厚顔・破廉恥な国会(参議院)

2011.04.09

*参議院では、3月31日に日本とヨルダンとの間の原子力平和利用協定を、賛成230票、反対11票の圧倒的多数で承認したことを、私のコラムへの反応として知らせてくださる読者がおられました。このような時になおこのような行動を取る国会(参議院)の厚顔さ、破廉恥さについては、すでに知っておられる方も少なくないとは思いますが、やはり記録しておくべきだと思うので取り上げます(4月9日記)。

1. メールのやりとりの内容

<読者のメール>

本日の福島原発のことから連想して、これも本日知ったばかりのことをお知らせいたします。既にご存じでしたらお許し下さい。
原発輸出政策法案が3月31日に参議院を通過したという目を疑うニュースです。
賛成票:230 反対票:11
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/177/177-0331-v013.htm
共同通信の記事
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011033101000806.html

 >報道から窺わざるを得ないのは、原発推進を前提としながら、世界的にその「安全強化の取り組み」について話し合う(つまり、原発依存という前提を外さない。)というのがその方向性であるということです。(注:私のコラムの記述です。)

まさにその通りのようです。
このところ、私は上関原発建設反対運動の末端におります。このような地球全体にも影響を及ぼすような巨大事故を起こした以上もう原発の新規建設は止めるだろうと思いましたが、それは私だけの甘い考えのようでした。
先月15日、中国電力への申入れがあり、それについていったのですが、中電側は「あらためて地元にご説明し、ご理解を得て工事を再開したい」という態度でした。恐ろしい原発事故だけでなく電力会社も、政府も、大半の国会議員も、原発を止める気がないという悪夢のような現実に目の眩む思いです。しかし、そういう流れのままにさせるわけにはいきませんので脱原発に向けて、仲間とともに力を尽くしたいと思っています。

<私の返信メール>

初めまして。お知らせいただいたことはまったく知りませんでした。しかし、想定内のことですので驚くことではありません。このような危機的状況というのに、本当に懲りない面々ばかりです。広島、長崎から何も学び取っていない人びとですから。
 福島で最悪な事態が発生しない限り何も学ばないし、しかし絶対に最悪な事態は回避しなければいけないわけですから、結局彼らは何も学ばないで終わるということになります。 すでに福島で避難指示の対象になって苦しんでいる人たち、「風評被害」なるもので生計が成り立たなくなっている農漁業者たちの筆舌に尽くせない苦しみなど、彼らにとってはなんでもないのでしょう。
 こういう人びとを国政の責任者として選んだ国民は、本当にいかに高い代価を払うことになるのかを真剣に学ばないといつまで経ってもこの国はよくならないし、ますます坂を転げ落ちていく運命を免れないと思います。

 今、「金大中自伝」を読んでいるのですが、彼が大統領として訪日した時の国会演説の中で、次のように述べたことを紹介しています。

「奇跡は、奇跡的に訪れるものではありません。韓国の民主化、特に憲政史上初の平和的政権交代は、韓国国民の血と汗によって実現した奇跡であります。わが国民と私は、このようにして手に入れた尊い民主主義を揺るぎなく守り抜く考えであります。」

「政権交代」という言葉は韓国と日本で同じですが、その意味する重みはまったく違います。日本では自民党から民主党への「無難な」政権交代に過ぎなかったですが、韓国では、それに先立つ軍事独裁政権に対する国民的な抵抗運動という蓄積・成果の上に実現した正に主権者・韓国国民の果断な選択としての「政権交代」だったわけです。私は、金大中を全面的に肯定するわけではありませんが、金大中を大統領に選ぶ決断を国民的総意として行った韓国におけるデモクラシーは本物であり、韓国は遙かに日本の先を行っていると思います。(ただし、李明博を大統領に選んでしまった韓国国民は、今後どう行動するのかが、韓国デモクラシーの命運を大きく左右するでしょう。)
 それに比べますと、日本は「仏(憲法)作って魂(人権・デモクラシー)入れず」のままだと嘆じるほかありません。
 とにかく、「非政治的市民の政治的行動」(丸山眞男)が今日ほど求められている時はないと思います。「西部住民の会」に集う皆さんはそういう自覚的市民の名に値する私が広島で見出したもっとも期待する人びとです。「奇跡は奇跡的に訪れるものではない」という金大中の発言は実に味がある名言だと思います。皆様のさらなるご活動に敬意と期待を寄せております。

2. 参議院における各党及び福島県を地盤とする議員の投票行動

読者の方が知らせてくださった参議院のサイトを開きますと、投票総数241、賛成票230、反対票11でしたが、各党議員一人一人の投票行動の内訳も示されています。それによりますと、以下のようになります。事実は時になによりも雄弁に物事の本質を示してくれますので、ここでも私の要らぬ解説は省きます。

<各党別投票行動>
民主党・新緑風会(106名):賛成票106、反対票0
自民党(83名):賛成票83,反対票0
公明党(19名):賛成票11,反対票0
みんなの党(11名):賛成票11,反対票0
日本共産党(6名):賛成票0、反対票6
立ち上がれ日本・新党改革(5名):賛成票5,反対票0
社会民主党・護憲連合(4名):賛成票0、反対票4
国民新党(3名):賛成票3,反対票0
無所属(5名):賛成票3,反対票1(糸数慶子。西岡議長は投票せず)

<県選出議員の投票行動>
 福島県、茨城県、栃木県(福島第一原発所在県及び農漁業に深刻な影響がすでに生じている2県)選出の参議院議員の投票行動は次のとおりになります。
  福島県: 岩城光英(自民)-賛成-
       金子恵美(民主)-賛成-
       増子輝彦(民主)-賛成-
       森雅子(自民党)-賛成-
  茨城県: 岡田広(自民)-賛成-
       郡司彰(民主)-賛成-
       長谷川大紋(自民党で当選後離党、無所属)-賛成-
藤田幸久(民主)-賛成-
  栃木県: 上野通子(自民)-賛成-
谷博之(民主)-賛成-

3.共同通信記事(3月31日付)

 読者の方が教えてくださった共同通信の記事の全文は次のとおりでしたす。
  以下の記事から見れば、衆議院でも圧倒的多数で可決されることは間違いないようですし、ヨルダンとの協定だけでなく、韓国、ベトナム、ロシアとの原子力協定も矢継ぎ早に国会承認の運びとなっているようです。

 参院は31日夕の本会議で、日本からヨルダンに原子力技術を供与するための原子力平和利用協定締結承認案件を、与党などの賛成多数で可決した。協定は参院先議。衆院でも近く可決、承認される。東京電力福島第1原発事故発生後、初の原子力協定承認となる。
 政府、与党は韓国、ベトナム、ロシアとの協定の早期承認も目指している。
 原子力協定は、日本企業が原発関連機材、核物質、原子力技術を他国に供与、移転する際の法的根拠。今回の協定案は、日本とヨルダン双方の原子力利用を平和目的に限定することなどを明記した。
 ヨルダンでは三菱重工業とフランスのアレバの企業連合がロシア、カナダ勢と受注を競っている。ヨルダン側の判断に、福島原発事故が影響する可能性もある。

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