アジアカップと日中関係

2004.08.08

*2004年8月7日に行われたアジアカップ決勝戦は、日本対中国で行われ、重慶、済南での試合で中国人観衆から激しい反日的反応にさらされたこともあり、首都・北京での試合がどうなるかについては、日本のマス・メディアが始まる前から大々的に取り上げていました。

 私は、次男の影響もあり、すっかりサッカーにはまっています。ドイツにワーキング・ホリデーに出かけた次男とは、メールを通じて、アジアカップ及び中国人サポーターの反日姿勢・行動について、意見交換をしてきました。

次男は、事情はどうであれ、スポーツに政治を持ちこむのはおかしい、中国人サポーターの振る舞いはスポーツを愛するものとして許されるものではない、というのが基本的立場です。それに対して私は、基本的には同感だけれども、日中関係においては、日本が中国に対して侵略戦争を行ったことについての真摯な反省を行う意思がないどころか、居直る姿勢を強めていること(その集中的表現が小泉首相の靖国参拝)が、広範な中国人の対日感情を悪化させる根本的原因になっていること、中国人サポーターのそれ自体としては許されない姿勢・行動の背景にも、そういう根っ子の問題があることを、私たち日本人は直視しなければいけないのではないか、というようなやりとりをしてきました。

その次男は、優勝戦直後の自分のHPで、次のように記していました。

「8/7:優勝ーー!

今まで、ずっと各スポーツ新聞のHPの随時更新を見てたよ!!

優勝おめでとうー!中国寄りのジャッジだったらしいけど、そんな中、よく頑張ったよね!!ビデオを見るのが楽しみ♪

ブーイングは相変わらずスゴかったみたいだけど、この大会をきっかけに、 日本人がアジアにおいて「日の丸」と「君が代」が意味するものは何なのかを考えられるようになったら良いな☆

もちろん、あのブーイングはスポーツマナーとしては最低なんだけど。

ちなみにオレはあの国歌(私の注:「君が代」)が流れてる間は、絶対にチャンネルを変えてる。大嫌いだから。

友達になった中国人のみんなと、今回のことは絶対話そう!

ここにナチスの過去をきちんと見つめているドイツの方を加えて話をしたいな〜☆

さらに、戦争絶対非参加の姿勢を持つ、スウェーデンの方が加わったら…☆

…英語だな…英語もやらなきゃ!」

以下は、私が今朝(2004年8月8日)、次男に送ったメールの内容です。文中の「アッ君」とは次男の愛称です。「パパ」とは私のことです。

今朝のニュースによると、試合後も中国人のサポーターが警官隊とにらみ合ったり、会場を後にしようとした日本の大使と公使の車が襲われ(?)、公使の車の後ろのガラスが割られたらしい。また、これは映像があったけれども、中国人のサポーターが紙で作った日の丸を焼く等の行動もあったそうだ。さらに、日本人サポーターの安全確保のために、試合終了後も会場に足止めになり、中国側が20台のバスを用意して、会場を後にすることになったという。

中国側も、中国青年報で「中国人は日本を見ているが、世界は我々を見ている」という論評を出して、中国人サポーターに節度ある姿勢を懸命に呼びかけ、人民日報(両紙とも全国紙)もマナーある応援を訴えていたけどね。

パパは、アッ君の言うこと(スポーツの世界には、政治の問題は無関係である)も分かるけど、2008年までの4年間に日中政治関係がどの程度修復されるかに、(中国人の日本に対する態度・姿勢が変化するかどうかの)すべてが掛かっていると思う。このままで行くと、オリンピックでは日本に対してだけ中国人の憎悪が向けられるという形で、日中関係の問題点が世界にさらけ出されるということになるだろう。日本の保守政治に、歴史問題に関して自分たちの認識を根本的に改めることが問題解決のカギであることについての認識も姿勢もない以上、こういう形で世界に問題の所在が曝されるということになるのは、日中関係の改善にとっては、悲しいけれども、他に方法がない、ということかもしれない。

公明党は、問題の原因が靖国にある以上、公的慰霊施設を設けることで、原因を除去することを考えるべきだ、と言い出している(その限りでは正しい対応)が、そのことに対しては自民党から早くも激しい反発の声が上がっているという。

マス・メディアの報道ぶりだけを受け取る日本人の多くは、「中国には2008年のオリンピックを開催する資格はない」とか、「中国人サポーターの反日感情は、中国の歪んだ歴史教育のせいだ」というような安易な受けとめ方を、そのまま受け入れてしまうだろう。そのことがまた、日本人の対中認識を更に歪める方向に働く要素になるという最悪の悪循環がまた起こるだろうね。

決勝戦の試合中は、ひたすら日本を応援することに夢中になっていたパパだけれども、試合が終わった今、今回の試合によって、小泉首相の靖国参拝を最大の原因として、西安の「寸劇事件」、珠海の「集団買春」事件、東北地方での「毒ガス遺棄事件」と、日中関係(特に一般の中国人の対日感情)を逆なでする事件がすべて日本発であることに、本当に重苦しい気分を味わわされているよ。

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