オバマ大統領が後退できない状況作りを

2009.04.26

*オバマ大統領のチェコ・プラハの核兵器に関する演説(4月5日)と5月に開かれるNPT再検討会議第3回準備会合(2010年の再検討会議のための最後の準備会合)を視野に収めた発言を毎日新聞(広島版)で求められました。4月26日付で掲載されましたので、その内容を紹介します(同日記)。

 ――オバマ大統領の核廃絶演説もありましたが、NPT(核拡散防止条約)再検討会議準備委員会で米国はどう動くでしょう。

 歴代の大統領にない発言で、一歩前進といえる。ただこの言葉をもって、彼が原爆を投下した広島、長崎に対して心から謝罪したとみるのは飛躍しすぎだ。「道義的責任はあったが、あの時点では戦争を早く終わらせるために仕方なかった」と口にする可能性も十分ある。彼の今後の発言を注視する必要がある。

 ――ブッシュ前政権で崩壊の危機に瀕(ひん)した核不拡散条約(NPT)体制を強化したいとの考え方も示しました。

 兵器用核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約)、核実験全面禁止条約(CTBT)、米ロの新しい核軍縮条約などを具体化するような提案を持ってくるでしょう。

 ――来年の本会議に向けて、この準備委員会はどういう意味があるのですか。

 今回は3回目の準備委員会で来年に向けて最後の会合。ある程度の方向性、内容を打ち出す必要がある。かなり具体的なことをいう用意が米国にあるはず。英仏も10年の本会議で主導権を発揮すると表明しており、具体的な提案をしてくるだろう。

 ――米国で高い支持率を誇るオバマ大統領ですが、核政策への反発はありますか。

 これから起きてくると思う。核抑止論者らが黙ってオバマ大統領の言う通りになるとは楽観的すぎる。話が具体化すれば抵抗が強まる。米国は今あまりにも不景気。米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22 の生産中止や代替核弾頭整備の中止などを表明しても、ただちには文句が言いにくい。契機が落ち着けば、「待て」がかかる。それを防ぐためには、オバマ大統領が後戻りできないような核廃絶の国際状況を作らなければいけない。広島・長崎が本気で取り組むべき時だ。

 ――米国主導で核廃絶に向かうでしょうか。

 米国主導では、米国の都合の良いところで止まる。他人任せの核廃絶なら、これまでの広島や長崎の活動が無駄になってしまう。オバマ大統領が発言した時に、一致した声を具体的にとりまとめて米政府に突きつけ、積極的に活動するべきだ。

 ――核兵器廃絶は可能ですか。

 繰り返しになるが、オバマ大統領が後退できないように退路を断つような状況作りが必要。キッシンジャー元米国務長官以来の核テロリスト対策が出発点なら、テロリストを封じ込んだらよし、となる。「核兵器と人類は共存できない」を出発点にしなければいけない。

 ーー米国への広島の姿勢はどうあるべきでしょう。

トルコは中東和平に独自の立場から貢献している。オバマ大統領は先日の欧州歴訪の中で足を踏み入れた。オバマ側のブレーンは聞く耳がある。被爆地や日本から具体的提案をしていかなくてはいけないでしょう。

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