介します。)が記事を出したところにその関心の高さが伺えますし、翌8月1日になりますと、新華社(「日本の防衛白書 冷戦思考を反映」 以下「文章②」))、環球時報HP(「日本の防衛白書で中国が主役に 中国が「三つの戦い」重視、とする」)、新華社(「中韓が日本の防衛白書を痛烈に批判 韓国、日本大使を急遽呼び出し」)、南方日報(「専門家 日本は中国を仮想敵とみなして多くの国が共同で中国を抑えることをけしかける、とする」 以下「文章③」)、人民日報HP(「日本に対する辛口批評:今年の防衛白書は対中「挑戦状」」 以下「文章④))、中国新聞社HP(「劉江永:防衛白書は中国を主要な対象としている」 以下「文章⑤」))、新民晩報(「十分な冷戦思考の反映」)などが出ているのをネット検索で拾い出しました。
 日本側の受けとめ方の指標的なものとして、日本の主要紙及び地方紙で防衛白書を取り上げた社説をネット検索してみたのですが、読売及び産経が取り上げているのは当たり前と言えば当たり前なのですが、毎日が例によって意味不明な内容の社説を出しているのに対し、朝日及び日経は8月2日現在では取り上げていないようです。地方紙については、全紙を当たったわけではありませんが、中日・東京のほかに、信濃毎日、京都、中国、南日本が取り上げている程度で、北海道及び沖縄2紙が取り上げていないらしい(8月1日現在))のは意外でした。南日本新聞社説が中国に対して警戒的な論調である(読売、産経ほどではないにしても)のを除けば、地方紙社説の論調はおおむね防衛白書の内容に対して批判的です。しかし、中国側の深刻な受け止めと比較すると、日本の各紙の受けとめにおける危機感の欠落は際立った対照をなしており、私は、この日中間の落差及び日本側の「脳天気」ぶりに危機感を覚えました。
 私自身は、野田・民主党政権の動向、日米軍事同盟の対中シフトの強まり、日本国内における天動説的ナショナリズムの高まり(そのもっとも危険な表れは各地における育鵬社版歴史教科書の採択)等々を見る時、中国側の深刻な受け止めには十分な根拠があると思います。私たちに今もっとも必要なのは他者感覚であり、そういう意味からも中国側の視点をもっと真剣に見つめることが求められると思います(8月2日記)。

<中国側指摘・論点>

◯防衛白書の各国情勢に関する記述の中で、中国にかかわる箇所がもっとも多く、記している「罪状」としては、中国の軍事費が24年で30倍になったこと、海軍艦艇の太平洋進出の「常態化」、中国の軍事費の不透明さが国際社会を不安にさせている、などがある。日本問題専門家・高洪は、「日本が中国の脅威を誇張することには変わりがなく、相変わらず自分が勝手に想像するアジアの濁り水の中に国際世論を巻き込もうとしているのだ」としているが、領土紛争に関する喧噪がますます高まる中で、日本の強硬さに変化が起きつつあることを懸念するメディアも現れている。韓国の世界日報は、第二次大戦後に根っこから引き抜かれたはずの日本軍国主義の亡霊が最近また復活しようとしているようだ、と述べている。(文章①)
◯482ページの防衛白書において、26-46ページはすべて中国に関する内容であり、アメリカが7ページ、隣国である韓国及び朝鮮があわせて10ページであるのに対して一番多い。また、防衛白書ではじめて中国の軍事問題を詳しく述べた2006年の時には、中国に関する記述はわずか10ページだった。(文章①)
◯中国の党と軍隊の関係に関する推測部分は、今回の防衛白書における最新の変化だ。白書がはじめて危機管理の課題としたことは、欧米記者の高い関心を引き起こした。(文章①)
◯近年の防衛白書を通観すると、その裏に反映しているのは冷戦思考、右傾思想及び「中国恐怖」心理だ。近年になって、一握りの右翼分子が民族主義を鼓吹し、平和憲法の「永久不再戦」条項を亡きものにしようと図っており、このような極端な右翼の思潮は十分な警戒が必要だ。中国などの新興経済が不断に勃興し、発展する勢いは阻止することができない。日本としては、よく時世を見て、気持ちを整え、中国の勃興を正確に見つめ、それが「チャンス」であって「脅威」ではないと見るべきだ。苦心して緊張した情勢を作り出すことは極めて危険であり、冷戦思考はダメだ。無責任な言論及び好意に基づかない推測は、地域の平和と安定には何の役にも立たない。(文章②)
◯中華日本学会常務理事で復旦大学教授の馮瑋は、日本が軍備強化する兆しは今や明らかであり、漸進方式で平和憲法の枠組みを突破しようとしており、日米両国が推進しようとしている「機動的防衛協力」には高度の警戒が必要だ、として次のように述べた。「機動的防衛協力」は大いに警戒するべき提起の仕方だ。なぜならば、日本が当初強調していたのは「専守防衛」だったのが、「機動的防衛力」になったのであり、アメリカが12機のオスプレイ及びステルスF-22 戦闘機を沖縄に配備するのは、いわゆる「機動的防衛協力」にふさわしい注釈を行ったものだからだ。日米の「機動的防衛協力」は主に中国に対するものだ。(文章③)

