脱原発を目指す上での新しい動き(?)

2011.10.08

10月6日の朝日新聞に「原水協と原水禁「協力を」 共産・志位委員長が期待」という見出しの興味ある記事が載っていました。それは、共産党の志位和夫委員長が、5日の日本記者クラブでの講演で、「「原発をなくそうという方向で協力できたら……」と、脱原発で旧社会党系の人たちとの歴史的な対立を乗り越え、連携する必要があると訴えた」という内容のものでした。
また、その記事の横には、「発言録」という欄があり、社民党党首の福島瑞穂氏が4日に連合会長・古賀伸明氏が「原発のない社会を目指す」と発言したことについて、「連合が「脱原発」の政策転換を打ち出したことは大変大きい」「民主党の支持母体でもあり、政権に影響を与えるものではないか。高く評価したい」と評価する発言を定例記者会見で行ったことも紹介していました。ちなみに、ネットで検索したところでは。古賀会長は4日の連合の定期大会の席上、「最終的には原子力に依存しない社会を目指していく必要がある」と述べたようです。この発言を伝えた記事には、「連合はこれまで原発の新増設推進を掲げていたが、東電福島第1原発事故を受け方針転換した」という説明もありました。上記福島発言は、こういう報道を基にしたものと思われます。確かに、これまで原発推進路線だった連合が「脱原発」に方向転換したとすれば、連合の強い財政的影響力のもとにあった日本原水禁としてもこれからは気兼ねなしに脱原発を含む核廃絶をはっきり言えるようになるわけですから、古賀発言は注目に値します。ただし、ケチをつけるわけではありませんが、報道ぶりを見る限りでは、古賀氏の発言はそれほど歯切れがいいものではなく、「最終的には原子力に依存しない社会を目指していく必要がある」というものですから、手放しの楽観ができるほどのものかどうかはまだよく分かりません。
 とはいえ、日頃から、原水爆禁止運動が分裂していることが日本の核廃絶・平和運動の低迷の大きな原因となっているという認識を表明してきた私としては、志位委員長及び古賀会長の発言に関するこの記事は、とても見逃すことのできないものでした。
 しかし、この志位発言があった日本記者クラブでの同委員長の発言を報じた6日付の赤旗には、朝日新聞が報じた内容は全く触れていませんでした。そこで、日本記者クラブのホーム・ページを見たところ、志位委員長の発言がYou Tubeで全文納められていることを知り、早速聴取しました。
 そこから分かったことは以下の諸点です。
 まず、志位委員長の冒頭発言で、彼が自らこの問題に踏み込んだ発言をしたということではない、ということです。そうではなくて、質疑に入ってから会場からの質問でこの問題が提起され、志位委員長が答えたという内容でした。質問者は4つの問題を提起し、その中の一つが原水禁運動について、脱原発の一点で原水協と原水禁が協力できないのか、という趣旨の質問が提起されたのです。
 これに対する志位委員長の回答は、おおむね次のようなものでした。

 「原発をなくそうという一点で大同団結することは望ましい。(脱原発に関しては)世論の広がりがあり、7月2日の明治公園での集会や9.19の大江健三郎さんなどによる「さよなら原発」集会は、いろいろな立場の人々、市民が6万人も集まる大集会となった。私も一参加者として出席したが、1973年の小選挙区制反対の時以来の、その時をも上廻る大盛況だった。立場の違いを超えて可能な運動をしていくことが望ましい。」

 You Tubeを聞きながらのメモですので、必ずしも正確ではない部分もあるとは思いますが、いずれにせよ、朝日新聞が書いているようには明確に原水禁運動の協力にまで積極的に踏み込んだものとは受けとめられませんでした。もし、この発言に共産党が重きを置いているのであれば、赤旗の紙面でも取り上げていたはずだと思います。
 もちろん、私は、以上の志位委員長、古賀会長、福島党首の発言を無視することは適当ではないと思います。なぜならば、脱原発を願う市民的な声の高まりが彼らをしてこのような発言をせざるを得なくしたことは間違いないと思うからです。志位委員長は相変わらず、1963年当時の部分核停条約問題にも言及するなど、日本原水協と日本原水禁との協力促進を考える立場からすれば、「相変わらずだな」と思わざるを得ないことも口にしていました。しかし、福島の事態を受けて目覚めつつある一般市民の「原子力平和利用」神話への疑問の高まりがこれまでの原水禁運動に新鮮なエネルギーを送り込む可能性はあると思いますし、私としては、そういううねりが起こることを期待しながら見守っていきたいと思います。
(10月8日記)

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