前原外相の日中関係に関する発言と外相適格性

2010.10.23

*前原外相は、就任以来、外務省での定例記者会見などの場で日中関係に関して盛んに発言しています。共同通信北京電(10月22日付中国新聞掲載)によれば、中国外務省の胡正躍次官補が前原外相を名指しで批判するという異例な事態になっています。外相としてさまざまな外交問題に発言すること自体は当然なのですが、問題はその発言内容です。前原氏が外相就任以来10月19日までの日中関係に関する発言を収録してみました。
 私は、以下の四つの理由から、前原氏は外相としてきわめて問題があり、不適格であると断定しないわけにはいかないと思います。
① 9月の中国漁船「衝突」事件をきっかけとした日中関係の悪化が自らの国土交通相当時の発言(「東シナ海に領土問題は存在しない」(14日)、容疑者(船長)の処遇に関して「国内法に基づき粛々と対応する」(16日))に起因することに関してなんら責任を感じていないで、逆に正当化する発言を外相になってから繰り返していること(「2004年と今回の事件の大きな違いは、2004年は入管法違反であったが、今回は悪質な公務執行妨害ということで、明確な違いがある」と述べているが、日中関係を危険な状態に陥れてまで起訴するだけの本質的意味があるかというもっとも重要なモノサシからすれば、両事件の違いを強調するようなばかげた認識が出てくるはずがないことを分かっていない。このことは、前原外相が如何に日中関係の重要性を認識していないかを露呈している。)
② 外相という立場をわきまえているとは到底考えられない、中国をことさらに刺激する発言を公然と繰り返している(下記の強調部分を参照して下さい。)
③ 1978年の鄧小平の「棚上げ」発言に対して当時の日本政府は反駁しない形で黙認したことを無視して、それはまったく中国側の勝手な理解だと言わんばかりの発言をしているが、外交の継続性という基本ルールをまったく無視していることはきわめて重大な問題である
④ クリントン国務長官との会談において、尖閣問題に関する日米安保の適用について確認するという行動を取っているが、日中米間で軍事衝突の可能性をちらつかせるという感覚は、日米中間の戦争が如何に破滅的な結果をもたらすか、日中米間では如何なる問題にせよ軍事的な「解決」の余地はあり得ない、というもっとも基礎的かつ根本的なポイントすらをふまえていない
 中国側高官の発言は決して「けしからん」ものではなく、菅政権としては、日中関係を本当に戦略的に重視するのであれば、前原外相更迭を真剣に考えるべきだと思います(10月23日記)。

2010.10.19(外務省定例記者会見)

【産経新聞 高橋記者】尖閣問題についてお伺いしたいと思います。外交では、他の国に、この国は強く出れば引く国だと思われてしまえば、敗北だと私は思っているのですが、まさにこの尖閣問題というのは、それが問われている問題ではないかと思っています。大臣は、14日の凌雲会で尖閣問題について「国会議員は体を張って実効支配していく腹積もりを持ってもらいたい」と述べられたと聞いていますけれども、私は大賛成です。
【大臣】そんなことないです。産経にはやゆして書いてあった。
【産経新聞 高橋記者】やゆではなくて、ストレートの記事で書いたのですが、それは発言されているのですか。
【大臣】グループの会合での発言について、コメントをする立場にありません。
【産経新聞 高橋記者】では、そういう腹積もりは、大臣としてはおありなのでしょうか。 【大臣】コメントは差し控えます。
【産経新聞 高橋記者】つまり、日本の領有権を守るということについて、大臣の決意はどのように。
【大臣】お答えをするとなると、東シナ海には領有権問題は存在しませんし、尖閣諸島は日本の固有の領土でございます
【産経通信 高橋記者】それに関連ですけれども、中国で今、反日デモが頻発しておりまして、暴力的行為も伴っていることについては非常に遺憾なことだと思いますけれども、これについて、中国外務省は「日本の誤った行動への義憤は理解できる」という声明を出しています。これについて、大臣はどう受け止めていて、これは明らかに誤った認識ですから、日本政府としては抗議すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
【大臣】16日に四川省の成都、それから河南省鄭州市及び陝西省西安市におきまして、17日には四川省綿陽市において、また、18日には湖北省武漢市において抗議活動が行われたと承知しております。これらの抗議活動において、在留邦人及び日本人旅行業者に対する被害は確認されておりませんけれども、日系企業が経営するスーパーのガラスが割れるなどの被害が生じております。これを受けまして、在中国大使館及び在重慶総領事館から、中国側関係当局に対しまして、遺憾の意を伝えるとともに、邦人及び日系企業の安全確保を強く要請をいたしました。また、19日午前には、丹羽中国大使から楊潔チ外交部長に対しまして、同様の申し入れを行いまして、同部長からは安全確保に全力で努力するとの反応がございました。今般、一部に、破壊活動を伴う反日デモが行われたことは極めて遺憾であります。他方、日本政府としては双方の政府、国民ともに日中関係の大局に立って、冷静に対応することが重要であると考えております。
【NHK 稲田記者】デモに関連してお伺いしたいのですけれども、今回のデモは複数の日にちに渡って、しかも5中全の最中に行われたと。また、警察当局が止めに入ったにもかかわらず何日も続いているという状況ですけれども、このような状況を大臣として、どのように受け止めるのか。また、中国当局としては非常に難しい立場にあるとは思うのですけれども、どのようにとらえていると理解していらっしゃるでしょうか。
【大臣】中国外交部の報道官が「非理性的で法規に違反する行為には賛成しない」と談話を出されたと承知をしております。我々としても破壊活動というものは行われるべきではないし、中国政府も、そういう意味では、これに対して極めて憂慮していることだと思いますので、是非適切に対応していただきたいと思います。我々は、先ほど申し上げたように、日中関係の大局に立って、この問題をしっかりと解決していくことが大事だと、このように考えています。
【読売新聞 向井記者】大臣は先ほどの講演で「ASEANでの日中外相会談、もしくは日中首脳会談に向けて、外交ルートを通じ調整している」とおっしゃいました。今回のデモがそれら会談の調整に与える影響についてお教えください。
【大臣】ASEMにおきまして、菅総理と温家宝首相が会談をされて、そして日中関係の正常化に向けてお互い取組みをしていこうという合意がなされて、今、外交ルートで話し合いを進めているところでございまして、今回の中国におけるデモが、お互いが目標として進んでおりますハノイにおいての日中外相会談、また日中首脳会談に障害になっているという認識はございません。
【東京新聞 竹内記者】ハノイで(日中)外相会談が行われた場合、大臣は以前から尖閣の事案に関して、再発の防止策について中国側と協議しているとおっしゃっていますが、その辺の展望はいかがでしょうか。
【大臣】さまざまな事柄について話す内容があると思います。いずれにいたしましても、今、外交ルートでお互いの意見、主張、話し合う点をまとめている最中でございます。
【産経新聞 高橋記者】先ほど質問した中で、中国の外務省報道官が「日本の誤った行動への義憤は理解できる」ということに対する受け止めと、それに対して抗議は行っているのかということについてお答えがなかったので、改めてお伺いしたいと思います。
【大臣】理解はできません。それだけです。
【産経新聞 高橋記者】抗議はしないのですか。<
br /> 【大臣】自然発生的にインターネットを通じて呼びかけて集まったものです。ですから、破壊活動、そして邦人保護については、強く申し入れはしております。

