核問題をめぐる韓国の状況

2006.10.24

韓国の平和活動家のKさんが私の部屋を訪れ、北朝鮮の核実験を受けた韓国国内の状況を伝えてくれました。非常に教えられるところが多かったので、感想も含め、記しておきます。

Kさんの話でもっとも強烈だったことは、韓国には反核文化がないということでした。つまり、広島、長崎を体験していない韓国の人々は、核被害がどんなに凄惨なものであるかについて想像力を働かせることもできず、したがって、核兵器の恐ろしさについても分かっていないということなのです。そのことがどういう反応をもたらすかと言えば、一方においては、北朝鮮の核実験を無条件で肯定する反米統一志向の民族派の歓喜であり、他方においては、核保有国となった北朝鮮に対抗するためには、アメリカの核抑止力に依存するべきだとする野党ハンナラ党(主流)の主張であったり、日本で首をもたげている核保有論をも睨んだ韓国独自の核保有論の検討(大統領府や国防部)であったりする、ということなのだそうです。

Kさん自身、反米民族統一派に属しているとのことですが、北朝鮮の核保有が韓国の対抗措置を招くことは朝鮮半島における核戦争を引き起こす可能性を高めるだけであるという認識から、北朝鮮の核実験を無条件で肯定する人々、そしてアメリカの核抑止力に依存するべきだとの主張や韓国独自の核保有を主張する勢力との理論的・政策的論争に積極的にかかわっているということでした。しかし、反核文化を持たない韓国では、Kさんの主張が韓国国内で浸透するには非常に困難があるという現実があり、事態を打開するためには、反核文化をもっている日本との協調が不可欠であるということを強調しました。

Kさんの話は、本当に強烈でした。一つには、韓国には反核文化がないということです。朝鮮の解放は広島、長崎に対する原爆投下によって早められたという認識が今日なお強くある韓国においては、確かにそういうことであるのだろうという想像は付きますが、そのことが、一方における北朝鮮の核保有に対する無条件の礼賛、他方におけるアメリカの核抑止力依存への傾斜ないしは韓国独自の核保有論への傾斜を生み出すという事態は、正直言って私の想像を超えていました。このまま行くと、本当に朝鮮半島で核戦争が起こり、日本にも波及する事態を慄然とした思いで考えざるを得ませんでした。

もう一つは、Kさんの期待に応えるだけの反核文化の土壌が今の日本になお存在しているかということを考えたときに、確信が持てないということでした。中川政調会長や麻生外相の発言に対する日本国内の反応の鈍さを見るとき、私は、本当に暗澹とした気持ちに襲われます。Kさんの期待に応えるだけの反核文化は今の日本に残っているのだろうか、と考え込まざるを得ないからです

Kさんとは、今後緊密に連絡を取り合って、日韓の間で何ができるかを考えていこうと合意したのですが、本当に一刻も猶予がならない事態が迫っていることをヒシヒシと感じました。

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