岩国基地機能強化に関する住民投票

2006.03.13

岩国基地機能強化に関する住民投票の最終結果は、次の通りでした。投票資格者数84,659名、投票者数49,682名、投票率58.68%(男性55.27%、女性61.73%)、反対43,433名(投票資格者の51.30%、投票者の87.42%)、賛成5,369名(投票資格者の6.34%、投票者の10.80%)、無効879票、持ち帰り1票、棄権41.32%(以上、3月13日付中国新聞に基づく)。下線部分を見ていただければ分かりますように、文句のつけようのない結果だったと思います。

私の感想を書くことを考えていたのですが、3月11日付のしんぶん赤旗に掲載された真言宗御室派大本山大聖院(広島県宮島)座主である吉田正裕氏の以下の発言が私の言いたいことを尽くしておられるので、それを紹介することで代えたいと思います。この発言は、投票前のものですが、今回の住民投票の意義を明確に指摘していると思います。吉田氏には、私も一度お目にかかったことがあるのですが、私より20歳ほどお若いのに、本当に尊敬できるお人柄に感銘したことを思い出しています。

「基地再編の背後にある、『不安定なアジア』に武力の強化で備えるという考え方自体を問い、基地のない平和な世界をどうやって目指すかをしっかり考えるときです。

岩国の住民投票では、単に岩国市民の問題だけではなく、世界の文化遺産である宮島の環境の問題であり、日本の国のありかたにかかわる問題として、是非正しい判断をしていただきたい。(中略)

イラク戦争以来、暴力と報復が続く世界状況の中で、九条の非暴力と対話の精神はいまこそ重要になっています。(後略)」

小泉首相は、記者会見で投票結果についての印象を聞かれ、「賛成か反対かと問われれば、反対と答えるでしょう」という趣旨の発言を平然としていますが、一国の政治を預かる者として本当に許されないものだと思います。アメリカの危険きわまる戦略にのめり込み、国民を絶望的状況に追い込む可能性についていささかも恥じることのない恐ろしいまでの感覚に、本当に身震いせざるをえません。岩国の住民投票の結果を全国民が真摯に受け止め、小泉政治、対米追随の保守政治に「ノー」を突きつけるきっかけになってほしいと心から願います。

(補足)3月14日に新聞赤旗日曜版の記者からコメントを求められて発言したものです。参考までつけ加えます(2006年3月15日)。

投票率50%の壁をクリアできるか心配していたのですが、成立を知って思わず祝杯をあげました。投票有資格者の58%が投票し、しかもその90%近い人が「反対」で、どう見ても、決定的な民意が示されたものとして、 政府も受けとめざるを得ない数字です。政府も内心ショックを受けていると思います。

沖縄以外の本土で、安全保障問題でこれだけ明確な意思が示されたことは画期的です。これはどんなに高く評価しても評価しすぎることはありません。思い出すのは沖縄で95年10月に開かれた8万5千人の県民総決起大会です。今回の岩国の結果はこれに匹敵する歴史的意義をもっていると思います。

小泉首相はかつて、"地元と協議して納得したうえで日米が協議する"と述べていました。05年2月の日米協議から10月の合意まで8カ月ありましたが、政府はこの間、まったく地元と協議していません。これは完全な背信行為です。その政府がいまになって「国防は国の専管事項」などと言い出していますが、約束したことには知らん顔で、勝手に決めたことをアメリカいいなりに押しつける--。これは民主主義国家として絶対に認められないことであり、逃げ口上としても許されません。

米軍艦載機の移転問題は単に岩国だけの問題ではありません。日米関係はこのままでいいのか、そもそも在日米軍基地は必要なのか。この国のあり方を国民的規模で問うていく、本土における起点になった投票だったと思います。

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