2010.10.15(外務省定例記者会見)

【NHK 稲田記者】本日、齋木局長が帰国されてやっとご報告を受けられたと思いますけれども、今般、日中首脳会談に向けての取組みというものが非常に注目されていますが、大臣としては、日本政府として首脳会談実現に向けてどういった姿勢で臨むべきとお考えなのか。また、これまで再発防止策等いろいろ仰っていますが、仮にその大臣として、こういった状況もしくは条件が必要だというものがあれば、それも含めてお答えください。
【大臣】齋木アジア太平洋局長が北京に赴きまして、これは私(大臣)の指示でございますけれども、中国外交部のカウンターパートと話をしてまいりまして、本日、その報告を受けました。然るべき時期に日中外相会談、そして日中首脳会談というものができればという感触を向こうからも、こちらからも出したところでございます。しかしながら、こちらの基本的な原則、つまりは、再発防止を考える前提条件として、尖閣諸島は日本の固有の領土であり、東シナ海において領土問題は存在しないということについては、先方から、当然ながら異論が挟まれたという話を聞いております。しかし、ここは絶対に我々は譲れない点でございまして、この点が今後の議論でどうなっていくのかということであります。
 他方で、今後、戦略的互恵関係を経済面などでもしっかりと、あるいは人的交流面でもしっかりと強化をしていくということは、これはお互いの利益になるという大所高所での合意はできたということでございますので、今後、事務レベルで議論を積み重ねていってもらえればと思っております。
 私(大臣)からは、あまり時期は焦らなくていいということは言っております。こちらの立場をしっかりと主張して、時期は焦らなくていいということは指示をしております。 【NHK 稲田記者】その領土問題について「当然、向こうから異論が挟まれた」ということでしたが、そこについて両国間で合意がなされないとできないという認識なのか、そこはどうなのでしょうか。 【大臣】我々は1ミリとも譲る気持ちはありませんし、これを譲れば主権国家の体をなさないということであります。したがって、この点については我々は絶対に譲らないということでございまして、その点を向こうがどう踏まえて対応してくるのかということだと思います。
【朝日新聞 山口記者】今の質問とも重複するのですが、今、前原大臣が仰った「日本の立場として譲れないものがある。齋木局長が言って異論を挟まれた」というご説明が今ありましたけれども、異論を挟んでくる限り日中首脳会談でどうまとまるかということではなくて、異論を挟む限り外相会談も首脳会談も開くこともなかなか難しいというご認識なのか、それとも、開いて話し合った上でまた異論が出てくれば、何もまとまりませんという状況なのか、そこら辺の大臣のご認識を改めてお聞かせください。
【大臣】今までは、1978年の鄧小平さんが棚上げをしようということで、向こうは棚上げをしてきたという認識なのかもしれません。我々は、歴史的に見ても日本の固有の領土であって、中国が支配をしたことは一度もないという立場で、領有権問題は存在しないという姿勢は全く変わりません。しかし、我々はそれを言い続けます。言い続けた上で、私(大臣)は日中外相会談や日中首脳会談が行えることも可能性としては大いにあると思っています。我々の立場は不変であるということです。しかし、その上で日中外相会談や日中首脳会談が開かれるという可能性もあると思っています。
【時事通信 吉岡記者】先ほどのお話の中で、他方で戦略的互恵関係を強化することはお互いのためになるという大所高所の合意はできたというお話がありました。ただ、この合意自体は先般、温家宝首相と菅総理がお会いになったときもこういう趣旨のことを意見交換されたと、今回、事務方が行かれて、率直なところ進展は、つまり今後会談を開く、あるいは関係を良好なものにするということにおいて、進展はあったというようなご認識でしょうか。それとも、そういうわけではないというご認識なのでしょうか。
【大臣】全く進展がなかったわけではありません。例えば、向こうから一方的に中止を言ってきた上海万博の日本人の青少年の1,000人、これについてはしっかりと受け入れをするということでありますし、そういう意味では、またレアアースの問題については、向こうは、我々の認識と違う、そういった指示は出していない。これはちょっと事実関係が違いますので詰めなくてはいけませんけれども、個別の問題についても議論したということでございまして、私(大臣)の認識は、ボールは向こう側にあるということであります。
【日経ビジネス 森記者】中国との関係において、ASEANの諸国との協力についてお伺いします。
 さきのASEAN拡大国防相会議ではなかなか足並みがそろわないところもあったようなのですが、今後のASEAN+3、もしくは東アジアサミットに関して展望と方針をお聞かせください。
【大臣】この記者会見の場でも申し上げたかもしれませんし、国会の答弁でもお話をした記憶がございますけれども、果たしてみんなで明示的に、殊更中国というものを念頭に置いて、海洋を守るために一致協力しようということが賢明かどうかということはあると、私(大臣)は思います。答えは以上です。

2010.10.12(外務省定例記者会見)

【AFP通信 長谷川記者】日中関係についてお尋ねします。先ほど官房長官が10月の日中首脳会談に向けて環境は整いつつあると仰られたようですけれども、前原大臣ご自身としてのお考え、それとフジタの社員で最後まで残られていた高橋さんがお戻りになられましたけれども、高橋さんからの情報で、何か新しいことがあれば、教えていただければと思います。
【大臣】先般のブリュッセルで行われましたASEMの場で、菅総理と温家宝首相との間で、ハイレベルの交流を再開していくための、お互いの努力をしていこうという確認がございまして、それを受けて、外交ルートでも、今、中国ともさまざまな話をしているところでございます。
 一方で大事なことは、日本側の原則というものをしっかり守ることが、私(大臣)は大事だと思っておりまして、東シナ海における領有権問題はそもそも存在しないと、そして同時に、尖閣諸島は一貫して日本の固有の領土であって、今後も日本が実効支配をしていくと、こういうことが大前提になろうかと思っております。
 そういう意味において、我々、さまざまな国際会議がございます。中国の首脳も来られれば、日本の首脳も参加をするということで、今まで日中間、あるいは日中を含めたマルチの首脳会議というものが行われていたということは存じ上げているわけでありますけれども、そういう原則をしっかり守ったままで、どれだけ日中間で話し合いがまとまっていくかということについて、今、予断をもって、私(大臣)は見通しを持っているわけではございません。あくまでもASEMでの日中両国首脳の合意に基づいて、しかし、日本の原則はしっかり守りながら外交ルートでの話し合いを進めていきたいと考えております。

2010.10.8(外務省定例記者会見)

