登山での心拍数(脈数)計測とEXCELによる分析

 

最近、手首に付ける活動量計が流行しており、日ごろ運動不足解消の動機づけとして使われる方が身近に増えてきました。

アップル社が脈拍計付きの時計をリリースしたこともあり市場は拡大しているように思います。アスリートやマラソン、トライアスロン、ロードバイクなど強い運動での心拍のモニタリングの需要も増しています。トレーニングの一環として心拍計・脈拍計はすでに取り入れられており広く普及していると考えております。

実際経験した分析結果を公表させて頂きます。

 

登山での心拍・脈拍モニタリングは役に立つ?

インターネット情報は、運動強度を心拍で見ながら負荷をコントロールトレーニングするような内容が多くあります。ランニングやロードバイクの場合は確かに「心拍数マネジメント」という負荷の指標として使っています。

実際自分にはどれぐらいの心拍数が体に良いのか知りたいところですが、ネット上で活動量計メーカーが示している内容は、科学的根拠が提示されていません。特に疑わしいのが、最大心拍数のxx%でゾーンに分けて、「瞬発力・運動能力向上」、「筋力・基礎代謝量向上」、「持久力向上」、「脂肪燃焼・体重減量」と分けている考え方です。

ランニング、マラソンやサイクリングでは、最大酸素摂取量とタイムとの強い相関関係があることが示されています。(資料) そのためタイムを伸ばすために最大心拍数から計算した、最大酸素摂取量(VO2MAX)と無酸素性作業閾値(AT値)の能力アップをトレーニングで伸ばそうという研究や指導が行われています。

その内容は登山でも当てはまるのでしょうか。実際利用し分析した結果を以下お伝えいたします。

皆様にもご自身の心拍データを分析できるようExcelファイルを公開いたします。GPS付心拍計時計があればGPX形式のファイルから、メーカー・機種問わず使えるはずです。トレールランナーのかたでも分析可能なように少し改善いたしました。

 

年齢から最適心拍数を計算するというウソ

一般的には年齢と平均心拍数が関係していることは良く知られています。

http://library.nittai.ac.jp/kiyou/docs/19-2-13-19.pdf

http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~sport/menu/staff/tamaki/edu/training.html

しかしながら、最大心拍数との関係はあまり測定されておらず、個人的な差が大きいのでほとんど参考にならないと考えたほうが無難です。

本来は実際に大きな負荷(たとえば200mを全速力で走るなど)を掛けて最大時の脈を計測すれば良いのですが、運動不慣れな人や年齢が若くない人は危険です。自分にとって最適な脈拍を知りたいというのは非常に理解出来ますが、登山の場合は、休憩無しで山頂まで登れる速度での心拍数を知っておく方が良いかと考えています。

 

心拍計が表していること

安静時と比較し、走るとか、緊張してドキドキするなど、心臓の鼓動が変化することは良く知られた現象です。意識などで簡単にコントロール出来ないものです。

心拍数があがると体内に循環する血液量が増えます。血液の仕組みは色々ありますが、主に❶必要な栄養等のエネルギーを届けるしくみ、❷必要な酸素を届ける、❸細胞に必要なホルモン等の物質、❹二酸化炭素や乳酸、尿酸などの排出運搬、❺血小板などで出血を止める。❻白血球や抗体など、細菌やウイルスから体を守る。などですが、体の負荷が高まると体が必要な量を確保するために鼓動が早まるため、体の負荷を測る目安とし心拍数は利用されています。

ここではゾーンで運動負荷を分けることはしませんが、心拍数は消費酸素量とエネルギー消費とは深く結びついているのは間違いありませんが、心拍数で「瞬発力」、「持久力」、「脂肪燃焼」まで言い切るのは正直乱暴な気がしています。

 

心拍計・脈拍計のタイプ

心拍計には実は計測方法から2つのタイプに分けることができます。心拍計(心臓からの電気を計測するタイプ)と脈拍計(血液量変化から脈数を計測するタイプ)です。普通は、心拍数=脈拍数なのですが、最後にも述べますが不整脈(脈の乱れ)により必ずしも脈拍が心拍数と一致しない場合があり、正確に計測されないケースがあります。→たとえば心臓は鼓動したが「期外収縮」の場合は、脈が打たないで飛んだように思われる場合等があります。(資料

