8月6日が近づく中で興味深い世論調査

2005.07.24

8月6日が近づく中で興味深い世論調査が続いています。一つは、7月23日付の中国新聞が報道した広島での被爆者と若者を対象にしたアンケートの結果であり、もう一つは翌4日付の中国新聞が報道した共同通信による日米世論調査の結果です。 前者のアンケートに関してとくに注目された設問は、「広島、長崎への原爆投下の是非について、どうお考えですか?」でした。回答は、「どんな理由があれ、投下すべきではなかった」が被爆者45.4%、若者40.4%、「非人道的な行為で許せない」が被爆者13.9%、若者23.2%、「戦争中だからやむを得なかった」が被爆者10.2%、若者12.6%、「戦争を終わらせるためには仕方がなかった」が被爆者5.3%、若者10.1%、「アジアへの侵略の結果である」が被爆者1.0%、若者5.0%、「分からない」が被爆者3.7%、若者8.4%、「無回答」が被爆者13.6%、若者1.3%(「その他」が被爆者0.3%、若者5.8%)となっていました(この設問に対して被爆者の13.6%が無回答であったことに、私は被爆者の方々の思いがかえってにじみ出ているように感じました)。

後者の世論調査に関しては、広島、長崎への原爆投下について、「必要なかった」が日本75.3%、アメリカ29.2%、「戦争の早期終結のためにはやむを得なかった」が日本20.3%、アメリカ67.6%と大きく分かれました。しかし原爆投下を肯定するかどうかについてのアメリカ人に対する質問では、「強く賛成」24%、「賛成」24%、「反対」23%、「強く反対」24%と賛否が拮抗しました。また、将来核兵器を使った攻撃が正当化されるかどうかについては、「正当化されるようには思わない」が日本82%、アメリカ69%でした。

まず強く感じたのは、二つのアンケート・世論調査に共通することとして、日本人・広島の被爆者及び若者の中にもかなりの割合で原爆投下は何らかの意味でやむを得なかった、と答えた人が20.3%、15.7%、22.7%とかなりの割合でいるという点でした。さすがに被爆者の数字は他のグループより低いですが、しかし、今日でもなお5人に1人前後の日本人がそう見ているということで、私は複雑な思いになりました。

前者のアンケートで注目されたことは、「非人道的な行為で許せない」と答えた人が被爆者でも13.9%、若者に至っては23.2%(約4人に1人)もあったことです。「報復ではなく和解を」とするのが広島市の立場であり、「過ちは繰り返しませぬから」と原爆慰霊碑の碑文にありますが、アメリカの原爆投下の責任を明確にすることを求める被爆者、若者も少なくないことは注目すべきことだと思います。

前者のアンケートの結果でもう一つ気になったのは、「アジアへの侵略の結果である」と答えた被爆者、若者の数が非常に低かったことでした。加害の結果としての被害であったという受け止め方は非常に大切(その過去を繰り返さないようにするための前提となる認識)だと思うのですが、そういう認識が根づいていると言えるにはほど遠い状況であることが気になります。

後者の世論調査で、将来の核廃絶に向けて手がかりを得たように思われたのは、アメリカ人の多くが原爆投下はやむを得なかったと答える一方で、投下そのものについては賛否が拮抗し、また将来の核兵器の使用については69%ものアメリカ人が正当化されない、と答えていたことでした。共同通信の取材に対しても答えたことですが、アメリカ政府(ブッシュ政権)の攻撃的な核戦略に対して、アメリカ人は健全な常識を持っていることが窺われるのです。私は、核廃絶実現のカギはアメリカの核政策を改めさせることにあると考えており、アメリカ人の核兵器使用に関する考え方が以上に紹介したような内容であることは、私たちがアメリカ世論に働きかけを行う余地が大きいことを示す有力な材料であると意を強くする思いになりました。