おやすみ 美流


miru 美流 (ミル) が今朝死んだ。
昨日の晩まではとても元気に動き回っていたのに、今朝はとても様子が変であった。かなり衰弱していることが一目見て判るほどの弱々しさである。じっとうずくまったままでヒクヒクと髭を動かし、そして時折痙攣したかのように ピクッ と手足を動かすきりである。

ハムスターと一口に言っても幾つかに種類が分かれるようである。ゴールデンハムスターと呼ばれる種類は某漫画アニメで有名になった比較的大型で黄色っぽい毛並みの、人に慣れやすい種類である。そして最近ペットショップでよく見かけるようになったドワーフハムスターと呼ばれる種類はゴールデンに比べるとかなり小型の種類で、毛並みは黒色系であることが多く、俺の飼っていた美流はジャンガリアンと呼ばれる種であり、このドワーフ(小型)に分類されるらしい。
こいつと出会ったのは今から約2年半前のことだった。当時俺が生活を伴にしていた女性とこいつを買いにショップに行ったんだっけ。
その直後、俺は一人で生活することを決め引っ越しをし、小さなアパートで一人暮らしをする俺にとっては寂しさを和らげてくれる唯一の存在であった。僅かな後に、追いかけてきた彼女とよりを戻すことを決め、二人で生活出来る今のアパートに更に引っ越しし、そしてまた俺は今一人の生活を送っている。
そんなくっついたり離れたりの俺の生活のそばには、いつもこいつが居てくれた。俺が嬉しい時も寂しい時も、いつも俺の話を聞いてくれる、そんな可愛い大切な存在だった。

うずくまって何かを耐えているような姿が、見るからに苦しそうな姿へと変わった。力無く手足を伸ばし、もがいているようにも見える。これまでも顔から飛び出していた目が、よりいっそう飛び出しているようにも見える。横倒しになった後、後ろ足をピクンと伸ばし、そして、瞳の輝きが失われた。

ハムスターの寿命が約2年ということは知識として聞いていたので、ある程度の覚悟が出来ていたと言えば変な話になるが、それにしても突然の悲しい出来事である。

死を現実として受け止めることがこんなに悲しい出来事だとは、なかなか理解出来ないでいる。今もついつい、こいつが居た場所を振り返ってしまっているのだ。振り返っても静かな場所があるだけ。
カリカリとケージの柵を噛む音もしなければ、回し車を回す音もまったく聞こえてこない。伴に過ごした時間を美流はどう思っているのだろうか。短い時間ではあったが、俺は幸せだった。瞳の輝きを失ってしまった亡骸にそっと別れを告げ、悲しみに沈んでいる。
美流という名前を付けたのはそういえば、伴に時間を過ごした彼女だったっけ。俺が今寂しいのはペットを失った悲しみのはずなのに、何故にこんなに名付け親のことを思いだしているのだ。伴に時間を過ごしたことをどう思っているのか、聞いてみたい相手は美流だけではない気がしてきた。

2003.11.17.


ルイ ロボロフスキー
葉流 (ハル) ゴールデン
樹 (いつき) ゴールデン







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