「新しい権利」重視派の憲法認識を正すことが改憲阻止のカギ

2004.09.12

*この文章は、憲法第9条の改悪に反対する運動を進めている団体の発行している「ニュース」用の原稿として書いたものです。私がいろいろな機会に述べていることですが、この問題に絞っての文章ははじめてですので、コラムのほかの文章との重複をいとわず、掲載することにしました(2004年9月12日記)。

 去年の総選挙と今年の参議院選挙の結果、国会に関する限り、改憲提案に必要な議員総数の三分の二という要件がクリアされる状況になった。民主党及び公明党の大勢も基本的には改憲派で占められている以上、と言うより、明確に憲法「改正」に反対の立場を明確にしている共産党と社民党の議席が大幅に減ってしまった以上、二〇〇七年改憲実現を目指す改憲勢力主動の国会の動きが強まることに目をつぶるのは許されない状況だ。

改めて言うまでもなく、憲法第九六条に定める改憲要件は二つである。一つは上記のように、国会の「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会がこれを発議」することであり、これがクリアされた。もう一つは、「国民に提案してその承認を経なければならない」ことで、「この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定められている。改憲に関する国民投票に関する法律は、来年にも国会にあげることを、改憲派は意気込んでいることが報道されている。

問題は、国民の憲法「改正」に関する意識である。五月一日付の朝日新聞が大きく報道した世論調査の結果は、国民の意識の所在を見る上で参考になる。簡単に言えば、憲法全体をみて「改正する必要がある」が五三%(前回調査の四七%から増加)、憲法第九条については「変えない方がよい」が六〇%(前回調査の七四%から減少)である。この数字の差はどうして起こったのかという点に注目したい。

憲法全体をみて「改正する必要がある」と答えた五三%の人に対して、「それはどうしてですか」という設問があった。「九条に問題があるから」はわずか七%にすぎず、「新しい権利や制度を盛り込むべきだから」が二六%(四分の一以上)に達し、回答者全体の一三%強を占めた。ただし、新しい制度(例えば首相公選制?)に対する賛成分も考慮すれば、この数字のすべてが新しい権利に対する賛成と見るわけにはいかない。しかし別の設問である「知る権利やプライバシー権、環境権を憲法に盛り込むべきだという意見」に対して、回答者の反応が賛成四六%(ちなみに反対も四六%)だったことも併せ考えると、改憲賛成五三%と九条改憲反対六〇%という数字の差を生み出した大きな要因として、新しい権利を重視する人々の存在があると見て間違いあるまい。

二〇〇七年に向けた改憲派の攻勢を押し返す、国民投票の帰趨を決するカギは、新しい権利を憲法に入れることに心を動かされる人々が、改憲で新しい権利が盛り込まれても、九条が「改正」されて日本が「戦争する国」になってしまったら、それらの権利も、ほかの権利同様、有事法制の下で吹き飛ばされてしまうことを理解して、改憲そのものに反対する姿勢を明確にするよう、私達が格段に働きかけを強めることにあると確信する。

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