【毎日新聞 西岡記者】北澤防衛大臣が今朝、ベトナムでの開催を検討しております日中防衛相会談について、外務省が日程調整を指示する公電を北京の日本大使館に送らなかったため、中国との調整がされなかったと指摘されて、強い不快感を示しておりました。これに関する事実関係の詳細並びに外務省側に何らかの落ち度があったのかどうか。大臣のご所見をお願いします。
【大臣】日中関係がご承知のとおりの状況でございましたので、先方からも閣僚級の交流は停止をするという話がございまして、政府全体でそういった交流については慎重に取り扱っていたということでございます。
 ご指摘の点ももちろんございましたけれども、これは防衛大臣会合というだけではなくて、すべての首脳レベルの交流について、我々としてはそういった情勢をかんがみて保留をしていたということでございます。しかし、ASEMにおける菅総理と温家宝首相の間でのハイレベル協議の交流再開という方向性が確認されましたので、我々としてはそれを受けて、今まで凍結をしていたもの、保留をしていたものを再開し始めているということでございます。事務的な遅れがあって不快感を与えたのなら、それについては申し訳ない。単なるそういった手続の問題であった。他意は全くないということであります。
【朝日新聞 山尾記者】その保留は、大臣のご指示でされたものなのでしょうか。
【大臣】正直言いまして、閣僚級の交流を停止するということを受けて、また我々からもそういったものについての申し入れというものはすべきではないということを受けて止まっていたものでございます。
【朝日新聞 山尾記者】大臣のご指示ですか。
【大臣】明確な指示を出したかどうかについては覚えておりませんが、当然ながらそういう状況になって省全体として判断をしていたということであります。
【東京新聞 竹内記者】関連しまして、北澤大臣は昨日ですか、前原大臣に直接電話なさって確認したところ、その段階で前原大臣の方でその辺の事実経過を把握されていなかったと説明されていまして、それで直接。
【大臣】いや、把握していなかったのではなくて、その個別のことについてまで知らなかったということであります。
【東京新聞 竹内記者】それは事実関係としてそうだということですか。
【大臣】はい。これについては、そんな大きな話なのでしょうか。
【朝日新聞 小村田記者】この問題をどういうふうにとらえるのかというのは人によっていろいろあるとは思うのですが、昨日の夜になって北澤大臣が把握したというのも普通だとちょっと変な感じだなというのがあって、もうちょっと早く防衛省と外務省の間で、こういう状況なのですから今回はこうですよという連絡があってもおかしくないのではないのかなと思うのですけれども、その辺の政権内の情報交換といいますか、有機的なつながりというものが欠けているような気がするのですけれども、どう思われますか。
【大臣】コメントは差し控えたいと思います。これから直していきますので。
  もっと前向きな話をしましょう。
【朝日新聞 山口記者】大臣が前向きでないとおっしゃったことでもあるのですけれども、確認を改めてしたいのですけれども、北澤防衛大臣が(連絡して)欲しいとおっしゃったタイミングで、残念ながら日中のことも考えて、大臣が指示したわけでもなくて、事務方が忖度したという表現がふさわしいかわかりませんけれども、(連絡して)欲しいと思ったタイミングで出せなかった、届かなかったという事実は、そのとおりという認識でよろしいのでしょうか。
【大臣】詳しいことは、私(大臣)も調べてみないとわかりませんけれども、一方的に中国側から首脳レベルの、閣僚レベルの交流の停止ということを言ってきて、我々としてもそれを求める環境ではないということで、すべてそういうものは止まっていたという認識でありますけれども、ASEMにおいて、菅総理と温家宝首相が会われて、ハイレベルの協議を再開させようというお話の中で滞っていた事務的な手続を始めて、それが時間的なところで時間がかかっていたと、そして、それについていろんなご意見があるということであれば、それについては、誠に申し訳ないという思いでございます。
 ただ、北澤大臣も閣僚の1人でございますし、日中間の置かれていた状況というのはおわかりだと思いますので、それについてはご理解をいただきたいと思います。
【産経新聞 酒井記者】中国漁船の衝突のビデオですが、大臣は、それは故意の衝突が明らかであり悪質であるとおっしゃっていて、公開に前向きではないかと忖度しているのですが、政府与党の中ではこれを慎重にやるべきだという声があります。今現在の大臣のお考えは如何でしょうか。
【大臣】先般、官房長官と馬淵国土交通大臣、柳田法務大臣と、それから私(大臣)と官房副長官二人が集まって話をいたしまして、国会の対応も含めて、どのように取り扱うかということについては、仙谷官房長官に国会の対応というものを一任したということです。それについてどのようにするかということ は、捜査当局の方で刑事訴訟法47条に基づいてどう判断するかということがあると思いますので、国会との関係で官房長官がどう判断をされるか、あるいは国会からどういうご要望がくるのかということもあるでしょうし、それを最終的には法務大臣と相談をされることになるのではないかと思います。意見が求められればその時点で私(大臣)の意見を申し上げようとは思っております。
【産経新聞 酒井記者】現時点では、大臣のお考えはこの場では明確にはおっしゃりにくいということでしょうか。
【大臣】おっしゃりにくいというか、その場の話では私(大臣)は自分の考え方を申し上げました。私の考え方をここで一つずつ国交大臣はこうでした、法務大臣はこうでしたと言っても意味がないわけです。内閣としてどう対応するかということですから、国会が、特に予算委員会の場で理事会預かりになっているテーマでありますので、国会対応を含めて官房長官に対応を任しているということでありまして、国会との関係でどのようなものにするかということは、最終的には捜査当局である検察との話し合いになってくると思います。

2010.10.5(外務省定例記者会見)

