「備えあれば憂いなし?」

2002.04.30

*この短文は、雑誌『クレスコ』に寄稿したものです。有事法制促進派に典型的な主張「備えあれば憂いなし」(小泉首相の発言)のウソを短くまとめました。最近少し忙しくて、有事法制促進派の主張のウソを明らかにするまとまったものを書こうと思っても時間がありません。とりあえず、この人たちの主張の一つについて、ウソのもとがどこにあるか(要するに、アメリカが戦争を始めることで日本の有事ということになるのであって、アメリカが戦争を始めなければ有事ということは起こりえない、という最初のところが隠されている)を知っておいていただく参考になると思ったので、載せておくことにしました。(2002年4月30日記)

 武力攻撃事態法など有事法制3法案が国会に提出されました。小泉首相は、「備えあれば憂いなし」だといって、有事法制の必要性を得意げに説明します。一般の受けとめ方でも、「いざといったときに、超法規的なことをするようになってはいけない」という理由で、有事法制そのものを考えることは当然(やむを得ない)という受けとめ方があります。本当にそういうことでいいのでしょうか。

アメリカはもはや、日本がゆえなくして他の国から攻められて有事が始まる戦争シナリオを持っていません。ではどんなときに日本が武力攻撃にさらされるというのでしょうか。

アメリカ・ブッシュ政権は、イラク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を「悪の枢軸」と決めつけます。イラクに対しては口実を見つけて戦争を仕掛ける方針を公然と表明しています。アメリカのメディアでは、ブッシュ政権が北朝鮮に対しても戦争を仕掛ける可能性があることを取りざたするものがあります。日本に近い北朝鮮の場合はどう物事が動くのでしょうか。

アメリカが北朝鮮に戦争を仕掛ける。北朝鮮は自衛のために反撃する。反撃の矛先は、アメリカの戦争に全面協力する日本にも向けられる。そこで日本に対する武力攻撃になる。日本は、日本を基地とするアメリカが安心して戦争が続けられるようにするために、その反撃に備えるための有事法制を作る。

なんのことはありません。アメリカが戦争を始めるから、アメリカに全面協力する日本はその報いを受けるということなのです。有事法制3法案とは、日本が侵略戦争の片割れになることに備えるためのものです。アメリカが戦争できるようにするために、国民の生命や権利を奪いあげようとするものなのです。

有事法制を作れば、アメリカは心おきなく戦争を仕掛けることになる。「備えあれば憂いなし」ではありません。「備えあれば憂いあり」なのです。有事法制に断固反対しましょう。

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