(浅井注)私は、今回の防衛白書が民主党政権下で打ち出された「機動的防衛力」が今や日米軍事協力に拡大したこと(その一つの中身がオスプレイ配備)を重視しているのですが、中国側論調の中でこの点を指摘したのは、管見の限りでは、この馮瑋発言だけであることに、むしろ奇異な感じを受けています。

◯馮瑋は、今年の防衛白書には3点注目すべき変化があるとした。即ち、第一、中国は、「世論戦」、「心理戦」及び「法律戦」の「三つの戦い(「三戦」)」を重視しているとしていること、第二、周辺隣国に対して「全面開戦」しており、朝鮮の脅威を引き続き強調するだけでなく、韓国と紛争中の独島(日本名は竹島)を防衛大綱に収め、さらに、ロシアが日本周辺での活動範囲を不断に拡大していると公言して、日本側の出動を頻繁にする傾向があること、第三、朝鮮の金正恩新体制に言及して、すでに軌道に乗ったと見なしうるとしたことである。(文章③)
◯馮瑋はまた、1970年の防衛白書以来、日本が最初に設定した最大の仮想敵はソ連だったが、ソ連解体後には中国を最大の仮想敵とするようになったとし、中国の動向は地域の懸念事項だとする指摘は以前にはなかった(今回が初めて)だが、南シナ海諸国に共同して中国を抑えようとけしかける発想自体は特に新しいものではないとも指摘した。(文章③)
◯馮瑋はまた、2010年9月7日の「漁船衝突事件」以後、世論調査で日米同盟強化を支持する世論は70%以上になっていること、その後中国が釣魚島問題で日増しに強い態度となり、特に1月19日の人民日報がはじめて、釣魚島の主権は中国の核心的利益としてから、ますます日本の民衆の懸念を引き起こした、とも述べた。(文章③)

(浅井注)文章③のこのくだりは、馮瑋の発言を淡々と紹介する形をとっていますが、このくだりがこのインタビュー記事の最後に来ていることとも合わせ、私には、言外の含意として、中国側にも考えるべき問題があることを示唆しているように受けとめられました。