胸に付ける心拍計は取り付けが煩わしいということもあり、腕時計のように手首につける脈拍モニタリングする機器が流行しています。

活動量計の目的は目標管理によるモチベーションアップです。しかし価格的には手が出しにくい製品です。

登山用としては、GPSと連動して計測できるGarmin社製品が一番欲しいところですが実験でのコストとしては高すぎるため今回はGarmin eTrexANT+という規格で接続できるMio FUSEという脈拍数計を利用しています。

Webで検索した結果(画像)

Mio Fuseに関する使用方法は別途ページにまとめましたのでよろしければご参照下さい。

 

EXCELによるログ分析の準備(gpxデータ取り出し方)

心拍(脈拍)ログ分析用EXCELの使用方法は、

@GPXログファイルをEXCELファイルへ変換(特殊なソフト不要)

AEXCELにログをコピー

2点だけで、非常に簡単です。

注意点としては、カシミール3Dは、GARMIN心拍データを捨ててしまいますので、GARMIN(もしくはお手持ちのGPS機器)から直接コピーしたデータを使用する必要があります。(Garminの場合はUSBPCに接続し、CurrentというフォルダーからCurrent.gpxをコピーします。)→具体的な取り出し方法とEXCELへの入力方法は、このページをご参考にしてください。

*注意:EXCELの「基本パラメータ」タグGPXデータソース(Aをご利用ください。(データソース(B)は心拍分析を行いません。)

入力タグ(A)は、GPXの項目データ名を探して自動的にデータが読まれます。

1:日時=trkpt/time

2:緯度=lat

3:経度=lon

4:高度=/ele

5:脈拍=gpxtpx:hr

 

大体どの機種も上記となるはずですが、もしGarmin以外の機種でデータが読み込まれない場合は、項目名を修正すればどの機器でも対応できるはずです。

(方法は、一度EXCELかテキストエディタ―でGPXファイルを開き、データ項目名を読み取ってください。)

なおCurrent.gpsはGARMINに保存されているすべてのログを含みますので、記録開始時に軌跡をクリアーにするか、不要なデータは入力タブにコピーする前に、別のEXCELシートで削除する必要がありますのでご注意下さい。(複数登山記録を消さずにGPSに置いている場合は注意が必要です。)

下記はGARMINからGPXファイルを取り出す例です。

garmin_gamen

USBで接続された状態で、GarminFドライブとして見えているケースです。GPSログファイルが格納されている場所は、上記Garminの下のGPXの下のCurrentという場所です。

 

心拍計・脈拍計の生データとGARMIN上データとの違い

心拍オリジナル

上記がMioFUSEから取り出したオリジナルの脈拍データです。1秒毎にデータが採られています。

(青い線は移動平均)

 

心拍ガーミンデータ

上記は、GARMINに取り込まれた脈拍データです。ログの取得間隔は数秒〜数十秒となるため情報の粒度は低下しています。また通信が途中切れている所がありデータが欠損している箇所があります。腕につけた脈拍計からリュックに着けたGPSレシーバーまで無線で脈拍データが飛んでくるため途中で切れる可能性もあります。(赤い線は移動平均)

拡大オリジナル

上記は一部を拡大したグラフです。(オリジナルデータ)

拡大Garmin

上記はガーミンへ転送されたグラフを拡大したものです。データは間引きされていることが分かります。

 

心拍ゾーンの設定とエラーデータ排除

MioFuseの心拍データに誤りが多いため、意義のある分析を行えるように、心拍にゾーン設定を行えるようにいたしました。

ゾーンは、任意で設定可能です。参考までに初期値は、70〜100が安静、100〜110が軽度、110〜140が中度、140〜180が強度としています。自分に適した値に変更してください。