【毎日新聞 西岡記者】今回、ブリュッセルで日中首脳会談が開かれて改めて戦略的互恵関係の進展が確認されました。この会談に対する大臣の評価並びにこじれた対中関係の修復には何が必要と考えられるのか、ご所見をお願いします。
【大臣】今朝、6時台だったと思いますけれども、福山官房副長官及び菅総理大臣から電話がございまして、日中の首脳会談、会談というか立ち話といいますか、ソファーに座ったという話でございましたけれども、25分ぐらい話し合いを行ったという報告をいただきました。
 これの中で、もう一度、日中間の戦略的互恵関係というものをしっかりと確認して、そして関係改善のためのハイレベルでの協議を行うということでございまして、政府専用機内からの電話でございましたので、余り長い話はございませんでしたけれども、帰られてきてから、また公邸で今後の在り方について話をしようということでございました。
 いずれにしても、首脳レベルで話をされて、そういった糸口を目に見える形で得られたということは、よかったのではないと思います。我々は外交レベルで、今までいろいろな取組みをしてきていますけれども、総理のこういった首脳会談を受けて、また総理からのご指示も受けて、具体的に外交ルートで今後どう動いていくかは外務省で決めていきたいと考えております。
【フリーランス 岩上氏】関連して、日中関係についてご質問させていただきます。2日だと思いますが、枝野幹事長代理がさいたま市内の講演で中国に対する厳しい認識を表明したと。それについて、お考えを確認するために、昨日、岡田幹事長にご質問させていただきましたが、幹事長も大変厳しい認識を示しまして、法治主義の国家ではないという言葉をそのままオーソライズするようなことをおっしゃいましたし、また、ここが重要だと思いますけれども、経済関係、経済的なパートナーシップを築く企業に対して、それは企業の判断であるということで、国家として、それは法治主義でない国と経済関係を保つというのはいかがなものか的な、非常に今までおっしゃっていた経済関係を深めるという話から少しずれているような、変わってきたようなことを仰いました。
この点、当政府として、どのようなお考えでいるのか。これから日中関係、とりわけ経済関係はどうなっていくのか。もう一度ご確認させてください。 【大臣】岡田幹事長、また、枝野幹事長代理のご発言について、すべて詳細に私(大臣)はフォローしておりませんので、それを受けての発言にはなりませんけれども、私(大臣)は日中両国というのは隣国として、これからもやはり経済活動も含めた戦略的な互恵関係をより深めていかなくてはいけないという認識に立っております。  今年で恐らく中国のGDPは日本を抜いて世界第2位になるということでありますが、ということは、世界2位の経済大国が協力をし合うということは、両国間のみならず他の地域への効果も含めて極めて大事だと思っております。そういう意味では、お互いが冷静に対応して、そして、さらなる協力関係を強めていくということは私(大臣)は大事なことではないかと思っております。
 一方で、今回の我が国の当然の主張に対して過剰とも言える反応が幾つかあったわけでありますけれども、これについて当方では確認を求めていることもございます。例えばレアアースについては本日、大畠経済産業大臣が記者会見で発表されましたように、いまだにこの輸出が再開をされていないものも見受けられるということでございます。これは経産大臣が公表されたことで、経済産業省が調査をされたことでございますけれども、レアアースを取り扱う31社全社から中国からの輸出に支障が生じている旨の報告があり、一部輸出許可申請が受け付けられた、改善が見られたとの情報はあるが、実態上輸出が再開されたと判断できる状況には至っていないということであります。その他の品目について、424社の回答企業中124社242件から遅延等が出ており、そのうち少数、8件ではあるが遅延が解消した。つまり遅延が解消したのは少数であって、いまだかなり大部分は遅延が生じているということであります。
 これについて、我々は外交ルートを通じて遅延の解消を求めておりますし、仮にこれは国が何らかの間に入っているということになればWTO違反になるわけでございまして、そういう意味では言うべきことはしっかり言うということが大事だと思いますし、また今回の事案のようなことで経済的な活動というものが妨げられるようなことがあってはいけないと、このように思っております。
 しかし、経済活動は企業が行われることであり、さまざまな観点を考慮して経済活動をやっていくということが企業においては求められていると思っておりますので、その点は今回の事案もしっかりと留意して、企業は自らの責任で経済活動をしっかりやっていただきたいと思います。
 しかし、元に戻りますけれども、中長期的な観点からすれば、しっかりと戦略的な互恵関係を進めていかなければいけないと思っておりますし、我々としては再発防止というものも含めた門戸は常に、私どもの方から開けているということは、中国にも申し上げたいと思います。
【朝日新聞 山口記者】今回の日中会談ですけれども、会議が終わった後(会談が)行われたという話ですけれども、日本側もしくは中国側から事前にもし機会があればやりましょうか、もしくはやりませんかという働きかけがどちらからか、もしくは両方からあったのかどうかの確認と、もしそうではない偶発的なものだったとすると、これは菅首相、もしくは温家宝首相に直接聞かないとわからないのかもしれませんけれども、会議が終わった後お二人が目を合わせるか、顔を合わせるかの雰囲気の中で、どうして会談を、お話しをしましょうかという雰囲気になったと前原大臣のお立場で推察、拝察されるか、大臣のお考えをお聞かせください。
【大臣】外交関係というのは、さまざまなチャンネルで行っていることでございますし、今回どのような形で行われたかということについては、これは我々の外交に関わることでございますので、コメントは差し控えたいと思います。
【産経新聞 酒井記者】会談ですが、尖閣諸島について、温家宝首相は「自国の領土である」ということを主張したようで、菅首相は「領土問題は存在しない」という主張で平行線だったようなのですが、相変わらずそういう主張をする中国に対して、大臣の認識はいかがでしょうか。
【大臣】事あるごとに申し上げておりますけれども、歴史的に見ても、尖閣諸島は我が国固有の領土であり、中国が領有権を主張し始めたのは資源があるのではないかとわかり始めた1971年であります。東シナ海には領土問題は存在しないというのが、我が国の一貫した立場でございます。
【NHK 奈良記者】先ほどのFCCJの講演の中でも、日中の戦略的互恵関係の再構築に向けて取り組んでいきたいと大臣はおっしゃっていました。これまでの日中関係というのは、尖閣の問題を受けて、若干このような状況になって、半ばフラジャイルなところもあったと思うのですけれども、より進化させる、もしくは重層的にしていくために、何かこういうことをやっていきたいという大臣のイメージはどういったことをお持ちなのか。また、再発防止、もしくは何らかの合意が必要だという発言もありましたけれども、どういった形で合意なりを中国と形成できるとお考えでしょうか。
【大臣】ステップ・バイ・ステップで物事というのは進めていかなければいけませんし、外交の原則というのは、我が方の立場はしっかりと伝えて、その上で一致点を見出していくということだと思いますので、そういう意味では余りあせらずに、しっかりと話をする中で、お互いの合意点を一つずつ確認をしていくということが大事なことではないかと考えております。
【西日本新聞 斎田記者】尖閣諸島の、いわゆる領有権に絡む問題で、菅総理もベトナムの首脳会談をやられましたが、南シナ海で同じように中国と領有権を持つ国々との連携については、いかがお考えでしょうか。
【大臣】ASEANの国々、あるいは他のアジアの国々とは、さまざまな形で連携を取ってまいっておりますし、大変重要な国々がたくさんございます。さまざまなテーマについて、より連携を強めていきたいと考えております。
【世界日報 山本記者】本日の日本外国特派員協会(FCCJ)でのご講演でも、尖閣諸島についての歴史的経緯をご説明になりましたし、また、本日の会見でも日中間で、その部分については平行線のままだということなのですが、これはもう少し外務省の方としても、その歴史的な経緯を詳しく啓蒙される必要があるのではないかと思います。WEBサイトには、簡単に概略は説明してあるのですが、外務省で1972年にお作りになった「尖閣諸島について」という PDF版ですが、この外務省情報文化局がお出しになったもの、これは非常に内容が詳しくて、大臣がご説明になった地図の内容についてもそのまま出ておりますし、あと、古賀ファミリーという方々がそこでいろいろな漁業を営まれたというような非常に具体的な内容も出ていますので、これを外務省のWEBに載せられるお考えはおありかどうかお聞きしたいと思います。
【大臣】大変よいアドバイスでございますので、さっそく考えてみたいと思います。しっかりと日本の立場を詳しく説明することは大事でございますし、先般、国会での議論を受けて、中国語についてもアップをしているところでございまして、より詳しくということで非常に建設的なご提案だと思いますので、前向きに考えさせていただきたいと思います。
【時事通信 西岡記者】大臣が最近の講演等で繰り返しおっしゃっている「門戸を開いている」ということについてですが、これは、再発防止策について具体的に何か中国側にすでに提案していて、そのレスポンスについて待っているということなのか、それとも、向こうから何か提案があることを待っているということなのか、その具体的なところをお聞かせ願いたいのですが。
【大臣】様々な外交ルートでやり取りをしておりますので、詳細にあたっては、述べることは差し控えたいと思います。

2010.10.5 日本外国特派員教会での講演(概要)

