国連安保理常任理事国入り:その前に考えてほしいこと

2005.05.01

*この短文は、ある新聞社が考えている特集記事に掲載するものとして依頼を受けて書いたものです。私自身は、対米追随に終始する日本の安保理常任理事国入りは、「百害あって一利なし」と考えており、機会があればその旨を明らかにしています。ただし、この文章を書くに当たっての新聞社からの注文は、安保理常任理事国入りの是非そのものについてではなく、日本外交のあり方を考える中でこの問題をどのように位置づけることが必要なのか、という観点から書いてほしいというものでした。確かにそういう視点は妥当ですので、800字という字数制限の中で私の考えていることのエッセンスを凝縮しました(2005年5月1日記)。

国連改革の一環として、日本の安保理常任理事国入り問題が取り上げられています。この是非を考えるに当たっての中心的問題は、日本外交は何を目指すのかということです。常任理事国入りそのものが目的になるのではなく、日本外交の目標を実現する上で、常任理事国入りがプラスになるかマイナスになるか、という判断基準を持つ必要があります。

日本外交が目指すべき目標は何でしょうか。日本政府の立場としては日米友好がトップにくるでしょう。私も日米友好は重要だと思います。皆さんに持ってほしいのは、日米友好を追求する上で、日本が安保理常任理事国になることがどれほど重要かという発想です。

私自身は、かつてアジアに対して侵略戦争・植民地支配行った反省にたって憲法第9条(平和憲法)を持つ日本として、アジア諸国との友好関係を推進することは、日米友好と同じく、あるいはそれ以上に重要な外交課題だと考えます。それに、東アジア経済が日本経済にしめる重要性は死活的なものとなっており、今後ますますその重要性が増すことが確実な以上、アジア諸国との友好・相互信頼関係を築き上げることは、今後の日本外交の最大の課題と言っても過言でないでしょう。

アジア諸国は、日本が過去の歴史を反省し、軍国主義と決別した国になったかどうかをもっとも重視しています。本当の平和大国になったと確信できれば、アジア諸国も日本が安保理常任理事国になることに異論はないでしょう。しかし、小泉首相の靖国参拝や歴史教科書の問題などは、日本が本当に過去を清算したのかどうかについて不安、疑問を呼び起こしており、そこから日本の常任理事国入りにも反対する声が上がっているのです。

過去の清算は、主権者である私たち自身の認識としても問われています。安保理常任理事国入りの是非を考える前に、私たちはまずアジア諸国との信頼関係を築く観点を確立する必要があることを強調したいと思います。

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