◯民主党政権の防衛政策の根本は何かと問いつめるならば、本年の防衛白書は火薬の臭いがさらに増しており、さらに明確な答えとは「中国を押さえ込む」ということだ。今年の白書は中国の内政に直接言及し、しかも日本の視点で描いている。日経新聞は、白書がこのように中国内政に言及するのは実に異例だと見なしている。このような「異例」さの背景から明らかなのは、日本政府が中国の軍事的発展を制約しようとするだけでなく、中国内政を制約しようとする一種の趨勢的な構想があるということだ。即ち、中国の内政に干渉するということが日本の真の狙いだ。(文章④)
◯過去の年と同じなのは、白書が中国の軍事費増大、軍事的現代化及び中国の軍隊の東シナ海、南シナ海での活動が日増しに頻繁となっていること、「透明度が足りない」という相変わらずの言説を繰り返した上で、したがってこれらのことは、日本を含む国際社会の憂慮を招いており、今後の「危機管理上の課題」となっているとしている点だ。ここで重視するべきは、一方で、日本自身の憂慮と地域及び国際社会のそれとを無理矢理一緒にして、中国に対する防備の意識を面として拡大しようとしていること、他方では、この問題を「危機管理」の角度で位置づけていることだ。防衛省の人間はかつて記者(人民日報海外版編集長の蒋豊)に対し、「危機管理」とは実際上は「戦争の第一歩」だ述べたことがある。このように見ると、民主党政権は対中戦争の準備をしているのであり、少なくとも「備え」あれば「憂いなし」ということなのだ。(文章④)
◯さらに注目すべきは、一昨年の白書では「動的防衛力」の項目を新設したのだが、本年の白書ではこの項目の下に新たに解説を付し、その中で、今後は米軍との共同訓練を拡大すること、米軍と軍事施設を共同使用することをさらに検討すること、情報共有、警戒監視、偵察活動拡大の方面で協力を進めることを述べていることだ。こからは、今年の白書が在日米軍の役割をさらに強調し、さらに具体化させて、日米軍事同盟を新たな変化に適応させようとしていることが読み取れる。(文章④)
○本年の白書は、これまでにはなかったことだが、「沖縄の地政学的位置及び在沖縄米海兵隊の意義及び役割」という図説を設け、在日米軍が日本の安全保障及びアジア太平洋地域の平和と安定に直接関係していると明確に述べている。簡単に言えば、日本の今年における釣魚島での様々な振る舞いは、すべてこの重点を突出させるためなのだ。(文章④)
○総じて言えば、本年の白書を軽視することはできない。それは過去のものとは同じではなく、周辺の変化を述べて日本の防衛方針を明らかにするだけではなく、中国を睨んだ内容をさらに増やしている。したがって、白書を中国に対する「挑戦状」と見なすことも誇張ではない。もちろん、日本がこの「挑戦状」を「宣戦布告」に変えようとするならば、日本が歴史の失敗を繰り返す日もやってくるだろう。(文章④)
○(防衛白書での様々な内容は)中国に探りを入れ、中国国内に強硬な言論が出てくれば、それをもって憲法を改定し、自衛隊を出動させる束縛を突破する道を推進しようとするものだ。(文章⑤)

(浅井注)文章③でも識者の発言を淡々と紹介する形で言外に意味が感じ取れるようなニュアンスのくだりがありましたが、文章⑤のこのくだりにもそれを感じます。文章③の場合は、中国側の言動に対して自重を求めるニュアンスだったのですが、文章⑤のこのくだりは、日本側の挑発に乗らないようにとする識者(日本問題専門家の劉江永)のニュアンスを感じます。

<中国外務省報道官の発言>

 8月1日付の人民日報HP(日本語版)は、中国外交部の洪磊報道官が7月31日の定例記者会見で行った発言を次のように報道しました。中国外交部報道官の発言としては、外交儀礼上ギリギリの極めて厳しい内容だと思います。

外交部の洪磊報道官は7月31日の定例記者会見で、日本の閣議で了承された今年度の防衛白書が中国の国防政策と軍事活動を再び批判していることについて、中国側の厳正な立場を表明するとともに、自らの行動が地域の平和と安定にプラスかどうかを真剣に見極め、反省するよう日本側に促した。
--日本の閣議で7月31日に了承された今年度防衛白書は、中国の国防政策と軍事活動を再び批判している。
日本の防衛白書は中国の正常な国防建設と軍事活動に対していわれなき非難をし、中国内部の問題について四の五の言っている。中国はこれに強烈な不満を表明する。すでに日本側に厳正な申し入れをした。
近年、日本は様々な口実で絶えず軍備を拡充し、軍事同盟を強化し、地域の安全保障問題でごたごたを引き起こし、地域や国際社会から幅広く注視されている。このようにして日本は一体何をするつもりなのか?日本がすべきは、自らのする事なす事が地域の平和と安定にプラスかどうかを真剣に見極め、反省することだ。