例えば、下記の例ですと、ゾーン2(110以下の心拍)のケースですが、水平速度が2km/時を超えて、かつ、垂直速度が1000m/時を超えるような負荷の高い状況でゾーン2の心拍というのは異常データだと判断出来ます。

異常だと思われるデータは、速度の下限と上限を設定することでフィルターすることが出来ます。

基本パラメータにグラフが表示されますので、それを参考に閾値を決めて下さい。

また設定例も記載していますので、よくわからない場合は、設定なしで使用されるか、参考例のデータを転記してご利用下さい。

 

脈拍数と水平速度、垂直速度との関係

心拍数と一番一番関係深いのが、上昇速度(垂直速度)と推察されます。裏付けとしてEXCELで簡単な重回帰分析をした結果、勾配(%)と心拍数とに相関関係がありそうですが、まずは心拍数と速度から見ていきます。

下記は垂直速度と心拍との関係です。

縦軸が脈拍数、横軸が上昇・降下速度(単位はm/時)です。水平速度の違いを色の濃淡で分けています。中央から右が登り、反対が下りとなります。上昇の場合は速度により脈拍数が高くなることが分かります。降下は、脈拍数があまりあがりません。

 

上記は1700mの登山での例です。横軸が上昇と降下の速度です。上記のケースでは心拍の大きな右肩上昇は見られません。水平速度が遅いデータは上昇速度により心拍が増えているようにも見えます。心拍データは一定のようでも結構バラついていることが分かります。

上記は同じデータですが、行きと帰りと休憩で色分けしてみました。休憩は90前後の心拍です。

上記は第三者でGPSメーカーも違うログのケースです。このデータからは水平速度が速い(濃い緑色)場合は、上昇速度と心拍数に強い相関関係がないようにみえます。水平速度が遅い場合は右肩上がりの傾向があります。(薄い緑色)→近似曲線で判断しています。

 

上記は同じ山での水平速度と脈拍データの関係です。上昇・降下速度で色分けしています。 横軸が水平速度です。近似線を見ると下りはスピードにより若干脈拍数上昇がみられます。登りは水平速度が遅い場合でも脈が速くなっていますが、全体的には水平速度と脈の密接な関係は見出されません。

 

上記は金剛山でのログです。やはり水平速度(横軸)が変化しても心拍数の変化はあまり生じていないことが分かります。

 

脈拍数と勾配%

登山中斜面のキツさと心拍数の散布図です。

上記は水平速度で色分けしていますが、横軸が勾配%(右が登り、左が下りです)。右側は心拍数が130〜140に上昇しています。

 

上記は同じグラフを垂直速度別で色分けしたものです。

 

UV2(つまり上昇速度が速い場合)DV2(下降速度が速い場合)に絞ってみると心拍データがきれいに分かれます。

登りは勾配に比例しているようにも見えます。下りは110を中心とした球状に分散しています。

同じデータですが、行き(登り)と帰り(下り)と休息で色分けしてみました。

 

上記は別の山ですが、帰り(緑色)でも130を超えるケースがあります。これはおそらく計測ミスで実際の値でないと推察しています。

 

水平速度がゼロに近い場合はおそらく休息に近い状態(もしくは急な登り?)だと思われますが100を中心としているように見えます。しかし120を超えるデータもありこれは計測エラーの可能性もあります。

 

ネットで公開されている第三者のログを分析結果です。勾配と心拍数は関係があります。(近似曲線で判断)

グラフを見ると同じ勾配%でも心拍数にはばらつきがあります。ばらつき具合は下記ヒストグラムでデータの分散状態を確認することが出来ます。

 

脈拍数と歩行距離

脈拍のヒストグラムです。横軸が脈の範囲で、縦軸が水平距離です。色は上昇速度で分けています。

グラフからは110〜114が一番長い水平距離を歩いていることが分かります。

上昇速度・降下速度によりグループ分けの閾値は、基本パラメータタグで設定可能です。(個人の好みで設定してください。)

記号の意味はD=down U=UP V=vertical H=horizontal velocity0=停止、1=低速、2=中速、E=Error です。

上記は基本パラメータで速度別のグループ分けを変更する画面です。左の閾値(しきいち)を変更しますが、右側データ数を確認しながら設定出来ます。

今回、トレールランニング用にも対応できるように上限を変更できるようにしていますので、お好みで設定してください。

 

