中国における対日強硬論:「日本は取り締まられるべきだ」

2012.07.20

*7月19日付の新華社「日本は取り締まられるべきだ」(筆者は、中国政策科学研究会国家安全政策委員会研究院の趙昌会)は、その内容の激しさに、私は固唾をのむ思いを禁じえませんでした。「中国側の怒りもここまで来たか」というのが率直な印象です。このコラムを訪れてくださる方に是非、一読して日中関係のあり方に思いを馳せていただきたいので、相変わらず拙い訳ですが紹介します。
文章の激越さ、身勝手さ、国際ルール無視などについて反感が先立つ方もあると思いますし、「だから中国人は」と嫌中感を新たにする方もあるだろうとは思うのですが、私たちが考えるべきことは、個々の内容について是非を論じ、批判を加えることにあるのではなく、こういう文章が公然と、しかも新華社というメディアにおいて取り上げられるに至ってしまったことの重大さであり、このような事態を招いてしまったのは何が原因なのか(答えは野田政権ひいては民主党政権の無責任を極める対中政策(無政策)以外にありません。)、ということでなければならないと思います(7月20日記)。

 最近、日本政府は不断に釣魚島問題について事をしでかし、中日関係の不確実性を大々的に増加させている。日本側の頻発する挑発に直面して、中国としてもあるいは多少の対抗措置を実施し、現在の中日経済関係発展の特質を利用し、若干の制裁手段を執り、日本政府がこれ以上つけあがって無鉄砲に事を行うことがないようにする必要があるかもしれない。
 日本の対中関係における圧倒的な特徴は、経済的に高度に中国から利益を得ており、その成長及び発展が中国につながっているが、安全保障面では大いに策謀し、多方面にわたってしかも以前にも増して対抗し、中国と敵対しようと決意していることである。他面において日本は、中国が平和的発展を求め、善隣をよしとしているから、中国には堪え忍ぶ国策しかないと確信を持っているかのごとくであり、中国はもはや牙を抜いた状態に甘んじていると思っている。
 日本のこのような首鼠両端を持する(注:どちらに付こうかと態度を決めかねている)国民的性格を放っておくべきではない。さもなければ、事態は日に日に悪化し、中国がひたすら寛容であるということは宥和政策に退化してしまい、将来の災いは尽きることがなくなるだろう。これからは、中国は態度を改め、多くの政策手段を動員し、経済、政治、外交、安全保障、防衛及び世論の力を総合的に運用し、日本が往々にして恩を仇にして返すという悪行の悪循環から抜け出して差しつかえないのだ。
 日本によく考えたうえで後戻りする機会を与えるため、中国は、総合的に様々な手段を考慮することができるのであり、まずは経済面で多少の制裁措置を講じ、日本をして早急に釣魚島問題における冒険の旅をやめさせよう。対日反撃は、経済について言えば、敵を制する方法として、最低限、貿易、関税、金融、自由貿易協定、観光の5つの切り札を使うことができる。
 データが証明するように、対中貿易はすでに日本の経済的支柱になっている。2011年においては、日本の主要市場及びそのシェアは、中国19.6%、アメリカ15.0%、EU11.6%、韓国7.7%、香港5.5%である。日本の主要貨物提供国及びそのシェアはさらに不均衡で、中国21.5%、EU9.4%、アメリカ8.9%、オーストラリア6.6%、サウジアラビア5.2%である。これと比較した場合、中国の主要な輸出目的地の順序は、アメリカ17.1%、香港14.1%、日本7.8%、韓国4.4%であり、主要輸入相手国については、日本11.2%、韓国9.3%、台湾7.2%、アメリカ6.8%である。即ち、中国が日本の輸出入総額に占める比率は各々1/5前後であるが、日本が中国の輸出額に占める比率は1/10弱であり、中国の輸入額に占める比率は1/10強である。このことは、中国が日本製品を多く買うか、少なく買うか、あるいは日本製品を買わないかは、日本の命運にかかわることであることを意味する。
 中国は、日本企業をダメにすることもできる。中日経済協力はすでに相当に深まっており、ある意味では相互依存関係があるのだが、日本経済の中国市場に対する依存性はさらに大きく、この非対称的な依存性はまずは彼我の優劣という現状及び傾向ということに表れているのだ。つまり、中国人が熟知している日本企業の多くが中国市場に頼って発展ひいては生存しており、中国市場はもはや彼らの「強心剤」であり、仮に中国市場が一定の日本企業に対して門戸を閉ざせば、ストレートに「的の中心に当たる」のであり、現下の情勢においては、中国としてはこのような権利(行使)をケチケチするべきではない。