最後に日中関係について話をさせていただく。今回の尖閣諸島での事案について、少し歴史的な背景を、皆さん方に申し上げたい。
 1885年頃に、尖閣諸島について他の国が統治をしている形跡がないことを確認し、10年くらいかけて調査をした結果、1895年1月14日に閣議決定で、日本国への尖閣諸島の編入を行った。日本は、第二次世界大戦敗戦後、サンフランシスコ条約を締結したが、同条約第2条には、台湾と澎湖列島については、これを放棄すると書いてある。同条約第3条には、沖縄についての記述があるが、この3条によって沖縄は、アメリカの統治下に置かれ、その中に尖閣諸島も含まれることになり、その後1972年に尖閣諸島も含む沖縄が日本に返還された。
 中国やあるいは台湾がその時点までに、尖閣諸島の領有権を主張したことはなかった。それどころか、1953年の人民日報の記事には、「琉球の尖閣諸島」という記事がある。そこでは、「中国の」という言い方をしていない。1960年に公表された中国の地図においては、尖閣諸島は中国の中に含まれていない。これは中国が作った地図での話である。
 この海域に海底資源、石油や天然ガスがあるのではないかといわれた時から、中国は領有権を主張するようになった。今の中国政府が正式に尖閣諸島を中国の領有権が存在すると主張したのは1971年になってからである。
 今回の事案が起きたときは、私は海上保安庁を所管する国土交通大臣であったが、今までの事案とは異なる、極めて悪質な事案であった。
 尖閣の周辺というのは、良好な漁場でもあり、中国、台湾の漁船がかなり頻繁に操業している。私自身も過去3回、海上保安庁の固定翼機にのり、尖閣上空を視察したことがあるが、領海に入ってきそうな中国や台湾の漁船を海上保安庁の船が追い払うということは、日常茶飯事のようにやっている。必要に応じて立ち入り検査も行っており、今年だけでも10件以上の立ち入り検査を行ったとの報告も受けている。
 しかし、ある漁船が今回は、海保の船に対して体当たりをしてきたという極めて悪質なケースであったために逮捕をした。今申し上げたように、尖閣諸島は日本固有の領土であり、他国が今まで一切実効支配をしたことがない、日本固有の領土である。東シナ海においては、領土問題は存在しない。しかし、今後のことを考えれば、日中間で知恵を出して、再発防止に関する何らかの合意を得ることは、私は必要だと思う。我々が門戸を閉ざすことはない。いつでも交渉のドアは開いている。
 今回、ASEMの場で、菅総理と温家宝首相が25分程度会談をされたと報告を受けている。菅総理はその場で、日本の尖閣諸島に関する立場を明確におっしゃりながら、戦略的互恵関係のためにハイレベルの協議を行おうと呼びかけられたことについて、私は大変よかったのではないかと思っている。温家宝首相も同様の話をされているようだし、今までも様々な外交ルートで話はしているが、今後総理が帰国され、話を具体的に伺う中で、両国間の戦略的互恵関係を再構築するためにも、外務大臣として努力していきたいと思っている。以上で私からの話を終わりたい。

(質疑)

【記者】 中国問題に関し、今次の尖閣諸島におけるような事案は今後も起こる可能性が高いと思うが,日本はこのような状況に対しどのような用意を行っているか。日米は同盟関係を踏まえどのように対応していくのか。
【大臣】 先程述べたとおり、尖閣諸島は日本の固有の領土であり、東シナ海に領土問題は存在しない。従って、今回のような悪質な事案が再び起これば、国内法に基づいて対応するということになると思う。他方で、先程述べたとおり両国間で再発防止策をしっかり議論し合意することも有益だと思う。なお、この問題が起きたからということではなく、東アジア、日本を取り巻く戦略環境をしっかりと勘案をして、日本の主権を守るための日本独自の努力と、同盟国である米国との連携は極めて重要であり、その点を将来を見据えて努力を怠らないことが大事なことであることも申し上げておきたい。
【記者】 将来、外国政府が武力で尖閣諸島の主権を侵した場合、日本は日本国民を犠牲にして、日本国民の血を流しても守る用意はあるのか。
【大臣】 尖閣の問題に限らず、日本の主権を脅かす問題が起これば、日本は法治国家であり、防衛出動を含めた法律もあるので、その時の内閣において対応を決めるということになると思う。
【記者】 尖閣事案に関連し、東シナ海において中国は強気に領有権を主張しているがこの理解は正しいか。また日本は周辺諸国と協調して、この問題に取り組む考えを有しているか。
【大臣】 先ほど来申し上げているように、東シナ海に領土問題は存在しない。しかし、再発防止策というものをしっかりと中国と話し合うために、我々はいつも門戸を開 いている。同時にASEANの国々とは色々な関係で協力を強めており、今後も様々な協力を行っていこうと思っている。
【記者】 日米外相会談において、尖閣問題は日米安保条約第5条に含まれるとのクリントン国務長官の発言があったと聞いている。しかし中国が尖閣について考えを変える兆しは全くないように思われる。一部の民主党・野党から尖閣の周辺で日米合同軍事演習を行ったらどうかという提案もあったが、大臣はこうした提案を支持されるか。特に、米国に対して言葉だけでなく行動で示すことも重要ではないか。
【大臣】 現在、第7艦隊の空母はジョージ・ワシントンだが、キティホークの頃に何度か日米合同演習の視察をしたことがある。私が厚木から艦載機に乗って到着した時のキティホークがいた場所は日本海だった。今後もどの海域ということではなくて、日米の防衛協力を実効あらしめるために、様々な形で共同演習は行われていくと思うし、それは極めて重要なことだと考える。
【記者】 2004年と2010年の尖閣をめぐる事件の違いは何か。また、今回の問題について政府内でどのような話し合いが行われたか。
【大臣】 2004年と今回の事件の大きな違いは、2004年は入管法違反であったが、今回は悪質な公務執行妨害ということで、明確な違いがある。船長の逮捕に対して、当然様々なリアクションが中国からあったが、当然ながら我々は様々なシュミレーションを政府部内で考えている。詳細については差し控えさせていただきたい。

2010.10.1(外務省定例記者会見)

