原水爆禁止運動に深く関わっておられる方からのお悩み

2005.10.31(11.06若干追記)

先日、広島で原水爆禁止運動に深く関わっておられる方から悩みを聞きました。中国や韓国との交流が進んでいる喜ばしい状況があるのだけれども、彼らとの間で日本の侵略戦争の加害と被爆という被害とを結びつけて語ることができない、ということでした。いうまでもなく、中国や韓国には原爆投下によって両国の解放が早まったという評価がある状況の下で、広島の原爆体験について理解してもらうことについて難しさがあるという問題です。その方は、これまでは、加害の問題には触れないでほしい、ということで対応してきたとも話されました。しかし、そのような接し方では、これからの両国との交流を進めていく上で困難があるということを明確に意識されていました。

私は、次のように言いました。日本の侵略戦争の結果として広島・長崎に対する原爆投下があったという歴史の事実としての因果関係を認める。その上で、核兵器の非人道性、国際法違反性の本質について認識の共有をはかる。つまり、歴史認識と核兵器の反人道性・国際法違反性の認識の二つを弁証法的に共有するということです。

韓国においては、強制連行で広島にいた多くの韓国の方が被爆したという事情があります。その点についての受け止め方がどうあるべきかということを通じて、韓国国内においては、「原爆投下が韓国の解放を早めた」という認識だけではすまないという問題意識が確実に市民運動の中で成長しています。

中国における核武装は、あくまでアメリカの対中侵略戦争を「抑止」するための必要悪という位置づけがあります。核兵器を肯定するというアメリカ的発想ではないのです。

私たちの中国、韓国に対するアプローチにおいても、両国におけるこうした状況をふまえたものになる必要があると思います。つまり、私たちが歴史認識において曇りがないことを中国及び韓国の人々が理解すれば、核兵器の反人道性、国際法違反の本質についての認識を共有することはできるはずだし、核廃絶という目標においてアジア諸国との共通認識を実現することができると、私は強く思います。