福島第一原発と内外世論の動向(世論調査結果紹介)

2011.04.22

*福島第一原発の事態を受けて朝日新聞が行った世論調査の結果(4月18日付)は、私にとっては極めて遺憾な内容のものでした。しかし、朝日新聞の結果からだけで結論を出すのは早計であると思い直し、内外の世論調査結果をネット検索してみました。結論としては、朝日新聞の数字は国内メディアの調査結果とおおむね軌を一にしていることがわかりました。しかし、ギャラップ・インタナショナル・アソーシエーション(GIA)が世界の47カ国を対象に行った世論調査その他の存在を知り、GIA調査に含まれている日本の世論調査の結果は、朝日新聞その他の国内世論調査結果とはきわめて異なる内容が出ていることを知りました。また、アメリカでも各種世論調査が行われていて、その中には日本メディアの各調査と比較できる内容の設問とアメリカ人の答えが出ていることもわかりました。
GIAの調査結果と日本各社の調査結果との大きな違いの原因は、設問の仕方によるものではないかというのが現時点での印象ですが、GIAの調査を日本で担当した日本リサーチセンターに、同社としての考え方を照会していますので、その答えを待ってから改めて今回の様々な数字から読み取るべきことを考えたいと思います。今回は、私が集め得た各種世論調査の結果を紹介しておきます(4月22日記)。

1.国内の世論調査結果

(参考)

過去の世論調査結果
       推進    現状維持     縮小・廃止    わからない
1991       42       23       26       9
1992       45       24       28       3
1994       39       30       27       4
2005       55       20       17       8
2009       60       19       16        5

(注)
1991~1994年:(社)エネルギー・情報工学研究会編「エネルギー・原子力に関する世論調査と国際比較 <報告書>」から
2005~2009年:内閣府政府広報室「「原子力に関する特別世論調査」の概要」から

〇3月19日付東京新聞

「国内にある原発は、今後どうすべきだと思うか」(都内有権者を対象)
-「運転しながら安全対策を強化していく」56.2%
-「いったん止め、対応を検討する」25.2%
-「やめて、別の発電方法」14.1%

〇3月21日付北海道新聞

「今後の電力供給体制」(全道世論調査)
-「安全対策を強化し、原発を推進すべきだ」49%
-「将来的に脱原発」41%
-「ただちに脱原発」6%

〇4月2,3日TBS定期調査

「現在、国内では50基以上の原子力発電所が稼働していて、日本の発電力量のうち、およそ3割が原子力発電で占められています。あなたは現在稼働中の国内の原子力発電所について、どうすべきだと思いますか?一つだけ選んでください。」
-「これまでどおり稼働すべき」1%
-「これまでどおり稼働しながら、安全対策を強化すべき」68%
-「いったん停止させ、対応を検討すべき」14%
-「原発は停止させ、別の発電方法をとるべき」15%
-(答えない・わからない)2%
「国内の原子力発電所は、今後も増やす計画で、建設中のものもあります。あなたは国内の原子力発電の増設についてどう思いますか?一つだけ選んでください。」
-「増やすべき」7%
-「建設中のものは建設を進めて良いが、これ以上増やすべきではない」42%
-「建設中のものは建設を中止し、全体として現状を維持すべき」27%
-「減らすべき」21%
-(答えない・わからない)3%

〇4月4日付読売新聞

「今後、国内の原子力発電所をどうすべきか」
-「増やすべきだ」10%
-「減らすべきだ」29%
-「現状を維持すべきだ」46%
-「すべてなくすべきだ」12%

〇4月18日付毎日新聞

「日本の電力の約3割をまかなう現在のエネルギー政策について」
-「やむを得ない」40%
-「原発は減らすべきだ」41%
-「すべて廃止すべきだ」13%

〇4月18日付朝日新聞

「日本の原子力発電は、今後、どうしたよいと思いますか」
-「増やす方がよい」5%
-「現状程度にとどめる」51%
-「減らす方がよい」30%
-「やめるべきだ」11%

〇4月19日付北海道新聞

函館から30キロ圏内にある青森県大間町で建設中の大間原子力発電所について、17,18日に函館市民を対象に実施した世論調査
-「「建設中止」49%
-「安全対策を強化して建設」44%
-「計画通り建設」5%

〇4月18日のNHK「ニュースウオッチ9」放送の世論調査結果

-「原子力発電所は増やすべきだ」7%
-「原子力発電所は現状を維持すべきだ」42%
-「原子力発電所は減らすべきだ」32%
-「原子力発電所はなくすべきだ」12%

2.世界47カ国の世論調査結果

〇WIN-Gallup International(GIA)が3月21日~4月10日に世界47カ国の34000人を対象に行った世論調査結果

(GIAの解説要旨)