【フリーランス 岩上氏】大臣は訪米されている期間の間に、クリントン国務長官とお話になって、クリントン長官から尖閣が日米安保の適用対象になる という言葉を聞いたと伝わっておりますけれども、今のところ、クリントン長官の言葉が他のどこかで出たという話は確認されていないという話が出ております。なので、これは確認ですけれども、どのような機会にどのような言葉でどのようにクリントン長官が仰ったのか。もう一度詳しくお話を伺いたいなと思いますけれども、よろしくお願いします。
【大臣】ご質問の意図は。私(大臣)は何度もお答えしておりますね。
【フリーランス 岩上氏】申し訳ありません。外遊で随行(していないので)。
【大臣】わかっていますが、要は私(大臣)からはこういう会談の内容であったと。クリントン長官からはこういう発言があったということは何度も申し上げているはずだと思いますし、もし確認をされたければ、米国の方に確認をされた方が意図としては通ずるのではないでしょうか。
【フリーランス 岩上氏】申し訳ありません。インターネット等もあります。国民にダイレクトに今、大臣のお言葉をお伝えできる貴重な機会でもあります。ですから、外遊先で随行の記者団に語ったお言葉と、ダイレクトに今インターネットでご説明を直接するいい機会ですので、改めてどのような経緯であったのか。この点について、もう一度お話を伺いたいという趣旨であります。よろしくお願いいたします。
【大臣】私(大臣)とクリントン国務長官との話をする前に、米国の政府高官から尖閣に関わる日米安保第5条の適用範囲について、明確にコミットメントする発言をしているということですので、是非それについて確認をさせていただきたいと思いまして、私(大臣)の方から会談で取り上げさせていただきました。まず私(大臣)から取り上げたのは、「米政府高官がこの尖閣問題に関して日米安保条約第5条の適用範囲であるということを仰っていることに敬意を表する」ということを私(大臣)が申し上げたところ、クリントン国務長官から、「領有権について我々はコメントはしない。しかし、尖閣は日本の施政下であり、日本の施政下に対して安保条約第5条が適用される」と。すなわち、尖閣列島は安保第5条の適用範囲であるということをクリントン長官が述べられたということでございます。
【フリーランス 岩上氏】その際に、日米安保の対象であるということと、05年に締結された日米同盟に基づけば、島しょ部というものは第一義的に自衛隊が守ると。米軍は必ずしも出動するわけではない。これは今年の5月11日に岡田前大臣に確認したところ、やはり大臣もそのように仰っておられました。 改めて、この安保の対象であるということと日米同盟での取極め。それに基づいて、現実に尖閣が危機にさらされたときに自衛隊、米軍はどのように出動していくのかということについて、大臣のご見解をお聞かせいただくとともに、クリントン長官とそういうお話が出たかどうか、この点も確認をさせてください。
【大臣】多岐にわたるお話をいたしましたので、その問題だけ詳細にわたって更に議論を深めたということはございません。一方で今、仰ったことについて申し上げれば、島しょ部に限らず、日本に関する有事が発生したときには、まず日本の自前の組織で対応するというのは当たり前のことでありますし、いきなり警察も海保も自衛隊もなく、米国に第5条だから頼むよという話にはならないわけでありまして、基本的に日本に対する何らかの攻撃が仮にあった場合については、一義的に自衛隊が対応するというのは当然のことだと思っております。
 なお、私(大臣)も野党のときに一連の有事法制というものをまとめましたけれども、これについては当然ながら、日本有事における日米の防衛協力というものについて当然ながら、それから具体的な作業で取極めがされていると思っておりまして、そういう意味においては有事法制ができて、平時、周辺事態、日本有事、こういったものに対する具体的な協力というものについての議論が行われているということでございます。
【共同通信 出口記者】中国のフジタの3人の方が戻って来られた件に関連してですけれども、率直な受け止めをまずお願いしたいのと、今後の日中関係の原状回復に向けて、北沢防衛大臣が12日に開かれるASEANの拡大国防相会議で、日中の国防省会談を模索しているという話がありますが、前原さんご自身もいつかのタイミングで外相会談を考えておられ、もしくは先方に打診するお考えなどはありますでしょうか。 【大臣】昨日、フジタの4名のうち3人が釈放されたということでございますが、ただ、1名の方が、まだ、いわゆる住居監視に置かれているということでございますので、昨日、丹羽大使からもうひと方の安全確保、そして領事面会の継続的な実施、そして円満、かつ早期の解決というものを申し入れたところでございますし、また、現地での石家荘空港を見送った会員からも、河北省の外事弁公室関係者に、同様の申し入れを昨日行ったところでございまして、とにかくもうひと方、いわゆる住居監視なるものが行われているということについて、大変我々は心配をしておりますし、そのことの解決をしっかり我々も強く中国側に申し入れを続けていきたいと考えております。
 日中間の対話でありますけれども、我々はいつもオープンであります。いつでも対話をする用意がございます。したがって、そういった機会をとらえて、いつでもやる用意はございますけれども、我々の原則を曲げることはない。東シナ海において領土問題は存在しないし、そして尖閣は我が国固有の領土であり、同様の事案が起きれば我々は国内法にのっとって対応していくということを、やはりしっかりと明確にした上でオープンであるということを申し上げなければいけません。
 と同時に、やはり再発防止策についてお互いが知恵を出すことも必要だと思っておりまして、そういうことを含めて冷静な状況で話ができる環境であれば、我々はいつもオープンであるということでございます。
【週刊金曜日 伊田記者】再発防止策について知恵を出すと言われたのですけれども、具体的なお考えがあるかどうかお聞かせください。それは、例えば北方四島における漁船の安全操業のようなことが念頭にあってのご発言なのでしょうか。
【大臣】具体的に固まったものはございません。イメージでありますけれども、それは交渉事でございますので、詳しく申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
【ニコニコ動画 七尾記者】今と関連してですが、今回の事件で悪化しました日中関係の早期改善を念頭に置いた場合、今、国会等で国民も関心のあります海上保安庁が撮影したビデオの公開というのは、なかなか結び付かないのですが、この点において大臣のお考えはいかがでしょうか。
【大臣】今朝、官房長官の部屋で私(大臣)と馬淵国交大臣と柳田法務大臣と官房副長官3名、合計7名が集まって、それについての話をいたしました。
 これについては、予算委員会で昨日の集中審議で、資料要求がございました。これについては、衆議院の予算委員会での理事会預かりとなっていると聞いておりますし、その理事会が何らかの決定をされて政府に要請があれば、刑事訴訟法の47条に基づいてどう判断を、私(大臣)は一義的には法務省がなされるこになろうかと思っております。
【日経ビジネス 森記者】関連の質問ですが、日中間の交渉を今後ASEANの諸国も協調して南シナ海の問題も含めて、マルチの交渉にする可能性はありますか。
【大臣】ASEANの国々との様々な形の連携というものは、これからさらに強化をしてきたいと思っております。またそういった多国間だけではなくて、二国間の関係もいろいろ協議をし、強化をしていきたいと考えております。いずれにいたしましても、経済活動、あるいはお互いの主権に関わる問題、そういった問題にも連携をさらに強めていかなければいけないと思っております。

2010.9.28(外務省定例記者会見)

