2001.10.28
*以下は、ある集会でお話しする際の下敷きにしたレジュメです。9.11事件について、核兵器との係わりについても触れるように、とのご依頼があり、確かに重要なポイントですので、取り入れたものです。レジュメだけでは、あまり私の考えをお伝えできないと思うのですが、今回の事件に関して考える必要があることは何か、また、どのように見ることが求められているのか、について視点を提供する材料になると思い、掲載します(10月28日記)。
1.「9.11事件」をどうとらえることが求められているか
(1)「テロリズム」とは何か?:「犯罪」に関する2つの視点
①すべての「犯罪」と同様、「法と正義」を実現しなければならないこと
(参照)1988年のパンナム機爆破事件に対する国際的取り組み
②再発の可能性をできる限り防止するための取り組みが必要であること
(参照)国内で犯罪が起こった場合の対応
(2)ブッシュ政権の「戦争」としての扱い方をどう見るか?
①事件の政治的本質:米欧の対中東政策に対する絶望的異議申し立て
⇒「戦争」という位置づけの根本的誤り
②事件の経済的本質:なぜイスラム諸国の大衆的支持を集めるのか
(参照)ウォルフェンソン世界銀行総裁発言
③初動段階での決定的誤り
(参照)海南島事件
*根底にあるもの:アメリカの強圧・軍事解決志向
*TV映像のインパクトによる「自主規制」
*関係諸国の「お家の事情」
*安保理(決議1368)
(3)軍事力行使は問題解決になるか?
①軍事「解決」は本質的な問題解決をもたらさない
*恐怖の支配に耐えられるか?
②長期化は最悪の事態を招く
*アメリカの強引な多数派工作のツケは?
*問題の本質的解決の可能性を遠ざける
③「市民を巻き込まないことに配慮」することで免罪符になるか?
*ハイテク兵器の「無謬性神話」にだまされてはいけない
2.事件が持つ核兵器問題とのかかわり
(1)BMDと米ロ関係
①事件を受けたブッシュ政権の対外政策の「変化」(?)
*事件直後の臨界前核実験の強行
*BMDに関する指導者の発言
②事件を受けた米ロ関係の変化
*ブッシュ大統領/パウエル国務長官発言
*11月のプーチン訪米とBMD
(2)核兵器を抱える南アジア情勢
①目先にとらわれたアメリカの政策
*事件で急転換した南アジア政策
②パキスタン情勢のいっそうの不安定化
*核兵器のコントロール
③カシミール問題とインド
*インドとパキスタンの軍事衝突の危険性
(3)アメリカの核兵器使用の危険性
*「あらゆる軍事的選択肢を排除しない」
*ブッシュ大統領指令
3.事件を受けた日本の国内情勢をどう考えるか?
(1)保守政治の改憲志向と「9.11事件」の関係をどう見るか?
①アメリカの対日軍事要求にコミットした小泉首相
*アメリカの対日軍事要求の内容
*5月の小泉訪米の意味
②「9.11事件」を奇貨とする発想
③改憲(解釈改憲)への布石
(2)「テロ対策特別措置法」と憲法第9条との関係をどう見るか?
(「違憲ではない(集団的自衛権の行使ではない)」と強弁する根拠とその奇弁性)
①「国連憲章の目的を実現するための国際協力」なのか
②「集団的自衛権」行使ではないのか:国際的に通用しない主張の乱用(小泉首相の言い逃れと居直り)
*「武力行使はしない」(←「武力行使との一体化」議論)
*「戦闘地域では活動しない」(←「後方地域支援」議論)
*「常識の範囲内」
*「前文と第9条のすきま」
(3)保守政治の政治シナリオをどう見るか?
*本格的国内有事法制
*特別法ではない一般法を可能にするための条件作り:改憲
(4)海外派兵は何をもたらすか?
①アラブ・テロリズムの標的となる立場へ自らを追い込む危険性
*「ブッシュの暴走の道連れにされる」という自覚・覚悟があってのことか?
*アジアにおけるアル・カイダの影響力浸透(報道)
②アジア諸国の対日不信を決定的にするもの
*靖国・教科書・海外派兵
*小泉訪中・訪韓の意味
③出口戦略のないブッシュ政権への埋没
*軍国主義・日本の二の舞を演じる危険性
*既成事実の一人歩きの危険性
(5)海外派兵に代わる選択はあるか?
①アメリカの暴走に歯止めをかける役割を担うこと
②問題の本質的解決を目指すイニシアティヴ
*(事件)国際的な「法と正義」の実現
*(土壌根絶)先進国が牛耳る国際経済・国際政治のあり方の抜本的見直し
③大国の「国連」を国際社会の「国連」に生まれ変わらせるための行動
(6)事件に関する核兵器廃絶運動の課題