「被爆医療関連施設懇話会」(広島県医師会が組織)に参加して

2006.05.27

24日に広島県医師会が組織した「被爆医療関連施設懇話会」の初会合が行われ、私も委員の一人として出席しました。その案内が来たときには、どうして私なのだろうという疑問もあり、医師会の方に確かめたりもしたのです(その過程で、この懇話会の設置には放射線影響研究所(放影研)が深く関わっていること、というより仕掛け人は放影研であることが分かりました)が、私が委員となることを承諾した本当の理由は、その案内に添えられてきた「懇話会設置の目的」という文書の内容にありました。 そこには次のような記述がありました。

「今後の被爆者の減少に伴い、被爆医療の推進が厳しいものとなって行くことが予想される。このような状況を考えると、将来の被爆医療関連施設は従来の被爆者を対象とした研究、臨床のみならず、幅広く放射線の健康影響につき研究を行う責務があると考えられる。例えば放射線影響研究所などの現在までに蓄積された膨大な研究データを活用し、今後起こり得る原子力発電所などの事故ならびに核兵器を使用したテロ・戦争の被害に速やかに対応できるノウハウを提供することも視野に入れた新たな取り組みを目指すべく、今後一層の被爆医療関連施設の連携が求められている。」

私は一瞬目を疑いましたが、次の瞬間には「来るべきものがついに来た」とも思いました。このままではじり貧に向かうことに危機感を抱く放影研(かつてのABCC)が、組織防衛のために悪魔(アメリカと一体になって「戦争する国」に邁進する日本の保守政治)に身売りすることを考えていることを直感したからです。私は、放影研の自己防衛のために広島そのものの魂・心が売られることがあってはならないと切実に思いました。それを阻止するためには虎穴に入るしかないと思ったのです。

当日の挨拶で、広島県医師会長は上記の点をそのまま読み上げました。その後の意見交換において、様々な方が促されて意見表明を行いました。しかし、どなたも以上の問題点に触れることがありませんでした。幸いに私にも発言の機会が与えられた(指名がなければ、手を挙げてでも意見表明するつもりではありましたが)ので、私は、「ノー・モア・ヒロシマ」「ノー・モア・ウォー」を訴える広島が核戦争を前提にしてその蓄積の利用を図るというようなことは決して許されてはならないということを力説しました。

私の後に発言された方が広島の蓄積を世界で起こっている低線量被ばく問題に活用することの意義を説かれて、私は大切なことを言い忘れていたことに気づかされました。そうです。広島の「ノウハウ」は、世界各地に広がっている被ばく問題にこそ活用するべきだということです。日本の保守反動政治に奉仕するためではなく、世界の被ばくに悩み、これからその被害に見舞われる危険性のある人々のためにこそ広島は目を向けるべきなのです。それこそが広島の思想の発露でなければなりません。

私は、自分の発言には責任を持つとともに、広島の思想化という点で自らの発言が不十分であったことを反省しながら帰りました。ただし、会合が終わった後、広島県被爆二世団体連絡協議会及び広島県被団協のお二人から、「よくも言ってくれた」というエールを送っていただいたことは、自分の発言が決して誤ったものではないことに確信が持てるという意味で、極めて心強いものでした。