【フリーランス 岩上氏】先ほど法務大臣の記者会見がありまして、そちらへ参っていたのですけれども、こちらで大臣が今回の中国漁船の拿捕の件、そして中国漁船の船長の釈放の件などに関して、記者の質問に答えて、ご説明がありました。その中で、那覇地検は拿捕、逮捕した後、これを釈放するかどうかの判断に際して外務省から説明を受けて、外交的な観点からも考えて釈放をしたというようなお話がありました。この件について、外務省はどのような説明をされ たのか。
また、この判断というものは、検察だけの単独の判断と今まで説明されていますけれども、外務省がどのように影響を与え、政府として、どのような意思を実際には下したのか、あるいは伝えたのかということについて、もう少しご説明願えないでしょうか。
【大臣】検察の要請に応じて、外務省の職員が説明をしたということは事実でございます。ただ、私(大臣)が報告を受けておりますのは、尖閣の歴史的な経緯、今回の事案に関わる、例えば中国側の一連の動き、そういった事実関係を話をしてきたということでございまして、例えば日中関係全般に関わる今後の在り方とか、そういうことではなくて、現在どのような反応を中国が示しているかということも含め、説明をしてきたと聞いておりますので、私(大臣)はそれを踏まえて、検察が判断をされたものだと認識をしております。
【フリーランス 岩上氏】この事件が起きたとき、大臣はまだ国交大臣でいらっしゃったと。その際に一報は受けて耳に入っていらっしゃると承っておりますけれども、その時点で拿捕すべきである、または見逃すというような手も対処の仕方としてはあったかもしれません。しかし、これは断固拿捕するべきであるというような判断を大臣自身がお下しになったというような情報といいますか、推測といいますか、漏れ伝わっているのですけれども、この点に関していかがだったのか、大臣自身の口からご説明願えないでしょうか。
【大臣】この事案が起きたときは、海上保安庁を所管する国土交通大臣でございました。海上保安庁からこの事案について説明があったとき、ビデオも私 (大臣)は見ました。その前からこの海域においては、いい漁場でもあり、中国の漁船、あるいは台湾の漁船がかなり操業しておりまして、領海内に入ってくることもしばしばあるということであります。私(大臣)も国会議員になってから3回ほど海上保安庁の固定翼機で上空を視察いたしましたけれども、そのときは 3回とも非常にいいお天気でありましたけれども、海保の船が漁船を追い出しているという活動を見ることがございました。ですから、日常茶飯事としてこの漁場に中国や台湾の漁船がやってきて操業を行っているということでありましたし、正確な数字は覚えておりませんけれども、今年に入ってからも10回以上は立入検査を行っているということでございます。ただ、今回の事案につきましては、ビデオを見る限り、中国の漁船が海上保安庁の巡視艇に当たってきている。しかもそれは故意である可能性が極めて高いというような状況の中で、公務執行妨害という判断を現場が行ったということでございまして、今までにない悪質な事案であるということの中で総合的な判断が加えられたということでございます。
【フリーランス 岩上氏】大臣ご自身はその決定に加わったのでしょうか。
【大臣】最終的には逮捕権があるのは海上保安庁でありまして、国土交通大臣は、逮捕権はありません。所管の大臣であるということでありますけれども、私(大臣)がビデオを見る限りにおいては、悪質な事案であると思いましたし、その意見を私(大臣)は海上保安庁には申しました。
【フリーランス 上出氏】いろいろな議論が起きていまして、どこまで検察が判断することが政治的でないか。どこまで大臣が説明されたようなことが三権分立と矛盾しないのかとか、いろんな議論があると思いますけれども、今の段階でどうしても国の意思というものは働かざるを得ないと思うのですけれども、どういうような整理をその点についてされていますでしょうか。自民党辺りからは国外退去をすべきだったというような、もっと早い段階で自分たちはやったと谷垣さんなどは言ったわけです。いろいろな意見があるのですが、どういう整理をされているか聞かせてください。
【大臣】谷垣総裁が仰ったと言われている過去の事例については、入管法違反だと私(大臣)は記憶しております。つまりは、尖閣に不法に上陸をして、 そして国外退去をしたということでございますけれども、今回は公務執行妨害、つまりは、中国の漁船が海上保安庁の巡視艇に対して体当たりをしてきたという悪質な事案であったということで、比較をするのは、私(大臣)はいかがなものかと思っております。
【週刊金曜日 伊田記者】先ほど大臣が、「これは今までにない事案であった」と申されました。つまり、向こう側が今までにないことをやってくる背景はどういうように分析、考慮されておりますでしょうか。そのことによって今後の対処とか対応が変わってくると思いますけれども、お考えをお聞かせください。
【大臣】対応については、これは検察が判断することでございますので、私(大臣)からコメントすることはございません。本日の国会参議院の外交防衛委員会でも答弁をいたしましたけれども、あの海域を管轄しているのは海上保安庁の第11管区でございます。私(大臣)は11管区にはかなり足を運んだ方だと思いますし、現地の石垣保安部にも2回私(大臣)は足を運びました。そこでいろいろな過去の事例、あるいは日々の活動について、夜飲みながら海保の方々とお話をしたこともございました。そういった中で聞かれてきたのは、いい漁場であったり、海水温などによって当然ながら魚のいるところが変わってくるという中で、領海内に立ち入るケースも往々にしてあるけれども、それを今まではしっかりと排除をしていたということであります。今回の事例については、その中で今回の船長が故意にぶつけてきたということでございまして、そういう意味ではずっと、今までの経過を見てきている海保の方々の皮膚感覚の判断としては、別に何か意図的に、計画的に仕組まれてやられたというよりは、多くの漁船が来た中の1つの漁船がひどい対応をしたということではないか。私(大臣)はその報告を聞いて、私(大臣)もそのように理解をしております。したがって、今回は意図的にこのものが仕組まれたという可能性はゼロとは言いません。ゼロとは言いませんが、私(大臣)は低いのではないかという認識を持っています。
【フリーランス 小山氏】先日、クリントン国務長官が尖閣に日米安保を適用すると言いました。その同じ日に国務省のスポークスマンが、尖閣の領有権問題について米国は立場を明らかにしないと述べました。領有権がどこにあるのかわからないときに、日米安保を適用するというのは矛盾しているような印象を受けるのですが、外務省はこの二つの発言をどのように解釈しているのでしょうか。 【大臣】これは従来から米国政府が言っていることでありまして、英語では「ソブリニティ」という言い方をしていたと思いますけれども、それについてコメントはしない。しかし、尖閣については日本の施政下にあって、そして施政下にある地域については日米安保条約第5条が適用されるということを言ったわけで、したがって、尖閣列島は日本の施政下であり、仮に5条事態になったときには米軍がそれに基づいて行動するということを表明されたものだと理解しております。
【フリーランス 小山氏】5条問題ということは、日本に対する侵略があった場合、要するに領有権問題になった場合は米国は日米安保を適用しないということでございますか。
【大臣】質問の意味がわからなかったのですが。
【フリーランス 小山氏】5条というのは日本侵略の場合は適用するけれども、領有権問題の場合、尖閣だけを取ろうとする中国の動きの場合は、日米安保を適用しないという意味なのでございましょうか。
【大臣】尖閣諸島は施政下にあると。施政下にあるところについては第5条を適用するということですから、尖閣で5条事態が起きたときには、米国は日米安保条約に基づいて行動するということだと思います。
【世界日報 山本記者】代表をなさっていたときに、先ほど尖閣の施政下であれば、安保適用というような判断になっているということなのですけれども、今、新たに中国側の、その種類はちょっと定かに覚えていないのですが、船が多くまた接近しているというような様子も伝えられておりますけれども、代表時代に、「この離島問題、尖閣諸島などを含めて抑止がなければ対話と関与も実効あらしめるものとはならない。制空権、制海権の確保も含めて毅然と日本の権益を守る意思を示していくことが重要だ」と仰っておられるわけですが、こういう発言に基づいて、その施政下に尖閣をとどめおくための何か更なる措置をお考えでしょうか。
【大臣】東シナ海においては領土問題は存在しておりません。尖閣諸島は歴史的に見ても我が国固有の領土であり、我々実効支配をしているわけでありますので、今後もその方針を堅持していく、それだけだと思います。
【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者の質問を代読いたします。今後の日中外交についてですが、今回の衝突事件の件で日本と中国の考え方の違いが明らかになったと思います。日本と比較しまして中国の発言や行動は活発で、考えようによってはかなりその戦略が明らかになったと思います。こうしたデータの収集は今後中国との戦略的互恵関係を築いていく上で有益になると期待してよろしいでしょうか。
【大臣】中国の情報発信と日本の情報発信の違いというものについてのご発言だと思いますけれども、基本的に今回我々は東シナ海に領土問題は存在しない、尖閣諸島は日本の固有の領土であると、しかし、その中で国内法に基づいて公務執行妨害で立件したということでございまして、それについて国内法に基づいて、今回対応した訳でございます。しかし、向こうは自分たちの領土だと言っている、私(大臣)はこの土俵にのるべきではないと思っております。我々は東シナ海に領土問題はない、尖閣はどう見ても歴史的に見て、日本の固有の領土である、実効支配をしていくということで、淡々粛々とやることが日本の立場になるのではないかと思います。
他方で、私(大臣)は、今回の中国がとった一連の措置も含めて、あるいはどういう事案だったのかも含めて、在外公館、あるいは東京に存在する大使館に対して説明するよう指示を致しておりますし、私(大臣)自身も、今回ニューヨークの国連総会で、G8の外相会合、あるいは日米の外相会談、そこでしっかりと今回の事案がどういう事案だったのか、それに基づいて中国がどういう対応をしてきたのかということをやはり世界に説明するということは大事なことだと思っておりますし、私(大臣)は今回の一連の中国がとった行動については、世界が注目していると、そのように考えております。