<日中の軍人の発言>

 8月1日付の中国ネットTVをソースとする記事は、海上自衛隊の新幕僚長となった河野克俊氏が7月31日に行った初の記者会見における発言内容を紹介しました。それによりますと、河野氏は、「海上自衛隊は時代の変化に適応し、中国海軍の頻繁な海上活動に対処する」、「北朝鮮がミサイルを発射し、中国海軍の活動も日増しに活発になっているので、日本もすでに複雑な地域的環境の下に位置しているから、海上自衛隊を時代の変化に適応できる組織に建設しなければならない」と述べたとされています(私には初見だったので、国内でどのような取り上げ方があれたのかネットでチェックしてみたのですが、NHKのニュースが同日、「北朝鮮による事実上のミサイル発射や、中国海軍の活動の活発化などは不安定要因であり、日本は世界的にみても複雑な地域の中にある」と述べたというぐらいでした。)。
 8月1日付のチャイナネットは次の内容の記事を流しました。防衛白書との関連性については何も触れていませんが、その内容は、これまでに紹介した、中国側が敏感に反応している白書の記述事項を重点的に取り上げていることから見ても、防衛白書に対する事実上の反論を意図するものであると判断されます。中国国内で報道されたのかどうかは私には分かりません。7月31日の記者会見の内容を翌8月1日付で、しかもこなれた日本語訳にしていることから判断すれば、日本向け(しかも日本世論向け)に周到に準備したものであることはほぼ間違いないと思います。長いのですが、そのまま引用します。なお、蛇足ながらもう一つつけ加えておきたいのは、河野氏の発言と比較することが大切ではないかということです。河野氏発言がむきだしの対中対抗心の吐露であるのに対し、中国側軍人の発言は格段に自制心が働いているということです。

国務院新聞弁公室は7月31日、「中国軍は世界の平和を守る重要な力」とのテーマで記者会見を開いた。耿雁生・国防省新聞事務局長、呉喜铧・人民解放軍参謀本部応急弁公室副主任、王永勝・人民解放軍総政治部弁公庁政研室副主任、賈祥玉・人民解放軍総後司令部戦勤計画局長、林柏・人民解放軍総装綜合計画部総合局副局長が説明を行い、記者の質問に答えた。
■中国軍は世界の平和と安定の維持に重要な貢献をしてきた
耿雁氏は「中国軍は世界の平和と安定の維持に重要な貢献をしてきた。積極的に国際問題に参与し、対外軍事関係を拡大し、150カ国余りと軍事関係を築き、22カ国の防衛当局や軍隊と制度化された戦略協議や防衛対話を行い、30カ国余りと延べ50回余りの合同軍事演習や訓練を行い、各国の軍と友好的交流や軍事的な相互信頼を強化した。中国は23の国連平和維持活動(PKO)に各種人員延べ2万人余りを派遣しており、国連安保理常任理事国の中で最も多くPKO要員を派遣している。現在も2000人近くの将兵が11のPKO地区で活動している」と説明した。
■中国軍は党の軍隊であるとともに国の軍隊、人民の軍隊でもある
中国の軍事体制について王永勝氏は「中国共産党は政権党であり、党と国による軍の指導は高度に統一されている。このため我が軍は党の軍隊であるとともに、国の軍隊、人民の軍隊でもある」「歴史的状況から見て、世界には中国の軍事制度を俎上に載せ、軍の非党化、非政治化、国軍化などの誤った観点を撒き散らす者が常におり、中国共産党の指導からの脱却を煽動する者さえいる。これは魂胆のあるものであり、われわれは断固反対する」と述べた。
■中国軍は世界の先進的軍事水準と比べるとまだ開きがある
中国の軍事力の発展をどう受け止めるかについて、呉喜铧氏は「近年来、わが国は自らの安全保障・防衛上の必要に基づき、計画的に武器・装備整備を強化し、新型武器・装備を相次いで開発、刷新した。だが世界の先進的水準を比べると数量においても技術性能においても、まだ大きな開きがある。主要装備は旧世代のものであり、老朽装備の割合が大きい」と述べた。
■中国海軍による国益維持と「対外強硬」を同一視する根拠はない
南中国海問題について耿雁氏は「中国は南中国海諸島およびその周辺海域に対して争う余地のない主権を有しており、中国軍は当該地域でのいかなる軍事挑発行為にも反対する。中国軍は規定に従い自らの管轄海域内で常態化された戦備巡視制度を構築し、規定に従い自らの職責を履行している。これは国家の領土主権と海洋権益を守るためであり、他の国や特定の目標を狙ったものではない。国益を守るための中国海軍の正当な行動を対外強硬と同一視するのは根拠のないことだ」「いわゆる南中国海問題の核心は南沙(英語名スプラトリー)諸島の一部の島や礁をめぐる関係国の主権係争と南中国海の一部海域の国境画定係争であり、関係当事国間の二国間交渉を通じて解決すべきだ」と述べた。
■空母プラットフォームは今後も科学研究的な試験と訓練を継続
空母問題について林柏氏は「空母は大型の海上作戦プラットフォームであり、多方面の試験と検証が必要だ。空母プラットフォームのこれまでの海上試験は順調に進み、期待した成果を上げた。空母プラットフォームは今後も科学研究的な試験と訓練を継続する。後続作業はその情況に基づき決定される。万里の長城は一日にして成らず。理性的、客観的にこの問題を受け止めてもらいたい」と述べた。
■日本政府関係者の釣魚島関連発言に中国人民が反対するのは当然
釣魚島(日本名・尖閣諸島魚釣島)問題をめぐる日本の一部政府関係者による最近の発言について耿雁氏は「中国側はこうした無責任な発言に留意している。中国の主権を侵害するこうした誤った発言が中国人民の反対に遭うのは当然だ」「国の主権と海洋権益の維持は軍を含む各関係当局の共同責任だ。われわれは各当局と緊密に連携して、自らの職責を真剣に履行する」と述べた。

