日本に対する欧米諸国の関心

2005.02.14

*日本の「戦争する国」に向けた動きに対して、アジア諸国(特に日本の侵略・植民地支配を受けた国々)の不安と警戒は確実に高まっています。しかし、私が気になっているのは、欧米諸国において日本の情勢に対する正確な認識が生まれていないのではないのか、ということです。そういう中で、2005年1月22-23日付のインタナショナル・ヘラルド・トリビュン紙は、二つの署名論評を掲載し、比較的客観的な紹介を行いました。一つは日本の軍事大国化に関するものであり、もう一つは日本人の排外感情に関するものでした。少し遅くなりました(大学の期末試験や大学入試試験監督などの業務に追われ、時間がなかなか見つかりませんでした)が、前者の内容(要旨)を紹介しておきたいと思います(後者の文章は、上智大学で教鞭を取っていると紹介されているD.マクニール氏の「貧しい移民の群れを持ちこまないでくれ」という文章ですが、同氏の許可を得ないまま紹介するのは失礼ですので、そういう文章があったことを紹介するにとどめます)。

ちなみに、2005年1月28日付の『しんぶん赤旗』にも、「日本が危険な火遊びをしている」と題するイギリス・『エコノミスト』誌(1月22日号)の、日本の教育を戦前に逆戻りさせる自民党による教育基本法見直しの動きを紹介する記事が掲載されていました。日本の反動右傾化に対して、アジア諸国のみならず、欧米諸国においても関心・警戒が高まることは、欧米崇拝・アジア蔑視が根強い保守反動政治に歯止めをかけるためにも、非常に重要なことだと思います。もちろん、日本の政治を変える主人公は日本に住む私たち自身でなければならないことは、改めていうまでもないことですが、私たちが日本の政治を変えるための努力の一環として、欧米諸国の対日世論を正確な方向に導くことも重要な意味を持っていると思います。これから紹介する文章は、私たちの働きかけに応えたものではもちろんありませんが、日本に対する欧米諸国の正確な認識を高めるために、私たちが積極的に働きかける(具体的には、日本の正確な情報を欧米諸国に対して発信する)余地が極めて大きいことを示唆するものだと思います(2005年2月14日記)。

〇「再び日の昇る国に」(イギリス上院外交スポークスマン・D.ハウエル卿)

日本は、再び強国になろうとしている。今回は、日本は自らを変えようとしており、しかも、単に「普通の」国になるというにとどまらず、広い分野にわたって恐るべき役者(a formidable player across a wide front)になろうとしている。

軍事面では、諜報力の大幅な拡張によって裏づけられた全面的な軍事力強化に乗り出している。これは、実質的に、自国の防衛に限っていた吉田(茂)ドクトリンにさよならを告げるものであり、アメリカとの間で新しい「対等のパートナーシップ」に踏み込むものである。そしてその動きは、大量の先端兵器の調達によって、アメリカに次ぐ軍事力を伴っている。

日本は、「核武装」しようとはしておらず、そのことには大きな関心はない。しかし、全面的なミサイル防衛システムの調達を行うこと、この分野でアメリカとさらに協力していくことが決まっている。

要するに、日本は東アジアにおいてまた世界的に主要な軍事大国として再興しようとしているのだ。しかし、以上のことは、まだ新しい局面の一部にしかすぎない。

日本は、長年にわたる受け身的姿勢を脱して、世界の外交上の中心に身をおくべく、極めて積極的な対外政策決定システムを目指している。例えば、日本は、インド洋(の津波被害)における救援回復作戦において中心的な役割を担っているし、シベリアから太平洋に至る石油パイプラインの敷設ルートに関して中国を打ち破った。(中略)

10年にわたる経済的停滞の後、銀行は徐々に収支を改善しつつあるし、消費者は用心深くではあれ支出するようになっており、あらゆる産業の分野において先端的な革新が起こりつつある。この回復は、第二次世界大戦以来の起伏に満ちた局面の一つにすぎないのだろうか。いや、これは単なる過去の商業的なくり返し以上のものであり、まったく新しい政策軌道に乗った日本なのだ。

このことは真新しいことであるとともに、(日本の指導者にとって)必要なことでもある。というのは、(指導者たちは)日本の国民世論に対し、長年にわたる平和主義からその正反対の立場、すなわち国際関係において自己主張する立場へと転換することを求めているからだ。その例は、イラクに対する積極的なコミットメントであるし、日本にとってのパートナーであるアメリカが主張するように、対テロ戦争において中心をなす先制予防ドクトリンにコミットしようとする姿勢である。

以上のことは、世界的に見ても新しい事態であるが、西側世界ではほとんど気がつく者はいない。それが良い知らせなのか、悪い知らせなのかはまだ分からない。良い知らせであるとすれば、それは、世界第2位の経済大国がついに国際関係に自信を持ちかつ決然と関わろうとし、世界の多くの問題にとり組む上での負担を負おうとしていることだろう。悪い知らせとしては、日本がこれまで以上にアメリカの軍事力に取り込まれ、中国のさらなる警戒心を引き起こすだろうということだ。

こういう危険はあるにせよ、日本が新しい方向に向かうことによって積極的な成果が出ることを、我々は支援するべきだろう。しかし、西側としては、その結果について正しく理解し、評価することが求められるのであって、丸呑みにしてはならないのである。

RSS