岩国市長選挙の結果に思うこと

2008.02.11

2月10に投票の岩国市長選挙の結果、47081票対45299票という大接戦でしたが、空母艦載機移転に反対していた井原勝介氏が移転容認派の候補に敗れるという最悪の結果に終わりました。まったく残念でなりませんし、この結果は単に岩国だけではなく、隣接する広島、さらには米軍移転問題を抱える他県の闘い、そして日本のこれからの平和と安全の問題にも深刻な影響をもたらすだろうと考えざるを得ません。

選挙での最大の争点は、国の理不尽を極める札束ひっぱたき政策(守屋前次官発案という)を受け入れる(基地機能移転を受け入れる)のか、地方自治と民主主義を守るのか(これ以上の移転は認めないし、騒音被害はごめんだ)、という点にあったことは間違いありません。わずかな票差ではあったにせよ、岩国市民は前者をとってしまいました。私は、市民は最悪の選択をしてしまったと思います。嘉手納、厚木などですでに証明済みの騒音被害のすさまじさは、これから岩国市民に襲いかかるに違いありません。しかも、騒音問題に対する国の施策には何ら幻想を持つことができないことも、嘉手納、厚木などで明らかなのです。

しかし、私は今回の選挙ではもっと根本的な争点をめぐって闘われるべきだったと思います。それは、艦載機が大量に移転することになれば、岩国はアメリカの極東最大の米軍基地になるということであり、アメリカがアジアで仕掛ける先制攻撃の戦争の最も重要な基地になるということです。そして、岩国は対米戦争協力の日本における一大拠点になるということです。
この点では、井原前市長が元々は米軍基地と共存する立場で市政を運営してきたことから、今回の選挙でも最大の争点化することが妨げられるという事情があったのです。その結果、「これ以上の基地負担・騒音招来」是か非か、という形での問題提起しかできず、結果として「騒音か財政好転か」というふうに争点が矮小化されることになってしまったと思うのです。
もし井原氏が「岩国はアメリカの対アジア戦争の最大の作戦発進基地となってしまっていいのか」という問題の核心を中心において選挙を戦っていたのであれば、「騒音か福祉か」というような争点ではなく、「平和か戦争か」をめぐっての文字通り全国規模の闘いになっていたと思います。また、そういう争点が明らかになっていたならば、岩国市民の政治意識も高まり、投票行動に大きな影響が現れたのではないか、と思うのです。

今回の選挙結果は、米軍基地の機能移転問題に直面しているほかの市町村に対しても、これから深刻な影響が及ぶことが懸念されます。国はこの「勝利」を背景に圧力を強めるに違いありません。今回の岩国の選挙に対しては、全国各地の関心も高かったと聞いていますが、やはり国ぐるみの闘いとなるまでには及びませんでした。

最後に、今回の結果は、国際平和都市を標榜し、「ノーモア・ヒロシマ」をいわば市是ともする広島に対しても様々な試練を生み出すことを考えておかなければならないでしょう。市の南西にこれから極東最大の軍事基地になる岩国、南東に増強著しい海軍力を擁する呉に囲まれている広島は、自らの「平和」の説得力を何によって確かなものとしようとするのでしょうか。ひたすら「核廃絶」だけを念仏のように唱えているだけでは、私は、「戦争する国」に向けての足取りを格段に強化している日本全体の流れの中に広島が埋没してしまうのは時間の問題だろうと考えざるを得ません。「広島よ!奮起してくれ!!今こそ、日本と世界の平和の灯台としての存在を確かなものにするべく立ち上がれ!!!」これ以上広島が惰眠をむさぼるのであれば、遠からず瀬戸内海に米原子力空母が入り込み、広島港を睥睨するという光景が現実になることを覚悟しておかなければならないのです。本当にそれでいいのですか?