骨髄ドナー体験記 (その4 術前検診)

◆15 術前検診
day-44日。2度ほど足を運んだT医大O病院ではなく、骨髄採取病院であるK病院に術前検診に行く。
予約は9:00。しかし、なかなか医師は現れず。
この待ち時間に、コーディネーターよりレシピエントの情報を教えてもらう。
患者さんは関東在住の30代の男性だそうである。これらは全部自分と同じであり驚く。さらにHLAまで同じなので、まさに「兄弟」だ。そして、それは「明日はわが身」であるということ。どこかの何かが少し違っていれば、彼がドナーで、僕が患者であった可能性だってある。
 9:30になってやっと主治医のO先生が登場。検査が始まった。
簡単な問診のあと院内ツアー。尿検査、採血からはじめる。採血室では、採血の方がカルテを見て「どの患者さんのドナーですか?」と聞かれたので「バンクなのでわからないんですよ」と答えたらしきりに感心されてしまった。ここの病院は骨髄移植の術例が多いのだが、血縁間の移植のほうが多いようである。
 次に、レントゲン。胸と下腹部の撮影。骨髄は骨盤の骨からとるので当たり前であるが、かなり下のほうまで撮影した(もう少し下だとちんちんだよ)。
 さらに呼吸器の検査。鼻をクリップでつままれ、思いっきり息を吸い込んだ後、勢いよく吐き出す。半年前まで喫煙していたのであまり自信はなかったのが、4,000ccを越えていてちょっとうれしい。
 そして心電図。横になって安静にしている状態で計った後、「立ってください」といわれて、ベッドの上に立ち上がってしまった。「いや、床に・・・」。う〜ん恥ずかしくて心拍があがってしまったかも。
 ひと通り検査が終了して、問診室に戻れば既に検査結果の一部が既にパソコンの画面上に表示されていた。
それを見て先生「脂肪肝の気があるね。お酒は良く飲むんでしょ?」。いままでそのような指摘を受けたことがなかったので、ちょっとオドロキ。
「いえ、あまり。。。寝酒に缶ビールを350ccほど」と答えたが、それを飲むと言うんだよ。
「間食は?」との問いに心当たりが。
「そういえば、禁煙してから口寂しくって、お菓子食べちゃってますね」
「禁煙は良いことだけど、急激に体重が増えるのは、心臓などの循環器にも良くないから、気をつけてください」とのこと。
レントゲンを見て「肺もきれいですね」の一言に安心した。禁煙したとはいえ10年ほどタバコをすい続けていた上、肺の辺りに違和感を感じることも一時あったので、これはうれしかった。
しかし下半身のレントゲンで「宿便がありますね。」。毎朝快食快便である私には予想外の言葉。う〜ん、手術前の浣腸決定だこりゃ。
 そして、血圧を測定したのだが、なんと上が158で下が104!!普段はありえない数値。深呼吸をして計り直しても、下が100を切らない。この数値であれば、ドナー不適格と言うことで、コーディネート中止である。 普段こんなことが無いので、先生に献血手帳を見せ(毎回の血圧が記載してある)、良くわからないが今日だけが特別であることを力説したところ、白衣症候群(ホワイトシンドローム)かもしれないので、今日の検査結果でまだ結果が出ていない項目の説明とあわせて、次週再検査をすることとなった。
 また、入院の希望について、個室がいいか大部屋でいいか尋ねられたので、差額ベッド代について聞いてみた。サービスで個室には入れるならとも思ったのだが、形式だけでも(払えない場合は債権放棄)請求だけはさせていただくとのことだったので、大部屋にした。

◆16 再検査
day-38日。今日からは、コーディネーターさんの付き添いは無い。9:30からの再検査。ちょっと早めであるが普段の通勤時と同じ8時前に家をでる。病院の最寄り駅について、自分で緊張しているのがわかる。
今日、血圧がアウトなら、患者さんの移植が延期になる。そんなプレッシャーもあるのか落ち着かない。少しでもリラックスしようと思い、喫茶店でコーヒーを飲む。
 病院には15分くらい前に到着し受付を済ませて、ロービーで待つ。待ち時間に廊下の片隅においてある自動血圧計で計ってみる。140/90。
ヤバイ。今日も高い。深呼吸をしたり、雑誌に目をやったりして、リラックスしようと試みる。
 そんなこんなをしているうちに、名前を呼ばれ診察室に。先日の結果は血圧以外全て正常。
で、その懸案の血圧を測定すれば、やはり下が90ある。
 大目に見てくれて一応、先生のOKがでた。(院内基準は90未満だそう({以下ではない))
次回は、自己血採血だ。骨髄採取で一時的に血液が減るので、事前に自分の血液を取っておき、返血するのだそう。そのために増血剤(鉄材)が処方されることになり、薬が出るまで、ロビーで待っていたのだが、そこで血圧を再び測ってみれば、なんと120/70。自分のチキンハートさ加減にあきれ返り、笑いがこみ上げてきた。
 この話を友人にして「俺って、デリケートだからさ」といえば「バリケードの間違いだろ」といわれてしまった。
 それにしても、普段献血ルームで女性の看護師さんに血圧測られて正常なのに、男性の先生が測ると急上昇するのって。。。

◆17 自己血採血1
day-21日。自己血採血である。
ヘモグロビンの量を増やすため、鉄材を呑み続けていたため、最近ウンチが黒い。
それはさておき、当初2回で計800ccを取る予定であったが、骨髄採取量を考慮して、自己血は300cc×2となった。
献血感覚で採血したが、成分献血と違いあっという間に終了。後は問診のみ。

◆18 自己血採血2
day-14日。2回目の自己血採取。
献血であれば、400cc採血の後は3ヶ月間隔を空けなくてはならない。
200cc献血でも最低1ヶ月は間隔をあける必要がある。いくら増血剤を飲んでいるからといって、そんなに採取しても大丈夫なのかと主治医に問えば、NO Ploblemと、鼻で笑われてしまった。
この日は、お髭のS医者から麻酔の説明を受ける。私は、全身麻酔のみで手術するものと思っていたが、仙骨麻酔と言う局部麻酔もするとのこと。そして手術中の事故の原因で一番多いのが麻酔であるらしい。説明を受けたと言う同意書に「麻酔は100%安全とは限りません」などと書かれていて、ちょっと引いてしまった。まあ、そんなんでドナーを辞退することなど無いのだが。
 これで、事前の通院は全て終了。あとは移植手術を待つばかりである。

◆19 入院まで
実はこのころ、私は別の会社に週二日のペースで派遣をされていた。もちろん本業のほうにも、派遣先にもドナーのことは話してある。派遣先ではそれを承知でいろいろと日程を組んでくれたし、本業のほうも周りの人たちが私の仕事を引き受けてくれた。
勤務上もドナー休暇制度があり、財団からの証明書をつけることによって全て有給で休むことができた。
感謝感謝である。