-日本の地震を境に、原発を肯定・支持か否定・反対かで設問した結果、「支持-反対」の純支持率が25%から6%に減少。ただし、支持層が反対層を49%対43%(地震前は57%対32%)で引き続き上回った。もっとも純支持率が下がったのは日本で、震災前の34%から-7%へと41%もの激減。

  世界(前→後) 日本(前→後)
好意的(支持)         57→49         62→39   
非好意的(不支持)         32→43         28→47
純支持率(支持-不支持)         25→6         34→-7
無回答         11→8         10→14

-回答者の91%が震災を知っており、81%が福島での放射能漏れを知っていた。情報源はテレビ、ラヂオ及び新聞が主だが、18%がインターネットによって最新情報に接していると答えた。

-日本が経済復興するかどうかについては、48%が復興前レベルまで回復するかそれ以上になると予想した。悲観的な見方は38%だった(無回答は13%)。悲観論は、日本自身が55%、韓国が47%、中国が67%だった。

-47カ国をA(支持層が多数派から少数派に転落した国)、B(純支持率が非常に低下した国)、C(純支持率に10%以下の減少があった国)、D(支持層が元々少数派であって、福島後はさらに減少した国)に分類し果
*A(8カ国)&B(6カ国):日本(62:39)、サウジ・アラビア(52:43)、中国(83:70)、エジプト(65:52)、カナダ(51:43), チュニジア(44:39)、インド(51:49)、イラク(62:49)、オランダ(51:44)、香港(48:40)、ロシア(63:52)、バングラデシュ(64:51)、ルーマニア(51:41)、カメルーン(48:44)
*C(10カ国)&D(18カ国):ドイツ(34:26)、ポーランド(36:30)、ケニア(32:21)、アメリカ(53:47)、フィンランド(58:52)、ナイジェリア(65:63)、ベルギー(43:34)、アイスランド(38:32)、パレスチナ(39:30)、フランス(66:58)、チェコ(63:61)、ヴェトナム(62:57)、スイス(40:34)、グルジア(25:16)、韓国(65:64)、ブルガリア(43:34)、ラトヴィア(54:53)、ブラジル(34:32)、イタリア(28:24)、セルビア(21:17)、コロンビア(24:23)、パキスタン(55:53)、オーストリア(13:9)、ボスニア(20:17)、ギリシャ(12:10)、マケドニア(21:19)、アイルランド(34:30)、トルコ(45:41)
*純支持率増加国(5カ国):スペイン(39:41)、アゼルバイジャン(17:20)、フィジー(28:29)、南アフリカ(45:49)、モロッコ(16:35)

-原発保有国(IAEAによれば31カ国)のうち、今回調査対象に含まれている20カ国(注:原文では19カ国としている。)に関する詳細は次のとおり。
*支持層が多数派から少数派に転じた国:日本、カナダ、オランダ、ルーマニア
*支持層が純支持率において10%以上減少した国:中国、インド、ロシア
*支持層が純支持率において10%以下減少した国:アメリカ、フランス、韓国、パキスタン、ブルガリア、チェコ、フィンランド
*支持層が元々少数派で、純支持率がさらに低下した国:ベルギー、ドイツ、スイス、ブラジル。スペインはこのカテゴリーに入るが、支持率自体は4%増加。
*支持率が増加した国:南アフリカ

(参考)浅井が「原発保有国における震災前後の世論の変化」をGIA調査結果から摘出した表

  好意的・支持 非好意的・不支持 純支持率 無回答
ベルギー 13→9 87→90 -74→-81 0→1
ブラジル 34→32 49→52 -14→-23 17→14
ブルガリア 68→62 16→23 52→39 16→16
カナダ 51→43 43→50 8→-7 5→7
中国 83→70 16→30 67→40 0→0
チェコ 63→61 31→34 32→27 7→5
フィンランド 58→52 38→44 20→8 4→4
フランス 66→58 33→41 34→16 1→1
ドイツ 34→26 64→72 -30→-46 2→1
インド 58→49 17→35 41→13 25→16
日本 62→39 28→47 34→-7 10→14
韓国 65→64 10→24 54→41 25→12
オランダ 51→44 43→50 8→-7 6→6
パキスタン 55→53 24→27 31→26 20→20
ルーマニア 51→41 42→53 10→-12 10→6
ロシア 63→52 32→27 31→25 4→21
南アフリカ 45→49 40→45 6→4 15→6
スペイン 39→41 42→44 -4→-4 19→15
スイス 40→34 56→62 -16→-28 4→4
アメリカ 62→57 26→34 35→23 12→10

(世論調査の対象に含まれない原発保有国・地域:アルゼンチン、アルメニア、ハンガリー、メキシコ、スロヴァキア、スロベニア&クロアチア、スエーデン、台湾、ウクライナ、イギリス)