 日本が格別に重視する東南アジア市場においては、中日企業は激しい競争関係を形成しているが、中国の勢いの方が優っており、中国が地縁経済競争を強力に展開すれば、日本の経済的抵抗力には限度があり、より多くの市場を失うだろう。日本は一定のハイテク、先端技術を有してはいるが、これらの優勢も必ずしも日本だけのものではなく、中国は、他のルートを通じてあるいは自らの努力によって獲得できるのであり、日本が必要とするレア・アースなどの戦略的資源に関しては、正にその大部分を中国が握っている。このような中国経済、中国市場に対する依存ということはすでに日本自身の戦略的弱点を構成しており、日本の国運に対してさえ深甚な影響を生みだしている。
 貿易面では、中日貿易の現実の局面に鑑みれば、中国が日本に輸出しているのは主に原料、半製品などが多いのに対して、日本は多くが「高精尖」の高付加価値製品であり、我々としてはいくつかの重要原材料について「扉を閉じ」、もともとの粗放的輸出に対して一定の制限的な手段を取る必要がある。例えば、日本は一貫してエレクトロニクス産業では永久に中国を圧倒することを希望しているが、中国はレア・アース資源では対日輸出を制限して…いる。これと組み合わせて関税面でも、中国は差別関税も打ち出すことができるのであり、例えばレア・アースの輸出において、他の国には関税のレベルを調整しないことにより、日本に対してのみ適度に(関税を)高めることもできる。実は、日本の奢侈品の輸入に対する関税を引き上げても、同様に日本の関連する企業や地方公共団体をして切実な苦しみを味わわせるだろう。
 金融面においても中国は、日本の金融機構による中国市場での拡張を放任するべきではない。日本の金融業は今極めて不景気で、本業における正常な業務の発展にとってもあるいは新しい領域を開拓するにおいても、その前途はすべて中国にあるのであって、仮に中国市場で足場を築けないとしたら、取りも直さず致命的な打撃となる。日常業務活動については、(中国は)例えば、日本金融機構が中国で業務を開始しまたは拡大するための申請に対して遅らせる、暫定的に延期する、あるいは制限する、日本金融機構の信用供与限度額を引き下げる、正当な業務規定を通じて日本の金融業が中国で業務を行うコストを引き上げる、などの具体的な措置をとることが可能だ。
 中国は、アメリカが中国をのけ者にして大騒ぎしているTPPを決して奨励しないし、まったく恐れてもいないが、他面では「見せかけの計」(中国語は「拖刀计」)を用いることもできるのであって、中日間の3国間の自由貿易協定において、日本に対してはより多くの要求を提起するとか、日本が得ることができる特恵品目を減らすとか、協定成立の時間を無期限に引き延ばすとか(の方法)がある。三国間の自由貿易協定はもともとは互恵協定であり、周辺国市場をとりわけ必要としている日本にとっては「大きな贈り物」である。現在及び今後5年ないし10年の期間に、日本としては先進国市場には期待することが難しいが、途上国市場においても未だ開拓できておらず、グローバル市場での宣伝能力も必ずしも強くなく、したがって周辺国市場とくに中国市場に対する依存度は極めて高い。中国が日本との協力計画を弱め、さらには日本企業が参加するプロジェクトのいくつかを減少ひいては取り消せば、日本の産業に対して警告効果を生みだすことは疑問の余地がない。
 観光経済が日本の広範なミドル・クラスに及ぼす影響は等閑視することができない。適度に中国人観光客の行き先を誘導し、適当に中国観光客の日本旅行の規模を縮小し、観光業者が日本旅行の計画を減らすように導き、同時に旅行客が東南アジア、アフリカ、ラ米及び大洋州の国々に観光旅行に行くことを奨励する。このようにすれば、中国旅行客の財布を大いに必要としている日本の消費産業及び小売業は深刻な打撃を受けることになる。
 したがって、中国が取ることができる手段はきわめて多い。上述の経済での5つの切り札のほかに、政治、外交、安全保障、軍事、世論という(経済と合わせた)6つの分野で歩調を合わせた措置を講じ、協調的オペレーションが生みだす合体力によって、日本に対して正真正銘の威嚇作用を生みだす。もちろん、日本に対して制裁的な措置をとることによって、多少の分野において「千人の敵を殺すが、自らも八百人の損失を被る」という結果が現れるだろうことは確実である。しかし、中国があえて剣を光らせ、対決及び取締の手段を使用することをものともしないならば、日本が(尖閣問題で)ひっきりなしに守るべき規範を越えるということはむずかしくなるだろう。

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