初雪


今朝、今シーズン初めての雪が舞った。舞っただけで積雪とはならなかったが、とにかく雪が降ったのだ。雪というとイメージ的には冬本番という感じでとっても寒いように感じるが、雪国と呼ばれる地域においては、雪が降る日は暖かいというのは常識である。雪が降らない日の方が異常に寒いのだ。そう、今朝もここ最近にしては暖かい感じがした。

昨日の晩、彼女からの電話で、ハムスターの葉流(はる)の様子がおかしいという事を聞かされて、その彼女の会話の様子からただ事ではない事を直感した俺は、葉流の最後を覚悟して、彼女の部屋へと向かった。
樹(いつき)を亡くしてから、しばらくしてから飼いはじめた葉流は2人にとってちょっと特別な意味を持ったペットであった。樹は彼女の一人暮らしを癒すパートナー的な存在だったのだが、葉流は2人にとっての鎹となるべき存在・・・のハズであった。
お互い時間帯の違う仕事に拘束され、共通の時間をなかなか持てない現実に「今はまだこどもは産めないから」と彼女が提案したのが、葉流を2人で飼うという行為であった。ペットショップで選んだ俺に似たのか、臆病で神経質な性格の葉流は最初はなかなか2人になつかなかったのだが、その後世話をする事の多かった俺には結構なついてくれて、食いしん坊で、わがままで、それでいて愛敬たっぷりで、それは可愛いものであった。仕事が終わって部屋に帰ると必ず葉流は起きていて俺を出迎えてくれ、すれ違う2人の時間を葉流の存在がなんとか取り持ってくれていたような気がした。

環境の変化に葉流もストレスを感じたのであろうか。
それにつけても命とははかないものである。

葉流の最後を2人で見届けた。
樹の時とは違って、葉流はすごく苦しんでいた。つらそうであった。ハムスターは普段は鳴き声を発することはないのだが、横たわったまま手足を自由に動かすことも出来ず、しゃくりあげるように小さなか細い泣き声を発していた。耳や髭に触られる事をあんなに嫌がっていたのに、どこに触れられても、逃げる仕草をする事さえも出来ない。
しばらくの後、それまで半開きのままであった瞳が大きく大きく開かれたかと思うと、手足を引きつらせるようにして伸ばし、そのまま動かなくなった。
死んだ事を認めたくは無かったが、その後、体はどんどん冷たくなり、体は固く硬直してきて、死を現実の物として受け止めざるをえなくなった。開きっぱなしの瞳を彼女が閉じさせ、そして樹の待つ公園の片隅へと、葉流を埋葬した。

あぁ、樹を埋めた時は雪がまだ残っていたっけ。などと手を合わせながら思い出していた。そして今朝は雪が舞った。もう冬本番の知らせである。

2001.12.4.




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