オバマとマケインの核政策比較

2008.07.22

*軍備管理・不拡散センター(Center for Arms Control and Non-Proliferation)は、7月1日付及び14日付のジョン・アイザックス署名の文章で、民主党の大統領候補オバマと共和党の候補マケインの核政策を比較を発表しています。7月14日付の文章のタイトルは、「オバマ対マケイン:核兵器に関する合意の7分野と不合意の6分野」と題するものであり、7月1日付の文章は、これまでの両者の発言をテーマごとに抜き出して紹介する形をとっています。要領よくまとめていますので、両文章をまとめて紹介します(7月22日記)。

1.合意分野

<核兵器のない世界>

オバマ及びマケインとも、キッシンジャー、シュルツ、ナン、ペリーが最初に唱えた目標である世界から核兵器を廃絶することに向けて動くことを誓約している。
オバマ:「私は、大統領として、核兵器の役割及び危険を削減し、究極的には廃絶する世界に向けて動くべく指導する。」
マケイン:「4半世紀前、レーガン大統領は、「我々の夢は、核兵器が地上から消える日を見届けることだ」と宣言した。それは、私の夢でもある。」

<アメリカの核兵器削減>

 両候補は、アメリカの核兵器保有量を削減しようとしている。彼らは、NPT上のアメリカの約束を果たしつつ合理的な核抑止力を保持することを誓約している。
オバマ:「我々は、単独での軍縮を追求するだろう。核兵器が存在する限り、我々は強力な核抑止力を維持する。しかし、我々は、核兵器を廃絶する長い道のりにおいてNPTに基づく約束を守るだろう。」
マケイン:「私は、自国の安全保障上の必要と世界的なコミットメントと両立するだけの最小限度の数まで核戦力の規模を削減することを追求するだろう。」

<戦略兵器削減条約(START)>

両候補は、ロシアとのSTART核協定の延長に関する交渉を勧めている。オバマは、2007年4月にSTART関連の規定を含むアメリカの不拡散政策を強める法案を提出した。マケインは、2008年5月の演説において、STARTに含まれる「拘束力のある検証方法」の必要性を再確認した。

<IAEA強化>

両候補は、IAEA強化を支持している。オバマの上記法案では、IAEAの活動に対して年間1500万ドルを授権している。マケインは、増額の推進者であるとともに、IAEAのもとで核兵器国の透明性及び義務を増大させることを推進している。

<ナン・ルガー協力的脅威削減>

両候補は、ロシア及び旧ソ連における協力的脅威削減計画を増やすことを支持している。
オバマ:「私は大統領として、4年以内に脆弱な場所にあるすべての核兵器及び核物質を確保する世界的な努力を指導するだろう。それが、テロリストが爆弾を手に入れることを防ぐ最も有効な方法である。」
マケイン:「我々は、ナン・ルガー法で確立した協力的脅威削減計画を含め、我々自身の不拡散の努力のための資金を増大する必要がある。」

<核分裂物質カットオフ条約>

両者とも、核兵器用分裂物資の生産を禁止する国際条約のために動くことを示唆してきている。
オバマ:「我々は、兵器用分裂物質の生産のグローバルな禁止を求めることから始めるだろう。」
マケイン:「我々は、他の国々とともに、もっとも危険な核物質の生産を終了する分裂性物質カットオフ条約を交渉するべく早急に動くべきである。」

<NPT>

両候補は、NPTに対する支持を確認し、世界的なよりよい実施に向けて動くと強調している。
オバマ:「私が大統領になれば、NPTを強化し、従わない国々が自動的に強力な国際的制裁に直面するようにする。」
マケイン:「2010年には、NPT再検討のための国際会議が開かれる。私が大統領であれば、不拡散体制のあらゆる分野を強化し、高めるためにその機会を捉えるだろう。我々は、いわゆる「平和のためのアトム」の取引の実施を強化し、平和的な原子力協力の利益を受ける国々が、もしNPTに違反しあるいはそこから脱退するのであれば、その受け取ったものを返還するか解体しなければならないように主張する必要がある。」

