日本人外交官の殺害と日本のとるべき政策

2003.12.04

*日本の外交官がイラクで殺害されたことをきっかけに、自衛隊のイラク派遣問題が大きく議論されるようになりました。国民的に行われるべき議論のあり方について問題提起したいと思います(2003年12月4日記)。この文章は、共同通信社から配信されることになっていますが、そのため1200字という字数制限もあり、テロ・ゲリラ問題にどう対処するのか、といった問題には触れる余裕がありませんでした。この問題については、以前にも書いたことがあるので、それらを参照してください。

2人の日本人外交官の殺害という痛ましい事件について考えるとき、私たちは、少なくとも3つの点をしっかりと認識しなければならない、と私は思う。

まず、この事件はまったく起こるべくして起こった、ということだ。この事件の第1報を知ったときの私の第1印象は、ショックでもなんでもなく、「ついに来るべきものが来た」という感慨だった。

アルカイダはかなり前から、対米協力を進めるいくつかの国を名指ししてテロ攻撃を予告していた。その中には日本も含まれていた。イラク国内のゲリラ戦でも、ゲリラ側の攻撃対象は対米協力国の人間を狙い撃ちする傾向をハッキリ強めてきている。

ここで私たちが考えなければならないことは、「対米協力をすること」がテロ・ゲリラ攻撃の最大の理由になっていることだ。直ちに次の問題を考える必要が出てくる。

対イラク攻撃・占領に執着するアメリカに対する協力が国際正義・国際法にかなったことであるならば、私たちはその攻撃・占領に対抗する暴力に対して毅然とした態度で臨む必要があると、私は考える。しかし、最大の問題は、アメリカの行動は国際正義にも国際法にもかなっていないという点にある。

アメリカの対イラク戦争は、ブッシュ政権による先制攻撃戦略の最初の発動だ。先制攻撃は、国際的に不正義と認識されたがゆえに、国際法で固く禁じられた武力行使である。周知のとおり、国連安保理は、広範な国際世論の戦争反対を背景に、アメリカによる先制攻撃に対し「お墨付き」の決議を行うことを拒否した。アメリカの戦争は国際正義・国際法に反することをしっかり確認しよう。

そうしたアメリカの軍事行動に対する協力は、当然に国際正義・国際法に違反する行為だ。対米協力に踏み込む日本は正にそういう重大な行為をとるということになる。したがって、その行為をとる日本が、対米憎悪を活動のエネルギーとする勢力による攻撃対象とされるのは、正に「自ら招いた種」である。

アルカイダは、日本が自衛隊をイラクに派遣すれば、東京を標的にするテロを行うことを揚言している。額面どおりに受け取るべきだ。新幹線、山手線、東海道線など、わずかな量の高性能爆薬で甚大な被害を受ける対象は、東京には密集している。つまり、自衛隊派遣を許すことは、多数の日本人が犠牲になることを受け入れることと同義である。

最後に、では日本はどうするべきか。対米協力にのめり込むのではなく、国際正義・国際法違反のアメリカの侵略戦争をやめさせるために行動すること、これ以外にない。

そのためには、国民の犠牲を顧みようとしない小泉政治にストップをかけなければならない。国内世論はひろく自衛隊のイラク派遣に反対である。私たちがするべきは、反対の世論の声をもっと強力な具体的な形で示し、小泉政治に引導を渡すこと以外にない。

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