ショックな真意の発露

2002.07

*この文章は2002年の7月の終わり頃に書いたものです。

 以下のことは、ある集会におじゃましたときと大学の授業の時に出くわした悲しいリアルな出来事です。

有事法制を阻止する集会で発言を終えて質疑に入ったときのことでした。ある女性から「ついに、やっぱり」という感慨でお聞きする羽目になった質問に出くわしたのです。

その方は確か中学と高校にお子さんがおられる女性でした。「有事法制が通ってしまったら徴兵制になるだろうか。徴兵制になったら、中国や韓国の大使館に亡命を求めることはできるだろうか。」そんな趣旨の質問でした。

私は、こう答えました。「有事法制が通ってしまったら、ということをもう今から考えているときなのでしょうか。有事法制が通ったら、自分の子供だけはなんとかしたい、という気持ちで動くという気持ちはあまりにもあきらめが先に立った話ではないのでしょうか。どうして、そういうことにさせないために、有事法制を通させないぞ、と考えられないのでしょうか。」

残念ながら、その女性からは元気のいいお返事は戻ってきませんでした。

授業で出くわしたのは、在日朝鮮人学生のメモにおける感想文でした。「アメリカ、北朝鮮、日本が戦争すると、僕たち在日朝鮮・韓国人はどうなるのだろう。…国としては今は違う形となっている韓国と北朝鮮ですが、元は同じ民族。韓国側が許すわけがありません。日本に生まれ育った在日はどの立場に立つのでしょう。戦争が生み出した僕たちのような存在を、アメリカ、日本はちゃんと考えてくれるのでしょうか。」

私は、そのメモの内容をみんなに紹介しました。もちろん、一人でも多くの日本人の学生がこの在日の学生の悲痛な気持ちに接してほしいと願ったからです。何人かの学生が彼の気持ちに反応する感想を出してくれたのはわずかな救いでした。

でも、この二つのエピソードは、これから有事法制が私たちに襲いかかってくるときの前兆を示したものにすぎない、というのが私の偽りのない気持ちです。女性が示した反応は、有事法制が既成事実化するようなことが起こった場合の多くの「善意」の日本人が示す自己中心主義の反応を予見させるものでした。在日の学生が示したおののきは、昔と変わらない排他的独善的な日本が立ち現れる姿を示しています。日本に住むすべての者の闘争心をなんとかして奮い立たせたいものです。

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