3.アメリカその他における世論調査結果

◯PollingReport.com収録のアメリカの各種世論調査結果

*2011年3月15日のUSA Today/Gallup Poll
-「アメリカにおける原発建設を支持しますか、反対ですか」(2011年3月15日)
支持44% 反対47% わからない9%
-「日本における最近の出来事により、アメリカで原子力災害が起こることについて非常に不安になりましたか、少し不安になりましたか、それほど心配になりませんでしたか」
非常に不安になった39% 少し不安になった31% それほど心配にならなかった27% わからない3%

*2011年3月14-16日のFox News Poll
-「原子力はエネルギーの安全な資源と思いますか」
2011年3月14-16日 はい51% いいえ40% わからない9%
2008年6月17-18日 はい53% いいえ34% わからない13%
-「日本における現状により、アメリカで原子力を電力源として使用することを支持しなくなりましたか」
非常にしなくなった19% 少ししなくなった18% 変わらない60% わからない3%

*2011円3月17-20日のPew Research Center Survey
-「原子力の使用増加を促進することを支持するか、反対するか」
2011年3月17-20日 支持39% 反対52% わからない8%
2010年10月13-18日 支持45% 反対44% わからない11%
2010年6月16-20日 支持47% 反対47% わからない6%
2010年5月6-9日  支持45% 反対44% わからない11%
2010年2月3-9日  支持52% 安泰41% わからない7%
-「アメリカの原発設計の安全性は日本の原発よりも高いと思いますか、より高くないと思いますか、同じだと思いますか」
2011年3月17-20日 より安全24% より安全でない10% 同じ程度53%
どちらも安全ではない1% わからない12%

*2011年3月18-2-日のCNN/Opinion Research Corporation Poll
-「一般論として、発電のために原子力を使用することを是認しますか、否認しますか」
是認57% 否認42% わからない1%
-「アメリカで原発を増設することを支持しますか、反対ですか」
2011年3月18-20日 支持46% 反対53% わからない1%
2010年3月19-21日 支持50% 反対47% わからない3%
-「既設で稼働中の原発についてどう思いますか。既設の原発で恒久的に閉鎖すべきものがあると思いますか、すべて引き続き稼働すべきだと思いますか」
閉鎖27% 稼働継続68% わからない4%
-「あなたの地域で新規の原発を建設することを受け入れますか、受け入れませんか」
受け入れる39% 受け入れない60% わからない1%
-「原発開発を数年先に減らすとすると、消費者の電力費用が増える、石炭石油などの他のエネルギー源に依存しなければならなくなるでしょう。国家的な原発依存を減らすために、あなた自身はより高い電力費を支払う用意はありますか、ありませんか」
ある38% ない60% わからない3%
-「見聞してきたことから総じて言えば、原発はどれほど安全ですか」
非常に安全28% まあ安全42% それほど安全ではない45% わからない1%
-「アメリカの原発が事故または自然災害で深刻な損傷を被った場合、連邦政府の事態対応能力についてどの程度信頼しますか」
大いに信頼する18% まあ信頼する49% あまり信頼しない24%
まったく信頼しない9%
-「日本の損傷した原発から危険な量の放射線がハワイ、アラスカまたは大陸西岸に到達する可能性はどうですか」
非常にある14% あり得る39% たぶんない23% まずあり得ない23%
わからない1%
-「日本の損傷した原発から危険な量の放射線があなたの住んでいる地域に到達する可能性はどうですか」
非常にある5% あり得る17% たぶんない18% あり得ない60%
-「アメリカの将来のエネルギー需要を考えるとき、いかのエネルギー源にもっと依存すべきだと思いますか、依存すべきでないと思いますか」
太陽光  もっと多く88% もっと少なく11% わからない-%
風力   もっと多く83% もっと少なく17% わからない1%
天然ガス もっと多く70% もっと少なく29% わからない1%
石炭   もっと多く43% もっと少なく56% わからない1%
原子力  もっと多く42% もっと少なく57% わからない1%
石油   もっと多く28% もっと少なく71% わからない1%
-「政府及び私企業が発電施設及び使用燃料について政策決定を行うときに、次の要素は重要だと考えますかどうですか」
安全性
最高に重要34% 非常に重要57%
ある程度重要8% 重要ではない1%
わからない-%
石油対外依存低下
最高に重要34% 非常に重要55%
ある程度重要7% 重要ではない4%
わからない-%
汚染その他の環境リスク低減
最高に重要27% 非常に重要53%
ある程度重要17% 重要ではない2%
わからない-%
電力価格現状維持 最高に重要22% 非常に重要46%
ある程度重要25% 重要ではない5%
わからない1%