上記は、同じ山で、下りの場合の心拍数別、水平距離の合計グラフです。

下記は、脈拍数と垂直距離との関係を表したグラフです。

垂直距離がどの心拍数で一番多いか分かります。上記の例では下りの方が、脈が速い傾向です。

 

上記は別の山(金剛山)ですが、登りは脈が速いことを示しています。

 

上記は羊蹄山での例です。

 

心拍数・脈拍数と経過時間の関係

下記は、距離ではなく、経過時間を合計したものです。

上記は、同じ山で、下りの場合の心拍数別の時間合計グラフです。

心拍・脈拍をゾーンに分けて管理することは、登山には合わないように思い(個人的意見)グラフではゾーン分けを考えて作成していません。上記は、ゾーンには分れていませんが、全体としてどれ位の心拍で過ごしているのか一目で分かります。

 

上記は心拍数の時間を登り速度が速いデータと下り速度が速いデータで比較したものです。このデータからみるとあまり差がないことがわかります。この傾向は山によって違います。

 

EXCELでは簡単にグラフ化できるので念のため脈のランキンググラフを作ってみました。

 

上記データは、第三者で場所や距離も違うので比較できませんが、心拍数は比較すると高めです。

上記のグラフから分かることは、登りにおいて左側の一番時間が掛かっている心拍数(たとえば上記例では135139)が持続できる心地よい心拍数と言えるのではないかと考えています。

 

上記は、金剛山での例ですが、ゆっくりとした登りのケースでは110〜114が登り時に目標(目安)となる心拍数になります。

 

上記は、羊蹄山での行きと帰りで色分けした心拍数と時間のグラフです。登りは心拍数が高いです。

 

ちょっと蛇足ですが、停止時(休息時)の心拍数は90〜99であることが分かります。

 

時系列での脈拍データの変化は以下です。

経過時間による心拍数・脈拍数の変化です。緑色の線が移動平均です。終盤に上下が激しいですがこれは計測エラーの可能性があります。

 

上記は時間ではなく、歩行距離と心拍数の関係です。

 

高度と心拍数・脈拍数

高度による心拍数・脈拍数の変化はあるのでしょうか。

下記は散布図での分析ですが、関係性が見つけにくいことが分かります。横軸が心拍数で縦軸が高度です。赤色が登りで青色が下りを示します。

 

平均心拍数を高度毎に計算してみました。

上昇・下降速度別での高度と平均心拍数のグラフです。これを見ると高度が上がると心拍数も上昇しているように見えますが実際もう少し計測してみないと判断できないかと思います。

上記は同じ山での下りのデータです。色分けは降下速度でグループを分けています。上記の例では逆に下がるほど心拍数が上昇しているように見えます。

行きと帰りで色分けしました。行きと帰りで逆の傾向がありました。

下記は、別の山(羊蹄山)での結果です。

上記を見る限りは、高度と脈拍の関係はありそうです。

 

上昇速度別でみても、高度と脈の関係性があるように見えます。

 

GPSログ解析EXCELのダウンロード先

ZIPパスワードが掛かっている場合は、ホームページ先頭のパスワードをご確認下さい。

http://www.ne.jp/asahi/nature/kuro/

データの取り込み方法などは、こちらをご参考にしてください

 

異常データ・心拍数(脈拍数)精度

何故か負荷が低い下りで水平速度もあまり出ていないのに心拍数が異常に高いケース、負荷(上昇率)が高いが、心拍数が異常に低いケースがあります。

無題

おそらく計測ミスしているはずなのですが、上記左上の赤丸のグループでの原因は心拍数が低下すると脈が測りにくくなるのかと推測しています。上記右下の赤丸のグループでの原因は不明です。また良性の心拍「期外収縮」傾向の方は特に下山時の鼓動が低くなった場合、正しく計測されない可能性があります。この点は、現時点のセンサーの限界かもしれません。

