肥田舜太郎・鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威ー原爆から劣化ウラン弾まで』(ちくま新書)を読んで

2005.06.21

肥田舜太郎・鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威ー原爆から劣化ウラン弾まで』(ちくま新書)を読みました。広島の体験を普遍化するという私の問題意識(6月10日付で書いた「三つの普遍化」参照)に正面から応えてくれているものでした。放射能による被曝が如何に危険かつ日常的なものであるかを実感させてくれます。原子力発電をも視野に収めなければ、本当に被曝の恐ろしさに向き合うことにならないということを深い意味で再認識することもできました。

さらにこの本を読んで痛感したのは、アメリカの核政策の恐ろしいまでの反人道的本質ということです。広島・長崎も、アメリカにとっては核政策における実験の素材という位置づけしかなかったということがありありと伝わってきます。そのアメリカは、自国の国民をも巻き込み、そして劣化ウラン弾という形で世界中に被曝をまき散らせている実態が浮かび上がってきます。アメリカが核固執政策を根本的に改めない限り、そのアメリカと安易に妥協しようとする発想そのものが重大な犯罪に加担することと同じ意味を持つことを痛感します。

小泉政権に代表される日本の保守政治がそのアメリカに唯々諾々と付き従っているということは、被ばく体験を持つ日本国民として、本当に許してはならないことであることを、改めて肝に銘ずる思いです。広島が、人間の尊厳にもろにかかわるこの問題に対して、正面から向き合い、国際社会そして日本の世論に強力な発信をしてほしいと心から願います。