新年のご挨拶

2007.01.01

要約

「あけましておめでとうございます。

小泉政治で十二分に破壊された日本社会の現状を思い、そしてその後を継いだ安倍政治の危険性を思うとき、正直、おめでたい気分にはなれませんが、こういう時であるからこそ、私たちは明るい将来展望を持ち、志を高くして新年を迎える必要がある、と気持ちを奮い立たせております。

私は、「ノーモア・ヒロシマ/ナガサキ ノーモア・ウォー」の要諦は「核廃絶&平和憲法」にある、と確信します。国家主義&新自由主義で日本を再び誤った方向に引っ張っていこうとする政治に「待った」をかけるためには、広島・長崎・沖縄が奮起することが求められています。

本年の私自身の言動の拠りどころは、従前にも増して、人間の尊厳・「力によらない」平和・核廃絶です。障害を持つ孫娘・ミクから深く教えられている人間の尊厳の重みを根底におき、広島で呼吸する中で確信が深まっている「力によらない」平和(平和憲法)と核廃絶の重要性を、今年も率直に人々に訴えていくつもりです。」

以上は、今年の年賀状で記した内容です。2005年、2006年の新年のご挨拶を読みかえしましたが、内外情勢に関する基本認識については、根本的に誤っていたとか、重要な修正を加えなければならないとかの思いはありません。

国際情勢について

国際情勢については、イラク情勢によって身動きがとれなくなったアメリカのブッシュ政権の窮状が増したことは、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)をめぐる潜在的緊張要因が爆発するという最悪の事態を招くことを押しとどめる上で大きく力があったと思います。確かに北朝鮮の核実験は、核廃絶を目指す上での障害を増やしたことは認める必要がありますが、私がコラムでしばしば記しましたように、米朝対話の今後の展開如何によっては、朝鮮半島非核化の可能性は必ずしも全面的に悲観的に考える状況ではないと考えます。むしろ大きなポイントは、任期の残りが2年を切ったブッシュ政権が完全な「死に体」となって国際情勢も膠着するのか、それとも、イラク問題、イラン・北朝鮮問題に関して起死回生の手を打ってくるのか、という点にあるように思われます。2001年以来の国際情勢の最大の緊張要因だった先制攻撃戦略に関して、ゲーツ国防長官の下でブッシュ政権がどのような対応を示すかという点も要注目でしょう。

私は国際経済に関して素人ですが、新自由主義に基づくグローバリゼーションが2007年も自己主張を続けるのか、それとも、ラテン・アメリカ諸国を中心とした新自由主義に対する異議申し立ての動きが他の地域にも広がりを示すエネルギーを秘めているのかによって、1980年代以後の国際社会の流れにも大きな変化が生まれてくる可能性があるように思います。私は、市場原理至上主義の新自由主義は、人間の尊厳を否定し、人権・民主主義に挑戦するその本質からいって、これを克服することなくしては、人類の明るい展望を切り開くことはできないと確信しています。目を欧州に転ずれば、北欧諸国を中心に、福祉を中心に据えた経済政策の実践が行われています。福祉を中心に据えるということは、人間の尊厳を中心に据えるということと同義ではないでしょうか。ラテン・アメリカ諸国の注目すべき動きと北欧諸国の明るい展望を与えてくれる確かな動きが、2007年以後の国際社会における主潮流になってくれることを願わずにはいられません。

国内情勢について

国内情勢は、国際情勢に増して厳しい状況にあると考えざるを得ません。教育基本法「改正」を強行し、改憲を公言する安倍政権は、本当に危険きわまる存在です。安倍政権は、小泉政権の時代に布石した日米軍事同盟の変質強化をしゃにむに進めようとしています。また経済政策では、財界の旗振りに呼応して、新自由主義に基づく日本社会の破壊を強行し続けています。

しかし、情勢はまったく展望がないというわけではありません。私は、障害者自立支援法が引き起こしている障害者にとってあまりに過酷な生活破壊に対する障害関係者によるやむにやまれぬ異議申し立ての行動が、2007年の日本の情勢全体を大きく揺り動かす可能性があるのではないか、と期待を込めて考えています。というのは、この法律もまた新自由主義の典型的な産物であり、新自由主義の反人間性をこれ以上はっきり示すものはない、とも言えるからです。すでに地方自治体レベルでは、この法律の恐ろしいまでの反人間性を正すための措置を取らざるを得ないところも現れています。障害児に及ぶ法律の破壊的な影響については、全国的な関心を引き起こす可能性が出ています。障害者自立支援法に対する見直しを迫る動きが成功すれば、新自由主義に基づく他の分野での反動攻勢に対しても、国民的な関心を呼び起こす可能性も出てくるでしょう。大企業だけが好況を謳歌し、格差社会の深刻化に対する関心が高まる中、政財官によって進められてきた「改革」そのものを根本から見直すべきだ、とする世論が高まることを、私は今年注目していきたいと考えます。2007年が、人間の尊厳を中心に据えた国作りへの根本的転換の年となることを心から願っています。

話が少し元に戻りますが、在日米軍再編問題も2007年には大きな局面を迎えることになると思います。年末になって、岩国基地に近接する広島県大竹市の市長が、選挙公約を公然と覆し、米軍基地機能移転受け入れ姿勢を表明したことは本当に許されてはならないことです。国側は、これからもあの手この手で、各地の反対運動の切り崩しに出てくるに違いありません。私としては、各地の反対運動がローカルな問題に視点を限るという限界を突破し、在日米軍再編問題の帰趨如何はアメリカの世界戦略そのものを挫折させる全世界的意味を持っているという視点を我がものにしない限り、全国民的運動にまで発展させるエネルギーに高まることはできない、と思います。2007年がそういう転機の年になるかどうかを引き続き注目していくつもりです。

2007年には、統一地方選挙と参議院選挙が予定されています。自民党対民主党という構図が崩れない限り、私は、日本の政治情勢が大きく変化する見込みはないと認識しています。それほどに、自民党と民主党との間には相違がないからです。両党とも改憲勢力が圧倒的に多数を占めるという点で、私たちとしては、国会の構成に対して何らの幻想をも持つことは許されないでしょう。私たちとしては、改憲反対の世論を強めることに本格的に取り組んでいかなければならないと思います。そのためには、私たちの主体的な取り組みの力を飛躍的に強めることが緊急に求められていると思います。私としても、そのための努力を今年も続けていきたいと考えています。

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