2010.9.17(就任・外務省定例記者会見)

【時事通信 水島記者】官邸での会見でも出ていましたが、前原さんが代表時代におっしゃった「中国は現実的脅威である」という点についての確認ですけれども、現在でも、中国は現実的な脅威なのでしょうか
【大臣】先ほどの会見でもお話ししましたけれども、中国は目覚ましい経済発展を遂げています。13億を超える人口がおり、年率10%程度の経済発展を遂げている隣国であります。日本の人口減少、少子高齢化、莫大な財政赤字という、こういった主な3つの制約要因を考えたときには、中国をはじめとする成長するアジア、新興国との経済関係をしっかり作り上げていくということは、日本の経済にとっても大変重要なことだと思いますし、その意味でも、中国との戦略的互恵関係を進めていくことは、極めて大事なことであると思っております。一方で、中国はこの20年間、年率前年度比約10%を超える軍事費の増強をやってまいりましたし、また、ペンタゴンなどの報告書では、「中国が公表している軍事費の総額というものは、すべてではないのではないか」といった指摘もあるわけでございまして、何のためにそれだけの軍事費を増強しているのかという懸念は持っております。いずれにしても、中国については、そういった諸外国が感じる懸念というものをしっかり払拭してもらって、そして、他の国とのウィンウィンの関係を作ってもらうべく、しっかりと説明責任も果たしていただきたいと思いますし、我々日本にとっても大切な隣国でございますので、戦略的互恵関係を築き上げていきたい、このように考えております。
【朝日新聞 小村田記者】中国の関連で、尖閣諸島の衝突事件で、中国政府は日本政府の対応に反発を強めていると言われており、丹羽大使が5回も呼ばれたり、かなり異例の対応を取っていると思います。また一方で、このところガス田の方の話が発展してきているといった今の状況に関して、どのように認識されていて、どう対応していこうと思われているのか、よろしくお願いします。
【大臣】東シナ海において領土問題はございません。そういう意味では尖閣諸島は我が国固有の領土であり、領海内で無害通航なら問題ありませんけれども、操業し、そして海上保安庁に対して体当たりをしてきたという公務執行妨害を犯したわけでありますから、国内法に則って粛々と手続を進めるということは当然のことでございます。そういった点をかんがみ、中国には冷静な対応を求めたいと考えております。先ほど丹羽大使が5回呼ばれたということでありますが、事実は、呼ばれたのは3回、2回は抗議に行かれたということでございます。
 また、ガス田の問題についてでございますけれども、中国側は、例えば、岡田前大臣が会見でもお話をされているように、過去になかった機材の搬入はしているということです。しかし、それについては、修理のための作業を行っているという回答であって、掘削をしているのではないという話でございまして、我々はしっかりと事実確認をしてまいりたいと思いますし、そういう意味でも、今まで日本と中国が合意をしている共同開発についての考え方をしっかりと履行していただきたいと、そのように考えています。
【朝日新聞 小村田記者】先日、米国のアーミテージ元国務副長官が、一連の中国政府の対応について、「中国は日本を試している。日米関係が冷え込んでいる間、いろいろなことをやってどこまで許されるのか試している」というようなことを記者会見で仰られていたのですが、そのことについてどう思われます か。
【大臣】日米関係が冷え込んでいるとも思いませんし、我々は、東シナ海においては領土問題は存在しない。我々の領海内で操業し、そしてそれを排除しようとした海上保安庁の船にぶつかってきたという公務執行妨害について、国内法に則って我々は対応しているだけでございまして、法治国家でございますから、日本の国内法制に則って粛々と対応していくだけでございます。
【共同通信 比嘉記者】ガス田の話ですが、中国側は修理のためだという説明ということですが、今後の確認で、掘削をしているとか、あるいは生産を開始したということが政府として確認された場合の対抗措置というものを考えていらっしゃいますでしょうか。
【大臣】仮定のご質問でございますけれども、何らかの証拠というものが確認された場合においては、我が国として然るべき措置を取っていくということになろうかと思います
【朝日新聞 鶴岡記者】先ほどの「中国への懸念」という言葉についてお伺いしますが、意図と能力によって構成される脅威であるというお考えを今は取っていないのでしょうか。
【大臣】先ほどお答えしましたように、この20年間前年度比10%以上の国防費の伸びを示しておりまして、この20年間でおよそ19倍になっているのではないでしょうか。なぜこれだけ多額の軍事費を増強しているのかということについて懸念を持っているということでございますし、先ほどこれもお話をいたしましたけれども、英国のシンクタンク、あるいは米国のペンタゴンの報告書では、中国の公表数字以上の軍事費が他にあるのではないかと言われているわけでございますので、中国についてはしっかりと説明をしていただきたいという思いでおります。
【朝日新聞 小村田記者】そのガス田の関連で、中国外務省の副報道局長が「このガス田について中国は完全な主権と管轄権がある。中国の活動は完全に合法的なものだ」という談話を17日に発表したということなのですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
【大臣】我々が外交筋で確認をしておりますのは、中国側からの説明は「機材の搬入はしているけれども、それについては修理のための作業を行っている」という説明でございますので、現在において、それの説明を我々としては受け止めているという状況でございます。他方で、今後どのような作業が行われるのかどうなのかといったことについては、注視してまいりたいと考えております。

RSS