2. 不合意分野

<CTBT>

オバマはCTBTの批准を支持しているが、マケインは条約を「再検討」すると述べた。
オバマ:オバマは、選ばれれば、CTBT批准を優先すると述べている。
マケイン:「私は、核実験問題に向き合わなければならないと信じる。大統領としての私は、アメリカの現在の実験の自粛を継続する旨誓約するだろう。しかし同盟国及び議会と対話を開始し、我が核抑止力の安全性又は有効性が損なわれない検証可能な方法で実験を制限するために前進できるようにするだろう。その一環として、CTBTの批准を妨げた欠点を克服するために何ができるかを再検討する。私は、1999年にはこの条約に反対したが、そのとき、将来の進展には扉を閉じないと述べた。」

<米印原子力協定>

両候補は、米印原子力協定に賛成票を投じたが、オバマの場合は、インドがイランとの軍事協力を終了すること及びこの協定はインドが新型核兵器を作ることに資するように使われない旨の大統領の保証書を条件付ける修正を付していた。

<信頼性のある代替弾頭(Reliable Replacement Warhead RRW)>

オバマは、今の段階で信頼性のある代替弾頭を支持しないと述べてきた。マケインは、この問題に関する立場を明らかにしていない。
オバマ:「私は、我が抑止力の有効性にとって絶対に不可欠であり、核戦力をさらに削減し、世界規模での核の安全という目標に資する新型核兵器に限って開発を支持する。私は、戦略的、政治的に意味をなさないいわゆる地中貫通兵器に関する開発をキャンセルするだろう。」

<イラン>

両者はともにイランを脅威と見なすが、オバマはイランとの外交交渉に対してより積極的な推進者である。マケインはより強硬な態度をとってきた。
オバマ:「世界は、イランのウラン濃縮計画をストップするように努力しなければならない。急進的な神政体制の手に核兵器があるのはあまりにも危険である。軍事行動を含めあらゆる選択肢をも除くべきではないが、厳しい制裁と結びついた持続的かつ攻撃的な外交を行うことが、イランの核兵器開発を防止する主要な手段であるべきだ。」
マケイン:「イスラエル国家の破壊をもっとも望ましいことと公言し、彼らのよこしまな野望を進めるために兵器を持ってアメリカに永遠の敵意を誓うような政府を許さないだろう。」

<ユッカ山の核廃棄物貯蔵施設>

オバマは、安全上の不安をあげてユッカ山貯蔵施設に反対する。マケインは支持し、これに反対することはアメリカの利益に反すると確信している。
オバマ:「私は、ネヴァダの人々に安心であることを確証できるような健全な科学に基づいていないので、ユッカ山については終わりにするだろう。私の考えでは、これは誤りだった。この誤りのためにこれまでに数十億ドルが使われてきたのは遺憾なことだが、さらに数十億ドル使ってネヴァダの人々にとって安全ではない事態を作り出すようなことはしない。私には最初から誤ったプロジェクトであることが明らかだった。我々は、核廃棄物をどのように貯蔵するか考え出さなければならないだろう。」

<ミサイル防衛>

オバマは、ブッシュ政権による拡大ミサイル防衛計画の必要性について確信が持てていない。マケインは強力に支持している。
オバマ:「ブッシュ政権は、潜在的なイランの核ミサイルの脅威から防衛するためのミサイル防衛システムの一環として、ポーランド及びチェコに迎撃及びレーダーシステムを配備するべく開発を進めている。我々及び同盟国を守るミサイル防衛を責任を持って配備できるのであれば、そうするべきだが、それは、システムが有効である場合に限る。我々は、配備する前にいかなるミサイル防衛システムが有効であることを確保するべきだ。ブッシュ政権は、過去においてミサイル防衛能力を誇張し、政治的目的のためにその配備を急いだ。ブッシュ政権はまた、NATO同盟国すべてにとって重大な意味合いがあるミサイル防衛システムの配備について、これらの国々と十分協議してこなかった。」
マケイン:「戦域的及び国家的ミサイル防衛の開発及び配備を強く支持する。有効なミサイル防衛は、大陸間弾道ミサイルによりアメリカを標的にする能力を持つ北朝鮮のごときならず者国家から、また、弾道ミサイルでアメリカ軍及びアメリカの同盟国を脅迫するイランのような不法国家からアメリカを守るために不可欠である。また、ロシア及び中国という戦略的競争者の可能性を持つ国々からの潜在的脅威に対する担保としても不可欠である。有効なミサイル防衛はまた、アメリカの軍事力が地域的敵対者からのミサイル攻撃の脅威によって抑止されないで海外で行動するためにも必要である。」

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