衆議院総選挙の結果について

2003.11.11

総選挙の結果は、残念ではならないが、私の予想した最悪の結果に終わった。いくつかの感想を記しておかなければならない。

1.多くの国民は政治に絶望していること

投票率の低さ(戦後史上2番目の低さ)が何よりもそのことを端的に物語っている。これだけ政治経済のあり方が問われている時期はないというのに、そしてなかんずく小泉政治の是非がこれだけ厳しく問われているというのに、そしてこれがもっとも重要なことだが、迫りくる政治経済危機が国民生活を直撃することは多くの国民がうすうすにせよ感じているに違いないというのに、やはり国民の40%強が棄権行動をとったというのは、いかに中央の政治が国民の不信を招いているかということを示しているとしか考えられない。それなのに、各党の第1リアクションで、まったくこの点に関する反省の言が出てこなかったということは、いかに彼らの感覚が国民のそれと乖離しているかということを余すところなく物語っている。

2.多くの国民は日本の将来に対して展望を見失っていること

多くのマスコミが、今回の選挙は政権選択が最大の争点と決めつける矮小化を行ったために、本来の最大の争点たるべき日本国家の進むべき道を選択する選挙という性格が国民に認識されず、多くの国民は、通常の選挙としての関心しか持てず、その結果、日本の進むべき方向について考えることができなかった。

私は、今回の選挙は端的に言って、「戦争する国家」になるのか、「平和に徹する国」としての道を歩むのか、が最大の問題だったと思っている。具体的にいえば、改憲を許すのか許さないのか、であり、もっと端的に言えば、第9条改憲を許すのか許さないのか、画商面から問われるべき選挙であった。共産党と社民党は、この問題を争点化しようとしたが、マスコミが作った流れの前には国民にほとんど浸透しなかった。

しかし重大なことは、自民党の選挙公約及び民主党のマニフェストにおいては、「改憲」「創建」が盛り込まれていたということ、つまり、両党とも、改憲に対して基本的に積極的であるということなのである。今回の選挙結果を受けて、改憲への足取りは速まることが十分予想される。その時になって国民があわてても、改憲を目指す勢力は総選挙の結果を引き合いに出して、自らの立場を正当化するであろうし、それに対して国民は「知らなかった」というわけにはいかないのである。

3.国民の少なくない部分が「平和」の問題に関心を失っていること

私は、この数年、様々な集会にお邪魔する中で、国民の「平和」問題に対する関心が薄れつつある状況を強く感じてきた。私が呼ばれる集会の多くは、それでも多くの一般の国民と比較すれば、憲法問題や平和の問題に強い関心を持っている人たちの集まりが多い。それにもかかわらず、90年の湾岸危機・戦争以来、保守政治が意識的に進める急ピッチな日本の右傾化さらには軍国化への動きの中で、対応が受け身になり、さらにはなすすべもなく状況の進展を見て過ごさなければならないことに、一種の無力感を抱く人々が、年を追うごとに増えてきたという実感を味わっている。

手前味噌になるが、私に言わせれば、今回の総選挙で自民党が「改憲」を、そして民主党が「創建」を公然と打ち出したことは、早くから予想されていたことだったし、私はかなり早い段階から、平和憲法を活かすことを願う人々がこういう動きに対して警戒心を深め、素早く行動して、国民の間に改憲に反対する声を広げる活動をする必要があることを訴えてきたつもりである。しかし、ことここに至ると、自分の無力さを含め、平和憲法を活かそうとする人々の間のマンネリズムとでも言う以外にない無気力さが今回の選挙結果に反映したことを改めて感じないわけにはいかないのだ。

4.私たちはどうすべきなのか

問題はこれからである。小泉首相が3年以内に自民党の改憲案を、と指示したことに見られるように、改憲を目指す動きは早まることはあっても、その逆はないと見ておかなければなるまい。すでに次の通常国会では教育基本法の「改正」が確実に日程に上っている。そうした改憲勢力の動きに対して、私たちの対応は余りにも受け身的であり、かつ、求心力すら生まれていない厳しい実情にある。

日本が「戦争する国」になってもいいのか。次の世代を再び戦争と隣り合わせの境遇におくことになっても、私たちはなんら痛痒を感じないのか。もっと分かりやすく言えば、自分の子どもや孫が戦争にかり出されることになっても平気なのか。私は、日本に住む多くの人々がいい加減、目先のことだけではなく、日本の将来のあり方を見据えて自分自身のこれまでの成り行き任せの発想から距離を置いて考えてくれることを願わざるを得ない。幸い、来年には参議院選挙がある。まだまだ、私たちの意思表示をハッキリ表明するチャンスはあるのだ。「成り行きだから」と考えることは、もうやめにしよう。私たちは主権者なのだから。

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