雑誌『みんなのねがい』への寄稿文

2007.03.30

雑誌『みんなのねがい』への寄稿文です。ミクのことを取り上げて一文を書くようにという編集者からの依頼があったので、立ち止まって考えてみました(3月30日記)。

私にとって、孫娘・ミクとはどういう存在でしょうか?今の医学では直る見込みのない小頭性骨異形成性原発性小人症と医者が診断した障がいがミクにあると分かった頃の私は、ただただミクがかわいそうで、不憫で、正直、どうしてよりにもよってミクがこのような障がいを背負わなくてはならないのかと、世の中の理不尽さに、胸が押しつぶされていました(祖父の私ですらそうですから、ミクの母親である娘ののりこの気持ちはいかばかりであったか、想像もできません)。

 でも、今の私は違います。ミクと接する中で、私はミクの着実な発達にいつも新鮮な驚きと感動を味わい、ミクというかけがえのない存在から、人間として生きること、つまり人間の尊厳の大切さを教えられています。健常の子どもであれば何の苦もないことも、ミクの場合には一つ一つ段階を追っていかなければなりません。健常の子どもより「遅れ」ます。でも、ミクはミクのペースでいいのです。とてもできるとは考えもしなかったことを、ミクは着実にクリアしていくのです。ミクがどこまで発達し、私はどれだけ驚き、感激することになるのかは分かりませんが、私は、一人の人間としてのミクにこれからも真っ正直に向き合い、ミクからもっともっと多くのことを学んでいくに違いありません。

私は人生における学びを通じて、人間関係から日本政治、国際関係に至るまで、ありとあらゆる問題を考える場合の拠り所(モノサシ)として、人間の尊厳という普遍的価値に合致しているかどうかで物事を判断する思考方法を身につけてきました。しかし今、ミクを得て、ミクという人間の尊厳の重さをずっしりと受けとめるようになって、人間の尊厳は単に私の思考方法の中心をなすだけでなく、私の中で血肉化しています。ミクの前途は平坦ではないでしょうが、ミクが人間の尊厳を全うする人生を過ごせるよう、私も心を込めて見守っていきたいと強く思います。