<チャイナネットの文章>

 最後に、7月31日付のチャイナネットの「東アジアで「安全感」がない国は日本だけではない」と題する記事を紹介します。この記事も防衛白書に対する中国側の反応を意図したものであることは明らかですが、私が目を見張ったのは、この記事の「他者感覚」、バランス感覚十分の内容でした。こういう内容を文章にする度量を失わないでいる中国の深謀遠慮は、やはりただものではなく、春秋戦国時代以来の歴史的蓄積の重みを感じさせるのに十分だと思います。

日本政府は31日、2012年版の「防衛白書」を発表した。白書は中国の軍事力に大々的に触れており、防衛省が中国に警戒していることがわかる。この白書は中日関係をさらに悪化させるもので、日本は東アジアで「中国に用心」という警鐘を最も熱心に鳴らす国になっている。
日本の中国に用心する気持ちは理解できる。中国の台頭は不確定性をもたらし、日本は中日の力の増減の急速な変化に適応できていない。アジアで最も力のある国という地位を維持してきた日本は、総合国力において中国に再び抜かれたくなく、さらにそれにうろたえてさえいる。これは不思議なことではない。
しかし、日本は中国に対する警戒心を放っておいてはいけない。抑制しなければ、警戒心によって日本は行動を起こし、中国とアジアその他の国にも影響し、東アジアは一つの方向で行き詰まり、最終的に斡旋の余地をなくすことになる。
集団安全保障がない東アジアに安全感を持つ国はない。中国も同じで、米国の「アジア回帰」の意図を深く疑っている。中国の軍事力がどれだけ高まっても、米国プラスその盟友の軍事力と比べると、劣勢を脱するのはしばらく無理である。
韓国と朝鮮も安全でないと感じており、東南アジアに「安全だ」と感じている国はないと言える。「安全の苦境」は東アジア諸国を苦しめている。安全保障について言えば、少なくとも北東アジアにおいて、日本は優れているほうだろう。
総合国力が高く、国家安全がかなり保障されている日本は、中国から脅威を受けていると主張し、地域内で互いに信頼しない動きを強めている。これが北東アジアを悪い方向に導いていることは確かだ。
中国の軍事力がいずれ全面的に日本を超えることは回避できないだろう。中国の経済規模はすでに日本を超え、国家安全が直面する試練や国防に対する実際の需要も日本よりはるかに多い。日本に中国の国防の発展を理解させることはできないが、日本は少なくとも、中国のやり方は論理に反したヒステリックなものではなく、責任ある政府がすべき選択だとわかるべきだ。日本は中国台頭の本当の文化的、地縁政治的な意味を理解すべきで、戦略的結論を軽はずみに下したり、さらには中国台頭が日本に向けたものだと憶測すべきではない。
中国も日本もリラックスが必要かもしれない。日本は冷戦として中国に目をつけ、中国の変化を評価してはいけない。また、中国は日本の中国に対する警戒心に不機嫌になったり、同等の対抗措置を取ったりしなくてもいい。北東アジアはすでに危険な「十字路」に来ており、しかも米国が「十字路」の信号をコントロールしている。各国は衝突を逃れるため、複雑かつ真剣に対応しなければならない。

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