北朝鮮の核実験問題と日本の絶望的な政治状況

2006..10.19

*社民党の機関紙『社会新報』の取材に応じて発言した内容を載せます。内容的にはこれまでのコラムで述べたことと重複するのですが、安倍政権・自民党の絶望的な行動についての部分を記録に残す必要があると思いました。

北朝鮮が核実験を強行したことは、大変遺憾で許されるべき行為ではない。無謀な行動に抗議するのは当然だ。それを前提に私が言いたいことは、北朝鮮が自暴自棄になって暴走する事態だけは絶対に避けなければならないということだ。

そこで、北朝鮮がなぜ核実験をする事態に至ったのかということを冷静に分析すると、米ブッシュ政権が推し進めてきた「ならず者国家論」や「先制攻撃論」が非常に北朝鮮を追い詰めているということを指摘しておかなければならない。この点は、国内のほとんどの議論の中で取り上げられていない重要なポイントだと思っている。

要するに、アメリカの北朝鮮政策が今回の北朝鮮の核実験への暴走を促進したということだ。だから私たちは、北朝鮮を非核化の道に引き戻すためにも、まずはアメリカの対北朝鮮政策を改めさせることだ。北朝鮮に対して「核実験をやめろ」ということとまったく同じレベルの重要さをもって、アメリカに政策変更を迫る必要がある。そのために国際世論を糾合する必要があると思っている。

そういう意味では、日本政府つまり安倍政権の取っている現在の対応というのは、とにかくアメリカと一緒になって北朝鮮を懲らしめにかかるということで、これはまったく間違った政策であると私は考える。特に、国連の安保理決議では「国連憲章第41条に基づく」とはっきり書いているにもかかわらず、アメリカと一緒になって周辺事態法まで使って軍事的に対応しようとしていることは、日本の平和と安全を危うくする非常に危険なことで認めるべきではない。いま日本がやるべきコトは、アメリカに対して直接対話も含めた対北朝鮮政策の転換を迫ることだ。北朝鮮も、アメリカとの対話が実現すれば、6者協議への復帰を検討すると公言しており、その可能性をもっと徹底的に追求すべきだ。

今回の事態を受けて日本国内では自民党の中川昭一政調会長が「核保有の議論があってもいい」と、核武装論につながる発言をし、問題となっているが、これまでも自民党や民主党のタカ派から、プライベートなレベルだけでなく、公然と放言する人たちもいたわけで、そういう意味では底流があったと言えよう。特に中川政調会長はその中でもタカ派と言われる人物だが、与党の政調会長の発言がどれほどの意味を持つかも考えずに話したとすれば、とんでもない発言だ。さっそくブッシュ大統領でさえ、「中国が懸念している」と遠回しの表現ながら反応せざるを得ないほど、国際的に日本の核武装への関心は高いのである。

北朝鮮が核実験して以降、アメリカ国内で目立つ論調は、日本を含めた北東アジアでの核拡散への引き金になるのではないかという警戒感だった。正にそれを裏づけるような形で中川発言が出たことで、国際的には日本への不安や不信、警戒感が増している。釈明すれば済む話ではなく、安倍政権が中川政調会長を更迭するくらいの果断な措置を取らないと国際社会の懸念、不安に応えることにはならないだろう。

繰り返すが、北朝鮮の無謀な行動は断じて容認できない。しかしだからといって、ひたすら北朝鮮バッシングを続けていけば、北朝鮮が自暴自棄になって更に核武装に突っ走ることを懸念しているのである。その先にあるのは核戦争や原子力発電所の破壊といった悲惨な世界だ。日本の平和と安全を考える上で、「再びヒロシマ・ナガサキの悲劇を繰り返さない」という原点に立ち返り、そうした最悪の事態を回避することを最優先する取り組みこそが求められている。

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