*2011年3月18-21日のCBS News Poll
-「総じて言って、原子力の利益はリスクを上回ると思いますか、思いませんか」
上回る47% 上回らない38% わからない15%
-「電力生産のために原発を増設することを認めますか、認めませんか」
2011年3月18-21日 認める43% 認めない50% わからない7%
2008年7月      認める57% 認めない34% わからない9%
2007年4月20-24日 認める45% 認めない47% わからない8%
2001年6月      認める51% 認めない42% わからない7%
-「あなたの地域に原発が建設されることを認めますか、認めませんか」
2011年3月18-21日 認める35% 認めない62% わからない3%
2007年4月20-24日 認める36% 認めない59% わからない5%
2001年6月      認める40% 認めない55% わからない5%
-「アメリカの原発に大きな事故が起こることについてどの程度不安ですか。非常に不安ですか、ある程度不安ですか、あまり不安ではないですか、まったく不安はありませんか」
非常に不安31% ある程度不安34% あまり不安でない26% 
まったく不安ではない8% わからない1%
-「一般的に言って、アメリカで稼働中の原発は安全だと思いますか、安全ではないと思いますか」
安全69% 安全ではない22% わからない9%
-「連邦政府は、大きな原子力事故に対処する十分な準備があると思いますか、思いませんか」
準備がある35% 準備できていない58% わからない7%
-「日本からの放射線がアメリカに住んでいる人びとに買いがあることを心配していますか。非常に不安ですか、やや不安ですか、あまり不安がないですか、まったく不安がないですか」
非常に不安17% やや不安32% あまり不安ではない29% 
まったく不安でない22%
-「日本での原発事故にかかわる最近の出来事によって、アメリカで原発事故が起こることにもっと心配になりましたか、心配にはなりませんでしたか」
もっと心配になった44% もっと心配になることはなかった53%
わからない3%

*2011年3月24-28日のAP-GFK Poll
-「一般的に、この時期に原発をもっと建設することに賛成ですか、反対ですか」
2011年3月24-28日 賛成39% 反対60% わからない1%
2009年11月17-29日 賛成49% 反対48% わからない3%
-「日本で起こったような原子力の緊急事態がアメリカで起こる可能性をどのように考えますか。きわめてあり得ますか、非常にあり得ますか、ややあり得そうですか、あまりあり得ないですか、まったくあり得ないですか」
きわめてあり得る14% 非常にあり得る15% ややあり得る36%
あまりありそうにない26% まったくあり得ない9%
-「アメリカの原発にそのような緊急事態が起こった場合、アメリカ政府がそのような緊急事態にアメリカ政府が対処する用意があることにどの程度信頼していますか
きわめて信頼9% 非常に信頼18% やや信頼41%
  あまり信頼していない19% まったく信頼していない13%

◯欧州諸国

*フランス:2011年4月6日の時事通信が報道した5日付フランス・ソワール氏が3月31日-4月1日に行った世論調査(livedoor Blog「おもいで速報」による)
原発に不安を感じる56% 不安を感じない44%
原発依存脱核が可能73%

*ドイツ:2011年4月22日にドイツ連邦環境省の委託で4月20-22日に行われた世論調査結果(Ankei's Actie Homeによる)
原子力発電は事故のリスクが高い70%
チェルノブイリ事故と同様の重大事故が今日でも発生しうる可能性がある26%
原子力発電の事故の可能性は未だに高い4%
過去20年間で世界的に事故のリスクは減少し、リスクは甘受できる24%
原子力は今日で判然で、事故の可能性はない4%
自分や家族にとって原子力は危険な他は非常に危険57%
原子力発電撤廃の時期は適切、または前倒しすべきだ66%
原発撤廃の時期は遅らせるべきだ12%
原発撤退を撤回すべきだ18%

*スエーデン:2011年4月に世論調査機関TEMOが行った世論調査(東京電力HP)
「安全基準を満たし、コストが問題にならない限り、既存原発の運転を継続すべき」27%
「既存原発の運転を継続し寿命に足した段階でリプレースすべき」32%
「原子力エネルギーの開発、必要に応じて新規建設を行うべき」21%
「既存原発を段階的に廃止すべき」17%
「わからない」17%

*ポーランド:211年3月22日のJETROワルシャワ事務所発の世論調査結果
「ポーランドは原発を建設すべきか」
はい65% いいえ30%
「居住地から100キロ以内に原発が建設される場合、賛成するか」
賛成39% どちらかと言えば賛成40% どちらかと言えば反対8% 反対6%

*スイス:2011年3月21日の共同通信が報道した20日付の「ル・マタン」紙掲載の世論調査(「47NEWS」による)
「将来的に国内の原発廃止を望む」87%
(2009年の調査では「原発は必要」73%)

◯アジア

*タイ:2011年3月17-18日にタイ国立開発行政研究院(NIDA)が全国で行った世論調査(「newsclip」による)
「原子力発電所導入に反対」72.7% 「賛成」16.2%
「東日本大震災のような災害にタイが対応できるか」
不可能62.4% 可能32.7%

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