小学生と考える「平和教室」(みんなで考える国際協力)

2009.11.08

*しばらく載せなかったのでたまってしまいましたが、中国新聞の子ども新聞での連載は続いており、3回分を一気に載せる羽目になりました。何とか、10年3月号まで連載を続け、できればまとめて本にしたいと思っています。このコラムを訪れる方で、心当たりがある方に仲介の労をとっていただければとても有難いです。(11月8日記)

祖父:はるき君は、イラクやアフガニスタンで激しい戦争が続いていることは知っているよね?
はるき:はい、テレビのニュースで見ることがあるから。なぜ人々はあんなに憎しみ合い、命を奪い合うのか、僕にはどうしても解らない。
祖父:アフリカに限らないんだけど、戦争を逃れて難民生活を強いられる人や、飢饉に見舞われてガリガリにやせた栄養失調の赤ちゃん、幼い子どもの姿も、ミクちゃんはやはりテレビで見たことがあるよね?
ミク:ええ、同じ人間として生まれたのに、どうして生まれたところが違うだけで、こんなひどい目にあわなければならないのか、テレビの画面を見るたびに考えてしまうわ。
祖父:今日は、外国では戦争や貧しさで人々が毎日死の恐怖と隣り合わせで生きることを強いられているのはなぜだろう、という問題を考えよう。
はるき:前におじいちゃんは、戦争は禁止されて、やってはいけないことになった、といったよね(注1)。
祖父:はるき君、よく覚えていたね。その通りだ。
しかし、世界各地では、実にさまざまな原因で、そしてさまざまな形で人々が互いに殺し合う軍事衝突が起こっているんだ。それだけではない。紛争を逃れて、住んでいるところを離れる「難民」になる人々の数も深刻になっている。 
はるき:どれぐらいの数の人が難民になっているの?
祖父:世界の難民問題を担当している国際機関(注2)が調査をしているんだ。資料によると、2007年末時点で紛争や迫害のために1140万人の難民と、2600万人の国内避難民(注3)が発生しているそうだ。
ミク:飢えや貧しさに苦しむ人々、特に子どもや赤ちゃんはどれぐらいいるのか、分かっているのですか?
祖父:国連世界食糧計画(WFP)という国際機関に協力している日本のNPO法人で国連WFP協会(注4)という組織があるんだ。
その協会は世界の飢えについて、次のような結果をホームページで発表しているんだよ。
〇飢えと栄養不足は、世界第1位の死亡原因(世界保健機関ーWHO)
〇飢えと貧困によって、毎日2万5千人が亡くなっている(国連食糧農業機関ーFAO)
〇世界には、すべての人々が食べるのに十分な食糧があるのに、8億人以上が常におなかをすかせている(米国のNGO、Bread for the World Institute)
〇飢えに苦しむ人の殆どが開発途上国に住み、サハラ砂漠以南のアフリカでは3人に1人が飢えている(FAO)。飢えに苦しむ人々のうち、3億人以上が南アジアに住んでいる(Bread for the World Institute)。
ミクちゃんが関心を持った子どもの飢えている状況も報告しているよ。
〇5秒に1人の割合で子どもが飢えにかかわる病気で命を落としている(FAO)。
〇アフリカでの子どもの死亡率は栄養不足が主な原因で、ヨーロッパの8倍(医学雑誌、The Lancet)。
〇毎年600万人の5歳以下の子どもが、栄養不足と飢えに関連する病気が原因で亡くなっている(国連児童基金ーUNICEF)。
〇ビタミンAの不足で毎年100万人の赤ちゃんが死んでいる(UNICEF)。
ミク:すごく深刻なのね。そうした子どもたちを救うためにどんなことが行われているのかしら?
祖父:国際社会全体の努力については十分に分からないけれど…。WFP自身、①毎年平均して80カ国で、5600万人の子どもを含む約9千万人に食糧を支援、②過去40年間で12億人に食糧を届けた、など草の根の活動を続けている。
はるき:僕たちも何かできないかな?
祖父:WFPは、こう伝えているんだ。
〇平均約20円で、子ども1人1食分の学校給食を支給できる。
百円玉1枚で、3人の難民に1日分の食事を届けられる。
20円、100円で子ども一人、難民一人1食をまかなえるのであれば、はるき君やミクちゃんたち小学生でも、少し小遣いを節約したら協力できるよね。
ほかにもいろいろできると思うから、お父さんやお母さんと話し合って、国連WFP協会(注5)に聞けばいいんじゃないかな。
はるき・ミク:家に帰ったら、早速お父さんやお母さんと話し合ってみることにします。
祖父:地球上の不幸な人々や子どもたちが人間らしい生活を過ごせるよう、世界中の国々の恵まれた立場にある人々ができる限りのことを行うことは、とても自然で当たり前のはずだね。すべての人々、子どもたちが人間らしい生活を送れるようになってこそ、平和が訪れるということだからね。
今回話した、ある国は豊かで、ある国は貧しい状況が生まれる問題は、世界が一つ一つの国が集まってできていることにかかわりがあるんだ(注6)。この問題は次回、もっとくわしく話すことにしよう。

<家族の方のための注釈>

1 前にも書きましたように、国連憲章第2条4項は、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、如何なる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」として、戦争を原則として禁止しています。
2 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のこと
3 紛争や迫害を逃れるために国境を越えた「難民」(2007年末現在で約1140万人)と、故郷から非難したけれども自国内にとどまっている「国内避難民」(やはり07年末現在で約1370万人)とを区別して扱うことがあります。くわしい状況を知るには、http://www.unhcr.or.jp/news/2008/080619_1.htmlを見てください。
4 国連WFP協会(横浜市)のホームページhttp://www.wfp.or.jpは飢えの分布を示す地図「ハンガーマップ」を出しています。
5 国連WFP協会は、電話045(221)2515、ファックスは045(221)2534。
6 正確には、いずれの国籍にも属さない「無国籍者」という人たちもいないわけではありません。UNHCRのHPによると、世界には約1200万人の無国籍者がいると推定されています。

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