岩国基地問題に関する世論調査の結果(中国新聞)

2005.07.17

7月16日付の中国新聞に岩国基地問題に関する世論調査の結果が大きく報じられました。空母艦載機の夜間発着訓練を含む厚木基地の機能移転が焦点であるため、調査は離着陸訓練で影響(特に騒音被害)を被ることが予想される山口県の岩国市、由宇町、和木町、広島県の大竹市、宮島町、大野町の2市4町の住民を対象に行われました。

私がまず深く考え込まされたのは、米軍岩国基地の存在に対する住民の認識と基地機能移転に対する住民の反応のギャップの大きさということでした。米軍基地の存在は日本の安全のために「必要」「やむを得ない」が合わせて69.0%という高率であり、しかも基地機能移転への反対も75.9%という高さを示しているのです。総論(日米安保)賛成、各論(基地機能の強化受け入れ)反対という、日本全体を通じる傾向がこの調査でもまざまざと示されています。日米安保が日本の安全にとって必要という作られた神話が今や岩国基地を抱え込む地域の住民の間にも定着してしまっていることには暗然とする思いです。米国(特にブッシュ政権)の危険を極める軍事戦略を直視するのであれば、このような神話がはびこることは考えられないはずです。

米国に対する不安がないわけではないことは、基地機能移転に反対する理由を見ると分かってきます。反対の理由としては、「騒音や事故の危険性が増す」80.4%、「テロや米国が第三国と戦闘状態になった際、標的となる可能性がある」61.3%、「今以上の岩国基地の機能強化は住民生活を脅かす」52.7%が上位3位だったのです。おおむね予想範囲内の結果だったといえるでしょう。しかし、「テロや米国が第三国と戦闘状態になった際、標的となる可能性がある」61.3%という数字は、米国の戦略に従うとどういう結果が待ち受けているかということについて、かなりの人々がうっすらとではあれ、気になりだしていることを示していると思います。人々がこの不安感をもっと直視し、そこから日米軍事同盟の危険性に関する認識を高めていけば、総論賛成・各論反対の矛盾を健全な方向で解決する(日米安保反対の世論を高める)ことは決して不可能ではないことを示唆しているとも思うのです。

居住地別では、騒音や事故に対する不安が、山口県側(78.8%)よりも広島県側(83.3%)のほうが高かったことが注目されます。そういう受け止め方は、「基地機能の強化に反対している岩国市に、何を求めますか?」という設問に対して、「岩国市だけの問題ではないことを強く認識してほしい」42.5%がトップを占め、「山口県や広島県、周辺市町村に、何を求めますか?」の設問に対しても、「岩国市や山口県だけの問題ではないことを、強く認識してほしい」42.4%とやはりトップを占めていることにつながってきます。これからの運動のあるべき方向性を強く示唆していると思います。

しかしこの世論調査を見て改めて強く感じるのは、基地問題と日米軍事同盟の危険性とを結びつけて考えるという視点の重要性ということです。この視点が、基地周辺の住民の間でだけではなく、国民の間にしっかり据えられないと、基地反対闘争が国民的規模で広がることはできない、ということです。7月13日付の沖縄タイムスによれば、12日に九州大学で講演した沖縄県の稲嶺知事は、在沖米海兵隊の削減に関し、「海兵隊を県外移転してくださいと要望している。国外ではない。県外だ。国民の大部分は日米安保体制を認めているわけだから、日本全体で見直す必要がある」と述べたそうです。日米安保を肯定するかぎり、稲嶺知事の発想は当然だということになります。私たちはいい加減、日米安保神話(日米安保があるから日本は安全だという神話)のしがらみから発想を自由にして、基地問題の根本的解決は日米安保解消以外にない、という自明の理を我がものにするべきではないでしょうか。