安保理決議の国際法違反性と国連事務総長の偏向
(朝鮮中央通信社論評)

2012.04.01

*朝鮮中央通信社は3月28日付で「偏見的な態度を捨てなければならない」と題する論評を発表しました。その内容は、米日韓などにおいて朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の人工衛星打ち上げを禁止する根拠とされている安保理決議1874が国際法違反のアメリカ主導の「陰謀の所産」であるとし、潘基文国連事務総長がこの決議に依拠した言動を行っていることを「国際機構の首長にふさわしくない発言」としているものです。この論評の内容は、個々の言辞の激越性(この論評にはまだ自制心が働いています。)はともかく、私としても全面的に首肯できるものです。「国連=正義の味方」という、私に言わせれば「国連信仰」としか言いようのない感覚が強い日本国内では、安保理決議は絶対、国連事務総長は正義の代弁人という受け止め方が支配的ですが、私たちはそういう根拠のない見方をいい加減見直すべきだと思います。そういう意味でも、この論評は一読の価値があると思います。
また、私は常日頃から、弱小国・朝鮮がアメリカ及びアメリカ主導の国連と渡り合うすべは正論による以外にはないし、少なくとも私が朝鮮外交を私なりにフォローするようになった1993年以来、朝鮮はその点をわきまえて行動してきている、と述べてきたのですが、この論評もそういう正論の典型例です。日ごろあまり朝鮮側主張に接する機会を持たない読者もおられるのではないかと思い、全文を掲載します。朝鮮が「わけの分からない、何をしでかすか分からない国」であるどころか、「きわめて常識的な、分かりやすい国」であることが、この論評からお分かりになると思います(4月1日記)。

国連事務総長の潘基文が、共和国の「光明星3」号の打ち上げ問題をもって国際機構の首長にふさわしくない発言をしている。
北の「ミサイル発射に強い懸念を表す」「朝鮮半島の平和と安保を脅かす」「ミサイル発射を再考することを促す」などの発言がそれである。
国連事務総長という職責にふさわしくない。
国際的規定と慣例に徹底的に立脚した「光明星3」号の打ち上げが朝鮮民族の尊厳と威容を万邦に誇示し、世界的な宇宙開発と科学研究発展に積極的に寄与するであろうということは疑う余地もない。
潘基文が同族としてわれわれの平和的な衛星打ち上げを歓迎し、よく見なさないまでも、米国と日本をはじめ敵対勢力の対朝鮮敵視政策に同調するのはどの面から見ても公正さを生命とする国連の体面を傷つける仕打ちである。
看過できないのは、彼がわれわれの衛星打ち上げを国連安全保障理事会の「決議」違反として取り上げていることである。
強調しておくが、国連安全保障理事会の「決議1874号」は主権国家であるわが共和国の合法的な衛星打ち上げの権利を否定した米国とそれに追随した理事会の不法非道な強権行為によって生じた醜悪な陰謀の所産である。
これには、なんの国際法的根拠もなく、ただ制度が異なる国に対する敵意と拒否感、小国は大国に従順しなければならないというごう慢と専横だけが潜んでいる。
国連という巨大な国際機構を代表するという彼がそれを知らないはずがなく、知らないなら資格が疑われる問題としか他に評価のしようがない。
もし、彼の言葉通りであるなら、われわれは他国がすべて行う衛星打ち上げと宇宙利用の権利を永遠に行使することができなくなる。
かつて、国連安保理が共和国の自主権を乱暴に侵害する「決議」を採択して、われわれの全面排撃を受けたのはこれに起因する。
米国をはじめとする敵対勢力がわが共和国を圧迫するための切り札として持ち出す反共和国「決議」が国連で普遍的な国際法に違反して採択されたことには国連事務総長にも責任がある。
国連がわれわれの衛星打ち上げを問題視し、「決議」を採択したのは、明白に宇宙の開発と利用における2重基準である。
人類が宇宙征服に踏み出した時から世界の数多くの国が宇宙空間に各種の衛星を打ち上げたが、それが国連の舞台で問題視されたことはない。
われわれの衛星打ち上げを「重大な挑発」と言いがかりをつける米国も軍事衛星を含む各種の衛星を宇宙空間に打ち上げて全世界の平和と安全を脅かしているが、それもやはり、取り上げられなかった。日本と南朝鮮をはじめ米国の手先らが行った衛星打ち上げも同じである。
国連事務総長が自分の使命と役割を正しく果たすには、どの一方の主張に追随して偏見的な態度を取るべきではなく、公正な立場に立って事実いかんを先ず正確に確かめるのが何よりも必要である。
われわれの実用衛星の打ち上げは、国連安全保障理事会の決議より上位を占める国際社会の総意が反映されている宇宙条約をはじめ宇宙の平和的利用に関する普遍的な国際法に準じた自主的かつ合法的な権利の行使である。
われわれはこれまでと同様、今後も国際舞台でわれわれの尊厳と自主権を侵害しようとするいかなる行為に対しても絶対に許さないであろう。

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