 

心拍エラー

上記も別の山でのデータですが、〇で囲んだ部分は正しく計測されていない可能性が高いです。

 

心拍ローデータ異常データ

上記のグラフは、心拍の生データ(GARMINではなく、「MIO」の元データ)を時間でグラフ化したものです。所々に急に心拍が上昇したり、下降したりしています。平坦な道で発生しており、かつ走ったりしていないため、計測中に異常データとなっていることが分かります。(160はかなり強い運動です。また50を下回る値も発生しております。)

 

異常データの詳細

別の日のデータですが特に停止したり急に走ったりしてなくても心拍数が80より下がったり、140を超える現象があります。

心拍数異常201706_2

 

6642

まず6650秒データ付近を拡大すると80より低下しているところがあります。おそらくこの1分位のあいだはデータが実際と一致していない可能性が高いです。

 

7019

7019秒付近ですが、120から140を一時期超えています。この間約1分間です。これも明らかに異常データです。

 

7511

7500秒付近ですが、ここも妙なピークが出ています。特に急な運動変化が無い状態で、1分間隔で変化が続いています。

 

8590

8600秒(2.3時間付近)ですが、急な心拍変化が約3分間続きました。これも計測ミスの可能性が高いです。

 

9100

上記以外にも急に心拍数が40も上昇するような現象が発生しています。

 

異常データ

上記は、2000m級の山で下山途中の心拍数です。(11時間以上歩きました。)歩行中休息したとしても、安静時なみの60近くまで下がることは考えられません。おそらく、心臓の期外収縮(不整脈の一種)が原因で脈が閾値を超えることが出来ず、センサーが情報を拾えないのかと想像しています。

 

元データの心拍数(脈拍数)誤差について別データにて分析してみました。下記は、MIOオリジナルデータを心拍数で分けたものです。(データは1秒毎なので高さは秒&個数を示します。)

心拍生データ加工

MIOのオリジナルデータなので位置情報を含んでいませんので、前半と後半で色を塗り分けました。おおまかには、前半(柿色)が登り、後半(青)が下りだと考えてみます。このデータはゆっくり歩いたので心拍数がそれほど上がらないはずなのですが、125を超えるデータがあります。また前半登りなのに70以下のデータがありますが70以下とは安静にしている状態のはずで、普通立っているだけで70を超えるため、このデータは明らかに測定ミスが発生しています。

 

上記は同じデータの表示を少し変えただけですが、前半はまだ綺麗なヒストグラムですが、後半はピークが複数あり複雑なデータとなっています。計測ミスが疑われます。(全体としは10〜20%ぐらいの値が正しくないと推察しています。)

 

上記は設定した閾値(しきいち)を超えたデータ数。

 

上記は金剛山での例です。どうやら帰りに脈が落ちてくると、期外収縮が発生しているのかもしれませんが、データが乱れます。

 

上記図のように、心拍の上限、下限は、「基本パラメータタグ」で設定可能です。右側にエラーがカウントされますので適切な範囲に設定してください。

 

過去、Fitbitの時計型活動量計に対し不具合があるとして、消費者グループが集団訴訟を起されました。GARMINhttp://www.garmin.co.jp/legal/heart-rate/のように正確でない場合がありますと明記するようになっています。計測された数値を妄信せず、ある程度誤差があることを理解される必要があります。(もちろんこのWEBページの信頼性も含めてです。)

 

測定の仕組み、異常データ発生原因(推測)

手首で測定する脈拍と、病院で受ける心電図などでの心拍数とのそもそもの違いは何でしょうか。心電図や胸に付ける心拍センサーは心臓からの電気の流れを計測しているもの(資料)ですが、手首での計測は血流量を血管の伸縮から測定しているもので、同じようで違っています。脈としてはどちらを信用したほうが良いのでしょうか。おそらく元々の心臓の電気を計測したほうが正確になるはずです。手首は結果としての血液量の変化を計測するため誤差や精度は低下すると考えられます。

