イラン及び「5+1」の提案をめぐる事態の進展の可能性

2008.07.05

イランの通信社IRNAは、7月4日に、イランの最高国家安全保障会議のサイード・ジャリリが「G5+1」の書簡に対して回答すると述べたと報じ、更に、EUの外交担当のソラーナとの電話の中でジャリリは、「イランイスラム共和国は、ソラーナとの間に達成された合意に基づき、共通点に集中するというアプローチ及び建設的かつ創造的な態度でソラーナ及び6カ国外相の書簡に対して回答を準備し及び提供する。イランイスラム共和国の6カ国外相及びソラーナの書簡に対する回答は本日届けられる」と述べたと報じました。

IRNAによれば、ジャリリは、「過去のいくつかの行動がイラン世論の反発を引き起こしたが、イラン人民はこれ以上かかる行動によって不信感を増大させられるべきではない」と述べたそうです。

IRNAはまた、以上のジャリリの発言に対し、ソラーナがイランの善意及び書簡に答えることに感謝し、会談再開の合意に関する満足を表明したこと、また、G5+1及び彼自身が進行中の積極的雰囲気を壊すような行動をしないと述べたことを紹介し、「積極的措置に鑑み、会談の雰囲気は建設的かつ望みあるものになるだろう」と発言したと伝えています。

 「5+1」の提案に関しては、いくつかの関連情報を目にしましたので、あわせて紹介しておきたいと思います。

双方は、電話を通じ、会談を7月中旬に行うことに合意したとのことです。

なお7月3日のIRNAは、ジャリリが日本の高村外相との電話会談(同日)で、「イランと西側諸国との間で交わされた二つのパッケージ提案の共通点を考慮し、双方は、適当な政治的雰囲気の下で新たな建設的協力の交渉をスタートできるだろう」と予告していたことをも伝えています。

IRNAによれば、高村外相は、イランの提案されたパッケージが国際社会の確信を獲得し、この地域及び世界の平和と安定を回復するのに資するであろうと述べ、イランとG5+1との間の建設的会談に対する支持を繰り返し、次回の会談が国際社会にとって積極的成果につながることを希望すると表明したそうです。

ジャリリの言及した「過去のいくつかの行動」とは、イスラエルが6月初め、イランの核関連施設を空爆で破壊することを想定して大規模な軍事演習を実施していたと米ニューヨーク・タイムズ(電子版)が同月19日に報じたことや、ブッシュ大統領が繰り返し、イランに対してはあらゆる選択肢がon the tableだと述べていることなどを指すと思います。イランのモッタキ外相は、イスラエル(アメリカ)がイランを攻撃するという「気の狂ったこと」はないだろうと述べたそうですが、イスラエルはかつて(1981年)イラクの原子力発電所を破壊し、昨年9月にはシリアの施設(北朝鮮の協力による原子力施設との疑惑が報道された)をも空爆して破壊した実績を有するだけに、イランとしても万一の事態を回避することの必要性を感じたことが、今回の歩み寄りの姿勢につながった一つの契機であることを窺わせています。

いずれにせよ、今回の歩み寄りにより、再び外交交渉によるイランのウラン濃縮計画に関する事態打開を目指す動きが浮上したわけですから、ソラーナの「G5+1及び彼自身が進行中の積極的雰囲気を壊すような行動をしないと述べたこと」とあわせ考えれば、イスラエルが暴走することにはチェックがかかり、当面の危機回避の可能性が生まれたと見ることができるでしょう。

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