手首での心拍センサーの原理は、LEDの光を皮膚内の血管に向けて照射し、その反射光をセンサーで拾うことで心拍数を計ります。

(資料光を照射した際、血管内に血液の量で反射光の波長毎の量が違います。相対的な閾値(上限と下限)を超えたら1回とカウントされます。カウント方法はプログラムによる判断で行われますが、正しく計測されない理由を推察してみます。

少なくカウントされる理由(推測) 

@センサーが運動などで皮膚から離れる 

A外からの光ノイズがあり下限閾値に到達出来ない。

B期外収縮など脈の変化が分かり難い場合

多くカウントされる理由(推測)

@センサーが運動等で動くことで脈以上にカウントされてしまう。

A外からの光ノイズをカウントしてしまう。

 

ノイズを除去する技術は色々あるようなのですが、(資料)

センサーの光入社角度を制限する仕組み

(参考:EPSON

運動加速度センサーなどで補正する仕組み

(体動ノイズと言うらしいです。)

❸スペクトラム拡散技術を使う 

(資料) (資料2)

正直Mioはもう少し製品改善の余地があるのではと考えています。

 

不整脈・期外収縮

通常・正常な脈の場合は、心拍数(心臓からの電気でカウント)=脈拍数(手首などで測る脈数)が一致するはずです。でも体質やストレス、また年齢を重ねていくと如何しても不整脈が増えてくるようです。不整脈がすべて異常ということでもなく、大なり小なり発生するため、誰にでも起こり得る現象となります。

脈が乱れる3つのタイプは、@期外収縮、A徐脈、B頻脈とのことです。ご自身の脈の傾向を確認する必要があります。

そもそも心拍数・脈数を測る理由は、体がどれ位エネルギーを必要としているのか(負担が掛かっているのか)、心臓の動き(動く回数)から知ろうということかと思います。しかしながら不整脈があると正しく計測されないということになります。(自動の血圧計も同じですね。)

脈の乱れが正常なものか、そうでないのかは専門医で判断いただく必要はあります。

 

(結論・まとめ)

@GarminMio Fuseとの連携はANT+で簡単に行えました。

A山では心拍数で負荷量を意識しながら歩くということはあまり無いです。平地と違い、多彩な地形の中ではペースコントロールが難しいためです。(心拍計に指摘されなくても疲れるとペースが落ちます。)

⇒自分の感じとしては110位が良いペースです。みなさまも自身の心地よいペースを見つけて下さい。

B山では無酸素運動はあり得ません。すべて有酸素運動です。理由は、無酸素運動は5分と持たないからです。

C心拍(脈数)が上昇するのは登りのみです。下りは水平速度を速めても、少ししか上昇しません。(走って下る人は別です・・・。)

D脈数の異常データを記録しました。(推定5〜20%) ノイズもしくは期外収縮での計測ミスが発生するように思われます。

正直MIO Fuseは合格点とは言えないように思われます。(私見です。)またMioGOアプリの完成度は高くありません。(バグがありますし、機能は低いです。)データは参考にはなります。(^^;

E登山での心拍数は休憩なしでも持続して登れる負荷が理想です。(私見です。)

 

多くの人の心拍データを分析できれば、EXCELをより有用な良いものに修正出来ますが、残念ながら公開されているGPXログ情報にも心拍データまで残っているケースがほとんどありません。時計メーカーやライフログメーカーも単にあやしい宣伝するだけでなく、有用な使い方の提案をもう少し頑張ってほしいところです。最近ではDeep Learningなどのビッグデータ分析手法もあるので役に立つ分析ができそうな気がします。(たとえば自分の体調や身体能力にあったコースの選定や、心拍を遠隔からモニタリングする仕組みなども可能になるかと思います。)

また期外収縮など不整脈の場合でも正しく計測できる機器の登場が待ち望まれます。(たとえばレーザーで血流を見るとか、脈拍数だけでなく波形まで取れるものなどです。) それに加え、より正確なGPSによる位置情報と組み合わせることができれば将来はもう少し安全に体調管理が行えると思いますが、現段階の製品ではまだ発展途上だと考えています。

以上ご参考になりましたら幸いです。

 

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